夢野久作のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
いわゆる三大奇書を『黒死館殺人事件』、『虚無への供物』と読み継いで最後に本書を手に取った。だからどうしても比較してしまうのかもしれないが本書は前二書に遠く及ばない。迷路の中を彷徨うような読み心地は確かに共通するのだが、『黒死館殺人事件』と『虚無への供物』はそこから抜け出て光射す場所に出たような読後感を残すのに対し、こちらは闇の中のまま終わりを迎える。そして、本書が徹頭徹尾追求している心理遺伝云々という似非学問は優生学と表裏一体であり差別の構造そのものだ。最後の方でようやく病院の外に主人公が出ていくのがわずかながらの救い。結局病院の中へと戻っていってしまうのだけれど。
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Posted by ブクログ
ナンダカ、切ナクテ、ウツクシイ──
そんな感想が、読み終えたあとに静かに残る一編。
ここ最近、夢野久作作品を続けて読んでいて思うのは、 彼の得意とする書簡体や独白文の小説には、少なからず語り手のナルシズムが滲み出る、ということだ。
それは作者自身の陶酔ではない。
あくまで、手紙を書いている登場人物の嗜好や自己陶酔であり、 だからこそ、語り手に高尚な人物や清廉な女性が選ばれると、 その文章で形作られる物語世界もまた、幻想的で妖艶な魅力を帯びてくる。
この感覚こそが、夢野久作という作家の人気の一端なのではないだろうか。 因縁や死といった題材を、陰惨でも恐怖でもなく、 どこか厳かで華美なものとして描き出すその趣向は、 谷崎潤一郎に近いものを感じさせる。
美貌のピアニストが舞台で吐血し、 女嫌いの名歌舞伎役者の兄がそれをそっと見守る。 故郷でも名高い別嬪嫁をはじめ、錚々たる人物たちが配された物語は、 まるで歌舞伎の舞台そのものを押絵に封じ込めたように、 ドラマチックなフィナーレへと進んでいく。
そしてラスト。これも、久作の得意技だ。
──その後のことは、誰も知らない。 真実は、闇の中へ。
映画タイタニックのラストのように、読み終わった後に
冷たい水の底に沈んでいくような感じがする。
同じ「押絵」を題材にした作品なら、 私は 江戸川乱歩の 『押絵と旅する男』の方が好みではある。 展開が、圧倒的に早い! -
Posted by ブクログ
ネタバレ漂っているムードは良さそうだなと思って読んでいるのに、毎回手の中をすり抜けていくような感じに、納得できなかったりよくわからないまま終わる。この中では『空を飛ぶパラソル』と『押絵の奇蹟』が良かったか。前者は、新聞記者の性のせいで間接的に関係者を殺してしまうこと、そしてそれが自分自身の心に重くのしかかっていくというのが良かったが、あまりしっかり納得できたわけではない。後者は世界観が好みだった。歌舞伎役者とピアニストの自分との悲恋?や、彼と自分が彼の父と自分の母の叶わぬ恋の想いによって生まれたということ、押絵をめぐる内容など昔の風俗が分かるので興味深くはあったが、そんなものか。乱歩の所感が最後に書いてあって、やはり同じような感想を抱いているなと思って多少納得した。
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Posted by ブクログ
短編集だが、それぞれの作品を読み終えてから、どういうことだったんだろうと首を傾げるものが多い。ただ、読んでいる間はどれも奇妙な情景が頭に浮かんでいる。その情景を楽しむ作品なのかなと思う。ホラー、猟奇、血の色、「ホホホ・・・」と笑う不気味な女性。夢野久作の奇妙な世界に飲み込まれた気がする。
『空を飛ぶパラソル』、『ココナットの実』、『キチガイ地獄』が気に入った。
『いなか、の、じけん』は数ページ程度のとても小さな話がいくつも続く。田舎で起こった奇妙な事件が、それぞれ場面の関連なく矢継ぎ早に出てくる。これもどういうスタンスで楽しめばいいのかと戸惑ったけど、この奇妙で後味の悪い感覚を楽しむのかなと思った。新感覚。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ1931〜1932年に福岡日々新聞(現:西日本新聞)に連載されていた夢野久作の数少ない長編(多分これとドグラ・マグラだけ)の1つとのことです。てっきり未完なのは連載中に亡くなったからだと思っていましたが、夢野久作の享年は1936年なので、単に執筆が滞ってただけなのかな?夢Qの中では今までで1番読みやすく、エンタメ性も抜群!
巻末解説では推理小説でもなければ怪奇小説でもなく、ましてや純文学でもない。何ものでもないことによって、何ものでもある、とかっこよく評されています。
私がどう読んだかというと究極のキャラ萌え小説として読みました。チイ(=犬神博士)がねぇ、ただひたすら愛しくて可愛い。角川のアニメ調の表紙は賛否両論あるだろうけど、私は好きです。この格好で男の子ですよ。夢Qは女装男子萌えコンテンツの特許申請していいと思う。
ちなみにチラっとですがギャンブル漫画のような展開もあります。『賭博破戒録カイジ』の班長戦のようなことを1930年代で既に先取りしていることに感動しました(笑) こちらも特許申請していいと思う。
チイの冒険活劇として始まり、最終的には筑豊炭田の利権争いに関する一件で物語は終わります。未完にしては結構キリが良いのですが、殺人事件の真相やキチガイ博士と呼ばれるようになった経緯など、他にも謎は多く残っているので、続きを誰か書いてください(泣)