島崎藤村のレビュー一覧
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穢多である瀬川丑松の苦悩を描いた作品。父親から身分を隠すよう戒めを受けた丑松は身分を隠しながら長野で教員をしていた。丑松が部落出身であると言う噂が流れかつ師匠と仰いでいた穢多の猪子蓮太郎が襲われ死んでしまったことを受け自身の身分を打ち明けることとなる。題名である破戒とは父の戒めを破るということで、実際に生徒に身分を打ち明け得たであることを隠していたことを詫びる場面はとても悲哀に満ちた描写となっていた。今では部落差別なんてものはほぼ存在しないが明治頃は頻繁に起こっていたと考えると恐ろしいことである。出身だけで能力関係なく社会から追放される世の中が実際にあったんだなと。銀之助やお志保のように丑松の
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日が落ちる、野は風が強く吹く、林は鳴る、武蔵野は暮れんとする、寒さが身に沁しむ、その時は路をいそぎたまえ、顧みて思わず新月が枯林の梢の横に寒い光を放っているのを見る▼武蔵野を散歩する人は、道に迷うことを苦にしてはならない。どの路でも見るべく、聞くべく、感ずべき獲物がある。国木田独歩『武蔵野』1901
長野県で部落出身を隠して生きる教師の葛藤。出自を明かし、新天地の東京、テキサスに旅立つ。島崎藤村『破戒』1906
弟子の若い女の子を好きになるが、気持ちを打ち明けられない。女の子は去り、女の子の使っていた蒲団に顔をうずめて鳴く▼夫の苦悶煩悶には全く風馬牛で、子供さえ満足に育てればいいという自分 -
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「青木」として出てくるのが北村透谷をモデルにしていると言われています。この小説で北村透谷を知りました。
この作品の内容の感想はなんとも言いがたいのですが、学生時代に読んでも、社会人になってから読んでも、なかなか理解度が高まりません。でも、なぜか文章は読みやすく最後まで読みきることができます。それだけ、島崎藤村の文章は美しいのだろうと思います。また、タイトル「春」とつけたのが難しく感じます。どうしてこのタイトルなのか。作品からは春は訪れていないように思います。春が訪れるように祈ってなのか、それとも「青春」の青を取ったのか・・・。機会を見つけてもう一度考え直したいと思います。しかしながら、この作 -
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なんという苦悩だろうか。自分では選べない出自によって、人並みの生活が送れないほどの差別を必然的に受けることになるとは。
主人公は瀬川丑松、24歳、信州で小学校教師をしています。父親から「隠せ」と厳しく戒められてきたとおり、自分が被差別部落出身の穢多であることをひた隠しにしています。
入院していた病院で穢多であることが広まり追い出され、戻された下宿でも「不浄だ」と罵られ追い出される富豪の大日向や、「我は穢多なり」の一文で始まる『懺悔録』を書いた著述家猪子蓮太郎といった人々を目の当たりにし、丑松は〈同じ人間でありながら、自分らばかりそんなに軽蔑される道理がない、という烈しい意気込を持〉ち -
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ネタバレ書き出しがあまりに有名な、幕末から明治にかけての馬籠宿を舞台にした島崎藤村の小説。なんとなく森鷗外「舞姫」のような文体を想像していたので、意外と読みやすくてビックリした。さて、本作の主人公・青山半蔵は、本陣の当主であり、参覲交代や長州征伐などさまざまなできごとを通して、激動の時代を描き出している。幕末を舞台にした小説ではやれ坂本龍馬だのやれ勝海舟だのといった志士たちがとかく主人公になりがちであるから、フィクションとはいえ、こういう田舎のいち宿場町を通してこの時代を見つめるということが非常に新鮮で興味深かった。また、この時代に順応しようとする一方で、昔から信奉する国学に固執し、時代に抗おうともす
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ネタバレ書き出しがあまりに有名な、幕末から明治にかけての馬籠宿を舞台にした島崎藤村の小説。なんとなく森鷗外「舞姫」のような文体を想像していたので、意外と読みやすくてビックリした。さて、本作の主人公・青山半蔵は、本陣の当主であり、参覲交代や長州征伐などさまざまなできごとを通して、激動の時代を描き出している。幕末を舞台にした小説ではやれ坂本龍馬だのやれ勝海舟だのといった志士たちがとかく主人公になりがちであるから、フィクションとはいえ、こういう田舎のいち宿場町を通してこの時代を見つめるということが非常に新鮮で興味深かった。また、この時代に順応しようとする一方で、昔から信奉する国学に固執し、時代に抗おうともす
