あらすじ
あらゆる悩み相談に乗る不思議な雑貨店。そこに集う、人生最大の岐路に立った人たち。過去と現在を超えて温かな手紙交換がはじまる……張り巡らされた伏線が奇跡のように繋がり合う、心ふるわす物語。
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Posted by ブクログ
著者の作品の中では珍しく、読み終わったらホッコリする作品です。
時間軸に対するキャラクターの配置が見事にはまっていて、読んでる途中で訳が分からなくなることもなく、非常に読みやすいです。
Posted by ブクログ
優しい小説だった。これは時代を超えた魂の邂逅と共鳴、そして赦しの物語だ。
敦也と浪矢雄治という、ほとんど人柄は違うがおそらく相性はとてもいい二人の、心のこもったすれ違いをメインに、様々な人物が温かく交錯する。
この作品の特筆すべき点は、誰一人として裁かれないところにあるだろう。ミステリ・サスペンス特有の『断罪されること』に心が耐えられないような、きわめて優しい方々にも、きっと安心して読める作品だ。
まったく共感できない人物が一人だけ出てくるが、彼さえも裁かれない。裁きは読者の審判に委ねられている。
さて、僕は主にこの敦也と浪矢雄治に共感しながら読んできた。下記の文章はこの二人を軸にして、進めてみたい。
以下、おそらくネタバレが大いに入ってくるので、未読の方は気をつけてほしい。
浪矢雄治の類稀なる優しさからなる、数々の温かい手紙は、多くの人を救ってきた。
それは明らかに、具体的なアドバイスというより、励まして元気を出させたり、やる気を起こさせたりするものだった。
雄治のその優しさには、きわめて強い相談者への慈愛が込められている。相手になりきったように、あるいは寄り添うように、手紙を書いている。
僕も思わず、彼の真似事をしてみたいと思わさせられたほどだ。
ただ正直に告白すると、僕が完全に共感するには、彼は少し優しすぎたと言ってもいいかもしれない。
だから僕はおぼろげな共感を抱きながら、彼を理解しようと努めていった。
だが僕は、彼の慈愛を見習って、僕なりに誠実であろうとして、この文章を書いているつもりだ。
もし冷たい感想になっていたら作品に対しても、皆さんに対しても申し訳ない気持ちがする。それだけはご容赦願いたい。
一方、敦也は一見厳しい人物で、仲間にもキツく当たっているように見える時が多い。しかも彼ら三人は(おそらく軽めの)悪事、つまり窃盗に手を出している。一見、共感できる要素はなさそうに思えるだろう。
だがその深層では、優しさの源流がさらさらと美しく細く、しかし強く流れ出ている。
悪事に手を出したのも、金銭や仕事などの、あの時代特有のきわめて深刻な悩みがあったからだ。そしてその悩みは、僕も身に覚えがある。
しかも彼はその悪事の最中にも、被害者のことを強く思い遣っている。これは普通の悪人にできる態度ではない。
彼が雄治に成り代わって書いた手紙も、厳しさの裏にひっそりと優しさが込められている。それゆえに、敦也たちも相談者に感謝されたのだろう。
そのため僕は、おそらく雄治に対してよりも、深く敦也に共感することができた。
浪矢雄治の稀有な慈愛は、そんな敦也たちの存在とその悪事を、きっと完全に見抜いていた。
その上で彼らを温かく赦し、救いを与えた。雄治は、彼らに真っ当に生きる指針を与えたのだ。
雄治は具体的に生きる地図を、何一つ渡さなかったが、敦也たち三人は、これから真っ直ぐに歩んでいくに違いない。そう確信させる何かが、そこにはあった。
Posted by ブクログ
東野圭吾の映画化もされた名作。
とある雑貨店のお悩み相談箱を巡る物語。
東野圭吾の描く小さな奇蹟は至高です。
小さな悩みからからかいの相談、時にはなかなか人には言えない重い悩みまでその雑貨店は必ず返してくれます。
その答えは笑いあり涙あり、頓知の効いたユーモアあるものもあり素敵な気分になります。
構造や繋がりも流石は東野圭吾と言わんばかりの仕上がり、あの圧倒的なトリックを生み出す彼が描く奇蹟には皆惹かれること間違いなしです。
時を超えて繋がるその小さな、それでいて確かに心を温めてくれる奇蹟を皆様も是非観測してみてはいかがでしょうか?
Posted by ブクログ
数年前に映画を見てたから、小説からは遠ざかっていたがやはりいい。西田敏行のイメージがあったが、小説のナミヤ爺さんはもっと穏和なイメージだった。児童養護施設の子供たちとの繋がりに涙涙。白紙の手紙への返事にそんな風に回答する爺さんは、本当に相談事に真摯に向き合っているんだな〜と...
