夢野久作のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
とある島に流れ着いたた三本のビール瓶には、それぞれに手紙が入れられていた。
その手紙には、離れ島に漂流してしまった兄妹による、助けを待ちながら暮らす島での何年間にもわたる生活の様子と、懊悩が書かれていた——
〈ああ。何という恐ろしい責め苦でしょう。この美しい、楽しい島はもうスッカリ地獄です。〉
鼻血がでそうなほど耽美な話だった。十一歳の私と、七歳になったばかりの妹のアヤ子。
二人きりで漂流した先は、それでも食糧が豊かにあり、清らかな風と美しい花に彩られ、小鳥のさえずりを聴きながらのんびりと過ごせる島だった。
まるで楽園にいるかのような暮らしをしていたはずだったが、アヤ子が成長していくにしたがい、やがて二人の様子がおかしくなってくる。誰も止められない、美しくも悩ましい狂わんばかりの変容。
禁忌だとわかりながらどうすることもできない感情や衝動と、それを抑えんとする祈りの神々しさ、それらのすべてが残酷だった。
瓶に封じ込めて海に投げることしかできない兄の想い。第一の瓶、第二の瓶、第三の瓶のあんばいが見事だった。
ホノジロトヲジさんのイラストが繊細で儚げで、とにかくぴったり。夢野久作は読みたくてたまらないわりに食指が伸びないので、少女の本棚シリーズでこれからもたくさん刊行してくれることに期待! -
Posted by ブクログ
乙女の本棚シリーズから、夢野久作さんとねこ助さんのコラボ作品「ルルとミミ」です。先日運よく1番に借りることができました!!もう~嬉しいっ!…ということで、なんとも表題もイラストも可愛い感じで、期待も高く読んでみることに…。
水が黒く濁るとよくないことが起る予兆だと恐れられている湖があった…。湖のふもとで、兄のルルと妹のミミのふたりで生活していた…。ふたりの父母はすでに他界しているが、亡き父のあとをついで鐘造りになったルル…新しい鐘を丹精込めて作ったが、その鐘は鳴らなかった…。心を痛めたルルは湖に身をなげる…。一人ぼっちになったミミは、ルルに会いたいと湖のほとりで涙を流すと、睡蓮の声が「…明日の夜までに、湖の底につくような長い花の鎖をつくりなさい…それにつかまって湖の底の真珠の御殿へいらっしゃい…」と…。
悲しいエンディングが待ち受けていました…。なんとも切ない…言葉を失ってしまうほど…。そして、静寂な澄んだ湖だけが何事もなかったかのようにそこにある情景…それがとっても美しくて、しかもねこ助さんのイラスト…キレイすぎて、読後の余韻を誘います。 -
Posted by ブクログ
最近ブク友さんたちの間で話題になっている『乙女の本棚シリーズ』
色々気になる本がある中で私が選んだ一冊は『瓶詰地獄』
この漢字四文字の並びからして、もう期待しかありません。
浜辺に流れ着いた瓶詰。その中には無人島に取り残された兄妹からの手紙が。
このあらすじを読んで、私の脳内はすっかり『人魚とビスケット』になっていました。これ、絶対好きなヤツじゃーん、と。
しかし、ページを捲るとすぐに地獄の意味が分かります。分かった上でページを捲り続けなければいけません。
昭和三年に発表されたこの作品。文体や言葉使いなどが丁寧で上品な分、地獄の感じが増しますね。
そして、なんといってもこのイラストが苦しさをより伝えてきます。
このシリーズ、やり方が上手いですね。読書初心者にも不朽の名作に手を出したことのない人にも入り口になりやすい、イラストを眺めているだけでも溜め息、そしてなんといってもシリーズを揃えたくなります。オタクゴコロをそそりますよね。乙女の本棚ならぬ、オタクの本棚になりそう。
これは、ハマってしまいますね。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ乙女の本棚シリーズから、夢野久作さんとホノジロトヲジさんのコラボ作品「死後の恋」です。この二人のコラボ作品は「瓶詰地獄」がすごくよかったんで、期待も高く手にしました!
