川村元気のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレ
「言葉で伝えること」の絶対性を疑う
優子とストラーダは、言葉をコミュニケーションの手段として取らないという言う点で共通している。ストラーダは馬で話すことができない、優子は自分を守るために言葉を紡がないという違いはあるといえるが。そんな2人を周りは利用しようとするように見える。双方の対比が印象的だ。ところで人間にとって言葉で伝えるということは当たり前のことで、それが良いことなのか悪いことなのか疑う余地はない。しかし、その言葉は本当を映しているのだろうか。綺麗な情景についてもそのとき湧き上がった感情についても、まさしくぴったりだ、この言葉に違いないという表現を見つけることはできない。ストラーダと優子は言葉を紡がない、だからこそ目の前に広がる情景や自身の感じたことをとにかく集中して捉えることができるのではないだろうか。双方のコミュニケーションにおいてもそうだ。表面的な言葉でコミュニケーションを取るのではなく相手をよく観察し探り合う。それがストラーダと優子が通じ合っているように見えた理由なのではないか。人間は言葉で何事も表現しようとする。私自身も物事をきちんと言語化できるようにしなければならないと考え、「言葉」を理想化している節がある。しかし言葉では言い表せないものがほとんどなのではないかとこの本から考えさせられた。
夢を見ることの主観性
優子はストラーダに夢を見る。この馬は私のことをわかってくれている、私にとって特別な存在だと。申谷も麦倉も御子柴も馬に夢を見る、または見ていた。「夢」とは一般的にポジティブなものとして捉えられることが多いように感じるが、それは非常に主観的で周りからすれば狂気すら感じられる。夢を見るとはどのような状態なのだろうか。夢を見ている時の一つの特徴として、「自他境界が曖昧になってしまうこと」を感じた。相手に対して期待をする。自分だったらこうする、こうしてほしい、こうするべきだを押し付けてしまう。無意識のうちに自分の延長線上に相手がいる感覚だ。その特徴において考えると優子が見たような夢は決して現実離れした狂気ではない。私たちは誰かに、何かに夢を見ていて狂気を秘めているのではないだろうか。
「わかりあえるはずもない男たちに向かって、私は無理やり言葉を紡いだ。言葉にすればするほど、彼と創り上げてきた大切なものが壊れていくような気がした。」
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Posted by ブクログ
認知症になった母と、その息子の話。
私の祖母も認知症だったので、祖母のことを思い返してながら読んだ。
あの頃私はまだ小さくて分かっていなかったことがたくさんあったけど、記憶がなくなっていく祖母も、祖母を支える母も、私の知らないところでたくさん辛いことがあったんだろうなと感じた。
祖母が家族の名前を忘れていく姿を見て、小さかった私は案外素直に「病気だから」と受け入れることができたけど、母は辛かったろうなと思う。
p.177-178に出てくる自分の記憶のメモが1番泣けた。
あと認知症って、軽症の段階では本人も自覚があるのだと、新たな発見だった。
そしてなぎさホームの環境、すごくいいなと思った。
祖母は一般的な介護施設に入っていて、しょっちゅう徘徊したりベッドで暴れたり、という話を聞いていた。
病気のせいだと思っていたけど環境のせいだったんだなと。
「本人はひとり歩きするつもりもないし、何か大人しくしていられない理由がある」ということも新たな発見だった。
本の感想というより、自分の祖母の話になってしまったけど、この本を読んで、祖母と母の当時の思いを少し理解できた気がして、読んでよかったと思った。 -
Posted by ブクログ
ネタバレストーリーはあるけれど、順を追わずにどのページから読み始めてもいいし、どこでやめてもいい。寄り添う言葉が沢山あるので、オラクルブック的にも使えそうな1冊。
ぼくはモグラに出会う。2人はいっぱい話していっぱい色んな世界を知る。
キツネと馬にも出会う。彼らが話す言葉のどれかしらには、何か刺さるものを見つけられるかもしれない。
何を大切にして、どこを目指せばいいのか。
コロナ禍真っ只中に出版されたので、いっそう読者の心に訴えてくるものがあったかと思う。
手描き文字なのでアート性が高いけれど、個人的には逆にそれが読みにくさにも繋がってしまった。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ現代の国際情勢に照らし合わせて読んだらすごく響いた文章たち。作者の伝えたかったことなのかもしれない。
「神様を信じることは別に悪いことじゃない。お金や株式、国家や会社とかも、ある意味みんな宗教だからね。そういうものがあるから、ひとは生きていけると思う。だけど、自分の神様以外を否定するのは間違っている。そこを否定しちゃうから戦争が起きる。答えがひとつしかないって、やっぱりおかしいと思わない?」
「そう、壁だ。信仰の行き着く先にあるのは、高く聳える壁なんだ」
「どうして生きることがこんなに苦しいのか、なぜこんなに辛い目に遭うのか。人は理不尽を壁に向かって嘆きながら、そこに神を感じるしかない」