吉野弘人のレビュー一覧
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突然の事故で父親を失った相棒リックが一時的に「マクマートリー&ドレイク法律事務所」を離れ、一人で弁護士業務を請け負うことになったトム。そんな最中、事務所に一人の少女が現れ、殺人事件の容疑者として逮捕された母親の弁護をトムに依頼する。被害者はトムとリックにとって宿敵の男。そして容疑をかけられた母親は、あの因縁の人物だった‐‐。自身に忍び寄る「影」に不安を抱きながら、「まさか」の男たちを相手に、誰が見ても負けと思われる「最後の裁判」に挑むトム。彼と、彼を全力で支える者たち、そして全力で立ち向かう者たちを描く、大好評胸アツ法廷シリーズ、待望の第3弾!
正統派のリーガルミステリが帰ってまいりました。満足です。大甘の星五つ! -
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ヘニング・マンケルのシリーズ主人公バランダーのシリーズは、主人公の心臓が止まるところで終わるという驚愕のエンディングを迎えたが、本書では、トム・マクマートリーが同じようなエンディングを迎えるのか、はたまた事件解決と主人公の寿命とがどのような絡み合いを見せてゆくのか、という事件とは別種のはらはら感に読者は付きまとわれることになる。
そして本書で初めてわかったのだが、『ザ・プロフェッサー』『黒と白のはざま』は全四部作シリーズの前半部分であったのだ。本書が後半の一作で、全体をなす起承転結で言えば「転」となる作品になるのかと思う。
つまりこのシリーズは、次作を持って一端終わりを迎えることになるらしい。その「転」独特の緊張感は、本書後半になって加速してゆく。最初はどう見ても逆転しようのない勝機のない裁判に、なぜトムが挑むのか? と疑問符付きのトムの直感任せでストーリーは始まる。どう見ても明らかに見える犯人像、とトムを訪れる14歳の少女の奥に見え隠れする真実らしきものへの主人公の拘りが、本書を引っ張る最初の力として提示される。
そして相手も味方もまた前二作でトムとスクラムを組んだかつての教え子たち。そう、またしてもスポ根アメフト時代からの師弟しがらみを土台に、濃い目の魅力的なサブキャラクターたちが、それぞれの立場からトムを囲繞し、丁々発止の駆け引きと、二転三転する事件の奥行きに向けて活躍してくれるのである。
トムの仲間たちが敵味方に分かれることによるトムの心境もさることながら、それぞれが引きずってきた前作までの物語と、さらに覆されトムたちに闘いを挑んでくる巨悪たちの非情さが、よりスリリングな物語を紡いでゆき、物語は底が見えなくなる。
死と闘うトムの先行き、相対する人間模様と、愛憎の複雑な図式。一作目から順番に読まないと、前作へのネタバラシにもなりかねない内容であることを留意されたい。そして最終作へと続いてゆく、まだまだ目の前に積まれた宿題たち。眼が離せないシリーズの「転」期を、是非味わって頂きたい。
そして作者のあとがきで、作者の周辺の状況も明らかになるのだが、作品の誕生秘話としても、作風を決定する上での肉付けの意味でも重要な裏話に読者は触れることになります。ますます応援したくなる本シリーズ、最終作がとにもかくにも待ち遠しい限り。 -
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一気読み。本書は訳者”持込み”によって出版が実現したと巻末にある。もう…よくぞ見つけて持ち込んでくれました!ありがとうございます。感謝と拍手を贈りたいです。ストーリー自体は至ってシンプルな法定ミステリー。しかし主人公のトム、脇役のリック、ドーン、パウエル、そしてボー。みんなキャラが魅力的で生き生きとしてる中で、極め付けは愛犬のブルドック「ムッソ」、犬はやはり素晴らしい生き物であり人間の一生の友だと実感。中盤からそれぞれの人間性の高潔さにチョイチョイ眼を潤ませたが、ラストでは、やはりそうよね…と…泣いてしまった。まさに胸熱痛快法廷エンタメスリラー。
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5歳の時、父をKKK(白人至上主義団体)に殺害されたボーは、そのリーダー・アンディに正義の裁きを受けさせる為、故郷のテネシー州ブラスキで唯一の黒人弁護士となった。そして父が殺された45年後のその日、アンディが同じように殺された。ボーは逮捕され、あらゆる証拠がボーを犯人と告げている。弁護を頼んだ恩師とその相棒は真相を探るが、KKKの過去を消したい街の思惑や、何者かに雇われた殺し屋に阻まれる。絶体絶命まま迎えた裁判の最終日、意外な人物による証言で法廷は大混乱に…。閉廷後も、ラストまで衝撃の連続だった。全ての謎がスッキリ解決されたが、45年の執念はボーに苦しい結果となった。
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ちょっとちょっと、これ最&高なんですけど!!??