Posted by ブクログ
過去、現在、未来と時を超えた手紙のやり取りでナヤミを解決するナミヤ雑貨店。
手紙を通してのやり取りはその人の素直な気持ちが綴られていて、読んでいると相談者の気持ちにも相談される側の気持ちにもなりました。
登場人物はみんな違う悩みを抱えて相談していたのに、人生のどこかで誰かと繋がっていて、これでよかったと思える道を歩いている。
見ず知らずの人からの言葉がきっかけで運命が変わることは良くも悪くも現実味があって、言葉の重みを感じました。
店主のお爺さんの、どんな悩みにも真摯に答える温かい人柄が素敵です。(映画は拝見していませんが、配役が西田敏行さんなのは納得です)
Posted by ブクログ
何章かに分かれているが、それぞれ登場人物のつながりが後々になってどんどんわかってくることところがとても面白かった。
お爺さんの手紙の返信がそれぞれ真摯に向き合っており、言葉を大切にすることで人を後押しすることができるということを実感した。
Posted by ブクログ
時空を超えての悩み相談の手紙のやりとり。
空き巣3人組も乱暴ながら相談への回答に奮闘する事に読んでて不安だったが、彼らに助けられた人もいた。最後の白紙の手紙の回答に1番驚かされたし、そんな解釈、解答のできるナミヤ爺さんに感激。そしてその返事の手紙で3人組のこれからの決断が変わった。言葉の凄さを体感した。1つわからないのは、丸光園とナミヤ雑貨店の関係。大切なところを飛ばして読んでしまったのか?知ってる人いたら、教えてください。
Posted by ブクログ
東野圭吾さんの『ナミヤ雑貨店の奇蹟』を読んで、悩みを深く考えすぎて思い詰める必要はないのかもしれないと感じました。作品の中では、「オリンピック出場を目指すか、余命半年の彼氏と過ごすか」「魚屋を継ぐか、アーティストになるか」など、それぞれの登場人物が人生の分かれ道で悩んでいます。どの悩みも重く、答えを出すのが難しいものばかりです。
しかし、そんな相談に向き合うのが、かつて空き巣に入ろうとした三人の青年たちです。彼らは自分たちなりに一生懸命考え、思いきった回答をしていきます。その姿に心を動かされました。悩める人たちが三人の言葉によって前を向き、奮闘していく流れがとても面白く、読んでいて励まされる気持ちになりました。
特に印象的だったのは、最後に三人が自首を決意する場面です。自分たちの過去と向き合い、罪を償おうとする姿に、人が変わっていく強さや希望を感じました。重い悩みや過去を抱えていても、それを通じて明るい未来へ進むことができるというメッセージが伝わってきました。
この物語を通して、悩むことは悪いことではなく、その悩みの中にこそ人を成長させるきっかけがあると気づきました。読むたびに心が温かくなり、また続きを読みたくなるような素敵な作品でした。
Posted by ブクログ
おもしろかったです。
東野圭吾さんて多様な話を書かれる作家さんなんだなあと思いました。
色んなことが起きるけど一つのことに全部繋がっていたという。
驚きが楽しかったです
Posted by ブクログ
久しぶりの東野圭吾を読んでみたり。
『マスカレードホテル』まではしっかり読んでたから、意外と10年以上空いていたのか…。時を経ても変わらない面白さ。さすがだねー。
悩み事があれば、どんな問いでも真面目に向き合う「ナミヤ雑貨店」。
時系列やタイムトラベルに似たトリック(?)があるものの、この物語の本質は「人助け/救い」なんだろうなぁ。
「ひとは一人で勝手に助かるだけ」とは『化物語』のセリフで、これはまぁそれなりに本質を言い当てている。
救いとは自分から見た世界が良い方向に変わることを指すのであって、物質的に満たされたりすることとイコールではないからだ。お金があっても救われない人間もいれば、物事が何一つ好転していなくても救われる人間だっている。
「ナミヤ雑貨店」に届く悩みも正しくそうで、最後の晴美への手紙以外は状況を変えたわけじゃない。相談と言いながら、進むべき道はすでに決まって後押しが欲しかったのもそうだろう。
だけど一方で、自分の悩みに真摯に向き合ってくれる人間がいるということ。
「誰かが、誰かを助けるなんてことはできない」けれど、その荷物の重さで倒れそうな体は支えることができる……かもしれない。
些細な善性が世界を巡る、そんな奇蹟のお話でした。
