前号より小説が特集のテーマに沿ったものが多い印象。エッセイでは角田光代のたこ焼き修行が面白かった。あとは腐れチーズ探しの旅とかチャーハンを箸で食べる話とか。
小説は途中で読むのやめたやつはなかったけどめちゃくちゃ面白い!ってなったやつは少なかったかも。前号のレンジが40〜100点とするなら今号のレンジは60〜90点ぐらい。
◎=めちゃくちゃ面白かった。長編も読みたい
◯=面白かった
△=頑張って読み切ったけど合わなかった/面白くなかった
以下ネタバレあり
△宮島未奈/ようこ蘇!平安部
成瀬はあまり好きになれなかったから挫折するかと思ったけどなんとか読み切れた。もとの作品読んでないとキャラの相関関係がちょっと分かりにくいかも。どう終わらせるんだろうと思って読んでたけどオチがない!やっぱりこの人の作品は合わないかも…。
◎市川沙央/霞を食べる
書き出しから引き込まれた。
ちょっとしたきっかけで引きこもりになった妹に頼まれ、仙人に霞の食べ方を教わりに行く話。なんだこのあらすじは…。
最後はまさかの展開で俺が読みたかったのはこういうのだよ!と机をドンドンしてしまうレベル。
「クソみたいなアウトプットって、つまりクソじゃん。」にワロタ。
◯麻布競馬場/お魚焼けたよ
友達の結婚式からの小さな幸せが毎日あふれてる序盤から急展開。
スペックでしかパートナーを測れない男女が結婚して都合の悪いところは魚の小骨のように多少痛くても飲み込んで受け入れるところが苦味があってよい。
◯前川知大/「ゆんちゃん、お弁当」
3年前に死んだ祖母がお弁当を届けにくる話。お弁当を受け取ったら帰っていくお祖母ちゃんがかわいい。でも受け取るまで消えないところもどんな仕事も淡々とこなすプロフェッショナルに見えてしまう。どこにいても持ってくるしお弁当は実際に食べられるし劣化しないしおいしいという謎設定。ホラーでもハートウォーミングでもない不思議な塩梅で独特な読後感があった。
△尾崎世界観/流血酒場ABOAB
怪我をしたレスラーが働く酒場。
設定は面白かったけど個人的にはえ、これで終わり?というところで終わってしまったからいまいちかな。あんまり文章が頭に入ってこなかったから波長が合わないのかも。
◯小田雅久仁/GULA
何でも食べるAIの話。
ムカつく上司を食わせてみたら世界からいなくなってて代わりの人になっていた。でもムカつく上司の記憶も新しい上司の記憶もある。人を消してしまったという罪悪感とそうしないと襲ってくる空腹感の間で苛まれる描写が良かった。
死刑囚に目をつけたのも良かったね。デスノートのLみたいだ…。でもオチはまあそれしかないよねみたい終わり方だった。予想外のオチなら◎だった。
名前の読み方調べたら『禍』の人だった…。なるほどね…。
◯佐久間由衣/かた焼きそばを捨てる時
かた焼きそばにまつわる思い出を抱えながらゴミ捨て場のゴミを観察する主婦の話。短いながらも起承転結がはっきりあって(当たり前)タイトルの回収も見事。スキンヘッド先輩に会いたくなる…。
◯山口未桜/弁当狂騒曲
相変わらず警察コンビは役立たずなのが新鮮。でも書いてる人が医者だからリリカが主人公なのねと納得。金払わない限り診察しないとかブラックジャックみたいだな。でもなんだかんだでいい人ではあるけど医療はあって当たり前のものじゃないというドライな考え方は医者っぽいかも。ミステリ風味ではあるけど誰も死なないのが良かった。
◯芦沢央/ハザードランプ
割と平和な話だなと思って読んでたら最後の方で芦沢央全開の展開になってニッコリ。終わりに向かうにつれ、謎が解き明かされるミステリ的な楽しみ方ができた。
◎上條一輝/ゴースト・イン・チェーン
牛丼チェーン店に出てくる幽霊騒ぎに対処する広報部社員の話。食とホラーがうまい具合に融合されてて引き込む力が強かった。最後はどんでん返しがきて熱かった。ほかの人がどうなったのか分からないのもホラーっぽくてよい。
◎真下みこと/私のヒーロー
なんやかんやあって教室にいけなくなった女の子の話。
クラスで先生がいじめられて泣いているのになにもできないあやか。加害もしてないけ度助けてもないから同罪なのかなまたいな葛藤が良かった。
クラスの奴らにごちゃごちゃ言われてもだから何?と言い返せる強さがうらやましい。
◯方丈貴恵/パフェ・イン・パラレル
ミステリ大好き座敷童が事件を解決する話。自分の心が耐えられないからすべてをぶち壊してしまうことってあるよなあと思いながら読んだ。森と岩城の気持ちがどっちも分かるからなんかいい方法なかったのかなと考えてしまった。津々木は癒やし。
△青柳碧人/猫が大腸に棲みついた日
猫が大腸に?スゴイ設定だなと引き込まれかけた。パラレルワールドから謎のヤギ男が登場し、児童誘拐を解決するというとんでも話だった。食事のシーンはあったしオチにも絡んでいたけどあんまり食がテーマになっているように思えなかったし、結局何が言いたいのか分からなかった。
◎中西智佐乃/食い扶持
女性ならではの結婚、妊娠に対する友人への嫉妬の心理描写が鮮やか。年を取るにつれて変わっていく友人関係の解像度も高くてコレコレコレとなってしまった。やっぱり人間のドロドロした感情を読むのは最高。
△三木三奈/熊手
場面の転換が急で分かりにくい。
ゆえに読みにくい。短編小説でこの転換は必要があったのか?と思ってしまった。最後どうするつもりなのかだけ知りたくて読んだけど途中でやめててもおかしくなかった。
◯山内マリコ/お茶屋の娘
跡継ぎの婿がなかなか見つからない話かと思ったら想像の斜め上を行く展開で現代を感じた。これだね他の冊子になっているのは茶殻を使った紙だからだとかなんとか。嗅いでみるとうっすらお茶の匂いがする…。これは電子書籍じゃ再現できんなあ…。
◎村雲菜月/おいしい洗礼
まさに食がテーマの小説。自分の母親の料理が下手だからと友達の家でご飯を食べる話。自分の家と他人の家を比べて文句を言ってしまう子どもの時あるあるが残酷に迫ってくる。そして本音を言ってしまってもう後には引けない感じの描写とかが見事。