今野敏のレビュー一覧

  • 回帰 警視庁強行犯係・樋口顕

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    本作は刑事部と公安部の対立が一つのよみどころかと思いきや、梅田管理官はさにあらず、深い洞察力と懐の深さには一本とられたなと思わずにはいられませんでした。物語の序盤では樋口ですら彼を警戒していたところからの実は刑事部と協力する気満々だった姿を見せられると、そのギャップに天童ですら小物に思えてしまいますね。

    主題として描かれた爆破テロとそれを巡る登場人物の相関関係については、読み手にも推理できる部分と、そうでない部分(特に因幡を軸とした関係)が適度に組み合わせられていて、単純すぎず・難しすぎず、ほどよき読み応えになるレベルに設定されていたように感じます(このあたりは読者のレベルにより評価がわかれ

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    2021年02月03日
  • ビート―警視庁強行犯係・樋口顕―

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    ネタバレ

    シリーズ第三弾。前作では妻を探し求める樋口の心情、葛藤、焦燥感といったものに焦点をあてていましたが、本作では警視庁捜査二課の島崎のまるでジェットコースターであるかのような心の浮き沈みや心の闇、家族、とりわけ子供に向けるまなざしが軸になっています。

    特に前半は捜査情報の漏洩に関わってしまった島崎の目線で物語が進むことから、読み手としても島崎自身に感情移入してしまい、悪事に手を染めてしまった後悔や背徳感、刑事という自らの立場を失うことになるかもしれない恐怖といったものをひしひしと感じてしまいました。あのときどうして富岡の誘いを断らなかったのだ、とか、まさに自分自身が島崎になったかのような没入感を

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    2021年01月21日
  • 朱夏―警視庁強行犯係・樋口顕―

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    樋口顕シリーズ第二弾。ある日、妻が何者かに拉致されてしまい、樋口は氏家とともに単独で捜査に乗り出すことに。

    まったく手がかりのない状態から細い糸を手繰り寄せるように少しづつ事件の真相に、そして妻の居所へと近づいていく過程に思わず引き込まれてしまいました。事件は金曜の夕方に起こり、週明け月曜から別の事件の捜査本部が立ち上がる予定でそれまでに事件を解決しなければ、という”タイムリミット”という制約もあり、読み手も樋口とともに焦燥感を味わいながら読み進めることができます。

    前作では被疑者となったリオに惹かれつつ自分をどうにか保とうとする樋口の姿が描かれていましたが、本作でも少ない手がかりと徐々に

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    2021年01月19日
  • 同期

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    ザ警察小説

    久しぶりの警察小説。後半の怒涛の展開には驚きました。本格的に今野さんの本を初めて読みましたが、人間ドラマとして、人の感情と思惑を描くのが上手い作家さんなのですね。面白かったです。

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    2021年01月24日
  • ST 化合 エピソード0 警視庁科学特捜班

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    ネタバレ

    STシリーズ、といってもSTが結成される以前のお話しということで「エピソード0」というタイトルが冠されたものになっています。

    若かりし頃の菊川が捜査したとある殺人事件を軸にしたストーリー。STで描かれているより10年以上前の出来事であるため、STの端緒すら出てきませんが、捜査本部で菊川とコンビを組んだ所轄の滝下の仕事っぷりがなかなかいいんです。

    適度に力を抜き、仕事をさぼり(つつアタマでは捜査のことを考えている)、でも勝負所では一気に畳みかけるかの如く集中して捜査をおこなう、それでいて、捜査の着眼点はいいところを突いているという、ちょっとクリエイティブっぽい雰囲気もあります。

    本作は捜査

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    2021年01月13日
  • 任侠病院

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    安定の『任侠シリーズ』
    今度は病院。この破綻を目前にした病院のなかには悪役は居ない、が、出入りしているのが指定団体の息のかかった悪徳業者だった。

    救いは病院で働く医療関係者達が素晴らしいプロだったということ。小説を通して現在の医療機関へ改めて感謝の念を押さえられない気持ちになる。

    病院問題に加えて、地域でも揉め事が。
    組長(そうは呼ばないのかも?)の芯の通った言葉掛けでこれも解決される。

    ガマンすること、逆境をチャンスに変えること、『任侠』の人達に学ぶべきことは沢山ある気がする。

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    2020年12月19日
  • ST 警視庁科学特捜班 赤の調査ファイル

