あらすじ
「ストラーダ、一緒に逃げよう」。共に駆けるだけで、目と目を合わせるだけで、私たちはわかり合える。造船所で働く事務員、瀬戸口優子は一頭の元競走馬と運命の出会いを果たす。情熱も金も、持てるすべてを「彼」に注ぎ込んだ優子が行きついた奈落とは? 言葉があふれる世界で、言葉のない愛を生きる。圧倒的長編小説!
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これが正しい狂気と呼べるのだろう。
作中、印象的な擬音が繰り返されるのだが、最初は陶酔の美しい音だったのに、回を追うごとに呪わしい凶事を表すひびわれた音に変わっていくのが上手い。馬だけに。
畜生は畜生だと言い切るにはあまりに馬という生き物は美しすぎると怯えさせられる良い作品だった。私はこれかなり好き。
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川村元気の小説を読むのは初めてでしたが、最後まで緊張感を保ち続ける一級のクライムサスペンスでありながら、本質的な(ディス)コミュニケーションの話でもあって、なかなか侮れない悲喜劇だった。ハードルは高そうですが、『百花』に続く自らによる映画化にも期待したい。
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一つに執着することのリスクと歓喜を教えてくれる小説。
馬に惹かれる気持ちがとても間近に感じる不思議な小説でした。
馬って昔から人と過ごしていた歴史があるからこそ。
馬に魅力を感じるのかも知れませんね。
所有力が悪い方向に向いた結果がこの小説の伝えたいことなのでしょうか。
読む価値はある小説でした。
もう少し、この小説の世界に浸りたくなり馬に会いたくなりました。
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「言葉で伝えること」の絶対性を疑う
優子とストラーダは、言葉をコミュニケーションの手段として取らないという言う点で共通している。ストラーダは馬で話すことができない、優子は自分を守るために言葉を紡がないという違いはあるといえるが。そんな2人を周りは利用しようとするように見える。双方の対比が印象的だ。ところで人間にとって言葉で伝えるということは当たり前のことで、それが良いことなのか悪いことなのか疑う余地はない。しかし、その言葉は本当を映しているのだろうか。綺麗な情景についてもそのとき湧き上がった感情についても、まさしくぴったりだ、この言葉に違いないという表現を見つけることはできない。ストラーダと優子は言葉を紡がない、だからこそ目の前に広がる情景や自身の感じたことをとにかく集中して捉えることができるのではないだろうか。双方のコミュニケーションにおいてもそうだ。表面的な言葉でコミュニケーションを取るのではなく相手をよく観察し探り合う。それがストラーダと優子が通じ合っているように見えた理由なのではないか。人間は言葉で何事も表現しようとする。私自身も物事をきちんと言語化できるようにしなければならないと考え、「言葉」を理想化している節がある。しかし言葉では言い表せないものがほとんどなのではないかとこの本から考えさせられた。
夢を見ることの主観性
優子はストラーダに夢を見る。この馬は私のことをわかってくれている、私にとって特別な存在だと。申谷も麦倉も御子柴も馬に夢を見る、または見ていた。「夢」とは一般的にポジティブなものとして捉えられることが多いように感じるが、それは非常に主観的で周りからすれば狂気すら感じられる。夢を見るとはどのような状態なのだろうか。夢を見ている時の一つの特徴として、「自他境界が曖昧になってしまうこと」を感じた。相手に対して期待をする。自分だったらこうする、こうしてほしい、こうするべきだを押し付けてしまう。無意識のうちに自分の延長線上に相手がいる感覚だ。その特徴において考えると優子が見たような夢は決して現実離れした狂気ではない。私たちは誰かに、何かに夢を見ていて狂気を秘めているのではないだろうか。
「わかりあえるはずもない男たちに向かって、私は無理やり言葉を紡いだ。言葉にすればするほど、彼と創り上げてきた大切なものが壊れていくような気がした。」
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作中の「馬は、私たちに夢を見せるの」という言葉が胸に残りました。
私事で恐縮なのですが、わたしも馬に乗ることが好きです。といってもたくさん乗ったことがあるわけでもなく、今乗っているわけでもないのですが、子供の頃に観光地で乗った馬の記憶をずっと覚えています。乗ってみると想像より高い視界に、思ったより早く進む馬に驚いたことを今のように覚えているのです。
大人になってからは乗馬を習ってみたいと思いつつ、乗馬クラブが遠方だったり費用の点でなかなか難しく実現はしていませんが…。
そう思っていたので、今回のお話すごくドキッとしました。夢を見せられている、そうか私は馬に夢を見せられていたんだそう思うことができました。御子柴さんはわかっていたのですね。これは夢であると。優子さんは夢と現実の区別がつけられなくなってしまっていたのでしょうか…?現実だとわかっていたら、自分用にバッグは買わなかったのではないか、そう思いました。
私たち人間は分かり合えない時がある。
そんな時、人間は動物に救いを求めてしまう。
彼らが言葉を話せないからこそ、きっと自分と同じ考えをもっていてくれる、そう思い込んで心の拠り所にしてしまうのかなと思いました。
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あの瞬間、私はあなたに惹かれた
