鳴神響一のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
神奈川県警初の心理職特別捜査官となった真田夏希。婚活相手との食事中、みなとみらいで爆発事件が発生する。警察組織では異色の存在である夏希が、心理や行動を分析しながら事件の真相を追う。
「脳科学捜査官」――まず、この肩書きに惹かれた。
心理や行動を分析し、そこから独自の推理を組み立てていく。それだけで答えを出す安楽椅子探偵ではなく、自ら現場へ足を運び、手掛かりを探し、捜査によって一つずつ裏付けていく。このスタイルが面白い。特に後半は推理と捜査が次々につながり、真相へ近づいていく過程にスリルと緊迫感があって引き込まれた。
警察組織の中では異色の存在だけに、時に孤立する夏希。それでも独自の推理を実績につなげることで、少しずつ周囲を納得させていく。孤立しているようで、実は理解し支えてくれる味方もいるのもいい。
一方、SNSを利用して犯行を予告し、世論まで味方につけていく犯人。しかし、その空気が一瞬で反転する展開も面白い。孤立していた夏希が実績によって周囲の信頼を得ていくのとは対照的に、世論を味方につけていた犯人が逆に孤立していく。その変化にはSNSが持つ怖さも感じた。
そして印象に残ったのが、犬嫌いの夏希と警察犬アリシア。最初はどうなることかと思った二人?が、いつの間にかうまくやってしまう。この関係がなんともいいし、今後どうなっていくのかも楽しみ。
心理や行動分析の面白さは十分に味わえた。それでも“脳科学捜査官”という設定には、まだまだ見せていないものがありそうに感じる。
もしかすると、まだほんの入口を見ただけなのかもしれない。そう思わせてくれる長編シリーズの幕開けだった。夏希とアリシアの次の捜査も追いかけたい。