あらすじ
あらゆる悩み相談に乗る不思議な雑貨店。そこに集う、人生最大の岐路に立った人たち。過去と現在を超えて温かな手紙交換がはじまる……張り巡らされた伏線が奇跡のように繋がり合う、心ふるわす物語。
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Posted by ブクログ
実は私、東野圭吾作品はちょっと苦手だったんです。
東野作品ではときおり、人間の内面がひどく醜く描かれていて、そいつらにまったく共感できずに、物語にのめり込めないことがあったので。
名作『容疑者Xの献身』ですら、物語は非常に面白かったものの、ヒロインの行動や心理に共感がもてませんでした。
けれど、「ナミヤ雑貨店の奇蹟」は違いました。
みんながみんな、心が優しい人達なんです。読み始めたら夢中になり、もう止まりませんでした。最後まで一気に読んでしまった。
物語は同じ養護施設で育った敦也、翔太、幸平がとある事情から空き巣に入り、逃亡用の車が故障したため、夜があけるまで空き家に身をひそめることに。
そこへ、空き家のはずの「ナミヤ雑貨店」に、悩み相談の手紙が入れられる。
興味本位で開封した3人は、ナミヤ雑貨店の店主がかつて、悩み相談をおこなっていたことを知り、相談者の悩みに回答を書くことにする、すると不思議な出来事が起こり…。
読んでいく内に、過去と現在の人々と出来事が敦也たち3人と、相談者、ナミヤ雑貨店雑貨店の店主たち、それぞれの糸が徐々につながるのがわかってきます。
その謎解き部分が予想もつかない展開で、ページをめくる手が止まりませんでした。
Posted by ブクログ
面白かった。最終的には登場人物たちが児童養護施設で繋がって、その伏線回収が気持ちよかった。自分も悩みを持った時、こういう第三者に打ち明けられるといいなと思った。書かれていた通り、みんな、悩みに対する答えは持っていて、それを誰かに少しだけ背中を押して欲しいだけなのかもしれない。
Posted by ブクログ
過去と未来が手紙で繋がる。
そんな奇跡の一夜が織りなす感動ドラマ。
些細な悩みから特別な悩みまで真剣に向き合ってくれる、寄り添った気持ちが嬉しくて救われて。
みんなが幸せな結末になってくれる温かいエピソードばかりだった。
みんなの手紙が伏線回収にもっていく繋がり方がすごいし、ほとんどが丸光園と繋がっている。
これは亡くなった館長とナミヤさんが編み出した奇跡なんだろう。
最後の最後に鳥肌と目頭が熱くなりました、、。
Posted by ブクログ
悩み相談を手書きの手紙でやりとりするというのもいいし、それを店先でやるアナログさ、さらに謎の力で時を超えてやりとりするというファンタジー要素。
読み進めていくと各登場人物にも繋がりがあり、そんなとこまで繋げてきたかと、相関図が凄い。
中でもやはり、手紙のお礼としてわざと嘘をつく場面があるのだが、そこまでの流れが凄くグッときた。そりゃあ嘘をつくしかないよ。
Posted by ブクログ
現在と過去、場所、人と人とが繋がり、導かれていく構成、一気読みしました。
牛乳箱でお返事って何かいいですね。
東野圭吾作品、実は何となく敬遠していたんです。いわゆる食わず嫌いで。
今年は職場の両隣が東野圭吾ファン。初めてでどれから読むか迷っていたところ、私の読書歴をそれなりに知っている右隣の同僚にこの作品をおすすめされました。ちなみに、ChatGPTにも読書歴を簡単に伝えて、初めての東野圭吾作品を聞いたら、この作品を勧められました。
他のも読みたいですね。
Posted by ブクログ
東野圭吾さんの作品は、これがはじめて。
短編集かと思ったら、それぞれの章で完結してるけど、全部繋がっていて、伏線が回収されていく感じ。
ナミヤ雑貨店、丸光園を巡る人と人の繋がりが温かい。
涙が出てしまいました。
東野圭吾さん、もっと難解なミステリー作家だと思ってました。まあっ、他の作品を読んでないのでわかりませんが、他の作品も読みたい。
Posted by ブクログ
追悼の意を込めて初めての東野作品。
過去と未来をつなぐほんのりファンタジーな物語。話がどんどん繋がっていくのが気持ち良く心地良い読後感。次は本格ミステリーを読んでみたい!
