吉野弘人のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
(第一作の「ザ・プロフェッサー」のネタバレ少しあり)元トラック運送会社の社長で、矯正施から出てきたばかりのジャック・ウィリストーンは射殺された。逮捕されたのは、元ストリッパーのウィルマ。偽証してあげたのに約束の金が払われなかった。DNAの証拠はウィルマを示している。ウィルマの娘が弁護を依頼したのは、かつて母親を罪人にした弁護士トム・マクマートリーだった・・・
面白かった。面白すぎだった。正義とは何か、悪とは何か。法廷闘争と人間ドラマを究極にまで燃え尽くす最高の小説だった。四部作の最終作の次作が待ちきれない。訳文が凄く巧いのも関係あるのかも。
※ネタバレ
ウィリストーンの前妻バーバラはダウン症の子供のためにも彼の生命保険の受取人を息子にしてくれと何度も頼んでいた。今の妻キャサリンは三百万ドルの保険金を逃すわけにはいかない。違法な商売に手を染める父親ブリーと共謀し、受取人の変更届を受け取った担当弁護士から脅し取る。
ウィルマはずっと犯行のあった晩に何があったか証言しなかった。それは自分の娘が犯人だからと思っていたから。目撃証言が出たので有罪答弁をする。しかし真犯人は同じような格好をした自分の娘だった。ブリーの手下フィリピン人のマニーも関わっていたようだ。その辺は次作で明らかになるような気が。しこたまウィスキーを飲みつつ読んだので若干記憶が曖昧なり。 -
Posted by ブクログ
突然の事故で父親を失った相棒リックが一時的に「マクマートリー&ドレイク法律事務所」を離れ、一人で弁護士業務を請け負うことになったトム。そんな最中、事務所に一人の少女が現れ、殺人事件の容疑者として逮捕された母親の弁護をトムに依頼する。被害者はトムとリックにとって宿敵の男。そして容疑をかけられた母親は、あの因縁の人物だった‐‐。自身に忍び寄る「影」に不安を抱きながら、「まさか」の男たちを相手に、誰が見ても負けと思われる「最後の裁判」に挑むトム。彼と、彼を全力で支える者たち、そして全力で立ち向かう者たちを描く、大好評胸アツ法廷シリーズ、待望の第3弾!
正統派のリーガルミステリが帰ってまいりました。満足です。大甘の星五つ! -
Posted by ブクログ
ヘニング・マンケルのシリーズ主人公バランダーのシリーズは、主人公の心臓が止まるところで終わるという驚愕のエンディングを迎えたが、本書では、トム・マクマートリーが同じようなエンディングを迎えるのか、はたまた事件解決と主人公の寿命とがどのような絡み合いを見せてゆくのか、という事件とは別種のはらはら感に読者は付きまとわれることになる。
そして本書で初めてわかったのだが、『ザ・プロフェッサー』『黒と白のはざま』は全四部作シリーズの前半部分であったのだ。本書が後半の一作で、全体をなす起承転結で言えば「転」となる作品になるのかと思う。
つまりこのシリーズは、次作を持って一端終わりを迎えることになるらしい。その「転」独特の緊張感は、本書後半になって加速してゆく。最初はどう見ても逆転しようのない勝機のない裁判に、なぜトムが挑むのか? と疑問符付きのトムの直感任せでストーリーは始まる。どう見ても明らかに見える犯人像、とトムを訪れる14歳の少女の奥に見え隠れする真実らしきものへの主人公の拘りが、本書を引っ張る最初の力として提示される。
そして相手も味方もまた前二作でトムとスクラムを組んだかつての教え子たち。そう、またしてもスポ根アメフト時代からの師弟しがらみを土台に、濃い目の魅力的なサブキャラクターたちが、それぞれの立場からトムを囲繞し、丁々発止の駆け引きと、二転三転する事件の奥行きに向けて活躍してくれるのである。
トムの仲間たちが敵味方に分かれることによるトムの心境もさることながら、それぞれが引きずってきた前作までの物語と、さらに覆されトムたちに闘いを挑んでくる巨悪たちの非情さが、よりスリリングな物語を紡いでゆき、物語は底が見えなくなる。
