読書備忘録811号。
★★★。
剣持麗子さんシリーズの作者、新川さんのリーガルコメディでしょうか。
鎌倉にある縁切りの神様を祭る東衛寺に事務所を構える離婚専門弁護士、松岡紬が活躍する短編集。
東衛寺の山号が松岡山ということから来ている松ヶ岡川柳が各話のタイトルになっている。
「くやしくば尋ね
...続きを読む来て見よ松ヶ岡」
牧田聡美が生まれたばかりの息子、翔を抱えて走っている!どうやら夫から逃げているようだ。
捕まりそうになった時、そこは東衛寺だった。
松岡紬がこっちに来い!と寺に引き入れる。
そして紆余曲折の末、聡美は離婚を紬に依頼することになる。
税理士の夫、亮介はなんと聡美の女友達と浮気をしていた。
まあ、普通に離婚が成立。聡美は生きていくために、紬の弁護士事務所の事務で雇ってもらうことになった。
ということで、この第一話は聡美がメインキャラに組み込まれる為の話だったのかと。
「松ヶ岡男を見ると犬がほえ」
紬の事務所には専属の探偵、出雲啓介がいる。
探偵の手伝いをする聡美。なかなか使える助手!良いコンビ。笑
で、今回の依頼者は鷹田晃彦。妻が浮気をしているから証拠を掴んでくれと。
そして間違いなく浮気をしていた。啓介と聡美の活躍で証拠は揃った。
しかし、相手も旦那をDVで訴えていた。ん?
どっちもどっちというお話。
「星月夜あきれるほど見て縁が切れ」
妙齢の女性。離婚したいと相談に。
調べると夫はあと1年で定年退職。あと1年待てば財産分与の母数に退職金が組み込まれる。あと1年我慢すればと勧めるが頑なにスグに離婚したいと。
それには訳があった・・・。そして財産分与の母数は幸いなことに増えた。笑
「松ヶ岡寝そびれた夜のぐち競べ」
11歳の娘がいる女性が離婚の相談に。妻が浮気していると。ん?女性が相談者で妻が浮気していると。
同性婚。法律的に結婚は出来ていない。
娘は精子提供で産んだ。自分の子。
財産分与は出来ない。
妻の思い。自分の思い。娘の思い。
「またいびりたくば鎌倉までおいで」
聡美の元夫、亮介。
聡美との離婚、仕事のストレスなどでうつ病に。そして休職に追い込まれる。
亮介の代理人弁護士が、養育費の減額交渉に来た。そして聡美とよりを戻したいとも。
聡美は今更ながら思う。亮介はそんなに追い込まれていたのか?と。そうか亮介の立場になって考えたことは一度も無かった。どこまでも自分の立ち位置で不平不満を。ああ、どうしよう・・・。
しかし、実際には驚くべき種明かしが!笑
周辺の良いキャラ。
紬の父で、住職を引退した玄太郎。紬をこよなく可愛がる。
探偵の出雲啓介。紬が好き。でも紬は恋愛不感症。なのでそっと寄り添うだけ。寂しい。
紬が飼っている猫のトメ吉♀とハネ太♂。
縁には男女の縁以外にも、いろいろあると書いている。それを切るのが縁切りの神様だと。
なので、捻りを加えた縁を題材にそれを切ってくれたらもっと面白かったような気がしますが、結果、全部離婚関係でした。
これと言って特筆する点のない作品でした!