Posted by ブクログ
最初、短編集かと思った。それぐらい読みやすかった。すべての話が繋がっていて、すべてが伏線であった。
途中、何回も泣いたり鳥肌が立ったりした。最後の1ページ、ものすごい感動の波がきた。ブワッと。
ミステリ好きだが、こういうのもいいなと気付かされた。東野圭吾の凄さが分かった1冊だった。素晴らしいの一言。
Posted by ブクログ
序盤からぐいぐい惹き込まれるめちゃくちゃ面白い作品でした。あり得ないような不思議な世界なんだけど、出てくる登場人物の反応は現実的なのでそのギャップがいい。あとみんな手紙の文面が妙に文学的に感じてそれも面白かったです。
最初は子供向けのファンタジーかなと思っていたけど、ファンタジーはファンタジーでもどの年代が読んでも共感する物語でもありました。時系列が前後するところは多少複雑ではあるけど、そこは東野さんの小説だから理解しやすい。伏線回収が気持ち良すぎて、さらに心温まるラストは美しすぎてため息が洩れました。
またこの映画版の主題歌Rebornはこの物語の為に書き下ろされた山下達郎の名曲で、この曲をセリが歌うシーンには号泣でした。
Posted by ブクログ
時空を超えた手紙のやり取りから紡がれる、交錯する人々のめくるめく連環のさまに最後まで目が離せない珠玉の一冊。
【あらすじ】
空き巣の逃走手段に失敗しポンコツ盗難車を乗り捨てた3人組は、夜をやり過ごすためとある空き家に忍び込む。空き家の名は『ナミヤ雑貨店』。かつて悩み相談を受けると評判で、雑誌でも取り上げられた。悩みは封書でシャッターの郵便受けで受けつけ、翌朝までに裏口の牛乳箱に返事を入れるのだとか。が、それも40年以上前のこと。ところが、空き巣三人組の目の前で、そのシャッターの郵便受けに手紙が届いたのだ。内容は、オリンピック出場の夢をとるか、胃がんで余命いくばくもない恋人との時間をとるかの二択に悩んでいるとのこと。3人はそれぞれ知恵を絞って回答を書き上げ、試しに牛乳箱に入れてみると、途端に相談者の次の封書が届いた! こうして何度かやり取りを繰り返していくうちに、3人は、どうやら手紙の主は30年以上前の人物らしいと気づく。彼女の目指すモスクワ・オリンピックは政治的理由で日本がボイコットするものと知っていた3人は、彼女に対して懸命に、夢はいいから愛する彼との最期の時間をとれ、とアドバイスするが、聞き入れない。結局、敦也の腹立ち紛れの手紙に対し、最後に届いた彼女の手紙は、溢れんばかりの感謝だった。翔太、幸平は、生まれて初めて人の役に立てた実感に素直に喜んでいたが、一番立腹していた敦也にとってもそれはまんざらでもない体験だった。
松岡克郎は魚屋の一人息子だが、ミュージシャンを夢見て大学も中退。両親とは半ば絶縁状態にあったが、祖母の葬式をきっかけに実家に戻る。葬儀後、父が倒れ、魚屋を継ぐべきか真剣に悩み、『ナミヤ雑貨店』に悩み相談を投書してみるも、けんもほろろな回答を得て、ひどく立腹する。そこで再度、自分の真剣な気持ちを投書するが、相変わらず、才能ないからさっさと魚屋になれとの回答。克郎はそこで真摯な気持ちとなって自らを振り返り、夢を諦めるためにもナミヤさんに直に会いたいと書き記す。投稿する前に、シャッターの前で自作オリジナルの曲をハーモニカで演奏する。あたかも、シャッターの向こう側に悩みを聞いてくれた人物が居てくれんとばかりに。
克郎の父親は、魚屋を継ぐと言い出した息子を受け入れずに、最後まで頑張れと東京に送り出す。ナミヤから最後に届いた回答に、克郎は驚く。結局ミュージシャンを目指すと知っているがそれは無駄ではない。あなたの曲によって救われる人がいる。あなたの生み出した音楽は必ず残る、と何とも予言めいた回答だったからだ。
その後鳴かず飛ばずで10年が過ぎていた。今は全国の児童養護施設を回って演奏した。そんな中、『丸光園』という施設で演奏していた時のこと、一人の少女セリと出会う。彼が最後に演奏したオリジナル曲『再生』にいたく惹かれ、たちまちそれを覚えてしまった。その夜、彼は施設に泊まったが、火事が発生。セリの弟を助け出すために克郎は炎の中に飛び込み、帰らぬ人となる。