死と闘うトムの先行き、相対する人間模様と、愛憎の複雑な図式。一作目から順番に読まないと、前作へのネタバラシにもなりかねない内容であることを留意されたい。そして最終作へと続いてゆく、まだまだ目の前に積まれた宿題たち。眼が離せないシリーズの「転」期を、是非味わって頂きたい。
そして作者のあとがきで、作者の周辺の状況も明らかになるのだが、作品の誕生秘話としても、作風を決定する上での肉付けの意味でも重要な裏話に読者は触れることになります。ますます応援したくなる本シリーズ、最終作がとにもかくにも待ち遠しい限り。 -
Posted by ブクログ
一気読み。本書は訳者”持込み”によって出版が実現したと巻末にある。もう…よくぞ見つけて持ち込んでくれました!ありがとうございます。感謝と拍手を贈りたいです。ストーリー自体は至ってシンプルな法定ミステリー。しかし主人公のトム、脇役のリック、ドーン、パウエル、そしてボー。みんなキャラが魅力的で生き生きとしてる中で、極め付けは愛犬のブルドック「ムッソ」、犬はやはり素晴らしい生き物であり人間の一生の友だと実感。中盤からそれぞれの人間性の高潔さにチョイチョイ眼を潤ませたが、ラストでは、やはりそうよね…と…泣いてしまった。まさに胸熱痛快法廷エンタメスリラー。
-
Posted by ブクログ
ちょっとちょっと、これ最&高なんですけど!!??
リーガルものを小説で読むことないのだけれど(海外ドラマで見るのは好き!)これは読んでよかった。映画を見るようだった。
正義は勝つ、というシンプルなものではあるが、ラストは胸にこみ上げるものがある。
68歳のリタイアしたおじいちゃんが主人公というのもいいよね。
続編もあるのかしらあるのかしら。
わたしはボーが好きだよ。
それにしてもあのリックのピンチのところで、トムがバーンと法廷に現れたときの胸熱感は、キューティブロンドのエル・ウッズが全身ピンクで現れた時に等しいな。待ってたよおおおおおお!と叫びたくなったよ。
-
Posted by ブクログ
46年前テネシーで黒人の父がKKKのメンバー10人に殺された。息子ボー・ヘインズは復讐を誓い、弁護士になった。KKKの指導者だったアンディ・ウォルトンが殺された。ボーはしょっちゅうアンディを殺すと言いふらしていた。ボーは逮捕され、ロースクールの教授だったトム・マクマートリーに弁護を依頼する。証拠はボーの有罪を示している。担当検事のヘレンは負けなし。絶体絶命の裁判は・・・
うおー!2020年ナンバーワンだ。
前作「ザ・プロフェッサー」もすごく面白かったが、それ以上かも知れない。解説を読んでいて、確かに前作は誰がやったかは分かっているのでミステリー的要素は少なかったけれど、本作にはミステリー要素は多い。ボーが殺したのでないなら誰がやったかなフーダニットと、ボーの父親は45年になぜ殺されたかのホワイダニット。それだけではなくさらにもう一層下にまだネタが沈んでいる。
勧善懲悪、スカッとする小説でもあるし、アメリカの暗い歴史を学ぶ小説でもある。次作のThe Last Trialはめちゃくちゃ面白いらしい。小学館さま、絶対翻訳出して下さい。お願い致します。 -
Posted by ブクログ
面白かったぁ〜。
これぞ、パスタ小説!(パスタを茹でてる時間も読んでしまうという村上春樹のたとえ。)
68歳のトーマス・マクマートリー40年もの長きにわたりアラバマ大学のローククールの教授。妻をガンで失い自身も膀胱がんになり、信じてた親友にも(憎っくきジェイムソン・タイラー)手ひどく裏切られる形で大学を追われる。
ここであらすじを書いてもしょうがないよんね。
とにかく私のすきな法廷ミステリー。
リックが絶体絶命の時に現れた時は心の中で喝采。
アシスタントのドーンとは上手くいきそうだね。
最後はめでたく勝訴するんだけど、いったい何人が犠牲になった?