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    ネタバレ

    ST色シリーズを読み終わりこのレビューを書いていますが、本作は色シリーズ中で最高の出来栄えではないかと思います。いや、ほんとうにおもしろったです。

    赤城の過去と彼がこれまで抱えていた苦しさが丁寧に描かれており、日頃の一匹狼だと言い張っていることや女性恐怖症に陥った経緯がよくわかり、赤城というキャラクターを深く理解することができました。

    また本作の題材となった事件はいわゆる医療過誤(とは最終的にはちょっと違ったのですが)ものということで、巷で言われる「専門性の壁・密室の壁・封建制の壁」という3つの壁が立ちはだかります。専門性の壁については赤城をもってすれば突破できるものの、残り2つがSTの捜

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    2020年12月17日
  • 武士マチムラ(琉球空手シリーズ)

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    今野敏『武士マチムラ』集英社文庫。

    江戸後期、薩摩藩に支配された琉球王国を舞台に伝説の武士の生涯を描いた歴史武術伝記小説。

    何とも素直で真っ直ぐな人生であろうか。清廉潔白、実直、真面目、愚直というのは本作に描かれた松茂良興作のためにある言葉かも知れない。痛快無比、琉球の伝統武術の成り立ちを解り易く描いた快作であった。夏目漱石の傑作『坊っちゃん』にも雰囲気が似ている。

    本体価格760円
    ★★★★★

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    2020年12月15日
  • 潮流 東京湾臨海署安積班

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    ネタバレ

    本シリーズ、数ある長編のなかでも一二を争う読み応えのある作品でした。ほぼ同時刻に救急搬送された市民3名が謎の死を遂げる事件が発生し、安積自身が過去に手掛けた事件とのつながりがみえてきて、しかも冤罪であった可能性が…。

    自らの過ちを暴くことになるかもしれない、しかし真実は何かを知ろうとする純粋な想いに突き動かされる安積の姿は必見です。こうしたケースでは激しい葛藤にみまわれる、あるいは保身に走ってしまうこと少なくないはずですが、刑事としての本能や正義感がそれらを上回った? いや、そのようなあれこれを自身のなかで天秤にかけることすらないのかもしれません。そんな姿がカッコイイのです。

    また捜査本部

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    2020年11月21日
  • 烈日

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    ネタバレ

    短編集でしたが、長編とはまた違った面白さを感じることができた一冊でした。「烈日」というタイトルに大きな意味があることが読み進めるうちにわかってきました。

    収録されている短編はおそらく季節の順にならんでおり、一つ目の「新顔」の季節がわかりませんが、全編をとおして夏から冬の時期が描かれています。

    相楽との確執(?)は相変わらずですが、実は安積の若かりしころが相楽の今に重なり、「逃げ水」では彼の中に安積自身が昔のがむしゃらであった自分を見るかのような視点が描かれています。

    「白露」では、とある事件の捜査本部で桜井が組むことになった定年間近の福留という刑事もまたその職業人生を終えようとしている瞬

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    2020年11月18日
  • 夕暴雨

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    ネタバレ

    東京ビッグサイトでおこなわれるイベントに対して度重なる爆破予告が。一度目は狂言におわったものの、二度目の予告は本物だろうという須田の推理に従い警備を固める安積班。だが、警備の網をかいくぐりまんまと爆破を起こされてしまう。

    まずは被害者5人のもとをおとずれ証言を得てゆく安積班であったが、微妙に食い違う証言の矛盾をまたしても須田の洞察力が突破口になる、という展開。

    今回から臨海署の建屋が新築され、組織も拡大、強行犯も二係体制となり、なんとあの相楽が異動してくることに!