後年、稀代の天才アーティストとなったセリには、コンサートの度に最後に必ず演奏する曲があった。それが『再生』だった。
『ナミヤ雑貨店』の店主浪矢雄治は、初めて受け取った深刻な悩みに頭を抱えていた。内容は、不倫相手の子を身ごもったが、産もうかどうか迷っている、というもの。生半可な気持ちで答えられないと誠心誠意尽くして回答したが、それが正しかったのかどうか自らも悩みだす始末。そんな父親に、息子貴之も呆れるばかりだ。後日、母子を乗せた軽自動車が海に転落し、母親は死亡、赤子は助かったという新聞記事が載った。警察は無理心中とみているとの内容だ。雄治は、自分の回答が誰かの人生を狂わせたのではないかと悩み、死期が迫った折に、貴之に対して切実な願いを託す。それは、一晩でいいから『ナミヤ雑貨店』で過ごさせてくれという。余命いくばくもない父親の願いをかなえてやると同時に、奇妙な頼みに首をかしげる。それは、自分の死後33回忌の命日に合わせて、その命日の午前零時から夜明けまで『ナミヤ雑貨店』の相談窓口が復活する。かつて相談してくれた人に対し、その回答が人生にとってどうだったか、忌憚のない意見を聞かせてくれとの旨世に告知して欲しいというのだ。
空き家となっている『ナミヤ雑貨店』で一晩を過ごした雄治の下には、多くの封書が届けられていた。中でも貴之が見せてもらった一通には、例の不倫の子を身ごもり、結局産んでから無理心中を図ったと思しき女性の娘と名乗る人物からの人生がつづられていた。彼女は『丸光園』で育ったが、偶然新聞記事で事故を知り、ショックのあまり自殺を図る。施設の同い年の少女から、決して無理心中ではなかったはずだと諭される。彼女は、母親が『ナミヤ雑貨店』から受け取ったとされる回答書を読んでみた。やっぱり不倫の子だったと自分を卑下し自暴自棄になった彼女に対し、少女は自らの体験を語る。かつて施設が火事に見舞われたとき、逃げ遅れた弟を自らの命も顧みず助けてくれたミュージシャンがいた。命の大切さを知ってほしいとの切実な気持ちが彼女に届く。生まれてきてよかったとの感謝の意が綴られていた。
時は下って現代、曾祖父の33回忌を間近に控えたひ孫の浪矢駿吾は、余命わずかな祖父貴之の遺言通りに、奇妙な依頼文をネットに書き込むのだった。
和久浩介は、従兄の影響からビートルズのファンで、従兄の形見となったレコードも含め一通りコレクションをそろえていた。高価なオーディオセットもすべて買い揃えてもらえるほど裕福な家で育った。しかしやがて父の事業が行き詰り、多額の借金を抱えて夜逃げすることになる。夜逃げすべきか、家族と縁を切るべきか悩んだ浩介は『ナミヤ雑貨店』に相談するが、「家族と一緒にいなさい」との回答をもらい、とりあえず夜逃げに同行する。が、途中で行方をくらまし、両親と離れ離れになる。東京駅で保護された浩介は警察で事情を聴かれるも、両親の夜逃げが発覚することを恐れて一切口を利かない。ひとまず「藤川博」との偽名で『丸光園』に預けられた。浩介はそこで木彫りの才能を発揮し、施設の子供たちにできた作品を与えるようになった。中学卒業間際に彼は「藤川博」の戸籍を取得。程なく有名な木彫り師の元へ弟子入りした。夜学に通いながら弟子修行に明け暮れ、技術を磨いていった。いっぱしの木彫り師になったある時、『丸光園』火事のニュースが浩介のもとに飛び込む。園を訪れると、偶然、武藤晴美に出会う。かつて浩介が子犬の木彫りを贈ってやった少女で、大人になった今では会社を立ち上げ経営しているという。なんでもさる雑貨屋のアドバイスに従ったら何もかも順調にいったという。さらに、もし投機をやっていたら1990年までにすべて売却したほうがいいですよ、と謎めいた言葉を残して去っていった。懐かしさに駆られて浩介は『ナミヤ雑貨店』を訪れた。そこで思いがけなく息子という人物に出会う。彼は、父親がかつて回答した相談事の中に、親の夜逃げについていくべきか迷っているというものがあったが、その相談者からもお礼の手紙が届いたという。その手紙によれば、両親についていくべきだ、との回答に従ってよかった、両親と一緒に幸せに暮らせるようになったとのこと。浩介は、奇妙な偶然に戸惑いながらも、自分とは真逆の結果になったその他人の境遇に思いをはせた。
