東江一紀のレビュー一覧
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リーマンショックの頃、私は小学生だったので言葉は聞いたあるし、様々な株のチャートが凹んでいるのは見たことがあるが深く理解できたのはこの本が初めてだった。
人類が生み出した資本や株式市場などの虚構の世界で正気とは思えない錬金術を考え、さらに多くの人は疑うこと・考えることを諦めた。
いつになるか分からないが必ずまた市場がパニックになる時が来ると考える。それはリーマンショックよりも前から起きている負の連鎖として。
人間の過ちは、大きな軌道修正をしないとまた同じ軌道に戻ってしまうのが、常であると思う。2026年の中東情勢も振り返れば9.11や湾岸戦争、イラン・イラク戦争が背景にあり反省をしてこなかった代償である。 -
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マイケル・ルイスの本、はじめて手に取りましたが、予想をはるかに超えて面白かったです。2008年に引き起こされる世界金融危機の発端となるサブプライム・モーゲージ債。これが貸し手の金融機関と借り手(所得の低い米国人)の間だけでしたらここまで被害は大きくならなかったのでしょうか、いわゆる投資銀行と呼ばれる連中が、錬金術をはじめるわけです。しかもタチが悪いのが、錬金術をはじめた投資銀行のトップが、事態を全く理解しておらず、S&Pなどの格付け機関もその金融商品(CDSやCDO)について理解していないのです。
本書では、この錬金術に気づいた極めて少数派の人々が、その人物像も含めて丁寧に描かれており、とても興味深く読みました。また複雑な金融商品についても、素人にもわかりやすい説明がされているので、すらすら読めました。本書にも書かれていますが、金融機関の人々は、あえてわかりづらいネーミングをします。ですから金融商品の名前は額面通りに受け取るのではなく、自分で名称をつけてしまう方が賢いやりかたでしょう。米国の投資銀行、そして格付け機関も共犯者と言っていいと思いますが、世界経済を破綻寸前においやった人々の実話と、それに立ち向かった(逆張りした)少数の人々(本書の主人公)の物語は、これからも語り継がれていくべきだと思いました。 -
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ネタバレ下巻は暗号解読の達人である幾何学教授の手記から始まる。
上巻は、まずヴェネツィア人の医学生であるコーラの手記から始まったのだが、真面目でお人好しの好青年と思われた彼の姿は、ふたり目の法学生プレストコットの手記によって、いささか様相が変わってくる。
重大な事柄の記述漏れ、明らかな噓。
コーラはなぜ、ロンドンではなくオックスフォードにやってきたのか。
しかしプレストコットの手記も変だ。
尊敬する父の汚名を返上するための彼の行動は、どう見ても常軌を逸してきている。
ヒステリックなその行動を、彼は、さらに魔法をかけられたからだと思い、その魔法から逃れるために、サラを無実の罪に陥れ、死刑へと向かわせる。
そして下巻。
暗号解読の達人であるウォリスは国王に仕えたり、革命後はクロムウェルに仕え、王政復古3年後の今は再び王に仕えるという定見のなさ。
信仰も英国国教会から長老派、そしてまた国教会と行ったり来たり。
要はいつも勝ち組に乗る男が、コーラとプレストコットの手記を読み、その嘘を暴き真実を語る…ことになっているのだけど、これが過去最高に信用できない語り手。
とにかく自分の考えに凝り固まっていて、間違いを指摘されても聞く耳を持たない。
そもそも、最初にコーラの噂を聞いたときは、トルコの海賊にフィアンセを殺されて復讐の鬼になったがりがりに痩せた男だったはずなのに、目の前に現れた小太りの陽気な男をすんなり受け入れる感覚がわからん。
普通なら、「誰だ?これは」ってなるんじゃない?
