吉野弘人のレビュー一覧
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1970年代のスコットランド、グラスゴーを舞台にした警察小説シリーズ第三作。本シリーズはノミネートされながらも受賞を逃してきたようだが、本作でついにエドガー賞優秀ペーパーバック賞を射止めたとのこと。シリーズのファンとしてはかなり気に入って読んでいるだけに嬉しいことこの上ない。また素晴らしいスピードで翻訳を進めてくれている吉野弘人氏にも感謝しかない。
70年代中期のグラスゴーの混乱、その中で起きる捜査のでたらめさ、犯罪の暗黒っぷり、など小説の舞台としては文句なしのシチュエーションを切り抜いて見せてくれるこの作家の目の付けどころにも感嘆するしかないのだが、何と言ってもジェイムズ・エルロイを思 -
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読書チャンネルを運営するYouTuberさんがお勧めしていたので、手にしてみた。
何らかの形で犯罪が描かれている物語が十篇。
舞台は文化や風景に馴染みのないアメリカだけども、どうしてか一篇ごとに胸を打たれる。むしろ、主人公に自分を投影しちゃって、読みながら苦しくもなった。
その理由は最後の一篇を読み終えて、解説を読み出した時、唐突に出てきた涙ではっきりした。
「なぜ今のようにしか生きられないのか、なぜ自分が最も望まない形でしか生きることができないのか、そんな思いを抱えている人にこそ読んでもらいたい一冊である」という解説者の言葉に心の蓋を開けられてしまった。
この短編集には、苦しくとも -
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ダーティな訳あり刑事ハリー・マッコイを主役としたシリーズの第二作早くも登場である。お次の第三作も既に出版されたばかりなので、遅れを取っているぼくは慌てて本作を手に取る。500ページを超える長尺の作品だが、スタートからぐいぐい牽引される、心地良いまでの読みやすさだった。
アナーキーな印象の刑事マッコイに、年下なのに面倒見の良いワッティー、上司にはタフでハードでおっかないのだがどうにも面倒見の良いマレーという捜査トリオがとにかく良い。前作を引き継いで読んでゆくとレギュラー出演組の個性がそのまま増幅されるほどにシリーズの魅力にどんどんはまる。幼ななじみでギャングのボスのスティーヴィー・クーパー -
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「ケツの穴全開でいくわよ」
闘いの始まりを告げる鬨の声はいつだってこの言葉だ
今回ゴングを鳴らすのは、かつての麻薬中毒者で売春婦、現在はボーのアシスタントを務めるロナだ
うまいなぁって思う
のせられてるなぁって思う
だけど「血」は正直だ
カーっと熱くなる
さぁ、行こうぜボー!
こっちの準備はできてるぜ
主人公のボーセフィズ・ヘインズかつての背番号41は、いつだって怒りに満ちている
差別への怒り、不公平への怒り、そして不正への怒りだ
彼を突き動かすこの怒りは、もちろん作者であるロバート・ヘイリーの怒りであり、この世界を生きる俺たちの怒りでもある
だから熱くなる
だから涙が溢れる
「解決 -
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マクマートリー教授シリーズ4部作の後、ボーのその後を描く二部作の後半部が本書である。新たな事件でありながら前作を引きずるかたちの展開で、マクマートリーとボーによる<けつの穴全開>シリーズ全作? の完結編であることで、本シリーズはとうとう幕を閉じる。「胸アツ」の強烈形容詞を携えて一気に読者の胸倉を引っ張ってきた感のあるスポ根リーガル・ミステリーの最終の一幕をまたもしっかりと味わってしまった。
舞台は、KKK誕生の地のプレートが遺る曰くつきの街、テネシー州プラスキ。主人公は元アラバマ大フットボールチーム花形選手だった黒人弁護士ボーセフィス・ヘインズことボー。スタートは、ジャイルズ・カウンティ -
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ジョン・ベイリーは、初めて読む米国の作家。
アラバマ大学の法学教授、60代後半のトムは、元大学フットボールの全米王者。順風満帆に過ごしてきたが、妻を癌で亡くし、濡れ衣により教授職を追われ、自身も癌に冒される。娘一家を交通事故で亡くした昔の恋人から、法的な助言を求められるが、教え子に弁護を頼み、自身は身を引く。昔の恋人は、交通事故の相手の運送会社を相手取り訴訟を起こす。全く勝ち目がなさそうな闘いであるが、教え子とトムは、力を合わせて裁判を戦うことに。
それが合っているかどうかは分からないが、自分自身のイメージとしては、アメリカ人が好きなタイプのストーリーではないかと思った。
■勧善懲悪、最後は悪 -
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訳者で本を選ぶ。ぼくにとっては珍しくないことだ。翻訳家の方は依頼されて訳す仕事もあれば、翻訳者自らが押しの作品を出版社に提案することで自分の仕事を作ることもあるらしい。本書の訳者である吉野弘人氏と言えば、ロバート・ベイリーの胸アツ作品群で知られる方なので、遅まきながら気になった本書を手に取る。
