感情タグBEST3
Posted by ブクログ
独白や語りは、語りの方向次第で物語の現実を構成できるといふところにあると思ふ。語る人間のことばが直接物語世界となる。他人にとつて、実際にあつたことかどうか決してわからないが、それを知る術はない。しかも、他人の解釈をはさむことのできない現実であることがほとんどである。ミステリアスやグロテスクといふのは、彼の作品で、他人の語りを斥け、ともすれば狭くなりがちな独白世界の解釈可能性を拡げる働きをしてゐるのではないか。
独白といふものは、世界事象を一方向からだけしか語れない。語り手以上の世界は望めない。だが、強烈すぎる神秘や猟奇といふものは、語り尽くされることを拒絶するものであるから、語り手のことばでは決して尽くされない。語れば語るほど、その強烈な印象は遠のいてゆく。世界の深度が増すのである。
さらに、この独白世界に、時間や次元の効果を取り入れれば、より一層独白世界が複雑化する。狂気や夢といふものは、彼の独白世界の中にあつて、独白世界の多重性を保障する。他人の解釈や語りを拒絶しながらも、狂気や夢といふものは、語られる世界が一変するほどの力をもつてゐる。『キチガイ地獄』『狂人は笑ふ』はそうした世界の転変が物語世界の多重性を際立たせ、独特の神秘性・猟奇性の語り得ぬ印象を生み出してゐると思ふ。
精神や観念に対する畏敬と考へる力を持ち合はせてゐるからこそ、語り得ぬものに辿り着くことや夢と狂気の狭間にあつて神秘と猟奇の本質を描き出せることができる。『眼を開く』の語りは、彼のさうした一面を見せてくれる。
Posted by ブクログ
収録作品
・人間腸詰(昭和11年)
・焦点を合わせる(昭和7年)
・空を飛ぶパラソル(昭和4年)
・眼を開く(昭和10年)
・童貞(昭和5年)-旧角川版/初出稿
・一足お先に(昭和6年)
・狂人は笑う(昭和7年)
・キチガイ地獄(昭和7年)
・冗談に殺す(昭和8年)-「自白心理」加筆改定
・押絵の奇跡(昭和4年)
Posted by ブクログ
人生初夢野。
最初はちょっと読みにくく感じていたけど読み終わる頃には慣れて気にならなくなった。
タイトルがタイトルだったから割と覚悟してたけど読んでみるとそんなにグロくはなくてよかった。後半に行くにつれて段々面白くなってきて他のも読みたいと思う。
ただ、この本を読み始めてから夢見が悪いというか変な夢をよく見るようにはなった(笑)
Posted by ブクログ
比較的、手に入りやすい、角川ホラー文庫をお薦め。
夢野作品は、独特なカタカナつかい、白昼夢的、後味の悪さが良い。火星の女など、これ以外の作品も後味の悪さ炸裂。
グロイタイトルな上、かなりあれなので、読み手を選ぶ。
江戸川乱歩の「鎌倉ハム大安売り」と併せて読むと、肉がしばらく食べられなくなるコンボ炸裂。