宮沢賢治のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
「銀河鉄道の夜」「注文の多い料理店」に並ぶ賢治の代表作を本の題名とし、賢治の多様性を読者に知ってもらえるようさまざまな作品が収録されている。「やまなし」(あの有名なクラムボン、二疋の蟹)、貝の火(兎のホモイ)、フランドン農学校の豚、虔十公園林など特別長くないお話でも魅力があり印象に残る作品の数々に、どの話を読んでも学べることが多い。また、あとがき解説の中で天沢氏が記しているが、本書の作品構成は前半を動物たちの物語、後半を人物中心の物語であり、前半後半で違った雰囲気を味わえるのも本書の特長である。言葉は創作も多く、昔の言葉や方言も多いため、物語によってはある程度知識がないと若干読みづらい場面もあると思われるが、注解を見ながら読めるので安心して手に取りやすい。いつの時代になっても色褪せない賢治ワールドをすぐ読めるのはありがたいことだ。
-
Posted by ブクログ
宮沢賢治の短編集。
宮沢賢治を知るにはまず手にとってこの本を読めば良いのではないかと思います。
様々な短編があるので総合的に評価は難しく、今回は銀河鉄道の夜に絞り評価をつけた。
基本的には作者像を頭に浮かべ作品を読むことはしたくないのだが、この作品(銀河鉄道の夜、個人的には人間失格も)は宮沢賢治がどういう出立で、そして彼の死生観を浮かべながら読んだ、そしてそれがこの本を読む上で大事なのではないかと思う。
彼の死生観は銀河の様に広大で、あまりにも大きく、そして繊細である。
私の人生を通しての死生観からは想像しきれない部分ばかりで、どんな人も若いうちからでも今からでも読むに値する壮大な作品だと思う。
彼自身の宗教に対する捉え方や生が、本人の人生からしっかりと描かれている。その書き方は美しくぜひ読んでいただきたい。
個人的には巻末ベジタリアンも賢治らしく、好きです。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ死にゆく者の孤独と見送る者の孤独
気がつくと汽車の中にいたジョバンニにカンパネルラは云う、
『おっかさんは、ぼくを許して下さるだろうか』
川で溺れたザネリを助ける為に咄嗟に自分も飛び込んだカンパネルラは本当にいいことをしたら一番の幸だから、おっかさんも許して下さると考えつつも、ついこのような言葉を零す。自分の信条のため、自分が幸だと思っての行動だったとしてもそれがきちんと母にも分かってもらえると言い切れない、分かりきれない辛さやもどかしさを感じる。
ジョバンニも少女とばかり話すカンパネルラを横目に『あぁほんとうにどこまでも僕と一緒に行く人はいないだろうか』と呟く。
死(登場人物はそう分かってる訳ではないかもしれないが、)という未知の世界、天上に近づく時に側に誰かがいるとは限らない。自分が小学校の頃、祖父が末期癌で入院していたが、その時看病していた祖母の心の内はこれに近い感覚だったのではないかと思う。一緒に生きることは出来ても、一緒に死ぬことは出来ないんだなと、当たり前の事なのにとても悲しい事のように思えてきた。
妹を見送れなかった後悔
独自の宗教観、死生観を持つ賢治は妹の死の際、実家が強い浄土真宗の信仰者であった為信仰の違いから葬儀に参加できていない。妹を見送れなかったという後悔があったかもしれない。
銀河鉄道の夜の中では、途中ジョバンニが信神の違う青年達と出会い、別れる。その青年達の『ほんとうのたった一人の神さま』はジョバンニのそれと異なることは両者感じているはずだが、別れ際は名残惜しく、ジョバンニは声を上げて泣き出しそうになる。
もしかすると賢治は、信条の違いによって妹を見送れなかったという過去と向き合い、もしかすると信仰心に違いがあったとしても最期を見送ることが出来たのではないか、もしくは今なら出来ると考えているのではないかとこの描写から感じました。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ表題作は素晴らしい。
最後には、ジョバンニはいろいろなことで胸がいっぱいで何も云えず〜とあり、私も胸がいっぱい。
母親は病弱で、父親は長らく帰ってきておらず貧困、姉も話としてちらっと出てくるがあまり登場せず。ジョバンニは学校に通いつつ、新聞配達や活版の活字集めなどで働いており、授業や友達と遊ぶところまで気が回らない。疎遠になりつつも昔は仲が良かったカムパネルラ。
この設定からして気の毒な話だが、そこで夢を見て、さらには父親が戻ってくる知らせというハッピーエンド。しかしカムパネルラという友人を失った。
雁など食用に人気で、食べてみるかね、と足を引っ張って簡単に外し、食べてみればお菓子みたいな味であったり、
黄金と赤の美しい林檎を貰って食べてみれば、食べ終えて芯の部分などを落とすと灰色になったかと思えば消滅するなど、
明らかにこれは夢なんだろうなと思わせつつも、世界観が面白くて幻想的である。
全14編の、長さの異なる短編が収録されているが、いずれも表題作には及ばない。他の作品だけだと★3だが、表題作分で★4。 -
Posted by ブクログ
ネタバレまだ自分には早いのかも知らない。あるいは、遅いのかもしれない。そういう気分になる、不思議な小説であった。
ひかりの素足と銀河鉄道の夜が印象であった。主人公と近い存在であり、同じ体験をするのにも関わらず、弟の楢夫と友人のカムパネルラは恐らく死に、主人公たちは生き残る。
なんとも不条理であり、やりきれない感触が残る。美しく幻想的な表現が散りばめられているが、語られていることはかなり厳しく哀しい。
巻末の河合隼雄の解説によると、著者は露骨な因果応報を書かないように注意していたという。いわゆる説法や講話に陥るのを嫌ったようだ。人智の及ばない自然の摂理と、それを体験した人間の諦観や尊厳を描こうとしたのだろうか。
『こうすればうまく行く』『幸せになるためには』といった浅薄な言説が多く蔓延る中で、自然の不条理に直面した者たちの体験をただ描くこの短編集は、逆説的に、我々を正しく導く内容を最も多く持っていると感じた。
極めて抽象的な表現が続くことからも分かる通り、この作品の感想はうまく言語化できない。ただ、何か大切なものが描かれているように感じる。まだ人生経験が足りないのか、あるいは、タイミングを逸したのか。前者を信じて、宮沢賢治の心の中を少しずつ探っていきたい。 -
Posted by ブクログ
初めて、宮沢賢治の作品を読みました。
銀河鉄道の夜や風の又三郎等、代表作が入っていて、様々な物語が読めて、初めてだけど宮沢賢治のファンタジーの中に生と死が込められているのが伝わってきました。
この小説の中で、1番印象に残っているのが、ひかりの素足です。
山小屋に住んでいる父親から、街に住んでいる母の元に吹雪の中下山していく2人の兄弟のストーリーで、吹雪の中、目の前が見えなくなって迷い、賽の河原に行きつき、子供の2人が酷い仕打ちを受けて、ラストにはそこから抜け出すが、最後に2人が別れるのは凄く辛かったです。
この物語は、賢治と妹のトシとの兄妹愛が伝わる物語だなーと思いました。
ひかりの素足では、主人公の弟が仏に助けられて天国に旅立つので、賢治もトシが亡くなった時は、トシが天国に渡って幸せになって欲しいと願っているんだと思いました。
宮沢賢治の他の作品も読んでみたいと思いました。