いや、むしろ奇蹟とは、そんな小さな働きの一つ一つが重なって生まれるものなのかもしれないね。
Posted by ブクログ
素晴らしい作品!やっと読みました。かなりの間、積読してしまっておりました。いやー、やっぱいいですね東野さん作品は。読み易さは勿論のこと、どれも素敵なストーリーで本当に楽しめました。過去と現在(現在と未来)を繋ぐナミヤ雑貨店の郵便受けと牛乳受け。設定としても、単純なタイムスリップやタイムリープとは異なり、手紙のやりとり且つその手紙は悩み相談限定というところが秀逸な設定だなと。ひとつひとつの話しも入り込めますし、相変わらず全てが繋がっていく感じがとても素晴らしい。またひとつ好きな作品が増えました。
おもしろかった
過去と現在を行き来するため、物語を理解するのに時間がかかる場面があったが、読み終えてみると各々エピソードがありいつまでも読んでおきたい小説だった。
それぞれの物語
ナミヤ百貨店に寄せられる相談内容が、本当に色んな内容で自分の人生と照らし合わせてしまいました。それぞれの相談者の物語が壮絶でどんな質問に対しても真剣に返していく姿が胸を熱くしました。この本を読み終えて自分の人生を改めて考えるきっかけになりました。
ほっこりした
ほっこりするお話しを読みたくてこの作品に手をだしました
すごくよかった 読み進めるほど色んな繋がりがどんどん見えてきて止まらなくなり
最後はすっきりほっこり読後感満足です
その後のエピソードも読みたいなぁ
本編にいれちゃあ野暮なんだろうけど
10年くらい前にすべての紙の本を処分して電子書籍に切り替えた時、電子書籍嫌いの東野圭吾先生は亡くなったものと思って新刊を読むことを諦めていました。
それがまさか 電子書籍化してもらえるなんて!先生を説得してくださった皆様ありがとうございました。
ブランク期間中、情報をいっさい入れていなかったため、この本が通常のミステリーではないことに気づいた時はビックリしましたが、
読み進むほどにじわじわ心に染みる物語でした。
ふざけた相談にも真摯に対応するナミヤさんの優しさに癒されます。
Posted by ブクログ
ナミヤ雑貨店にお世話になった人たちのストーリーが最終的に1つの"円"を描くようにつながっていたことがとても印象的でした。主役が章ごとに変わってく展開の仕方で、色々な視点で読むことができます。ナミヤ雑貨店という不思議な場所が、過去から現代までの人々の考えを創り上げていくミステリーでファンタジックな作品です。
Posted by ブクログ
じんわりと心が温かくなるような小説です。ひょんなことから「ナミヤ雑貨店」に寄せられた相談に乗ることになり、3人が面倒くさがりながらも答えた回答が、相談者にとっては一生を左右する忘れられないものになる…という温度差にぐっと来ました。社会との関わりを拒絶してきた敦也たちに、社会の温かさを伝えるために、ナミヤ雑貨店は時を超える奇跡を起こしたのかなぁと思いました。
Posted by ブクログ
ドラマか映画か、忘れたけれど
何かの映像化作品でみたような記憶も…。
でも、どうなったか忘れていたので
改めて書籍で読んでみた。
悩み相談の手紙の往復が、
過去と未来を行き来するという
SFファンタージ作品。
近くの誰かには話せないけど
誰かに相談したくなる悩みを抱えた時、
その頼り先としてナミヤ雑貨店があった。
何人もの人々の悩みの手紙。
真摯に向き合ったナミヤ雑貨店からの返事。
時代を経て彼らがどんな人生を歩んだか。
他人の人生に強く関わったことにより
死が近づくときナミヤさんは不安を覚えた。
人は何を大切に決断し、生きるのか。
この奇跡の物語がなぜ起きたのか。
その元となるものが
いくつもの悩みと人生の連鎖から
徐々に紐解かれていく。
私たちの人生も
なにか別のちからによって
引き合わされたり
しているのかもしれないなと思わされた。
Posted by ブクログ
2025年 43冊目
悪事を働いた3人が逃げ込んだ古い家。そこはかつて悩み相談を請け負っていた雑貨店だった。廃業しているはずの店内に、突然シャッターの郵便口から悩み相談の手紙が落ちてきた。時空を超えて過去から投函されたのか?3人は戸惑いながらも当時の店主・浪矢雄治に代わって返事を書くが…。次第に明らかになる雑貨店の秘密と、ある児童養護施設との関係。悩める人々を救ってきた雑貨店は、最後に再び奇蹟を起こせるか!?
