メイド復讐編完結。
本誌掲載時はまさかの白雪姫エンドに驚いたが、コミックス加筆分を合わせると綺麗に纏まっていて良かった。
話を追っている間は、絡んでくる組織の多さやロックの急激な悪人ヅラに頭がついていかず置いてきぼりになりそうになったものの、最後まで読んでみると、この章は「対比」の話だったのか、と納得がいった。
・ロシアンマフィアと米軍
・ロック+レヴィと若様+ファビオラ
・ロックと若様
・レヴィとファビオラ
皆、元々は同じような立場にありながら、ほんの少しの差で光と闇に分かれた。
「なぜ貴軍と我々は――こうまで違ってしまったのだ?」
ソビエトに見捨てられて裏社会でマフィアとなったバラライカが言うように、
米軍の正義漢キャクストン少佐と、裏世界に転がり落ちたバラライカ大尉のやったことは、「同じ」だった。
この場面にはぐっときた。
また、メイド様を連れ戻しにやってきたラブレス家御子息のガルシアと、ちびっこメイドのファビオラ。
この二人とロック+レヴィが、見事に光と闇で対比されているように思えた。
もう潮時だからと帰りを促すファビオラと、付き合わせるのは酷だから先に帰ってもらってもいい、けど僕はやる、と言う若様。
だったら付き合うよ、あたしたちだったらできるよ! 「神の御加護を」とプールの中で爽やかに手を握り合う二人。
このシーンは、7巻で、後ろに米軍控えてて危なすぎるから首突っ込むのはよせ、手伝ってくれって、あたしはあんたの保母さんじゃねーよ、あたしはあんたの何なんだよ、と止めるレヴィと、
「お前が銃ならだとするなら俺は弾丸だ」最終的に決めるのはお前だけど、と言ったロックのシーンにとても似ている。
結局付き合うレヴィ、というところも。
ああ、ロックとレヴィも、若様とファビオラみたいに簡単に本音出し合えてしまえば、もっと話は簡単なのに!
と、切なくなった。
そして、レヴィとファビオラ。
貧民街出身で、ロクな目に遭ってこなかった二人。
ファビオラに自分を重ね、何かと面倒を見ていたレヴィが、ファビオラに
「世の中にお花畑があると思ってるのは私じゃない、本当は――……あんたのほうだろ?」
そうやって違いを突き付けられるシーン、個人的にはここがクライマックスだった。
「欲得ずくでなく誰かのために命を張る人がいるってことを認めたくない。
なぜなら――嘘になるから。あんたの言う糞溜めの世界がね」
と、もうまったくファビオラの言う通りなのだが、しかし、小さい頃は神や愛を信じていたレヴィが、自分にはそれらが与えられなかったから「この世には神はいないし愛も無い」と納得させることで自分を支えてきたことを読者は知っているわけで、そうやってレヴィの視点で見ると、たまらない気持ちになる。
レヴィはその後、死神めいたパフォーマンスを見せるのだが、それも、彼女が「冷酷なトゥーハンド」という彼女に相応しい役割を演じているようにしか見えない。
ただ、自分の考え方を否定されるという面では2巻の沈没船サルベージ後に屋台でロックと喧嘩した時と似ているが、
・ファビオラの場合→レヴィ死神化
・ロックの場合→シガーキス
だったことを思うと、ちょっと萌える。
最後に、ロック確変について。
この章ではロックがどんどん黒くなっていって、すわ夜神月以上の暗黒主人公きたかとドキドキしていたが、この9巻のラストを読んだら腑に落ちた。
日本人としての常識的な倫理観で誰かを助けたいと思ったが、力が無くてただ死なせるしか出来なかったのが双子編。
意地になって救おうとしたが、拒絶されて結局救えなかったのが日本編。
それを受けて、力が無いなりに手段を選ばず、結果、見事思惑通りにいったが、しかし……というのが今回のメイド復讐編。
最初は光の側にいたロックが、本人も知らないうちに闇に染まっていたというのを若様と対比させることによって見せたかったのか、と納得した。
いささか唐突に思えたロックの悪人顔も、もしかしたら若様やファビオラの視点で見たらそう見えていただけ、とも取れる。
ラスト、ファビオラがロックに対してキレるシーンは、確かにロックはキレられて当然の態度だし、多分普通の日本人の感覚を代弁した彼女の言い分はとてもまっとうだ。
しかし、とんでもない厄介事を持ち込んで、自分たちじゃ解決できないからと協力を要請した張本人が、一応依頼内容には完璧に応えた人に向かってそれは……、という面もある。
この、微妙にしこりを残した、
善悪をはっきりさせない、ただ立ち位置の差で見方が変わるだけ、みんな一理あるけど罪深い、
という描き方が好きだ。
誰もが自分が「善」と信じることをしたが、それが誰かを傷つけ憎悪を生み出した、
そんな話だったように思う。
あと、9巻で分かったとても大事なこと。
レヴィさんは脇腹弱い。
これ、とても大事。萌。