もう偏執狂と言っていいくらい視野が狭い。(実在の人物なのに、いいの?これで)
最後の歴史学者ウッドが3名の手記の噓や矛盾を暴き、真相を解明するという流れなんだけど。
解明というか、彼は最初から真相を知っていましたね。
ただ、その意味を理解していなかった。
なぜならば、彼は人付き合いの苦手な世間知らずのお坊ちゃんだから。
噂が耳に入るのがいつも遅い。
そして、彼すらも、信用できない語り手だと思うのが、サラについて語る部分。
今なら正気ですか?と言えるその描写も、当時は本気で信じてはいるのだろう。
だけど、真実かどうかはちょっと疑問。
上巻はグローヴ教授毒殺事件の謎が物語の中心と思っていたのだけど、下巻に入るとイギリスという国の歴史の中のブラックボックスが中心になっていた。
王制と共和制、国教会とカトリック、そしてゆれるイギリス国内を虎視眈々と狙う周辺諸国。
どの語り手の真実も、事実から少しずつ乖離していて、最後まで読んでも全然スッキリしない。
だけど面白かったんですわ。
実在の人物が多数出てくるし、歴史がさらに負わせた過酷な運命には愕然とするけれど、続きが気になってしょうがない。
衒学的で難しい本なのに、ぐいぐい読んで、寝不足でございます。 -
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マサチューセッツ工科大学のルーウィン教授の物理学の講座を収録したもの。1章 物理学を学ぶことの特権 2章 物理学は測定できなければならない。 3章 息を呑むほど美しいニュートンの法則 4章 人間はどこまで深く潜ることができるのか 5章 虹の彼方に 6章 ビックバンはどんな音がしたのか 7章 電気の奇跡 8章 磁力のミステリー 9章 エネルギー保存の法則 10章 まったく新しい天文学の誕生 11章 気球で宇宙からのX線をとらえる 12章 中性子星から部落ホールへ 13天空の舞踏 14章 謎のX線爆発 最終章 世界が違って見えてくる
物理を理解しているのとそうではないのでは世の中の見え方が根本的に違ってくる。 -
購入済み
錬金術に気づいた極めて少数派の人々が、その人物像も含めて丁寧に描かれており、とても興味深く読みました。また複雑な金融商品についても、素人にもわかりやすい説明がされているので、すらすら読めました。
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モーゲージ債: ローンをかき集めて証券化したもの.リスクとリターンを階層別に切り分ける
サブプライム:劣位
誰かの人間の資産は誰かの人間の負債→モーゲージ債はこの負債をこねくり回して証券化 流動性が高まり効率性が生まれ負債を抱える側も低金利でローンを借りられるようになるという一見するといい話
→経済の発展って「貸し借りの発展」なんだな
主人公のアイズマンは裏表がなく,ある意味”空気が読めない”ところがあるけど
他人に流されず,自分で考える力を持っているとも言える
金を貸す銀行側が正常な判断ができなくなることはある 少し前だったらスルガ銀行がいい例.返済能力が行き詰まる融資を見つけたらそれはいずれ弾けるバブルなんだなあ.歴史は繰り返す
ブラックスワンにかけることは,痛みを伴う.
モーゲージ債の保険(CDS)の保険料,プットオプションのロング
”欲に訴える手がダメなら,次は不安を煽る”
なぜ格付け期間は爆弾見たいな債権に最高評価をつけてしまったのか
・格付けがザルであることを格付けさせる側(投資銀行)が見抜いてそそのかした
・消費者の信用度評価に用いるスコアがザルだった.
車の運転経験がゼロの人に,「この人は事故を起こしたことがない」とゴールド免許を発行する 見たいなスコアリング
具体的には出稼ぎのために移住してきた人(ローンを借りたことがないから当然ローンを焦げ付かせたこともない)に高い信用度をつけた.
意思決定で大事なことって「未知をなくす」ことだなあ
こういうブラックスワンでチャンスを掴むには
・世の中は案外合理的ではないという認識(外見はまともでも中身が杜撰で付け入る隙があるものが存在する)
・人の話を鵜呑みにしない懐疑心
・自ら真実に到達しようとする好奇心,執念,頭脳
・その日が来るまでメンタル・フィジカル(資産)がダメージを受けることになろうともブラックスワンが来るまで耐え忍ぶ忍耐力と余力
が必要,それを行動に反映する大前提として「自分は無知である」という謙虚さが必要.傲慢になったらそこで終わり
タレブみたいなひとがいっぱいでてくるし、みんな自分の行いが報われるまで物凄く「何か見落としているんじゃないか」と葛藤している。
ブラックスワンにかけるというのはその日が来るまでは報われない苦しみを避けられないらしい。
鶏小屋の鶏1000羽が「明日も餌をもらえる」と思っている中、自分だけ「明日は七面鳥にされる、今夜にでも逃げ出そう」と考えているように。
サブプライムの崩壊にかけていた人も終盤「金融そのものの崩壊」というリスクには振り回されたっぽい
いくら保険を買ってもその保険を支払う能力が相手になければその契約は意味ないもんな
”投資銀行の経営陣が,自行には十分な流動性があるという時,それは例外なく,流動性がないことを意味する”
→外見を取り繕うシグナリング 言葉だけじゃなくて行動でも
稀な事象ほど,発生確率が低く影響も小さいと誤解されがち.