証言しようとしてたミュールは殺されるし、工場長のバラヤードのゲイのことを脅され、自殺に追い込むし、会社の違法なやり方でスピードの出しすぎで事故を起こしたトラック運転手のデューイの妻も脅され身を持ち崩し自殺させるし、
死者が多すぎて気持ちが塞ぐよ。
そうそう愛犬のムッソ(老犬)トムを山猫から守って命を落としたのには泣けた。
でも、トムの元教え子でトムを尊敬してやまないボーセフィスが子犬をプレゼントしてくれたしね。
マクマートリー&ドレイク法律事務所を開設。
シリーズ第2弾が今から楽しみ〜。 -
Posted by ブクログ
骨のある小説かどうかは、どういうわけか最初のページからわかってしまう。その期待はたいてい裏切られない。ストーリーではなく、作家が書こうとしているものが、文体の後ろからにじみ出てくるような、そう、気配のようなもの、小説の持つ気品のようなものだ。
そうなるとストーリー展開も楽しくなる。なかなかタフな物語になることは、書き出しで摑めているからだ。
南部出身の法律家出身の作家は誰? 大抵の読書子ならば、ジョン・グリシャムと答えると思う。この新手の作家ロバート・ベイリーも実は南部出身の法律家なのである。先人グリシャムの権威を傷つけないばかりか、やはり米南部生まれのリーガル・サスペンスには骨がある、との好印象を深めたのが、この作品だ。
主人公は、元アラバマ大のフットボーラー、法律家として一年間、法廷経験を積んだと思った途端、母校の法律の教授として招かれたため、以後、多くの法律家を世に送り出す役目を果たすことになり、現職を続けている68歳。しかし彼に四十年ぶりの法廷という転機が訪れる。
彼が育てた法律家の、悪い種子のような若手弁護士が彼を大学から追い出した上に、醜聞の熨斗まで付けて世界から追い払おうと試みたのだ。妻に先立たれた上に、膀胱癌まで患ってしまう人生最悪のタイミングの状況下で、一件の訴訟が持ち込まれる。一家が全員巻き込まれてしまった惨たらしい交通事故、その原因となった過重労働を常態化させていた悪徳運送会社を訴訟する遺族は、教授の学生時代の恋人だったのだ。
教授生活で課題を残してしまった青年弁護士リックに託して、世間から隠遁した教授だが、彼の再生は如何に? 悪徳企業が次々と打ってくる卑劣で残酷な包囲網に対し、チームはどう闘ってゆくのか。
人生の再生を賭ける人間たちを骨太に描いて、疾走するストーリー展開が読者を巻き込んでゆくパワフルな小説。こういう小説が読みたかった。しかもこの作家は知っている。どうすれば読者が、悪党どもに怒りを感じるかを。どうすれば読者が犠牲者たちに悲しみの情を抱くかを。どうすれば、悔しさに歯噛みする想いを抱くかを。そういう悪党どもに、どのように闘ってほしいかを。
そしてどうすれば、60代後半の癌治療中の世捨て人が、難関に立ち向かおうという気持ちを再び持つほかを。どうすれば読者が心からのエールを送りたくなるかを。
本書は、翻訳者が出版社に原作本を持ち込んで出版の運びとなった作品だそうである。翻訳者の吉野弘人のグッド・ジョブに深い感謝を。さらに未訳は現時点で三作。すぐにでも次作を読みたい作家がまた一人ぼくのリストに加わった。
最後になるが、世捨人がもう一度頑張ってみることにした、その気になる転換点なのだが、最後の最後に明かされる。粋な構成である。
さらに実在のアラバマ大フットボール・チーム、クリムゾン・タイドの伝説のコーチの登場に始まり、実在のチームメンバーたちも共演する。なるほど。作者のフットボール愛の熱さが、確実に作品の熱さに繋がっていたのだ。 -
Posted by ブクログ
