東江一紀のレビュー一覧
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四人の語り手の手記により、大学で発生した毒殺事件と、その犯人と疑われた女性の運命如何を主筋として、イングランド王政復古時代の政治情勢や党派対立等を絡ませながら、物語は進んでいく。
ミステリとして見れば、信頼できない語り手の問題や語り=騙りといったことになるが、媚びず、卑屈にならず生きていくヒロインの人物造形が実に魅力的だと思った。
ヒロインのラストについては、ウーンという気持ちも拭えないが、語りの中で、そこまで含めて書かれているではないかと言えば、そうかもしれないと思わされる(ネタバレ気味の恐れもあるのでぼかしていますが、最後まで読まれた方には分かっていただきたい)。
本書では、実在の登場人物も多く、当時の医師の社会的立場だったり、輸血研究の先陣争いだったりと、興味深いトピックも面白いし、歴史小説としても読み応えがあると思われる。
ただ、少し注文が。年表や登場人物の表が付され、また訳者解説でも時代背景に触れられてはいるのだが、もう少し、この時代を巡るイングランドの政治党派関係や宗教的対立等について説明があれば、より人物関係の微妙さや出来事の意味合いについて理解が深まったのではないかと思う。 -
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先ずは本書の無事刊行を寿ぎたい。
本書の帯とカバー裏には、『薔薇の名前』とクリスティの名作が融合と謳われているが、本作を手に取り、内容ではない別の面での『薔薇の名前』との共通点を思って、しばし感慨に耽った。
それは、日本語訳がなかなか出なかったということである。『薔薇の名前』が映画化された頃、原作ではアリストテレスやキリスト教、異端審問等に関わる内容が満載だということで、それらに纏わる蘊蓄本がだいぶ刊行されていたのだが、肝心の原作の翻訳が待てど暮らせど出ない、その出版社が東京創元社であった。
翻訳者の一人である日暮氏が、本書についての打合せの始まった時期のことを書いた文章を読んだが、20年以上前から作業は開始されていたようだし、訳者の東江氏の御逝去という事情もあったりと、本書刊行まで難航したことが窺える。そうした困難を乗り越え、刊行に至り、この大作を読むことができたことに、何はともあれ感謝したい。
感想は、下巻にて。 -
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MITで物理学を主専攻していない学生向けに行われている物理学講義を書物化してくれた一冊。
物理学を主専攻していない学生向けとありますが、(大学で物理を勉強していた自分の感想だと)高校時代物理が好きだった/得意だったか大学で物理を勉強していたとかでないと本書の面白さを理解するのはちょっと難しいかなと思いました。
(また、じっくり理解しながら読み進めるのに結構時間がかかりました。)
あらためて物理は面白く、知れば知るほど思考力の幅が広がりそこから新しい何かを生み出せそうな気もするので、人生の最後まで少し地道に勉強していこうと思った一冊でした! -
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MITの一般教養の物理をやっている先生による本。講義の様子は動画で公開もされている。前半はその授業の内容に準じている様子で、後半戦は専門のX線天文学についてその歴史を自分の体験で語る。後半はちょっと難しいといえば難しい。
ヒッグス粒子のノーベル賞のとき、理論物理学者と実験物理学者のどちらに賞が送られるべきか(実際は「理論」のほうだった)議論されているのを見かけたが、著者は実験物理学者。だからか身近な現象に根ざした(虹とか)話が多くて素人にもしたしみやすい。とにかく測定の精度の大事さを強調するところもさすが。「ここでわたしが、天体物理学の理論の大多数はいずれ誤りであることが判明するなどと断言しても、同業の理論家たちの機嫌を損ねる心配はないだろう。そんなわけで、わたしを含めた観測天体物理学者の多くは、大半の理論にあまり注意を払わない。」
・年周視差により数千光年までの恒星との距離を測ることができる。太陽に最も近いプロキシマ・ケンタウリ(4.3光年)の年周視差は0.76秒角。10セント貨を3.5kmはなれたところに置くと1秒角。月を1800枚にスライスしたのも1秒角。天文学には精密な観測が必要になる由。
・ケフェイド変光星は光学的輝度と変光周期に相関がある。これを利用して1億光年までの距離を測ることができる。
・17世紀半ばに気圧計を作ったのがトリチェリ。密度の高い液体ほどコンパクトに作れるので、水の13.6倍の密度を持つ水銀を使った。長さ1mのガラス管に水銀を注ぎ、管の口を指でふさいでひっくり返してから水銀を満たした深皿に入れて指を離した。水銀がいくらか流れ出したが76cmの高さの水銀柱ができた(気圧の変動により上下する)。管の上部にできた空間は、実験室でもっとも初期に作られた真空のひとつとなった。