本書はグラスゴーを舞台にしたスコットランド・ミステリー。背カバーには<タータン・ノワール>とあるが、タータンとはタータンチェックのことなのだね、なるほど。舞台も1973年と半世紀前なのである。アイルランドを舞台にしたエイドリアン・マッキンティのショーン・ダフィ・シリーズに少し似た熱い感のある本シリ -
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読み終わって最初の感想は、「新たな傑作シリーズの誕生」というものです。前作を遥かに凌ぐ出来だと思います。前作でショーン・ダフィーのシリーズには、及ばないと言ってしまいまいましたが、それも撤回しなくてはいけません。
原題は「February's son」今回は、2月のグラスゴーが舞台です。タイトルも中々、意味深です。相変わらず、印象的なオープニングで、話しに引き込むのが上手いです。推理小説的な面白味としては、途中でそう繋がっていたのかと驚く箇所が有ります。
本シリーズの最大の魅力は、解説でも述べられていますが、主人公ハリー・マッコイの危うさです。今作では、少年期のトラウマから、警官には -
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読書備忘録746号。
★★★★★。
マクマートリー&ドレイクのリーガルスリラーシリーズの第4作で完結作です。期待を裏切りませんでした。
そして、悲しいけど、やり切った感満載の結末。
勧善懲悪100%のストーリーでした。
プロローグ。
第2作で捕まり死刑を待つのみとなったジムボーン(ボーン)・ウィラーとマクマートリー(トム)が刑務所で面会している場面。ボーンは、近いうちにお前を最後の審判に掛けてやると脅す。
そして第1章で、脱獄する・・・。
脱獄を幇助したのは、冷酷な殺し屋マヘリア(マニー)・レイエス。
ボーンは、とある依頼人からトムとトムのパートナーであるリック・ドレイクの殺人を -
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マクマートリー教授四部作に続く新シリーズ。検事長ヘレンが元夫ブッチを殺したとして逮捕される。マクマートリーの弟子ボーセフェスは失意の日々を送っていたが、ヘレンから弁護を頼まれる。状況証拠は有罪判決を示しているが。
面白い!法律や裁判の知識やテクニックよりも人間ドラマが前に来る感じ。
※ネタバレ
ヘレンは38年前に中絶していたのを秘密にしていた。保守的な南部では検事長選挙に不利になる情報。元夫は、友人ザニックのレイプ事件を取り下げないとバラすと脅す。だからヘレンが殺したとして、逮捕。ブッチは友人たちと売春宿を経営していて、そのことをバラすと友人たちを脅したので、殺した→本当はヘレンが殺し -
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「ケツの穴全開で行くぜ」
前シリーズの主人公トーマス・マクマートリーは強い男でした
不屈の闘志で戦い続け、大きな愛と崇高な正義を体現する〈騎士/ナイト〉であり、常に先頭に立って仲間を、そして読者を鼓舞し、勇気を与え続けるヒーローでした
そんなヒーローを失ったシリーズで主人公を継いだボーセフィス・ヘインズは弱い男だ
泥沼の中でもがき苦しみ、何度も諦めてしまいそうになり、悲しみにくれて無為な時間を過ごしてしまう
だが自分を愛してくれた人たちに恥じない自分であるために一歩ずつ進むことを決意する〈歩兵/ポーン〉だ
「ケツの穴全開で行くぜ」というボーの決めゼリフは弱い自分を叱咤し、白と黒の戦場を -
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マクマートリー教授シリーズ4部作の後を引き継いだのは、彼の教え子ポー・ヘインズだった。作中の弁護士稼業を引き継いだのではなく、シリーズ主人公を引き継いだという意味である。ポーはマクマートリーのラグビーと法律の教え子であるわけだが、マクマートリー・シリーズでは、ポー以外の教え子も数人(リック・ドレイク、レイレイことレイモンド・ピッカルー、パウエル・コンラッド、ウェイド・リッチーなどなど)副主人公として活躍していた。ここでポーが主役を引き継いだのには、いろいろなわけがあったろう。
いずれにせよポーが主役となれば前シリーズで、二作目のサブ主人公を担ったポーの物語『白と黒のはざま』の強烈なインパ -
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あの熱い男が帰ってきましたよ!
「ケツの穴全開で行くぜ」
何の事かわからない人はまだ読まないでください!
まずは前シリーズ第1巻「プロフェッサー」を読んでください。
そして激アツの「トーマス・マクマートリー」シリーズ全4巻でまず感動していただきたい。゚(゚´Д`゚)゚。
新シリーズは「ボーセフィス・ヘインズ」だと告知されていたのでめちゃくちゃ楽しみにしてました。
全シリーズで失意の中、自暴自棄になったボーの復活は戦友ともいえる無敵の検事長「ヘレン」の殺人容疑での逮捕でした。
これがもう絶体絶命のピンチの連続、勝つのがわかっててもドキドキです((((;゚Д゚))
ケツの穴全開になるの