吉野弘人のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
この本の登場人物でAI捜査官ロックの開発者オコネド教授の言葉にハッとさせられた
"警察が実際の証拠よりも偏見に従うことで、愛する人を失うというのがどういうことか知っています。それが、わたしがロックを開発したそもそもの理由です。"
多くの人が仕事などで実際にAIを使い始めているから、それよりも劣るAIを登場させたら時代遅れなストーリーに感じてしまう
既にすごい性能になってるAIの延長線上を想像して書くのはほんと難しそう
だけどこの著者がデビュー作で描いた未来のAI捜査官には絶妙なリアリティを感じた
そしてそれに加えて、人間の感情の機微(親子の愛情や喪失や欲望)とそれに振り回されるAI捜査官を描くことで、両者の前向きな共存のあり方が提示されていたと思う
I was deeply struck by the words of Professor Okonnedo, the creator of the AI investigator "Lock" in this book:
“I know what it’s like to lose a loved one because the police followed their prejudices rather than the actual evidence. That is the very reason I developed Lock.”
Since so many of us have already integrated AI into our professional lives, featuring an AI that is less capable than our current technology would make a story feel instantly dated. It must be incredibly difficult to write a convincing future by extrapolating from the high-performance AI we see today, yet the AI investigator in this debut novel possessed an exquisite sense of reality.
Furthermore, by juxtaposing the subtleties of human emotion—filial love, loss, and desire—with an AI investigator that is swayed by them, the author presents a hopeful vision of how the two can positively coexist. -
Posted by ブクログ
昔ながらの刑事とAI捜査官のバディもの
上記の要素自体はよくあるが、『昔ながらの刑事』が子を持つ母親である点は本書の特徴ではないかと思う。脇を固めるチームメンバーもしっかり深掘りされるので、最後まで読み進めるとチームみんなにそれなりの愛着を覚えていた。
真相が判明するまでの過程はスリリングではあったけど、犯人とその動機についてはそこまで心を揺さぶられなかった。目的が壮大すぎるからかな?
個人的に一番心に残ったのはP475の、事件が解決し、ロックと共に橋の上で川を見つめるキャットが、彼の慰めの言葉に対して返したセリフ。
人間とAIどちらが上だとか、AIに人の感情が理解できるかできないかとか、そういうことを超越したキャットの言葉がこの作品の結末として相応しいと感じたし、この二人の話をもっと読みたいと思わせてくれた。 -
Posted by ブクログ
人工知能捜査体のロックと、自らの堪に従って動く刑事のキャットがバディとなり、事件解決を目指す話。
AIに肯定的か否定的かと言ったら、キャットは間違いなく後者で、ロックのやることを非難したり、ロックのことを「それ」と呼んだりしており、読んでいて(何もそこまで嫌わなくても...)と思った。
ただ、ロックにしたらキャットの自分に向ける感情なんて気にすることではないから、別に良いんだろうけど。
そんな2人(正確には1人+AI)が一緒に事件の捜査をするって...どうなってしまうのかという心境で読み始めた。
捜査は地味に進んでいく。(地味過ぎて少し眠くなってしまった。)
キャットが夫を亡くしていること、息子が精神的な落ち込みからやっと回復したことが判り、彼女を応援したい気持ちになったが、もうちょっと周囲とうまくやればいいのに...と思ってしまう。でもこれぐらい性格がキツくなければ、女性が警察組織で上に上がっていくのは厳しいのかもしれない。
2つの失踪事件と、息子の失踪との共通点をキャットが思いついたときはまさかと思った。刑事の勘も馬鹿にしたものじゃない。