・飛行機を飛ばす力。ボーイング747を例にすると、揚力の80%以上が反作用揚力(翼の下を流れる空気が下向きに押されることによる)、20%未満がベルヌーイの揚力(翼の上下の気圧差)。→なんかこの説は間違いらしい。よくわからん。
・虹を見つけるコツ。太陽に背を向け、自分の頭の影を見つけ、自分とそこを結ぶ線から全方向に42度離れた位置に注目する。また、虹の内側(青い側)の空は明るいが、外側(赤い側)の空は暗い。光の屈折の性質による。
・水滴の代わりにガラスでも虹を作れる。黒い厚紙、スプレー式透明接着剤、球状で無色透明のガラスビーズ(直径0.15から0.25mm)を使う。
・深宇宙さえも完全な真空ではない。地球上でつくりうるどんな真空よりも完全な真空に近いが、プラズマと呼ばれるイオン化した気体がおもに存在する。
・ワイングラスなどの共鳴。どこかから余分なエネルギーをもらえるお得なシステムのようにも見えるが、実際はその固有振動数において投じられたエネルギーを最も有効に活用しているだけ。
・長い縄跳びをじゅうぶんに速くまわすと、縄がふたつをの弧を描く。中央に動かない1点(節)ができる。縄が二次固有振動数で振動し始めたのだ。振動するものはすべて複数の固有振動数を持っている(三次以上もある)。楽器の弦は同時に複数の固有振動数で振動して倍音を出す。
・物質の中には正電荷を引き寄せるものと、正電荷を手放して負の電荷を引き寄せるものとがある。それら相反する物質同士をこすり合わせるとそれぞれ逆の電荷を帯びる。それを表に並べたのが帯電列。
・この地球上でわたしたちと関係のある原子・分子のほとんどは電気的に中性。室温の純水であれば1,000万個の分子のうちイオン化しているのは1個だけ。
・ボルトとは電位の単位である。例えばアメリカのコンセントのふたつの穴の電位差は120ボルト。電場の強さはボルト毎メートルであらわす。
・平均的な雷が放出するエネルギーを電力に換算すると1兆ワット。しかいs数十マイクロ秒しか続かないので、1回の落雷の総エネルギーは100ワット電球1か月分くらい。
・高周波の電流は導体の外側を流れる(表皮効果)。雷の時、車のなかが安全な理由はこれ。ただ最近はグラスファイバー製の部品が増えているので危ないかも。
・ヒトは100ジュール/秒の赤外線を発している。100ワット電球と同程度。
・蟹星雲(牡牛座X-1)は1054年に観測された超新星爆発の残骸で6,000光年離れている。1000年後の今でもX線を放出しながら天文ショーが続いている。
・中性子星は高速で自転する。フィギュアスケート選手がスピンする時、伸ばした腕を体に引き寄せるとスピンの速度が増すのと同じ理屈(角運動量の保存)で恒星時代の自転が加速する。蟹星雲の中性子星は30回転/秒で、これまで観測された最高のものは716回/秒。おおくの中性子星は磁極から電波ビームを発するが、磁極と自転軸にずれがあるため、観測する側としては間歇的にビームが出ているように見える。単独パルサー。
・われわれの見ている星の1/3が連星である。一方の星は軌道の半分で地球に近づき、残りでは遠ざかる。もう一方は逆の動きをする。それぞれのスペクトルに赤方偏移と青方偏移の吸収線がそれぞれ見られる。それで連星系だとわかる。
・惑星の公転周期は17世紀になる前ずっとから高い精度で知られていた。太陽と惑星の距離も高い精度で知られていたが、あくまで相対的な尺度(例:金星と太陽の平均距離が地球の72.4%)でだった。→天地明察 -
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ネタバレ映画を見てから原作を見たが、リーマンショックの引き金を起こしたサブプライムローンの仕組みを非常に分かりやすく解説すると同時にそこで実際に何が行われていたか生々しくつづっている。崩壊に賭けた人は決して運よく勝てたわけではなく、きちんとしたロジックに基づいて崩壊に賭けているのが興味深い。周りに流されずに自分の頭で考え続けることが成功に繋がっている。あとは金融ってモラルが求められるはずなのに、実は人のお金で商売するので、最終的には無責任になるんだなーと思った。本当の崩壊というのは数十年に一回の単位で発生するので、前例主義が当てはまらないこともよくわかった。
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世界中の景気に冷や水を浴びせかけたリーマンショック。それはアメリカの不動産を担保にしたサブプライムローンの破綻が発端でした。そのバブルがはじけるまで、サブプライムローンを売りまくっていた金融市場において、その破綻を予期した人たちが存在し、その人達がどのように考えて行動していたのかを詳しく追ったノンフィクションです。
実は私自身も金融商品の仕組み、取引の仕組みがよく分からず、サブプライムローンと言われてもその仕組みもよくわからず、その辺の知識を得られることも期待して読んでみました。読後の印象としては、読んでも分からない部分も結構残りました。もう少し金融商品の知識を得てからこの本を読んだらもっとスリルや緊迫感を感じることが出来たのではないかと思います。
