守屋洋のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
理想は論語だけど、現実には韓非子の教えも必要だよね、と自分は理解しています。
論語では「徳治」が重視される一方、韓非子では「法治」が重視されます。
「性善説」と「性悪説」という立場の違いによるものです。
上に立つものが徳を身につけ、よき人柄や能力による信頼をもとに組織をまとめるのが「徳治」。
一方、法と権力(罰則の適用など)を使って組織をまとめるのが「法治」。
徳治と法治のバランスについて考えると、もちろん徳治が理想なのですが、どちらが決定的に優れているということではなく、情勢に応じたハイブリッドにならざるを得ないのでしょう。
自分は性善説の立場に立つものの、性悪説で対応するほうがいいケースも当然あります。
しかしながら、性善説での「徳治」が求められているときに、性悪説での「法治」が組織に害悪をもたらすこともあるので、そこを間違わないことが重要かと。
ただ、理想は論語だと思いつつ、印象に残ったのは韓非子の方でした。
人を信じすぎてはダメってのは悲しいことですが、それも現実。
韓非子については全訳版も読もうと思います。 -
Posted by ブクログ
『リクトウサンリャク』というのは、携帯ではすぐに出ないような文字である。
にもかかわらず、現代まで使われ、残っている言葉の語源が多く載せられている。
私はこの書物を勝手に「世界最古のケーススタディ書籍だ!」と思っている。
太公望と周の文王、武王の対話が中心になっているのだが、実は作者は太公望ではない。不明なのだ。にもかかわらず、いきいきとした当時のやり取りを感じさせる。
それは時代は変われど、経営者が自分の右腕とも言えるブレーンに「この場合はどうか?」と尋ねると、その質問に対する的確な答えをすらすらと答える姿にも似ている。
太公望がすごいのは言うまでもないことであるが、周の文王、武王の質問力も凄まじいものがある。
現代に置き換えると「そんなことはもうできませんよ!」と言いたくなるような、パワハラ、無茶ぶりのような君主の質問を、 丁寧に解説し、勝機を見出している。
その無茶ぶりのおかげで、太公望の才能がグイグイと引き出されている。素晴らしい質問力だ。
指導者にふさわしい人物、リーダーにふさわしい人物、と「本当にそうなんですよ! 太公望さん!よくぞ言ってくれましたよ。うちの社長にぜひ聞かせてやってくださいよ!」と両手を叩いて、言いたくなるような内容に満ちている。この辺りが今なお リーダー学として愛される理由であるかと思われる。
また、私が着目したいのは、儒学者にありがちな抽象論ではなく「具体的数値として対策を太公望が述べているところ」である。
もちろん「こういう心がけているといい」「こういうとこを備えている方が良い」というアドバイスもしているのだが、それだけにとどまっていない。
軍用編には、珍しく「よくぞ、お尋ねくださいました!」と、待ってました!とばかりの返事をしている。そもそもそういう方が得意なのであろう。
「一万の軍勢を率いるのには、重戦車36台、強弩、ボウゲキ戦士24人。車輪の直径は8尺。
大楯隊でボウゲキを装備した戦車72台。…」
などと、個別具体的に、きめ細やかに アドバイスしている。
常々、シュミレーションを積み重ねた結果、どのような状態が理想的かを描いていたからであろう。
もちろん、そのまま現代に使えるわけはないのだが、 この「尋ねられたら、すぐに具体的数値まで答えられるようにしているところ」が、サラリーマンとしては理想的な目指すべき姿であると言えよう。
武王は、いつ終わるとも分からない長々と 太公望が喋った後「いかにも最もである。」と端的に答えている。
それは内容を理解したというよりも「こいつに任せておけば安心だな」というような答えであろうと思われる。
そしてまた武王は「絶対絶命の負けている状態からの巻き返し」についても尋ねている。
「それはもう、負け戦でいいんじゃないでしょうかねぇ~」 とは、太公望は答えない。
