島崎藤村のレビュー一覧

  • 破戒(新潮文庫)

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    これは傑作だ……。人の醜さも美しさも全て入っている。とてつもなく残酷な世界だけれど、それでもきっと誰かが見てくれているから、前を向いて歩いていけるはずだと、そう強く信じ願う作品だ。そして今も、文学の必要性を示し続ける作品だ。
    丑松は周りの人々をしっかり見ていた。そんな誠実な彼を周りの人々も見ていた。それが、差別を乗り越えて絆となった。今の社会も、この作品の時代と何も変わっていない。差別は吹き荒れ、人は権力に惑わされ、苦しむゆえに他者を傷つけてしまう人もいる。そんな社会で、この作品の彼らのように、私は誰かを見ることができるだろうか。前を向くことができるだろうか。

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    2025年11月02日
  • 破戒(新潮文庫)

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     土屋君にまさか丑松が穢多ではあるまいとバレそうになったシーンでは本当にヒヤヒヤして、何となく好きだった土屋君を嫌いそうにもなったが、ラストでの土屋君の行動は胸を衝いた。
     しっかり二度涙を流す程感動したし、いちいち丑松と一緒に心を動かしたりするくらい感情移入する良作だった。風景描写も精緻で景色が頭に浮かんできて綺麗だった。読んでよかった

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    2025年09月11日
  • 破戒(新潮文庫)

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     感涙必至!また、日本文学史を少しでも意識するなら、社会性を問うている斬新さから、完全に必読書。

     『破戒』が問うている世界は、日本社会そのものの危うさ。関東大震災の時に韓国人を虐殺していることや現代のsnsにおいても人が「これが正義だ!」と思った瞬間、一歩踏み込んで容易に人を傷つけること。人々の「安心」は、隠された攻撃なのかもしれない。
     重要なことは、それらと向き合う人々から「人間性」が表出すること。別の世界を目指すことや苦しんだからこそ平然と向き合える新しい世界。たしかに、私たちはそうやって生き延びてきた側面がある。
     大江健三郎の『個人的な体験』のラストにも通じる生の可能性は必見。

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    2025年09月11日
  • 破戒(新潮文庫)

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    テーマは重いですが、情景描写のゆったりどっしりした感じと、主人公の内面の焦燥感がそのまま社会問題にも当てはまってるようで感慨深い。信州の冬は体験したことないのでぜひしてみたい。

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    2025年03月31日
  • 破戒(新潮文庫)

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    ネタバレ

    森達也氏の「いのちの食べかた」で知り、読んでみたいと思い3年ほど過ぎていた。「破戒」は差別的用語を他の言葉に言い換えた改訂版が出版された過去がある。
     
     「『破戒』初版本はそれがなまの形でなされる限り、差別を温存させ、挑発しようとする日本のマス・コミュニケーションに一つの大きな援助をさしのべることになる」

    この一文に現代のマスコミを取り巻く諸問題を思い出し、歴史を繰り返しているのだと実感を持った。

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    2025年03月10日
  • 夜明け前 第一部(上)(新潮文庫)

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    私は好きだ。こういう感覚になることは少ないが、まるで自分も幕末にタイムスリップしたかのような感覚になる。あと3巻どうなっていくのか楽しみ。

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    2025年03月08日
  • 破戒(新潮文庫)

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    ネタバレ

    丑松が自分の出自を告白した後の展開が気になって読んでみました。
    まさか宿屋から放逐された大日向が最後に丑松に絡んでくるとは思っていなかった。
    最後の展開も、身分に関わらず慕ってくれる丑松の生徒やお志保、身分が穢多であれ友達思いの銀之助たちのお陰で、丑松が報われていて良かった。

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    2024年08月25日
  • 破戒(新潮文庫)

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    ネタバレ

    丑松の苦悩と葛藤が伝わり今まで読んだ本の中で1番、一度本を読む手を止めて考えたり、悩んだりする時間が多かった。
    丑松が生徒や銀之助に自分の身分を打ち明ける場面は彼の覚悟が伝わりとても心に響いた。
    最後はうまい事いきすぎている気もするけど、個人的にはそれくらい報われてもいい程丑松は思い悩んで苦しんできたので、丑松良かったね!!って感じでした。
    日本の歴史をまた差別について知る上でも、人生で一度は読むべき一冊だと思う。

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    2024年07月17日
  • 破戒(新潮文庫)

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    被差別部落問題の本は、他に“橋のない川”を読んだことがある。それとは違いこちらは、当事者の丑松のカミングアウトまでの長い長い心のうちをあの手この手で描いている。

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    2024年07月04日
  • 破戒(新潮文庫)

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    2024.04.07〜05.09
    情景描写が美しい。「青白い闇」なんて言葉、素敵だ。丑松の辛さ、絶望感が手に取るようにわかる。
    当時の生きづらい世の中を、丑松を通して描かれている。が、生きづらい世の中は、今でも変わらない。対象が身分ではな無くなっただけだ。

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    2024年05月09日
  • 破戒(新潮文庫)

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    内面描写が丁寧すぎて、ただただ丑松に感情移入してしまった。それでいてハラハラドキドキ感もあり、全く飽きさせない展開の連続で、スラスラ読めてしまった。日本人として、語り継がないといけない作品。忘れることができないと思う。