ー>誰も見向きもしなかったプットオプションが暴落を機にとんでもない価値を持つようになる.
筆者は最後に,買っても負けても莫大な報酬が支払われるウォール街のシステムを避難している
今回のシステムの崩壊にかけた人はもちろん,今回のシステムの崩壊に加担する側の人間も雇われ先から数千万ドルの報酬を得ている
多分その仕組みは今も変わってなくて,タレブのいうSkin in the gameではない,ということだろう.
頑張っても報われない世界もあれば頑張らなくても(成果が比例しなくても)勝手にお金が入ってくる世界もある
そういう意味で世の中は公平に作られていないということをもっと早く知っておきたかった. -
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・安倍政権は1000兆円にもなる国家債務を返す当てもないまま、さらに国債を発行し、大規模な公共事業を約束している。日本国政府はまるで借金が膨張していくことを気にも止めていないようだ。それにも拘らず、日本国債の値段は下がっていない。日本の銀行が、他に融資先がないので買い続けているからだ。しかし、こんなことが永遠に続かないのは明らかだ。いつか破綻するのだが、問題は、それが「いつか」ということだけである。アメリカの不動産バブルの崩壊を予測し、CDOをCDSで空売りして大儲けしたヘッジファンドのいくつかが、今度は日本国債に狙いを定めはじめているようだ
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去年だったか海外出張の際に機内で途中まで観た『マネー・ショート』の原作。著者は『マネー・ボール』のマイケル・ルイス。サブプライムの証券化の胡散臭さにいち早く気付き、その破綻に賭けた3人(3グループ)の勝ち組を追ったノンフィクション。「勝ち組」とはいえ、それぞれが訳ありな生い立ちを歩み、その人生観を反映してか、投資銀行、金融市場、格付け機関に対する不信感や疑念が彼らの行動の原動力になっており、市場や投資銀行の破綻が実現しても暗い影を落としており、金融市場に対する鋭い問題提起となっています。およそ10年前の話であり、私もリーマン・ショックの煽りで転職活動が苦戦したので、色々と思い入れを持って読み進めました。読み応えあるので、債券市場や証券化に関心ある方にオススメですが、それ以外の方も楽しめると思います。
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正直、CDSなどの仕組みについては、さっぱりわからないまま読み終えた。著者が巻末のエッセイで、自分の母親を念頭に、と書いているけど、ざんねんながら、お母さんも一度読んだだけではわからないだろう。でも、それでも読み続けると思う。それはやっぱりノンフィクション作家としてのマイケル・ルイスの腕、というか、あふれんばかりの才能というか。人物の描き方、時代の空気。仕組みがわからなくてもそのざわざわした……でも表面的には何一つ変わることのない、異様な景色が伝わってくる。
東江一紀氏の翻訳も秀逸。
「リップマンという人物をできるだけ当たり障りなく評するとすれば、“当たり障りだらけの男”ということになるだろう。……けっして無慈悲ではない。無礼ですらない。少なくとも、本人は無礼にふるまっているつもりはない。単に、他人(ひと)の悪感情を極度に刺激するところがあるというだけの話だ」
「ジェイミー・マイは背が高く、はっとするような美男子で、天性の仕切り役というふうに映る。ただし、それも黙っていればの話で、口を開くと、日の出の方向から人類の未来に至るまで、すべてについて確信を持てずにいることが露呈してしまう」
――好きだ~(笑)
最後、著者が『ライアーズ・ポーカー』で辞任に追い込んだかつての上司、ソロモン・ブラザーズの元CEOだったジョン・グッドフレンドと会食をともにする場面は、静かでさりげないけれどエピローグとしてはまたとないものだった。「デビルド・エッグ」の話で結ぶなんてね。名前もいいし。
「素朴な卵がこれほど複雑な、それでいて魅惑的な商品になることに、誰が気づいたのだろう? わたしは手を伸ばし、ひとつ取った。空虚を装いで飾りたてたもの。その魅力はけっして色あせることがない」
――かっこいい。著者と訳者、才気の二重奏だ。