浩介もまた、ネットの書き込みから一夜限りの『ナミヤ雑貨店』相談窓口復活を知り、あなたのアドバイスに従わずに幸いでした、との旨の投書を行うつもりで、久しぶりに地元を訪れていた。そこのビートルズ専門バーで手紙をしたためた後、何の気なしに出されたレコードのジャケットを見てぎょっとする。それはかつて、亡くなった従兄の持ち物で浩介が夜逃げ前日に友人に売ったビートルズ・コレクションの中の一枚だったからだ。実はバーのママはその友人の妹で、兄が開いたバーをその死後引き継いで運営していたのだ。彼女は兄の友人がビートルズのレコードを兄に売った直後に両親と夜逃げし、結局無理心中したらしい、と告げた。しかも、父親が先に妻と息子を殺して海に沈め、自分は陸に上がって遺書を残し首つり自殺をしたという。浩介はすべてを悟った。それは両親の覚悟だった。すなわち最終手段として無理心中を選ぶとき、浩介の人生にとって自分たちが足を引っ張ることになってはならないと。そこで和久浩介の一切の経歴を消すために、あえて遺体不明で死亡処理ができる手段をとったのだと。浩介は先ほど書き終えた高慢ちきな書面を破り捨て、再びペンをとった。心なしか、出来上がった手紙は、かつてナミヤさんの息子という人物が話していた少年の礼状に内容が酷似しているような気がした。
舞台は再び空き巣3人組の現代に戻る。3人は、『魚屋ミュージシャン』こと松岡克郎がシャッター前で演奏したハーモニカのオリジナル曲が『再生』だと知っていた。トップ・アーティスト水原セリのデビュー作で、弟の命の恩人だというミューシャンの作曲だ。水原姉弟は『丸光園』出身だが、この空き巣3人組もまたその園出身だ。だから彼女の立身出世譚は彼らにとって誇りだし、その出世作『再生』はよく知っていたわけだ。つまり、今の相談相手は、将来火事で死ぬ運命だということになる。3人は悩んだ末に、真相は伏せて、最後の最後まで信じよとのメッセージを送るのだった。
3人は携帯で、『ナミヤ雑貨店』相談窓口一夜限りの復活の書き込みを見つける。シャッターの郵便受けが過去とつながっている理由と関係ありそうだと感じる。
再び手紙が届いた。昼はOL夜はホステスの掛け持ちをしている女性からの相談だった。向上心ある彼女は、お茶汲みコピーのOL扱いに将来を絶望視しており、ホステスで自分磨きをする方に賭け、会社を円満退職するにはどうしたらよいかと持ち掛けていた。その悩みに世間知らずの小娘と感じた3人は、辛辣な回答を寄せる。すると相談者の女性は、自分が求めているのは経済力であり、平凡な主婦に収まるつもりは毛頭ないと突っぱねる。そこで2通目の回答には、もう少し筋道立てた説得を試みたが、返ってきたのは、実は孤児だった彼女が『丸光園』出身だということ、引き取られた親戚宅は高齢で、収入も少ないことから自分が支えなければならないこと、だから一刻も早く経済力をつける必要があることを力説。現在、客から愛人契約を勧められており、月々の手当の他に独立する際の協力もしてくれるという。この話のどこがいけないのか、と。
相談者の武藤晴美は、近所に住む幼馴染でオリンピックを狙えるほどのフェンシング選手だった静子から触発され、『ナミヤ雑貨店』へ相談の手紙を送ったのだった。辛辣だった先の2通とは打って変わって、3通目には具体的なアドバイスが書かれていた。そのアドバイスに従い、愛人契約に疑問を持った彼女は、9月13日までというタイムリミットに背中を押される形で、ナミヤ氏に全面的に従うと返事。翌日、届いた回答には、驚くべき未来地図が描かれていた。今後5年間は経済関連の勉強をみっちりやり、1985年までに不動産を購入すること。1986年以降日本は空前の好景気に沸くので、1989年まで投資を続ければいいが、90年以降は投資から一切手を引くこと。また、ネットワーク関連のビジネスが大当たりするので、早めに参入しておくこと、などが述べられていた。