ただ本書から当時の金融市場の大きな流れは掴めますし、取り上げられている人物の描写も丁寧で、読んでいて辛くなることはないと思います。文庫本ですからお値段以上の内容と言えるのでは。 -
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ネタバレ日本が過小評価されているし、翻訳ものなので読みづらいという点もあるし、星を3つにしようか4つにしようか迷ったが、日本のマスコミが取り上げない視点で書かれていることが多いという点で、やはり参考になる本だと思う。
日本のマスコミが取り上げないのは、この本の考え方が的外れだからだ・・・という反論は十分に成り立つと思う。が、日本の中にいれば、この本は日本のことを過小評価しすぎていると思えることであっても、やはり欧米からは、さらには新興国勢力からでさえも、日本の存在感がそのように見えてしまう、というのはあるのだと思う。そしてそのことを肝に銘じて、これからの日本のあるべき姿を考えていくことが大事だし、それができれば、この本の最後に書いてあったように「日本が没落していくという予測は外れる」のだと思う。
また、日本とは経済的、政治的関係が希薄なためにやはり日本のニュースなどではあまり取り上げられないような国や地域も、これから2050年までに存在感を増して、日本を凌駕するような国際的地位を確立する、という可能性を意識させられたという意味でもやはり有益だったと思う。
とにかく、2050年、そしてその先も、今までの常識に基づいて行動していれば安泰という世界ではなくなっている、特に日本はまさにそうなのだ、ということを肝に銘じておきたいと思った。そのためにも、P476の、高齢化問題のスペシャリスト、ポール・ウォレス氏の言葉を常に意識しておきたいと思う。
「今後、世界に先駆けて高齢化社会に突入していく日本にとっては教育が最重要課題となるはずです。何も若い人ばかりではありません。この世の中が変化していく限り、どの年齢であっても、教育を受け続けられ、社会の変化に対応し続けられる社会を作るべきです」 -
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NHKで放映された「MIT白熱教室」の元となった本。高校で学ぶ物理学だけで、いかに幅広い自然現象の仕組みを理解・記述できるのか、という事を数式を用いずに、また非常に分かりやすい例を用いて解説します。
1章から9章までは力学や電磁気学、波の性質などを身近な現象を切り口に扱います。「人間はどれくらいの長さのストローからジュースを吸い上げる事ができるだろう」、「雷はなぜ大きな音がするのだろう」、「楽器の音はなぜ高低の調整ができるのだろう」、「飛行機ははなぜ飛べるのだろう」などなど、きっかけとなる疑問は非常にシンプルです。
10章から14章は著者の専門であるX線天文学の歴史とその最先端の解説です。こちらはちょっと難解でした。
本書の前半部分(1章~9章)こそが、本書の最大の読みどころと感じました。高校生が物理学を授業で学ぶにあたり、是非読んでみてはどうかと感じます。「物理=難解でハードル高い」という思い込みをしている人達を少しでも減らせることができるかも。 -
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NHKでも放送されていたMITの名物教授、ルーウィン教授の本。TV放送を見ていましたが、それが良かったので本でもじっくり読んでみたくて購入しました。もちろん、ルーウィン教授の授業は動画でみるべきですが、その後に本をゆっくりと読むのも良いものでした。
本書では序章にユダヤ人であった父の思い出が載っている点が印象的でした。すごく陽性に見えるルーウィン教授にこうした暗い過去があるのが意外でした。特に、ユダヤ人である父が徐々に行動を規制され、公園に入れないようになり、墓地くらいしか入れなくなったため、”わたしは今でも、父と近くの墓地をよく散歩していたことを思い出す。”というのがせつない。 -
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MITの人気教授による物理学講義の書籍化、つまり、サンデル教授の「これから正義の話をしよう」の物理学版といったところ。
すべてがすべて面白いというわけではないが、力学だけでなく、光学や著者の専門であるX線宇宙観測を含んでいるのは珍しいし、目新しい。個人的には、原子物理学や量子力学を加えてほしかったが、他に良書も多いので、そちらを読めばよいかもしれない。
様々なウェブサイトのURLが記載されており、そちらで図版や動画により、講義内容のイメージを更に膨らますことができるというのは、現代の物理学講義本らしいというか、アメリカの大学の講義らしい感じがする。英語に不自由しないなら、公開されているMITの講義の動画を見たら、もっと楽しめるのではないかと思う。