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ネタバレ書き出しがあまりに有名な、幕末から明治にかけての馬籠宿を舞台にした島崎藤村の小説。なんとなく森鷗外「舞姫」のような文体を想像していたので、意外と読みやすくてビックリした。さて、本作の主人公・青山半蔵は、本陣の当主であり、参覲交代や長州征伐などさまざまなできごとを通して、激動の時代を描き出している。幕末を舞台にした小説ではやれ坂本龍馬だのやれ勝海舟だのといった志士たちがとかく主人公になりがちであるから、フィクションとはいえ、こういう田舎のいち宿場町を通してこの時代を見つめるということが非常に新鮮で興味深かった。また、この時代に順応しようとする一方で、昔から信奉する国学に固執し、時代に抗おうともす
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ネタバレ書き出しがあまりに有名な、幕末から明治にかけての馬籠宿を舞台にした島崎藤村の小説。なんとなく森鷗外「舞姫」のような文体を想像していたので、意外と読みやすくてビックリした。さて、本作の主人公・青山半蔵は、本陣の当主であり、参覲交代や長州征伐などさまざまなできごとを通して、激動の時代を描き出している。幕末を舞台にした小説ではやれ坂本龍馬だのやれ勝海舟だのといった志士たちがとかく主人公になりがちであるから、フィクションとはいえ、こういう田舎のいち宿場町を通してこの時代を見つめるということが非常に新鮮で興味深かった。また、この時代に順応しようとする一方で、昔から信奉する国学に固執し、時代に抗おうともす
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幕府の大政奉還後、一気に時代は加速していく。明治政府の誕生や京都東京への遷都。長かった青山半蔵の物語もようやく大きな転換期を迎えることで、ページをめくる手は止まらなくなっていく。半蔵はひたすら人民のためを思い、改革への熱情を募らせて奔走するものの、彼の期待とは裏腹に地元の人間は冷ややかな態度ばかり取り続ける。しかし平田門人として半蔵は希望を捨てようとしない。恐ろしいほど変化していく時代の中で、彼は自らの信念を貫こうとするが…下巻へと物語は続くが、起こりうる悲劇を予感させながら上巻は終わる。
ようやく、ドラマがドラマらしくなって、読み応えもぐっと増え始めてきた。最終巻である下巻に期待。 -
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破戒
(和書)2009年02月12日 21:00
2002 岩波書店 島崎 藤村
以前から読もうと思っていて、でもなんだか怖く難解な本ではないかと思いながらなかなか読まずにいました。思っていたより読み易く内容的にも怖い話ではなかった。
「たとえいかなる目を見ようと、いかなる人に邂逅おうと決してそれとは自白けるな、一旦の憤怒悲哀にこの戒め忘れたら、その時こそ社会から捨てられたものと思え。」
この戒めを破ることを「破戒」といっている。主人公、丑松が破戒を決意し実践する場面では読んでいて目に涙を浮かべてしまいました。
ただ文学としてそれが思想・世界思想・文学として成立するには宗教の批判(マ -
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英語でniggerという言葉を読んでも、その言葉の持つインパクトは伝わってこないが、日本語では普通使われることない差別的な蔑称が堂々と出てくると、さすがにたじろいでしまう。アメリカ人がトムソーヤーとかハックルベリーフィンとか読むときに感じる、その中で使われている用語に対する抵抗感というのは、こんな感じなのかもしれない。
日本の自然主義文学の先陣を切った作品として、この作品が日本文学史に占める位置は高く、誰でもその名前は知っている。
知っているけれども、テーマが重たいので、これまで敬遠してきた。
読んでみると、それほど難しい話ではなく、最初は単語にとまどうけれども、そんなに抵抗感なくすらすら -
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いまでは 藤村の本を読むひとは少ないと思う
文学の研究者か文学専攻の学生か?わたしみたいなオールド文学少女かが読む
むかし教科書に載っていた『千曲川のスケッチ』や詩に魅せられ
たとえばこれ
初戀
まだあげ初そめし前髮まへがみの
林檎のもとに見えしとき
前にさしたる花櫛はなぐしの
花ある君と思ひけり
やさしく白き手をのべて
林檎をわれにあたへしは
薄紅うすくれなゐの秋の實みに
人こひ初そめしはじめなり
わがこゝろなきためいきの
その髮の毛にかゝるとき
たのしき戀の盃さかづきを
君が情なさけに酌みしかな
林檎畑の樹この下したに
おのづからなる細道ほそみちは
誰たが踏みそめし -
Posted by ブクログ
全然日本文学を読んでこなかったことに反省し、様々な日本の文豪の作品を読んでみよう!運動を自分の中でしています。
これは記念すべき2作目で、藤村さんは『破戒』のイメージしかなかったのですが、タイトルにうんと惹かれてしまい手に取ってみました( ´ー`)今桜がとてもきれい~
途中まで何と綺麗な自然描写、そしてたまに見える鬱屈とした主人公の心情..に感動して、一日一章ずつぐらいちょびちょび読み進めていったけど、途中から「うん、うん、うん..うん..!?」と、藤村さんの文体に着いていけなくなってしまい、何度読み返してもあまり頭に入らなくなってしまいました。最後まで雑な読みになってしまったのが何とも悔し