その代償は、一億円の横領…
造船所で働く彼女は、俯き加減で、目立たず、静かに生きてきた。あの国道で、彼を見かけ、目が合った瞬間に世界は変わった…
ゴクロウサン、、、金庫の暗証番号、、、
時代を感じつつ、あの日あの時から、沼にハマっていった…
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小さい頃、母はよく姉と私を牧場に連れて行ってくれた。
やぎやうさぎににんじんをあげたり、羊の毛をもふもふして癒されていた。
バター作り体験をしたり、牧場でしか楽しめないことをたくさんさせてくれた。
その中で母が一番好きだったのは、
サラブレッドを見にいくことだった。
サラブレッドは、競馬によく出る脚がスラっと長く美しい。光る毛並み、靡くたてがみ。
私もすごく好きな生き物である。
「お母さんね、馬の中でもサラブレッドが一番好き」
そう娘たちに話しかけているのに、母の瞳は目の前にいる馬だけを見ていた。
誰に聞いたのかは忘れたが、馬は人の感情が分かるらしい。敏感に感じ取って態度を変える。
母はすごく優しい人だ。
それを感じ取ったのか、サラブレッドは母の手を気持ちよさそうに受け入れ、鼻を撫でられていた。
馬はどこか神秘的である。
艶のある毛には品がある。触れたら暖かく生を感じる。
私にも分かる。
馬は美しく、どこか孤高の存在だということ。
「私の馬」は、一頭の黒い元競走馬に魅せられた主人公がその馬のために会社の組合金に手をつける物語だ。
主人公の優子は、造船所で何もない何も変わらない生活を送っている。過去のトラウマから言葉数が少ない彼女は、どこか異性間の関係性も苦手である。
そんな人生の中で一目惚れしたのは、
話さなくても心が通じ合った黒い馬「ストラーダ」
彼女と馬の関係性はまるで恋人だ。
言わなくてもお互いのことが分かる。お互いを好き合っている。
彼のために、彼女は誓う。
絶対彼から離れない。ストラーダは私のものだ。
この感想を読んだ貴方は、この愛をそんなわけないと笑うだろうか?
馬は人間の感情を理解する。
そんなはずはないと、2人を馬鹿にするだろうか?
そうじゃない。
確かに愛はあるのだ。ちゃんと。
ただ忘れないでほしい。
愛は時として片方のエゴの元で進んでいるということを。
この物語はそんな言葉にでない愛の物語だ。
ラストまで読めば分かる。
みんな共感できる感情が絶対に生まれる。
そんな作品だった。
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まさに私の馬。
勤めている会社の組合のお金に手をつけて馬を飼う。さらに騎乗する人のウェア。馬とお揃いのバッグ。
会社にバレないか、と読者もドキドキしながら読み進む。一方で「私の馬」とのコミュニケーションに惹かれる。
しかし…もちろん危ない方向に動いていくわけで、その切迫感と、馬との優しいコミュニケーションの両面を描き分けている。馬は素敵な動物だからハマっちゃうんですかね。この小説では競馬引退して競技をする馬なんだけど、馬が気になるようになりました。
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相手との信頼関係は、所詮独りよがりなのか。
読み進めていくほどに胸が苦しくなる。
平凡すぎる日々を淡々とこなすことだけを課された日常にずっと耐えて来た主人公が、横領という犯罪に手を染めていく過程は同情する部分もあり。
報われない結末ではあるが、妙にすっきりした納得の読後感。
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なんだかスッキリしない。宮沢理恵主演の映画思い出す。勝手に懸想されたストラーダも可哀想。「動物には言葉なんて使わなくとも、コミュニケーションをとる能力があるってことだ。人間だってそれができたはずなんだが、もう無理だ。俺たちはすっかり洞察したり共感する能力をなくしてしまったからな」
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川村さんの世界観は大好きなので、こちらもさっそく読んでみました。が、ちょっと物足らない感じがしたのは期待が大き過ぎたからでしょうか?
また、「ドゥダッダ、ドゥダッダ」な擬音がうまく耳に入ってこず、それもややストレス。
ただ、日常に疲れた優子がストラーダへ傾倒していく様やだんだんそれが”狂気”になっていく描写はさすがだと思いました。
そしてそして、最後の一文が「ただの馬だった」で締めくくられたところはやや拍子抜け、、、ではないでしょうか?
、、、映像化はないかな。
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言ってみればホストに入れ上げる様な感じで馬に入れ上げ会社の金を着服する話である。ただ、その馬との心情の通い合いが現実か妄想か迫真に迫る記述で埋め合わされお腹いっぱいになった。
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主人公の夢か現実場面かわからなくなる。エッチな場面とか無ければ中学の教科書になりそう。結局馬はどう思っていたのかな?ホストが出てきたところは唐突すぎるけど意味があるんだろうな。あんまり面白くなかった。
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馬の躍動する姿が目に浮かんでくるものの、読む前の本を手に取った時の期待を裏切っている。
馬の動きや躍動感などワクワクドキドキした感動が伝わってこない。
内容は素晴らしい❢
引き込まれ、情景が目に浮かんでくる。