小川一水のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
初小川一水。大分類で言うと「時を超えた文通」もの。小分類で言うと「時間改変」、「宇宙SF」、「ファーストコンタクト」、なんでしょうか。
一見壮大なハードSFなんですが、舞台は概ね現代のコロロギ岳の天体観測所と西暦2231年の木星トロヤ群小惑星に係留されている宇宙戦艦アキレスの艦内だけ。
頭部が2014年のコロロギ岳に、尻尾が2231年の宇宙戦艦アキレスに引っかかった時空を漂う宇宙生物を救う為、人類の存亡をかけて200年の時を超えた文通大作戦が始まる!
この文通の手段が凄い、モナリザの裏に落書きしてメッセージを残すと言う荒業。
壮大な設定なんだが地道な文通作戦が効果をあげて無事に宇宙生物は解放さ -
Posted by ブクログ
見かけはライトノベルの様な軽さを醸し出しながらも、その実、久しぶりに新鮮なセンスオブワンダーであり、なかなかおもしろかった。未来が分かるが故に時間を改変しようとする話は良くあるパターンではあるが、新鮮なのは時間旅行ではなく、時間を超越した別の生き物たる蛇(生き物と呼んでよいか?)が二つの時間を結びつつ、なおかつ、過去と未来の意思疎通ができるものの、あくまでも時間の隔たりは厳然たるものとして存し、単純には時間改変ができないという不自由さに物語の面白さの肝があるという着想が良い。基本、時間改変ものはパラレルワールドものになり、改変された人間は、過去の自分と同じ自分でありながらも、違う時間軸に存する
-
Posted by ブクログ
ネタバレ―――陸も海も重素雲で覆われてしまった地球。
人々は、かつて高地だった「島」に住み、空中を漂う「浮獣」を狩り、その製品に頼って暮らしている。15になる不良少年リオは、無理やりその「浮獣ハンター」にスカウトされた。
年上の女性ハンター、ジェンカに鍛えられ、やがて訪れた充実の日々。最強の獲物を狙うという二人の夢も膨らむ。だが、この世界が重い秘密の上に成り立っていることはまだ知らない。
小川一水のフライトSF
ターゲット的には高校生ぐらいなんかな
王道という言葉が似合う、少年の成長ストーリーと
それを彩る設定,サブキャラ
小川一水作品には、読後感がさわやかなものが多いが、これは中でも群を抜いて -
Posted by ブクログ
小川一水の作品は必ず人間が中心に据えられており、SFとしてはもちろん、ジャンルを超えて"物語"として面白い。逆に、例えば野尻抱介は人間よりテクノロジーに重きを置いているように思われ、アイデアは面白いが、物語としては今ひとつなように思う。
今回の短篇集の中では「俺たちのピュグマリオン」「白鳥熱の朝に」が好み。前者は、来るロボット化社会のイメージが描かれており、下世話なところも含め、リアリティがある(はやく実現して欲しい)。後者は、『天冥の標』の冥王班(仮面熱)の原型となる話のようにも思え、いちファンとしてなかなか興味深かった。小川一水はパンデミックの書き方がうまい。
『煙 -
Posted by ブクログ
人間とテクノロジーの関わりを通じて、人の気持ちや生き様に温かな眼差しを注ぐ短編集です。
ジャンルは勿論SFですが、主軸はあくまで人間とその営みであり、SF的要素がそれらを絶妙なバランスで惹き立てています。
現代より少し先の未来――それは数十年先か、はたまた明日か――という現実と地続きの時代設定も読者に親近感を与えます。
短編全5作が収録されていますが、個人的に少年ロボットとの雪夜の邂逅を描く「イブのオープン・カフェ」が好みでした。
また最後に収録されている「白鳥熱の夜に」の、それまでの作品とはトーンが少々異なるある種の厳しさも必見です。
軽い読み口と誠実な登場人物達の愛おしさから、きっと -
Posted by ブクログ
A.C.クラークの「渇きの海」を読んだのは中学生の頃だった。本作は同じSF設定のディザスターものだが、最新の科学知識が反映されている分、現実的リアリティの面で一歩リードしているのは当然だろう。だが、センス・オブ・ワンダーという面ではどうだろう。SFにしか出来ない自由なイマジネーションがどれだけ発揮されているだろうか。「渇きの海」での、月にある“流れる砂の海”という設定。そこに沈んだ遊覧船のレスキューという物語は僕の想像力を強烈に刺激した。
断っておくが、僕は本作を評価しない訳じゃない、それどころか凄く楽しんだ。様々なガジェットを駆使して宇宙ステーションを実感させてくれるし、そこで展開する物語は -
Posted by ブクログ
―――軌道ステーション“望天”で起こった破滅的な大事故。
その残骸と月往還船からなる構造体は、無数の死体とともに漂流を始める。だが、隔離された気密区画には数名の生存者がいた。
空気ダクトによる声だけの接触を通じて生存への道を探る彼らであったが、やがて構造体は大気圏内への突入軌道にあることが判明する…。
真空との絶望的な闘いの果てに待ち受けているものとは?小川一水作品史上、最も苛酷なサバイバル。
小川一水ブームはこれで一旦落ち着けよう
宇宙を相手どった長編サバイバル
著者があとがきでリアリティを極めることに挑戦したと書いているように
素人目にも「起こりそうな」話になっている。主人公たちに、