非常に良くできたストーリーだと思った。
警察は国民のDNAを登録するシステムを開発し、事件が発生した際には、そのシステムから犯人の特徴や顔、親族まで特定できる。そんなシステムを作ったのは、サヴァン症候群のような天才的頭脳を持つ蓼科早樹。
しかし、そのシステムには裏があった。官僚や政治家など、特定の上級国民が万が一犯罪を犯した場合は、別のデータが表示され、システムには該当者なしと表示される、通常「プラチナデータ」。蓼科早樹はそんなシステムを作ってしまったことを後悔し、プラチナデータを見つけ出す新たなシステム「モーグル」を開発するが、完成直後に殺害される。
その事件を解決しようと奮闘したのは、システム開発に携わった、主任解析員の神楽龍平。彼には裏の顔がある。それは、リュウという第二の人格。幼少期、父親の自殺を目撃してから、神楽にはリュウという第二人格が生まれる。
蓼科早樹が殺害された際、現場に落ちていた毛髪を解析しようとした神楽は、その持ち主が自分であることを知り、第二人格のリュウが殺害をしたのかと考える。その際、海外からDNA研究にきた白鳥に救われた、当面逃亡を続けながら事件を解決する。
逃亡中、スズランという少女が時折訪れる。彼女はリュウの恋人だという。逃亡中の新幹線で隣に座り、弁当を二つ注文していたが、実はスズランは神楽の幻想の人物で、存在していなかったことが、弁当の販売員の供述で明らかになる。
スズランは、当初リュウが描き出した人物だったが、その正体は蓼科早樹であった。そして、事件解決後、リュウは最後にスズランの絵を描き、その人格は消え果てる。神楽は、逃亡中に出会った山奥で暮らす人物のもとで、亡き父が生業としていた陶芸をしながら生活するシーンで物語は終わる。
また、当初から事件の捜査に関わっていた捜査一課の刑事である浅間は、事件が進むにつれ、捜査から外されるようになる。これは、プラチナデータが絡むことを知った上層部が情報漏洩を防ぐために、関係者以外を排除して操作を進めたためだ。それでも事件の全容を明らかにしようと奮闘した浅間は、途中から神楽と手を組み、この事件の全容を暴く。
そして、蓼科兄弟や白鳥、その他一般人を殺害した犯人は、脳神経科の教授であり、蓼科兄弟にプラチナデータの開発を依頼した水上教授であった。水上は神楽の担当医でもあり、最も信頼していた人物であった。
政治や官僚、警察の上層部の作るシステムは、国民を守るふりをしながら、自分たちにとっては都合の良いシステムであったという展開は、現代の政治システムへの皮肉のようで、面白いストーリーであった。