山本甲士のレビュー一覧
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おっと怪作に出くわした。
人生の中で、何気ない選択肢の3つを起点に展開する3つの「私」のヒストリー。
社会的、家庭的、言葉を選ばないなら夜の世界の私たちが、それぞれにきらめく。
作者がなぜこれを描いたのかを考えた時に、気になるキーワードは「何の取り柄もない私」。
「私の武器」。
ホワッとした言葉だとアイデンティティー?なのかな?
私自身、年齢的なものもあってアイデンティティーは頑張って獲得するものなんだ、と思うようになったところもある。広い自分から磨き上げた私の武器。そしてそのバックグラウンドにこそ、他人は共感してくれたりする。
絵本をつくる、なんて包容力がある素敵な努力。
筋トレして周りがあれこれ聞いてくれるようにはなったけど(笑)、そんないっときの頑張りではなくて、そもそも努力とは何ぞ、って聞かれるとこれ深いぞな。
お、この考えに至ってることが作者の狙いかな。
怪作なのに力みのない力作でした。
現在地で私の中では、努力は「闘い」かな。 -
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【読書感想】『めぐるの選択』山本甲士――どの道を選んでも、きっと大丈夫と思える理由
山本甲士さんの『めぐるの選択』を読み終えた。
読み進めながら強く心に残ったのは、「人生は選択の連続である」というシンプルな、けれど深遠な事実だ。
私たちの目の前には、常に無限の選択肢が広がっている。だからこそ、人は本来どこまでも自由であり、何にでもなれるし、何だってできるはずなのだ。
けれど同時に、こんなことも思う。
どんなに無数の分岐点があったとしても、自分という人間が存在し、独自の趣味思考や観念を持っている限り、めぐるの人生がそうであったように、出会う人々や起こる出来事の大筋や根本的なテーマは、大きくは変わらないのかもしれない、と。
そう考えると、胸の奥がすっと軽くなるような感覚を覚えた。
私たちは時々、「もしあのとき、もう一つの道を選んでいたらどうなっていただろう」と“じゃない方”の選択肢に思いを馳せたり、過去の決断を悔やんだりしてしまう。
けれど、本当は「どれを選んでも大丈夫」なのだ。
どの道を選んだとしても、自分の軸がある限り、必要な経験や大切な出会いへと繋がっていく。だからこそ、選ばなかった過去を振り返って悩む必要なんてない。ただ、自分が選んだその決断に自信を持って、いま立っている場所をしっかり生きていくこと。それこそが何よりも大切なのだと気づかされた。
人生の自由さとたくましさ、そして自分自身を信頼して歩んでいく勇気をもらえる、温かい読書体験となった。 -
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主人公・ひかりさんの佇まいには、何歳になっても憧れを抱かせる不思議な魅力がある。
特に心に残ったのは、彼女の見せる「優しい嘘」の場面だ。神経痛でもないのに「痛い」とつぶやき、誰かに用事を頼んで手伝ってもらう。それはただ甘えているのではなく、頼まれた相手の「誰かの役に立った」「必要とされている」という自己肯定感を、ごく自然に引き出すための温かな配慮なのだと感じる。
ひかりさんの立ち振る舞いには、「やってあげている」という恩着せがましさが一切ない。自分の親切を誇ることもなく、相手の立場やプライドを一番に考えながら、さりげなく日常の中に優しさを溶け込ませていく。
特別な魔法ではなく、一歩引いて誰かの心に小さな灯りをともすような生き方。そんなひかりさんのように、軽やかで包容力のある温かい人になりたいと思わせてくれる一冊だった。 -
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ネタバレ引きこもり生活10年の宗也が、側溝で震えていた子猫を助けたところから物語は動き出す。
猫のごはん代のためにと、10年ぶりにバイトを探し始める宗也。人と関わることに強い苦手意識を抱えていたはずなのに、気づけば少しずつ、外の世界とのつながりを持てるようになっていく。
「変わりたい」という大きな決意があったわけではなく、目の前の小さな命を守りたいというただひとつの思いの積み重ねが、結果的に宗也の人生を動かしていく。読みながら、この物語には静かなメッセージが込められているように感じた。
私自身、新しいことに挑戦するのが苦手で、「変わりたい」と思ってもなかなか変われずにいる。そんなモヤモヤを抱えている人に、一歩を踏み出す勇気をくれる作品だと思う