後年、ナミヤのアドバイスで資産家となった晴美は、大叔母から自宅財産をかすめ取ろうと画策していた娘夫婦のたくらみを見抜き、事前にその自宅を買い取って大叔母の居住権を守った。『丸光園』火事のニュースで久々に園を訪れた時のこと、園長から園の創立譚を聞かされる。彼の姉が園の創立者で、かつて身分違いの恋から駆け落ち寸前まで行き、結局連れ戻された体験の持ち主であったということ、その後駆け落ち相手から真摯な内容の手紙を受け取り、それを今でも大事に保管してあったのだとか。その手紙を見せてもらうと、差出主は浪矢雄治とあった。受け取った姉はその真摯さに胸を撃たれ、以後、生涯独身を貫き、彼の郷里近くにこの児童施設を建てたのだという。
『ナミヤ雑貨店』相談窓口一夜限りの復活とのネットの書き込みを発見した晴美は、このイベントに参加すべく、お礼の手紙をしたためナミヤ雑貨店へ向かう。その途中立ち寄ったかつての大叔母宅で今は月1度の個人別荘として利用していた家に寄ったところ、あろうことか、空き巣現場に遭遇してしまった。
例の空き巣3人組は、自分たちの出身施設『丸光園』を安値で買い叩き、ラブホを建設予定の悪徳女社長を懲らしめてやろうと、事前に彼女の別荘を調べ上げ、金目の物をちょろまかしてやる腹積もりだったのだ。ところがばつの悪いことに、当の女社長がいきなり入ってきた。3人組は彼女を縛って現場から逃げ出した。彼女がここまで乗ってきた車は玄関先に置いてあり、座席にナミヤ宛にしたためた礼状を残してきてしまったことに、晴美は悔しがったが観念するしかなかった。
車内に残された手紙から今自分たちが拘束してきた悪徳女社長こそ、3人が最後に受け取った悩み相談の相手だったと知り、慌てて彼らは彼女の解放に向かう。最後にナミヤ氏からの回答が牛乳箱に入っていた。それは、シャッター郵便受けが現在から過去へとつながる異次元空間の出入り口になっている証しとして、試しに白紙の封書を投函してみた、それに対する回答のようだった。そこには、真っ白な未来地図に思いっきり悔いなき人生を送れとのエールがつづられていたのだった。
【雑感】
悩み相談コーナーを読むのが私の若い頃からの趣味だった。数少ない自分の人生経験を補ってあまりあるエピソードが悩みとしてつづられ、またそれに対する回答が人生の別の視点を与えてくれ、新鮮な驚きとなる。つまり自分の狭い世界枠を何重にも広げてくれるよすがとなるからだ。その悩み相談の手紙と回答書でつづられる本作品は、人間ドラマがギュッと詰まった珠玉の一冊だ。
読み終えてすぐに思いついた言葉が「連環」だ。「連環計」など何かと負のイメージの強い言葉かもしれないが、元来は中立のはず。そう、本作品に出てくる一人一人が必ず別の誰かとつながり、美しい連環をなしている。本作品にモブ・キャラは一人もいない。出てくる登場人物はどんな端役に思える存在だろうと、もれなく他の人物らをつなぐ重要な役割を果たしている。誰であれ一人でも欠ければこの美しい物語は完結しなかった。この世は誰一人として欠かす事の出来ぬタペストリーだ、というありきたりの比喩が真実に思えてくるほどに、心温まる小説である。
手紙のやり取りという形式が、今でこそ古風に感じられるものの、これほど人生に大きく関与する力を持つものだと、本作品を通して思い知った。登場人物たちをつないでいる『丸光園』。その発端が浪矢雄治の真摯な手紙であり、それを受け取った園の創立者皆月暁子だった。雄治の真心を受け取った暁子が子供たちのための施設を建てる。その施設にゆかりを得た人々が、人生の様々な場面で交わり、影響を与え合い、それぞれの人生を輝かせていく。最後には雄治が、代わって回答を書き続けてくれた空き巣組3人にエールを送る形で物語は締めくくる。なんという完成度極まる作品だろうか。
悩みに対する回答は、それが誠実であればあるほど当事者だけでなく後世まで多くの人々に影響を与え、勇気づけるものとなる。その代表例が新約聖書だ。福音書等を除けば大部分がパウロをはじめとする使徒たちの手紙という形式で編纂されている。各教会が抱える深刻な悩みに対する回答書が、やがてキリスト教の教義の根幹をなしていくわけだから、悩み相談がいかに偉大な作品に繋がるものかを改めて思い知ろう。
