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Posted by ブクログ
1990年頃、新潮文庫の宮沢賢治は、天沢退二郎編で全面リニューアル。童話は3冊。そのうち本書は、地方色が濃い作品で固めた一冊。
「注文の多い料理店」、「ざしき童子の話」、「茨海小学校」など19篇。私の推しの「楢ノ木大学士の野宿」も入っている。
読みどころは、巻末の井上ひさしのエッセイ「つめくさの道しるべ」。当時の岩手の田園風景がどんなだったかを書いている。しろつめくさ(クローバー)はヨーロッパ原産。アイルランドの国花、ヴァージニア州の州花でもある。江戸末期にオランダ経由で入ってきたが、本格的に栽培されるのは明治に入ってから。国家事業として痩せた土地に植えられ、牛や馬の飼料(いわゆる牧草)になった。なかでも土地の痩せた岩手県はその典型。賢治のまわりにあったのは、このしろつめくさの野原だった。彼の世界がなんだか西洋風なのも、これでうなずける。小岩井農場、イーハトーブ、フランドン農学校、イギリス海岸……。
さすが井上ひさし。宮沢賢治を語らせたら、とまらない。岩手・山形・宮城で幼少・少年期を過ごし、青年期には花巻の国立療養所の事務員もしていた。おまけに、日本の農業にもおそろしく詳しい(著書も数冊ある)。
(p.s. つめくさは「詰草」。江戸末期、オランダから将軍へガラス製の花瓶が贈られた。その時の梱包材として使われたのがこの草だったという。それで「詰草」。究極のトリビア。)
Posted by ブクログ
宮沢賢治氏の『銀貨鉄道の夜』『風の又三郎』と並ぶ代表作『注文の多い料理店』を収録した童話集。
ひと昔前は必ず教科書に掲載があった(日本を代表する、はひとまず置き)作家であるが、ひょっとするとこの詩的で寓話的な世界は大人の方が向いているのかもしれない。もちろん想像力豊かで柔軟性のある子どものほうが素直に作品を捉えられるが、現実と非現実の境目の、この非現実をこのように生き生きと描く難しさは年を重ねれば重ねるほど感じる。自身の故郷岩手県を「イーハトーブ」と称し、自然と大地とともに生き、日蓮宗の思想を根底に置き、口話や伝承の物語を紡ぐ稀代の語り部であったと感じる。
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