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    2023年12月19日
  • 夜明け前 第一部(上)(新潮文庫)

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    やっと、この文章にたどり着いた。 この本を手に取った動機はただ一つ、如何にして青山半蔵は座敷牢へと至ったかだ。 読まねばならぬ本は数あれど、やはり心の命ずるところに従おう。 ディランが、濁声でがなりたてている。 ``And it’s a hard, and it’s a hard, it’s a hard, and it’s a hard / And it’s a hard rain’s a-gonna fall '' (「激しい雨が降る」詩:ボブ・ディラン)

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    2023年12月17日
  • 春(新潮文庫)

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    良かった。島崎藤村の自伝的小説となっており、彼や彼の友達の生きる事への「苦しみ」「葛藤」が、著者のシンプルながら刺さる表現力によって描かれていて、悩める現代人にも共感出来る人は多いと思う、そんな作品です。
    因みに、「春」の序章的作品である「桜の実の熟する時」を先に読むのもお薦めしておきます。

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    2023年11月24日
  • 破戒(新潮文庫)

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    大満足の一冊。穢多の家系に生まれた主人公の物語で、差別問題に目を向けた作品ともとれるが、個人的には、主人公の豊かな感情と揺れ動く心の模様を巧みに表現している作者の文章力そのものに非常に魅力を感じた。
    また舞台である信州の情景などが、よく表現されており聖地巡りをしたくなる一冊。

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    2023年10月31日
  • 破戒(新潮文庫)

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    ラストシーンが良かった。
    主人公は自分が穢多であることを気にしていたし、実際ひどく差別する人間もいた。でも、学生たちや友人など、主人公を一人の人間として慕う人たちも、実は主人公の周りにたくさんいた。
    穢多という言葉は廃れても、色々な差別が今の時代にも残っている。それをひしひしと感じる今、いろいろと考えさせられる小説だった。

    また、「苦しんで戦ってそれで女になるように生まれてきた…人の知らない悲しい日もあるかわりに人の知らない楽しい日もある」という言葉が心に残った。

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    2023年08月25日
  • 破戒(新潮文庫)

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    【読もうと思った理由】
    直近で読んだ三木清氏の「人生論ノート」の感想欄(雑感)にも書いたが、本書を読もうと思ったきっかけは、ロシア人YouTuberのAlyona(アリョーナ)氏の「これって渋い?好きな日本文学作品について語ってみた」の動画がきっかけだ。その動画では、島崎藤村氏の「破戒」以外の日本文学作品も、いくつか紹介してくれているが、僕が一番興味関心を惹かれたのは「破戒」だった。またAlyona氏が、別の動画で紹介してくれていたが、ロシアでは、文学と国語(現代文)は、そもそも教科(科目)が別々に別れているとのこと。日本だと現代文の中で文学作品も学ぶが、ロシアでは、文学は独立した教科になって

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    2023年07月20日
  • 夜明け前 第二部(下)(新潮文庫)

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    それまでの3冊は歴史記述もふんだんで、情景も事細やかに描けていたが、個人的には一人の人間を十分に描ききれていない気がしていたが、最終巻では主人公半蔵の葛藤が分かりやすいほど根深く描かれ、ドラマとして面白く感じることができた。
    本来ならばもっと奥ゆかしい表現や慎ましい心理描写に心を砕くことが大事なのだろうが、機微や些細な変化に対してあまり感性がないせいで、こうした大きな展開がなければ作品を楽しめないのは、昔からの性格と言っていいかもしれない。これは読者であるじぶんの欠陥かもしれないが、とりあえず読破には成功し、終章は見事なほど素早く一気に読み通してしまった。
    100年前の小説であるが、文学的価値

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    2022年09月09日
  • 夜明け前 第二部下

    購入済み

    日本の未来、新発見

    ついに読み終わりました。
    あらすじを知っているから主人公の破滅がいつかいつかとハラハラしながら読んでいたが、かなり終盤に、それも突然にやってきて、驚きました。
    何かに一所懸命になっても、まわりに評価されずに悶々と過ごすことは、誰にでも経験があること。とはいえ、こんな道しか残されていなかったのか、寂しい読後感です。

    それでもヒトでいる限り、苦労と楽しみは必ずあります。先憂後楽という言葉が身に詰まります。

    #ドキドキハラハラ #切ない #深い

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    2022年08月17日
  • 夜明け前 第二部上

    購入済み

    日本の暗部、再発見

    明治時代になって万民が改革を受け入れていたようにテレビや学校では教えているけれど、やっぱり一般人は易々と受け入れられないよね。
    どんな立派な思想よりも、今の自分の周りの生活がどんなに楽になるか、目に見えて変わらないと信じられない。それがしっかりと描写されている。改革を受け入れる覚悟をした主人公にはかわいそうだけれど。

    #怖い #タメになる #感動する

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    2022年08月17日
  • 夜明け前 第一部下

    購入済み

    日本の歴史、新発見

    江戸時代は封建制度が厳しくて、権力者による略奪や横暴に民衆が振り回されている印象が強かったけれど、待遇を改善するために上申する描写があって、驚きです。

    江戸時代の文化や智慧の礎があって、今の私たちの生活があることに感謝です。

    #深い #感動する #タメになる

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    2022年07月07日