浦塩の町で一人の男性に話しかけられたところからはじまる…。その男性は、乞食のような身なりをしているが、貴族出身で元ロシア兵士のワーシカ・コルニコフ…コルニコフは、私の「死後の恋」について話を聞いたうえで、「私の運命を決定てください」と、自らの兵役時代について語りだす…。兵役時代に知り合ったリヤトニコフは、無二の親友とも呼べる存在、彼も貴族の出身だろうと会話を重ねる中で感じてた…。戦場に出向く前の晩、リヤトニコフはコルニコフに、家に伝わる宝石を見せ、家族は滅ぼされてしまったと告白する…。翌日戦火をくぐり抜けたコルニコフは、無残にも惨殺されたリヤトニコフの姿を目の当たりにし驚愕した…。彼ではなく、彼女??しかも、腹部には彼女が見せてくれた宝石が血にまみれてきらきらと輝き…。リヤトニコフはその宝石を取り出し、「死後の恋」に落ち、夜をも眠れないほどの生活を強いられている…と。ここまで話を聞かされた男性は、それを信じることはできず、コルニコフの前から姿を消す…。
結局ネタばれしてしまった…でも、結局この話を聞いてたのは誰??日本人じゃないの??ちょっと謎を残しつつ、またコルニコフはその後どうなったのかも、知りたくなっちゃったなぁ…全財産もらえるのなら、信じるって言っちゃいそうだな、私なら(^-^;) -
Posted by ブクログ
再読本
と言っても、読んだのはもうふた昔も前になる。
ただ、奥付を見たら改版初版のようだ。
もちろん違いなんて分かるはずもなく(笑
かなり久しぶりの再読なんだけど「人間腸詰」「木魂」はなんとなく読んだ記憶があった。
なんとなくのイメージとしての記憶だけど。
一番好きなのは「戦場」
とにかく引き込まれる。そして感情が忙しい。
迫力のリアリティで戦争を語ったかと思えば、ハインリヒとの神秘的な交流が始まる。と思ったらまた戦争の恐ろしい描写が始まり……と、展開が目まぐるしいけどとても面白い!
作品によっては思ってた以上に装飾過多な文章でとても驚いた。
(というか、作品ごとに語り口が違いすぎるのよね)
「髪切虫」のポエムは半分流し読んでしまったよ……ごめんね…… -
Posted by ブクログ
ネタバレ乞食のような青年の不可思議な話
話を聞き「死後の恋」と言うものが実際にあり得ると認めれば彼の財産を差し出すと言う
そして、彼の語りの最後で我々は衝撃の事実を知る
しかし、彼の話を聞いた後では彼の差し出す財産は受け取れなくなってしまう
受け取る気が失せてしまう・・・
人は目の前の欲望に囚われると、もっと大事な事が身近に現れていても気づく事ができなくなってしまう
そして、取り返しがつかなくなると今度はその過去に囚われてしまう
読み終わった後、悲哀感と言えばいいのか、喪失感と言えばいいのか、形容し難いジクジクとした感覚がじわじわと染み入ってくる -
Posted by ブクログ
乞食のような身なりをした貴族出身の元ロシア兵士の男に見初められ、死後の恋の話を聞かされることとなった、とある日本の軍人。話を信じてさえくれれば莫大な財産を授けるという。
男の名はワーシカ・コルニコフと言った。
そうして銀座のレストランで訥々と語られるのは、ワーシカが同じ分隊で知り合ったリヤトニコフとの、大正7年8月28日の午後9時から翌日の午前5時までに二人の間に起こった悲劇の話だった。
ワーシカによる不思議な語り口に、するするとその世界観に惹き込まれた。死後の恋、なんて素敵。
いや多分素敵と簡単に表現するのはすこしちがう。
恐怖驚き無念さ残忍さ美しさそれらがすべてがぐちゃぐちゃになって意味分かんなくなって発狂しかけるような、そんな極限状態の恍惚を感じた。
臓腑と血にまみれた宝石は、焔に照らされた森の中でどれほどキラキラと光り輝いていたんだろう。
誰でもいいから誰かにこの崇高と、深刻と、奇怪とを極めた「死後の恋」を肯定してもらいたい、運命を決定してもらいたい、そうしたらもう死ぬから、と、その想いが苦しい。大丈夫私が絶対に肯定してあげる。
はぁぁ……夢野久作、噂にはきいていたけれどやはり凄かった。読もう読もうと思っては全然読んでこなかった自分が恨めしい。
これからいっぱい読もう……ハラショ……。