感想(⚠️ネタバレを少し含む)
空き巣でありながら根は優しい三人の、配慮に欠けた愚直な手紙によって、相談者が勇気づけられ、精一杯生きていく姿がとても印象に残った。また、雄治がどんなにふざけた相談に対しても、自分なりの答えを一生懸命考える優しさが多くの人を惹きつけたのだと思う。特に最後の白紙の手紙にはとても感動した。この作品を通して、人に相談することの大切さを学んだ。
Posted by ブクログ
最後まで楽しく読めました。
最初は不穏な感じだったけど、人と人とが意外なところで繋がっていて、過去と現在も繋がっていて、不思議な物語でした。
ほっこりミステリーといった感じですかね。
話題になった理由も分かりました。
Posted by ブクログ
読み進むごとに、奇蹟という言葉の深みを感じる作品。
もしも、突然に誰かの人生の道標になる手紙を書くことになったらどうするか?
本書に出てくる、見ず知らずの相手からの手紙を読むと、
毎回それはもう心を揺さぶられ、感情的になれました。
(感動はもちろんですが、特に苛立ちまで湧き上がるような手紙の内容は流石の表現でした)
一言一言が相手に与える影響の大きさを改めるために、
また読み返したいと思える作品です。
Posted by ブクログ
今まで読んだ東野圭吾作品はミステリーや刑事もの、殺人や事件が起きる小説ばかりでした。
東野圭吾の書く、幸せな、ファンタジー小説ってどうなんだろうと興味を持ちながら読み始めました。
何の違和感もなく、物語に没入でき、最後まで読み進め、ラストの感涙。
物語は、夜中に、もう閉店した雑貨店に3人の若者が逃げ込んできます。明け方まで身を隠して明るくなったら逃げようと画策。
すると、シャッターの郵便口から手紙が舞い込む。かつてここに住んでいた爺さんが悩み相談を受け付けていたらしいことが判る。ここから過去と現在が交錯した不思議なやり取り、そして意外な事実が判ってくる。
過去と現在が交錯した内容で、過去にいる爺さんと現在の3人の若者と、ラストどうなるのかが気になったのですが、見事なラストでした!!
Posted by ブクログ
○時空を超えて「悩み相談」でつながる面白さ
一貫して、ナミヤ雑貨店へのお悩み相談で話が進むが、悩みの手紙を出す側にもそれに応える側にも苦しみがありながら、前へ進んでいく感じがあった。
特に浪矢の言葉が心に残っている。
「長年悩みの相談を読んでいるうちにわかったことがある。多くの場合、相談者は答えを決めている。相談するのは、それが正しいってことを確認したいからだ。だから相談者の中には、回答を読んでから、もう一度手紙を寄越す者もいる。たぶん回答内容が、自分が思っていたのと違っているからだろう」
確かに、悩みを相談する時、自分なりの答えを持って相談している。相談するのは、不安や自信のなさ、自分の考えた答えを肯定してくれる存在を求めているからだろうか。
ただし、この本の中では、相談者は結局自分で決断し、行動し、前へ進んでいる。結局決めるのは自分なのだ。人に決めてもらおうという考えは、甘いしうまくいかないだろう。
自分の決めたことで生きていく大切さが描かれていると感じた小説だった。
Posted by ブクログ
短編集なんだーと思って読み進めていたら、前に出てた人が出てきたり出会ったりがあって面白かった。
相談への回答を、あの子達が書いてることを思うとホッコリした。
自分も手紙で相談してみたいなぁ。
Posted by ブクログ
読み進めてるうちに『?』となり何度もページを戻った。
点と点が線で結ばれていく。
自分で頭整理しながら読めるのが面白かった。
流石東野圭吾と思わせるような綺麗な伏線回収。
人と人との繋がりについて考えさせられるような話だった。
Posted by ブクログ
ほっこり、優しい気持ちになれる小説。
短編集だが、それぞれのお話に出てくる人達はこの一冊の中で何かしら繋がりがある。
その繋がりの描写がとてもスムーズで、回想シーンがあったり、時系列が現在と32年前と色んな設定がごちゃごちゃ出てくるのに、めちゃくちゃ読みやすい!!!!
Posted by ブクログ
面白かったです
東野圭吾さんの頭の中身は
一体どういう構造になっていて
どうしてこんなに多種多様な
物語を構築してしまうのでしょうね?
過去に趣味で人生相談をしていた老人と
現在に空き巣をしている若者達が雑貨店で
たくさんの相談者達との時空を超えた
優しいやりとりとそれぞれの人生の物語
不思議と子供の頃のノスタルジックな
思い出の商店がセピア色に脳内に浮かび
ちと甘酢っぱい気持ちにもなりました(笑)
東野圭吾さんの推理物はトリックが
巧妙で人間関係や動機やアリバイ等
(充分簡潔に分かりやすく自然な文章ですが)
読者もついていくのにカロリーを使いますが
こちらの作品は湯川教授も加賀刑事も出てこず
彼等に比べるとかなり幼稚な3人組が主人公の一角
低カロリーで最期まで読み切れます