    爆破事件の捜査本部においても何の因果か、事実上、安積班と相楽班の対立構造が継承され、各々の推理をもとに捜査が進む。きっとこう

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    2020年11月17日
  • 同期

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    一体の水死体から事件は暴力団同士の抗争へと発展していくかに見られた。警視庁捜査一課の宇田川はウチコミ現場から逃走した組員に発砲されるが、偶然そこに居合わせたという公安所属の同期である蘇我に救われる。しかし、その蘇我は数日後、懲戒免職となり行方不明に。真相を探る宇田川にかけられる警察内部からの圧力。結論ありきで進められる捜査本部。大きな力に抗いながら、刑事としての誇り、同期との友情を貫く闘いが始まる!今野敏、傑作の同期シリーズ第一弾。

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    2020年11月03日
  • 蓬莱 新装版

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    安積班の新シリーズ。舞台は東京湾臨海署から渋谷の神南署へとうつります。臨海副都心構想に陰りが見え、警察署としても縮小を余儀なくされ、安積ら強行犯係がまるごと神南署へ異動した、という設定。

    で、本作における安積はどちらかというと脇役であり、主役はワタセワークス社長の渡瀬と重鎮の沖田、また彼らの会社の仲間たちの奮闘ぶりにスポットをあてたものとなっています。

    ワタセワークスが開発したゲームソフトの発売をめぐってある筋から圧力がかかり、暴力団、さらには政治家の影もちらほらと、という展開。ゲームと政治という、一見結びつきそうにないものが組み合わさって事件に発展するという面白さがありますね。

    さらに

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    2020年10月23日
  • 臥龍 横浜みなとみらい署暴対係

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    なかなか奥が深かった。諸橋さんにも、味方がいるんだってわかってきたのかな?笹本さんいい感じデスネ。
     中華街がある横浜ならでわの話でした。戦争は 誰も幸せにしないですね。

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    2020年10月20日
  • 防波堤 横浜みなとみらい署暴対係

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    短編集でしたね。6つのはなしでした。
    どれもかっこよかったです。諸橋さんはヤクザに嫌われていて、いつも命を狙われているんですね。警察官も大変です。でも 城島さんや浜崎さん、八雲さん 倉持さん 日下部さんそして笹本さんが 助けてくれますね。表題の防波堤はよかったです。

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    2020年10月13日
  • 禁断 横浜みなとみらい署暴対係

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    大学生のヘロイン中毒死 新聞記者のとヤクザの死
    中国武装警察隊? なんだか怖かった〜。
    「ハマの用心棒」も拉致されたり 城島さんもなんだか今回はモヤモヤしてるし、無理やりの突破で解決したけど怖かった〜。
    564ページもあるけど スピード感があって面白かったです。

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    2020年10月09日
  • ST 警視庁科学特捜班 赤の調査ファイル

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    ネタバレ

    このシリーズが好き。
    一人一人の登場人物にしっかりと個性があって、ストーリーも読み進めやすい。

    この話は、登場人物の中で"赤"の色で表される赤城に視点が置かれて物語が進んでいく。

    知らなかった赤城の過去を知れるのと同時に、STが言葉に出さずとも仲間であることを感じ取れる内容だった。

    事件の内容も、最後までどうなるのか予想がつかないものだった。

    遺族の方にとっては、怒りのやりどころがない物語であったかもしれないなと、少しばかり重い気分にはなったが、最後まで一気に読み進めてしまう面白さがあった。

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    2020年10月07日
  • 継続捜査ゼミ

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    おじさんだけれど清潔で筋の通った主人公が、その実力と人格で自然に若手から慕われていく様子は読んでいて気持ち良く、カタルシスが感じられました。物語も破たんなく綺麗に落ちています。また楽しみなシリーズが増えました。

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    2020年09月30日
  • 逆風の街 横浜みなとみらい署暴力犯係

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    ネタバレ

    すごく怖かった。お金を借りたのは寺川さんの失敗なんだけどこんなにも怖い取り立て 諸橋さんすごく怒っていて、本を読んでいるんだってわかっていても怖かった。城島さんが少しなごませてくれます。いいコンビですね。
    最後「俺がもう少しうまくやれば、井田は死ななくて済んだのかもしれない」って悔しそうでしたね。

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    2020年09月24日
  • アンカー(スクープシリーズ)

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    ネタバレ

    今回は、なかなか犯人を絞り込めずに大変でした。息子さんを亡くしたご両親が駅前で犯人探しのビラ配りをしているのが気になる布施さんが連続殺人犯じゃないかと疑う事からはじまり、谷口さんの大活躍!
    記者も警察も粘り強く捜査デスネ。ごくろうさまです。

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    2020年09月22日