冒頭の空き巣3人組は、生い立ちから自尊心が低い。しかし悩みに真剣に対処していくうちに、心境に変化が訪れる。自分でも誰かの役に立つことができるのだという実感は、自尊心の醸成に大いに役立つ。最後にナミヤ雑貨屋本人からのエールで、3人は晴美との新たな出会い直しをつないでいき、『丸光園』を巡る好循環エピソードが繰り広げられ、そうしてそれぞれの新たな物語がスタートするのだろう。そんな前向きな予感しかさせない開かれた形で終わっている点でも、本作品は心にじんわり残る温かさがいつまでも絶えないでいる。
Posted by ブクログ
過去と未来が繋がる不思議な世界観、それがナミヤ雑貨店と丸光園の子供達が複雑に絡み合い一気に読んでしまいました。努力は報われる、人は信じるに値する、今はなかなか声高に言い切れない価値観を思い出させて貰える優しい1冊でした。東野圭吾さんは心の温かい方だったんだ、と改めて強く思いました。もっともっと作品を読ませて頂きたかったです。心からご冥福をお祈り申し上げます。
Posted by ブクログ
心よりご冥福をお祈りいたします。
未来と過去を手紙を通じて繋がる話。
1つ1つの物語が丸光円と雑貨店を通じて繋がっていくところ、悲しい出来事でもそれがきちんと残されていくこと、読みながら心が温かくなり不思議な世界ながらもその世界に引き込まれていきました。
それぞれの伏線が回収されていくたびに、
ああやっぱりかぁ、うわぁ、
といった感情が掻き立てられましたが最後の手紙の場面では、
これもちゃんと意味があったの!?
みたいな気持ちの高ぶりが最高潮に達しました。
どんな助言を受けても自ら考え、その出した答えを信じ行動する気持ちがないと何も生かせない。
この奇跡のような体験を通じて彼らの未来もきっと明るいものになると感じました。
おもしろかった
過去と現在を行き来するため、物語を理解するのに時間がかかる場面があったが、読み終えてみると各々エピソードがありいつまでも読んでおきたい小説だった。
それぞれの物語
ナミヤ百貨店に寄せられる相談内容が、本当に色んな内容で自分の人生と照らし合わせてしまいました。それぞれの相談者の物語が壮絶でどんな質問に対しても真剣に返していく姿が胸を熱くしました。この本を読み終えて自分の人生を改めて考えるきっかけになりました。
ほっこりした
ほっこりするお話しを読みたくてこの作品に手をだしました
すごくよかった 読み進めるほど色んな繋がりがどんどん見えてきて止まらなくなり
最後はすっきりほっこり読後感満足です
その後のエピソードも読みたいなぁ
本編にいれちゃあ野暮なんだろうけど
10年くらい前にすべての紙の本を処分して電子書籍に切り替えた時、電子書籍嫌いの東野圭吾先生は亡くなったものと思って新刊を読むことを諦めていました。
それがまさか 電子書籍化してもらえるなんて!先生を説得してくださった皆様ありがとうございました。
ブランク期間中、情報をいっさい入れていなかったため、この本が通常のミステリーではないことに気づいた時はビックリしましたが、
読み進むほどにじわじわ心に染みる物語でした。
ふざけた相談にも真摯に対応するナミヤさんの優しさに癒されます。
Posted by ブクログ
東野圭吾さんの作品は、何冊か読みましたが、こちらの本は、ちょっとファンタジーっぽく不思議な物語でした。出てくる登場人物がそれぞれ少しづつ関わっているところも面白かったです。古い雑貨店が相談室のようになっていて、悩みを手紙に書いて投函すると、回答が得られる設定です。こんな不思議な雑貨店だったら、近所にあったら面白いのに。。という感じです。ほのぼのした読後感を持ちました。
Posted by ブクログ
3人が代わりに未来からの手紙に返信していく中で、それぞれの差出人にストーリーがあって面白かったし、物語の最後でそれまでの話が繋がっていって3人の考えも変わってっていき、またやり直そうとしていて良かった。
Posted by ブクログ