日本ではあまり大きく報道された感じがしないVWのディーゼル排ガス不正問題に関する本だが、VWの歴史、そして、VW創設者であるフェルディナンド・ポルシェの孫でVWのCEOであったフェルディナンド・ピエヒやその一族のVW支配の実態なども詳しく記されていて、VWが不正を働いた背景・遠因が分かるようになっている。
VWの不正が発覚するきっかけとなった路上実験の話も面白いが、不正発覚後も非を認めて改善しようというのではなく、むしろ、隠蔽工作に走ったり、現場の責任にして「私は知らなかった」と口をそろえる幹部たちなど、その闇は深いと感じられた。
それにしても、クリーン・ディーゼルが全然クリーンじゃなかったのに、堂々とそういう宣伝が行われ、世界中の人たちがそれを信じていたなんて、なんと壮大な詐欺だろう。 -
Posted by ブクログ
そう来るのかい!と驚かされた。
まさに『This is us』の第1話を思い出すひっくり返し。
中盤までは文句なしの傑作。
アマンダは愛する娘の命を奪いながら
法の裁きを免れている男に復讐への執念を燃やしていた。
グループセラピーで同じ境遇のナオミに出会った彼女は
ある夜、ナオミに交換殺人を持ちかける。
一方、夫の留守中に自宅で青い眼の男に襲われ瀕死の重傷を負ったルースは
退院後も恐怖に囚われ夫のスコットとホテルの一室にこもっていた。
ある日、彼女はホテルのレストランで青い眼の男を目撃する。
二つの異なる事件がどう収束し、収まって行くのか。
どんどん広がる風呂敷にそんな期待と疑問を感じながら読み進めていたが
まさに後半に差し掛かってきた所で、今まで見ていた景色が一変する。
これには正直かなり震えたし、興奮した。
うお!マジか!という嬉しい悲鳴と驚き。
だが、後半というより締めくくり方だろうか。
一応、全てがハッキリと解決はするのだが、
なんか本当の意味でスッキリはしなかった。うーん、無情な結末だなと。
交換殺人というキーワードがまさに最後まで効いていた。
あと一歩で間違いなくの傑作だったなーという感想だが、
その面白さは間違いない。非常に読み応えのある一作。 -
Posted by ブクログ
いや、純粋に面白かった。今の時代のタイミングにバッチリとハマった良作。
あの日から青年の姿を見た者はいない。事故か、自殺か、あるいは。
休職明けの警視正キャットが失踪事件の再捜査を共にすることになったのは
ロックという名のAIの捜査官だった。刑事の直感を信じるキャットと、
刑事の直感など思い込みに過ぎないと切り捨てるロック。
相反するふたつの頭脳が追うごとに、事件は恐るべき顔を見せ。
というあらすじの通り、要は人間とAIのバディもの。
まさに今の時代に合ったテーマで切り込んでいく。
まぁ、内容は大方の予想通り、
最初は昔気質の人間と合理的に進めるAIのペアなので衝突ばかり。
人間の侘び寂びなどわかるわけないAIは、
人の喪失感を配慮するわけもなく、冷徹な発言を繰り返す。
この辺は現実でもそうだが、人間とAIの関係性で一番の焦点になるよね。
AIに人間の感情の起伏を本当に理解できるのかっていうのは。
ただ後半、この噛み合わない歯車がガシッとハマる瞬間は読んでいて高揚した。
仲の悪かった関係が最終的に協力するという、
まさに王道っちゃあ王道なパターンではあるのだが、
こういうのが良いんだよなぁと改めて思ってしまった。
事件の背景自体は、なんとも後味がそんなによろしくないというか。
結局全部スッキリというわけでもなく、
小骨が喉に引っかかってるようなモヤっとした締めくくり方ではあった。
シリーズ化を予感させる終わり方だったので、今後に期待。