確かに、AIの統計的な確率も捜査にかなり役に立つが、キャットのような昔ながらのやり方も必要だ。うまくAIを使えるかどうかが鍵だが、人間ってどうしても「人間の方がAIより偉い」と根底で考えているから、うまくいかないところがある。
ロックがなぜ人間は、AIが人間のようになりたがっていると考えるのかと言っていた。確かにそうだ。人間は驕っている。
AIに感情はないことは分かっているのだが、ついつい感情があるように接してしまう。それは悪いことではないよね? -
Posted by ブクログ
直観派の刑事と最新のAIがバディを組むという近未来警察ミステリ。
近未来と書いたが数年先の未来ではない。もう今でも最先端テクノロジを惜しげもなく使えば可能なのではないかと思われるような直近の近未来だ。すぐそこにある未来だからこそイメージしやすく、自分の職場でこういうAIがバディだったら仕事も楽だし効率上がるだろうな。いや、待てよ、これだとマネージャーは部下が不要になるんじゃね?とかいう具合に想像できる。少なくとも近々ホワイトカラーはAIに職を奪われる未来が来るだろう。本作を読んでいると「AIすげ~!有能すぎ!」と思うが最大の魅力はそこではない。最先端でありながら英国警察ミステリの伝統を踏襲した普遍の面白さがある。最近読んだ「ストーンサークルの殺人」と似た部分が多いが、頑固で直感で動くベテラン刑事と天才だが社会性に欠けるパートナーが喧嘩やユニークな掛け合いをしながら徐々にお互いを理解し尊重していく流れ。そして事件の謎を解くために地道な捜査による証拠を積み上げていく過程。これらは英国警察ミステリの定番といってよく、だからこそ読んでいて心地いい。英国推理作家協会(CWA)賞受賞も当然だろう。
この凸凹コンビもシリーズ化しているようだが、現在の生成AIの進歩は凄まじいためAI捜査官ロックの進化にキャットがどう対応していくのか楽しみだ。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ2026年の22冊目は、スティーヴ・キャヴァナーの「キル・フォー・ミー キル・フォー・ユー」です。
スティーヴ・キャヴァナーを初めて読みましたが、賞をいくつも受賞したり、ノミネートされるのも頷けます。
単純な交換殺人の話かと思ったら、話が次々と展開し、一筋縄では行きません。時間軸では、見事に錯覚させられました。ディーヴァー同等の捻りとドンデン返しが有ります。しかも、善100%に振り切っていない所が、これ又、良いです。
ラストでアマンダが、夜のビーチでジェスのスパークルズを燃やすシーンが堪らなく良いです。
愛する人を理不尽にも失った人の物語です。
☆4.8他の作品の翻訳をぜひとも望みます。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ2026年の14冊目は、ヘンリー・ワイズの「無垢なる町」です。2024年のアメリカ探偵作家クラブ賞最優秀新人賞受賞作です。「血塗られた指輪」に続いて、アメリカ探偵作家クラブ賞受賞作の読書となりましたが、この本は、ミステリーやエンタメという括りよりも文学作品と言った方がしっくり来ると思います。
それは、作者のヘンリー・ワイズが詩人という事が大きく影響しているように思います。会話文が少なく、登場人物の心情描写に多くを割いている事、舞台であるアメリカバージニア州の歴史や自然描写の巧みさ、そして何よりもアメリカ南部に生きるという辛さが良く描かれているからです。誰がトム・ジャンダーズを殺害したのかという構図ながら、唐突にそれが破られてしまうのも作者が、ミステリーという範疇に重きを置いていない証拠だと思います。優れた文学作品を読むという気持ちで向きあえば、読後に余韻に浸れるのではないでしょうか。
☆4.7 -
Posted by ブクログ
バージニア州の南部
時が止まったように荒れ果てた小さな田舎町…
保安官補のウィルは炎に包まれた家の中で友人トムを発見する
彼は何者かに刺され死んでいた
そこから逃亡した者を追うと、旧友サムの父ジークだった
証拠が見つかったことからジークを逮捕するが、被害者の家族ですらジークの無罪を主張…
ウィル自身もジークの逮捕に疑問を持ち、私立探偵のベニコと共に上司に逆らい捜査を始めるが…
小さな町の気風、そこに住む人々の苦しみや哀しみ
その描き方が美しい…と思ったら著者のヘンリー・ワイズは詩人として活躍していたらしい…納得!
そしてこの作品が彼の小説デビュー作で、2024年のアメリカ探偵作家クラブ賞最優秀新人賞を受賞している
この作品は犯人は誰かということよりも、この事件に登場人物たちがどう向き合っていくのか?というところに重きが置かれているように思う
主人公の保安官補ウィルも心にキズを抱え、その事件にも深く関わっている自身の上に苦しむ…
南部の人種問題や貧困、ドラッグ、暴力…
居場所を失った人々は苦しみながらも結局何かに依存しなければ生きていけない
そんな小さな田舎町の設定が物語の舞台に大きな役割を果たしている
だからこそ…の物語なのだ!
湿地で暮らしていた死んだトムの恋人・デイの生活背景に『ザリガニの鳴くところ』が重なった
そして
本作の続編はバージニア州南部の湿地帯が舞台らしい
秋が待ち遠い…