東野圭吾さんの訃報を知り、もう新作を読むことができなくなるんだと思うと同時に、もう一度読み直したい気持ちになった。生活の変化に伴って、なかなか読書をする余裕がなくなってしまい、以前に比べて読むペースも遅くなってしまったけど、今回も再読とは思えないくらい読書時間を過ごすことができた。ただ、初めて読んだ時は、外出先でも堪えきれず涙が出て困った記憶があるけど、今回はあの時どうして涙が出たんだろう?と自分のことなのに不思議な気持ちになった。当時と今とでは、感じ方も考え方も違っているのかもしれない。過去の自分も今の自分も、どちらも自分自身なんだと、作品の過去と未来の手紙のやり取りに何か通ずるところを思いながら、弔いの思いで読んだ作品との必然性を感じた。
Posted by ブクログ
『ナミヤ雑貨店の奇蹟』は、物語として面白かったものの、個人的には以前読んだ『手紙』の方が「次のページをめくりたい」という気持ちは強かったです。
それでも、読んでいる中で心に残る言葉がいくつもあり、思わずメモをしました。
特に「生きているから感じられる痛みもあると思い乗り越えてきました」や、「今がどんなにやるせなくても明日は今日より素晴らしいのだと」という言葉が印象に残りました。苦しさや痛みも含めて、前を向いて生きていくことの大切さを感じました。
物語を楽しむだけでなく、人とのつながりや生き方について考えさせられる一冊でした。
Posted by ブクログ
伏線回収がすごい。
あの時のあの行動はここにつながっていたのか。
とスッキリした。
ナミヤ雑貨店の謎が気になりどんどん読み進められていったら涙が自然に出てきた話があった。
夢中になって読めて心あたたまるそんな一冊。
東野圭吾さんすごいな、いいなっておもえた。
Posted by ブクログ
あらすじ ある夜、悪事を働いて逃走中の3人の若者(敦也、翔太、幸平)は、身を隠すために廃業した古い「ナミヤ雑貨店」に忍び込む。そこへ突如、店の郵便受けから1通の手紙が投げ込まれる。それは32年前の過去から届いた、悩み相談の手紙だった。店主の浪矢雄治が生前行っていた「お悩み相談」が、時空の歪みによって蘇ったのだ。戸惑いながらも返事を書く若者たち。過去と現在を繋ぐシャッター越しの手紙の往復はやがて、かつて彼らが強盗に入った女性の知られざる過去や、登場人物たちの人生の交差点へと繋がっていく。
所感・深掘り 東野圭吾作品らしい緻密なプロットに、SF的な時間軸のギミックと人間愛が絶妙に融合した、心温まる名作だった。
廃屋のシャッターの内と外で時間の流れがズレているという軽いSF仕掛けにまず引き込まれるが、何より面白いのは、手紙を通じて過去の人々の人生に関わっていくサスペンスフルな展開だ。最初は投げやりだった少年たちが、手紙の相手の真剣な悩みに触れるうちに誠実に向き合い始め、やがて「自分たちが押し入った被害者の女性」の正体や人生へと伏線が美しく回収されていく構成には鳥肌が立った。
ひとりひとりの登場人物が抱える葛藤、後悔、そして未来への希望といった心の深層が実に丁寧に描かれており、ページをめくるごとに真相へ近づくハラハラ感と感動が同時に押し寄せてくる。
「どんな小さな言葉や返事でも、誰かの人生を救う確かな光になり得る」というメッセージは、人と人との繋がりが希薄になりがちな現代において深く胸に染みる。
読み終えた後に温かな涙とともに前を向く勇気が湧いてくる、東野作品の中でも屈指の優しさに満ちた最高の感動作だ。
Posted by ブクログ
東野圭吾さんの作品で読んでみたかった物語。
コソドロ3人と昔『ナミヤ雑貨店』と関わった、これからの生き方に悩む人たちとの『手紙』とのコミュニケーション。
もとはナミヤ雑貨店の爺さんがはじめた悩み相談。
そういった観点を持つ人っているのかなぁ。今を生きるのに必死だからなぁ。
赤の他人様の人生を背負い出すと病みそうなのも事実。
爺さんがどこまでの思いを持っていたのは推測だけど、
爺さんの「人の心の声は、決して無視しちゃいかん」というのは、人情深さを感じ取ることができた。
コソドロ3人、なんだかんだ『手紙』のやりとりが続くと、気持ちがだんだん変わっていくのが微笑ましい。
「今がどんなにやるせなくても、明日は今日より素晴らしいのだ」
いろんな環境で生活し、人と出会い、好きなことに打ち込めること。
従順に進めばまだしも、どこかで衝突し人生の選択に迫られることがある。