その辺りを情緒や空気でごまかすことなく、具体的方法論で危機を脱出し、勝利に結びつける道のりまでを具体的に答えている。
王「この場合はどうか?」
望「それに対してはこうすれば良いです。」
王「別のこの場合には、どうすれば良いか?」
望「その場合には、こうした手順がございます。」
王「敵に囲まれて、逃げ道もなく、兵隊も食料も少ない。この場合どうすればいいか?」
望「実に厳しい状態ですね。しかしこのようにすることで対策ができます。」
という、気持ちの良いほどの問答集である。
むしろ、太公望を困らせてやろうというぐらい極端な例を挙げていくが、すらすらとそれに対して対策を出してくるのだ。
ゴマすりやへつらい、お世辞などを好む経営者が多い中にあって、圧倒的に「実用的 アドバイス」を求め、 端的にそれに対して答えている。
3000年の風雪に耐え抜いたとは思えないほど、生き生きとした表現で記されている。
途中のどこから読んでも良いし、1つだけ読んでも良い。1分で読めるものもあれば、長く考えさせるところもある。
ただし本が重い。
教科書のような、がっちりとした「一般人を寄せ付けないような外装」をしている。
いかにも「中国古代史大好きですよ。それ以外の人は読まんでもいいよ。」というような見てくれをしている。
しかし、内容は会社員が、ちょこちょこっと社長とのやり取りを読み、自分たちのやるせない溜飲を下げるにふさわしい現代的な内容に満ちている。
ちょっと読めば、理不尽な社長や上司の要求も「やっぱりこういう人が本物のリーダーなんだよね~」と、なんだか納得できる。
文庫版があると嬉しいな、という思いを込めて星ひとつ下げた。
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Posted by ブクログ
ビジネス系の雑誌でたびたび紹介される帝王学の名著。何度も登場するとなると気になる。
人事は大事、とか、ダメなところを指摘してくれる人がいる環境を持て、とか、上に立つ人は自分を律して、足るを知るということを覚えろ、とか(だいぶ平たく言っているので、本当はこの100万倍は含蓄がある)様々な教訓が大宗のエピソードと共に語られている。
別に人の上に立つ立場ではないけれど、良いことが書いてあるし、背筋が伸びるので時々、本棚から取り出して読みたい。語られる内容からは太宗の人柄が出ており、とにかく謙虚で実直で誠実。かといって、完璧な人ではない事もエピソードや解説を見るとわかる。それがこの本を「皇帝という遠い世界の人が身につけていた倫理観・哲学」ではなく私たちにも地続きの生き方と感じさせてくれるので、親しみやすく読みやすかった。
ジョウガンセイヨウという読み方も、今回、読んでようやく覚えた。内心「ジョウガン? テイガン?」とちょっと読み方で自信が持てなかったので、スッキリした……。 -
Posted by ブクログ
唐の二代目太宗(李世民)が臣下らとのやりとりから政治の要諦を、呉兢が編纂したもの。太宗と部下との問答で、それぞれが短めにまとめられており、また本書は訳文の後に原文、書き下し文とも登載してくれているので分かりやすい。
名君の誉れ高い太宗は、勿論ある程度美化と言おうか、後世の人々に読まれることを意識されたところもあろうが、唐の時代がまだ成立して間もないことから如何に政治を安定させ、長期政権化させるのに苦心しているところが見受けられ、まとめられたのはこの文量であるが、太宗は政治について、どういう風に治世を行なっていくかをよくよく部下と語らっていることが滲み出ていよう。
単に政治だけの話しだけでなく、処世にも、自己を省みるにも用いられるべき本で、折に触れては読み直したいもので、是非とも今日の政治家にも読んで欲しいものである。
皇帝とは、孤独であるも諫言を許し、奢侈に溺れず人臣の鑑となるべきものなのだろうが、それはいかに難しいものであるかということは、歴史が語っているからこそ本書のような帝王学が未だ残るのであろう。