夢野久作のレビュー一覧
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独白や語りは、語りの方向次第で物語の現実を構成できるといふところにあると思ふ。語る人間のことばが直接物語世界となる。他人にとつて、実際にあつたことかどうか決してわからないが、それを知る術はない。しかも、他人の解釈をはさむことのできない現実であることがほとんどである。ミステリアスやグロテスクといふのは、彼の作品で、他人の語りを斥け、ともすれば狭くなりがちな独白世界の解釈可能性を拡げる働きをしてゐるのではないか。
独白といふものは、世界事象を一方向からだけしか語れない。語り手以上の世界は望めない。だが、強烈すぎる神秘や猟奇といふものは、語り尽くされることを拒絶するものであるから、語り手のことばでは -
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夢野久作傑作選。ちくま文庫の全集から来た短編集。
死後の恋、瓶詰地獄(「瓶詰の地獄」改題)、人の顔、支那米の袋、あやかしの鼓、は以前、角川文庫で読んだが、強烈な印象のあった瓶詰地獄以外はすっかり忘れていた。読んでいくうちに思い出したのが、支那米の袋とあやかしの鼓。女性の語り口調が特有だが、昭和初期のこの時代だからだろうか。
どれも独特の不気味さ、後味の良くないもの、それでも癖になるようなじわじわくる話ばかりだが、少し違った印象を受けたのが「いなか、の、じけん」。はじめは、如何にも田舎で起きるような、しょうもない事件を集めたものか、というのが多かった。だが次第に、笑えない事件も出てくる。不気味な -
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数年振り、夢野久作ワールドを堪能(?)いたしました。
『氷の涯』『押絵の奇蹟』『あやかしの鼓』全3編。
全て、遺書(『押絵の奇蹟』は微妙ではあるが)の体をした書簡体。論文、記事等引用形式もあり、後の『ドグラマグラ』の片鱗も見え隠れするのも…。
個人的に気に入った順に、簡単に触れます。
イヤミス的な読後感の『押絵の奇蹟』。でも、弱ってる時ほど、とりとめのない話しに没頭したり、誰かにしたくなったりする、っていうのはわからないでもない。
ミステリー、ホラー、あやしさ(←あえて、平仮名で)、様々な要素二転三転する『あやかしの鼓』。解説にあるように、オーラス前が少し急ぎ足の感は確かに…。『瓶詰の地獄』を -
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この小説はかの“夜は短し歩けよ乙女”の作者森見登美彦さんのお勧めの文庫本6冊中の一冊です。
夢野久作という作家の名前は知っていましたが、作品のジャンルを怪奇小説?例えば横溝正史風のおどろおどろしい内容だと誤解していました。
得てして食わず嫌いの先入観が読書の幅を狭めるものです。
という訳で森見さんの勧めとあらばと手に取った小説は決して怪奇小説ではなかったのでした。どちらかというと、大衆向きの冒険小説、人間離れしたヒーローが活躍する近代小説というべきものですか。
そこに森見登美彦の小説の原型も見え隠れします。雰囲気が漂っていますね。
時代は日清戦争の前夜という設定。ところは福岡。主人公は出生 -
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夢Qにしては信じられないくらいポップ。
おカッパ頭の少女のなりをした踊りの名手、大道芸人の美少年チイは、風俗壊乱踊りを踊ってワイセツ罪でつかまるが、超能力ぶりを発揮して当局者をケムにまく。つづいていかさま賭博を見破ったり、右翼玄洋社の壮士と炭坑労働者とのケンカを押さえるなど八面六臂の大活躍。大衆芸能を抑圧しようとする体制の支配に抵抗する民衆のエネルギーを、北九州を舞台に、緻密で躍動的な文体で描き出す、夢野文学傑作の一つ。 -作品紹介
ポップやけど、世間や「大人」に対する違和感や憤りが見え隠れするので、「夢Qらしさ」はあると思う。
未完なのが惜しい。いろいろ想像するのも楽しいが、やっぱり著者