リーガルものを小説で読むことないのだけれど(海外ドラマで見るのは好き!)これは読んでよかった。映画を見るようだった。
正義は勝つ、というシンプルなものではあるが、ラストは胸にこみ上げるものがある。
68歳のリタイアしたおじいちゃんが主人公というのもいいよね。
続編もあるのかしらあるのかしら。
わたしはボーが好きだよ。
それにしてもあのリックのピンチのところで、トムがバーンと法廷に現れたときの胸熱感は、キューティブロンドのエル・ウッズが全身ピンクで現れた時に等しいな。待ってたよおおおおおお!と叫びたくなったよ。
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46年前テネシーで黒人の父がKKKのメンバー10人に殺された。息子ボー・ヘインズは復讐を誓い、弁護士になった。KKKの指導者だったアンディ・ウォルトンが殺された。ボーはしょっちゅうアンディを殺すと言いふらしていた。ボーは逮捕され、ロースクールの教授だったトム・マクマートリーに弁護を依頼する。証拠はボーの有罪を示している。担当検事のヘレンは負けなし。絶体絶命の裁判は・・・
うおー!2020年ナンバーワンだ。
前作「ザ・プロフェッサー」もすごく面白かったが、それ以上かも知れない。解説を読んでいて、確かに前作は誰がやったかは分かっているのでミステリー的要素は少なかったけれど、本作にはミステリー要素は多い。ボーが殺したのでないなら誰がやったかなフーダニットと、ボーの父親は45年になぜ殺されたかのホワイダニット。それだけではなくさらにもう一層下にまだネタが沈んでいる。
勧善懲悪、スカッとする小説でもあるし、アメリカの暗い歴史を学ぶ小説でもある。次作のThe Last Trialはめちゃくちゃ面白いらしい。小学館さま、絶対翻訳出して下さい。お願い致します。 -
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面白かったぁ〜。
これぞ、パスタ小説!(パスタを茹でてる時間も読んでしまうという村上春樹のたとえ。)
68歳のトーマス・マクマートリー40年もの長きにわたりアラバマ大学のローククールの教授。妻をガンで失い自身も膀胱がんになり、信じてた親友にも(憎っくきジェイムソン・タイラー)手ひどく裏切られる形で大学を追われる。
ここであらすじを書いてもしょうがないよんね。
とにかく私のすきな法廷ミステリー。
リックが絶体絶命の時に現れた時は心の中で喝采。
アシスタントのドーンとは上手くいきそうだね。
最後はめでたく勝訴するんだけど、いったい何人が犠牲になった?
証言しようとしてたミュールは殺されるし、工場長のバラヤードのゲイのことを脅され、自殺に追い込むし、会社の違法なやり方でスピードの出しすぎで事故を起こしたトラック運転手のデューイの妻も脅され身を持ち崩し自殺させるし、
死者が多すぎて気持ちが塞ぐよ。
そうそう愛犬のムッソ(老犬)トムを山猫から守って命を落としたのには泣けた。
でも、トムの元教え子でトムを尊敬してやまないボーセフィスが子犬をプレゼントしてくれたしね。
マクマートリー&ドレイク法律事務所を開設。
シリーズ第2弾が今から楽しみ〜。 -
Posted by ブクログ
骨のある小説かどうかは、どういうわけか最初のページからわかってしまう。その期待はたいてい裏切られない。ストーリーではなく、作家が書こうとしているものが、文体の後ろからにじみ出てくるような、そう、気配のようなもの、小説の持つ気品のようなものだ。
そうなるとストーリー展開も楽しくなる。なかなかタフな物語になることは、書き出しで摑めているからだ。
南部出身の法律家出身の作家は誰? 大抵の読書子ならば、ジョン・グリシャムと答えると思う。この新手の作家ロバート・ベイリーも実は南部出身の法律家なのである。先人グリシャムの権威を傷つけないばかりか、やはり米南部生まれのリーガル・サスペンスには骨がある、との好印象を深めたのが、この作品だ。
主人公は、元アラバマ大のフットボーラー、法律家として一年間、法廷経験を積んだと思った途端、母校の法律の教授として招かれたため、以後、多くの法律家を世に送り出す役目を果たすことになり、現職を続けている68歳。しかし彼に四十年ぶりの法廷という転機が訪れる。
彼が育てた法律家の、悪い種子のような若手弁護士が彼を大学から追い出した上に、醜聞の熨斗まで付けて世界から追い払おうと試みたのだ。妻に先立たれた上に、膀胱癌まで患ってしまう人生最悪のタイミングの状況下で、一件の訴訟が持ち込まれる。一家が全員巻き込まれてしまった惨たらしい交通事故、その原因となった過重労働を常態化させていた悪徳運送会社を訴訟する遺族は、教授の学生時代の恋人だったのだ。
教授生活で課題を残してしまった青年弁護士リックに託して、世間から隠遁した教授だが、彼の再生は如何に? 悪徳企業が次々と打ってくる卑劣で残酷な包囲網に対し、チームはどう闘ってゆくのか。
