島崎藤村のレビュー一覧
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主人公の丑松は、生徒や教師仲間からも信頼される20代の学校教師である。しかし、周りからは常に考え事をしていて何かに苦悶してるかのようにも思われていた。その苦悶の原因は、丑松の生まれは部落であり、彼自身がその事実について世間から隠し続けてきたことであった。小説の中には、穢多という今では差別用語とされている直接的表現が何度も出てくる。他にも、新平民、賤民などといった言葉が平然と使われており、差別を是としていた当時の時代背景と空気感が垣間見え21世紀に生きる我々にとってはショッキングですらある。
部落民として苦悩とともに生きてきた丑松の父は、どんなことがあろうとも自分の身分を他人に打ち明けてはなら -
ネタバレ 購入済み
20世紀を代表する歴史小説と言えます。 候文、漢詩、和歌等現代人には判読不慣れな文体が随所に出てきますが、維新前後の日本の状況に関し詳細に書かれた内容は他に例を見ません。 現代歴史作家の著作を読まれる前に是非一読したい名作です。 西郷隆盛、坂本龍馬、新選組等々が単に維新のごく一部でしかないことに気が付くはずです。 島崎藤村は正に文豪です。
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ネタバレただただ「根が深い」という感覚を覚えた。
同和問題は西日本で主に語られる、という印象でいたが、舞台は長野である。
主人公の瀬川丑松が段々と追い詰められる様は読み応えがあった。「川の向こう・・・」という表現が、本当に出てきた表現であり、戦後であれそれは存在した表現であるそうだ。
そして、彼が独白するシーンの後、生徒が校長室に直談判をしにいく、その様も感動的であった。
最終的に彼は厄介払いのように扱われてしまう。
同和問題は今にも尾を引く問題である。大阪符豊中市の森友学園の場所は、関西では公然の秘密のように語られる場所であるそうだ。今後どうなっていくのか。問いかけられている気がした。 -
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島崎藤村は文豪として知られるが、読書家の知人を見渡しても夏目漱石などと比べあまり読まれていないという印象を受ける。私自身島村には馴染みはなかったが、書店でふと目に止まりあらすじを見たところ引き込まれ、全4巻一気に読んでしまった。私が読んだ歴史小説の中で傑作中の傑作である。
夜明け前の主人公のモデルは平田篤胤の国学に心酔する宿場町の庄屋であり、「古き良き時代」を取り戻そうという志を胸に秘める。それはすなわち、武家政権を倒し古事記の時代にあるような王政を復古させるというものだった。一介の庄屋という高くはない身分の主人公であったが、勤皇の志士に便宜を図ったり草莽の志士たちが集う会合に出席したりして -
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島崎藤村は文豪として知られるが、読書家の知人を見渡しても夏目漱石などと比べあまり読まれていないという印象を受ける。私自身島村には馴染みはなかったが、書店でふと目に止まりあらすじを見たところ引き込まれ、全4巻一気に読んでしまった。私が読んだ歴史小説の中で傑作中の傑作である。
夜明け前の主人公のモデルは平田篤胤の国学に心酔する宿場町の庄屋であり、「古き良き時代」を取り戻そうという志を胸に秘める。それはすなわち、武家政権を倒し古事記の時代にあるような王政を復古させるというものだった。一介の庄屋という高くはない身分の主人公であったが、勤皇の志士に便宜を図ったり草莽の志士たちが集う会合に出席したりして -
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島崎藤村は文豪として知られるが、読書家の知人を見渡しても夏目漱石などと比べあまり読まれていないという印象を受ける。私自身島村には馴染みはなかったが、書店でふと目に止まりあらすじを見たところ引き込まれ、全4巻一気に読んでしまった。私が読んだ歴史小説の中で傑作中の傑作である。
夜明け前の主人公のモデルは平田篤胤の国学に心酔する宿場町の庄屋であり、「古き良き時代」を取り戻そうという志を胸に秘める。それはすなわち、武家政権を倒し古事記の時代にあるような王政を復古させるというものだった。一介の庄屋という高くはない身分の主人公であったが、勤皇の志士に便宜を図ったり草莽の志士たちが集う会合に出席したりして -
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島崎藤村は文豪として知られるが、読書家の知人を見渡しても夏目漱石などと比べあまり読まれていないという印象を受ける。私自身島村には馴染みはなかったが、書店でふと目に止まりあらすじを見たところ引き込まれ、全4巻一気に読んでしまった。私が読んだ歴史小説の中で傑作中の傑作である。
夜明け前の主人公のモデルは平田篤胤の国学に心酔する宿場町の庄屋であり、「古き良き時代」を取り戻そうという志を胸に秘める。それはすなわち、武家政権を倒し古事記の時代にあるような王政を復古させるというものだった。一介の庄屋という高くはない身分の主人公であったが、勤皇の志士に便宜を図ったり草莽の志士たちが集う会合に出席したりして -
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島崎藤村の『破戒』は明治39年(1906)刊行。
士農工商の封建社会の身分制度が、「解放令」(1871)によって崩壊するかに見えた時代に書かれた作品で、自然主義文学の先駆と呼ばれる。しかし、この法令によってそれまでの身分社会が急速に変わることはなく、主人公の丑松をはじめとした苦しむ人々が登場する。結局、人の中に刷り込まれた差別意識は簡単に変わらない。
自信が穢多であることを床に顔をつけて告白する丑松。彼が穢多であることと、彼自身の人物性との間に穢多であることがどう関係するというのか。事実、彼は学校では生徒から絶大な人望を寄せられている。銀之助、お志保など、彼の素性を知ってなお彼を支えようとす -
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木曽路、馬籠本陣の主人青山吉左衛門の子、青山半蔵は、平田派の国学に心を傾け、平田鉄胤の門人となる。黒船来航により日本の有り様が大きく揺れ動き、尊王攘夷の気運が高まる中で、青山半蔵は自らのあり方や日本の国のあり方に思いを致す。
日本という国が、外からの圧力もあり、変革を不可避とされた状況の中で、平田派国学を理想に掲げた主人公青山半蔵は、どのように考え、生きようとするのだろうか。
時代は移り、明治維新を遠くすぎた現代もまた、変革を余儀なくされている状況に変わりはない。一市民として、理想とはなにか、時代の変化の中で個人の生き方はどうあるべきなのか。単なる過去ではなく、そこから何か普遍的に語りかけて -
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ネタバレ士農工商穢多非人.
明治以降に定められた身分制度に焦点を当てた,
文学界ではあまり類を見ない作品.
初めに感じたのが,文章の平易さと読みやすさである.改訂版で
あるから,多くの歴史的仮名づかいが現代仮名づかいへと変更
されていることは容易に想像できる.それが原因かは定かではないが,
同時期に発表された漱石の作品と比べるとはるかに理解しやすい.
また,共に自然主義を確立させた花袋よりも好印象を持った.
急に波風が立つことはなく,ストーリーは緩やかに進む.
自然主義たる威厳を十二分に示している.ここで,先に述べた
文章の平易さが潤滑油となり,理解の困難から来る退屈を決して
味わうことはない.