そういう状態になった時、自分では解決できないこと、誰かに話せる場所を求める。
それが『ナミヤ雑貨店』と関わった、これからの生き方に悩む人たち、そして読んでいる自分たちにも教えてくれたのかな。
人生、まだまだ捨てたもんじゃないね。
リアルにあったらポストに投函してみたいものです。
Posted by ブクログ
それぞれのエピソードでどんな返事になるんだろう?と想像するけど、どれも想像つかない回答でずっと楽しく読むことができた。
冒頭が悪事を働いている描写だったから少し身構えたけど、全体の雰囲気は優しくて暖かい気持ちになれた。
本当にどこかで小さな悩み相談があったらいいなと思った。
Posted by ブクログ
ファンタジーは普段あまり好まないけど、東野圭吾さんの代表作とのことで。
色々繋がるんだろうと予想はつくけど、面白かった!嫌な人がほぼ出てこないところも良き。
たくさん泣きました。
Posted by ブクログ
面白かった!けど、いろんな人がいろんな場面で時代を超えて(?)出てくるから、丁寧に読まないと混乱する。時系列が前後するし、そもそも登場人物の名前を覚えるのがあまり得意ではないので、少し戻って読み返したりが必要だった。
Posted by ブクログ
ファンタジーというかSFに近いのかな?
悪事を働いた子悪党3人が、本来自分たちに持ち込まれたわけではない相談事に対して、自分たちなにりに一生懸命向き合って、感謝されることに喜びている様子が完全な悪人にまで落ちきれていなくて可愛げを感じたし、そんな3人とかつての雑貨店の店主のお爺さん、雑貨屋に相談事を持ちかけた人たちが時代を超えて繋がっていく構成が見事でした。
他人からどんなアドバイスをもらっても、結局は自分の捉え方と行動次第なんだよなあと実感します。
ときどき「男と男の約束だ」ってセリフが出てくるのですが、女同士だとなかなかこういうやり取りすることがないので、男性同士のこういうのなんかいいな〜ってちょっと憧れます。
明確な仕掛けや種明かしなんかは何もなく、「奇蹟」としか言えない不思議な一夜だからこそ、じんわりとした温かさと感動を覚えました。
Posted by ブクログ
中学生の時に読んだ
面白かった、当時映画やってた気がする
ませてた友達にストーリーを話したら「ご都合主義じゃん」て言われて当時の僕の感動が薄れた記憶はすごいある
今になってタイムスリップもの?にしては嫌に現実的な現実の救済方法やなと思う
Posted by ブクログ
手紙のやり取りを通じて、過去と未来が交錯し、登場人物たちが思いがけず影響を与え合うファンタジー。伏線が美しく回収されていく構成は面白く、読みやすかった。
ただ、全体を通して美談として綺麗にまとまりすぎている点が、個人的には少し引っかかった。
概ね、浪矢のお爺さんの助言が結果的に正しかったという着地に収まっており(もちろん伝えたいのはそういうことではなく、ジレンマに陥る描写もあるが)、どこか道徳の教科書のような整ったオチを感じた。家族との絆が尊ばれたり、心中未遂に見えて実は母が命がけで子どもを守った事故だったりと、どこかで見たことのあるストーリーだなと感じてしまった。
また、あれほど尖って荒れていた敦也が、最終的に自首を決意するに至るまでの心の変化にもやや急な印象を受けた。晴美のサクセスストーリーにしても、未来からの助言をそのまま実行して成功したという構図になっている。もちろん、それに至るまでの試行錯誤の描写はあるが。
設定や構成にはワクワクしたが、個々のエピソードの着地においてはもう少しリアルさが欲しいなというのが個人的な印象。
Posted by ブクログ
知らないうちに時代を超えて悩み相談を受ける話。ちょうどこれを読み始めた頃に東野圭吾さんの訃報が…。ミステリー的な要素は特に気にしなくても良かった。ナミヤじいさんと周囲の熱意が巡り巡って奇跡を起こす話。火事で亡くなった青年の話は泣くかと思った。
Posted by ブクログ
東野圭吾の本はインパクトの大きな事件が起こりがちだけど、ナミヤ雑貨店は平和なお話。
物語が繋がっていく感じが心地いい。
2026.08.30-95冊目