人生の再生を賭ける人間たちを骨太に描いて、疾走するストーリー展開が読者を巻き込んでゆくパワフルな小説。こういう小説が読みたかった。しかもこの作家は知っている。どうすれば読者が、悪党どもに怒りを感じるかを。どうすれば読者が犠牲者たちに悲しみの情を抱くかを。どうすれば、悔しさに歯噛みする想いを抱くかを。そういう悪党どもに、どのように闘ってほしいかを。
そしてどうすれば、60代後半の癌治療中の世捨て人が、難関に立ち向かおうという気持ちを再び持つほかを。どうすれば読者が心からのエールを送りたくなるかを。
本書は、翻訳者が出版社に原作本を持ち込んで出版の運びとなった作品だそうである。翻訳者の吉野弘人のグッド・ジョブに深い感謝を。さらに未訳は現時点で三作。すぐにでも次作を読みたい作家がまた一人ぼくのリストに加わった。
最後になるが、世捨人がもう一度頑張ってみることにした、その気になる転換点なのだが、最後の最後に明かされる。粋な構成である。
さらに実在のアラバマ大フットボール・チーム、クリムゾン・タイドの伝説のコーチの登場に始まり、実在のチームメンバーたちも共演する。なるほど。作者のフットボール愛の熱さが、確実に作品の熱さに繋がっていたのだ。 -
Posted by ブクログ
日本ではあまり大きく報道された感じがしないVWのディーゼル排ガス不正問題に関する本だが、VWの歴史、そして、VW創設者であるフェルディナンド・ポルシェの孫でVWのCEOであったフェルディナンド・ピエヒやその一族のVW支配の実態なども詳しく記されていて、VWが不正を働いた背景・遠因が分かるようになっている。
VWの不正が発覚するきっかけとなった路上実験の話も面白いが、不正発覚後も非を認めて改善しようというのではなく、むしろ、隠蔽工作に走ったり、現場の責任にして「私は知らなかった」と口をそろえる幹部たちなど、その闇は深いと感じられた。
それにしても、クリーン・ディーゼルが全然クリーンじゃなかったのに、堂々とそういう宣伝が行われ、世界中の人たちがそれを信じていたなんて、なんと壮大な詐欺だろう。 -
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この本の登場人物でAI捜査官ロックの開発者オコネド教授の言葉にハッとさせられた
"警察が実際の証拠よりも偏見に従うことで、愛する人を失うというのがどういうことか知っています。それが、わたしがロックを開発したそもそもの理由です。"
多くの人が仕事などで実際にAIを使い始めているから、それよりも劣るAIを登場させたら時代遅れなストーリーに感じてしまう
既にすごい性能になってるAIの延長線上を想像して書くのはほんと難しそう
だけどこの著者がデビュー作で描いた未来のAI捜査官には絶妙なリアリティを感じた
そしてそれに加えて、人間の感情の機微(親子の愛情や喪失や欲望)とそれに振り回されるAI捜査官を描くことで、両者の前向きな共存のあり方が提示されていたと思う
I was deeply struck by the words of Professor Okonnedo, the creator of the AI investigator "Lock" in this book:
“I know what it’s like to lose a loved one because the police followed their prejudices rather than the actual evidence. That is the very reason I developed Lock.”
Since so many of us have already integrated AI into our professional lives, featuring an AI that is less capable than our current technology would make a story feel instantly dated. It must be incredibly difficult to write a convincing future by extrapolating from the high-performance AI we see today, yet the AI investigator in this debut novel possessed an exquisite sense of reality.
Furthermore, by juxtaposing the subtleties of human emotion—filial love, loss, and desire—with an AI investigator that is swayed by them, the author presents a hopeful vision of how the two can positively coexist.