燃え殻のレビュー一覧
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最近の出来事や今まで出会った人を丁寧に描き、こんな持っていき方するんだ!と先の読めない結末がとても面白く一日で読めてしまう。短いながらも題名を見ただけでどんなお話か分かってしまうほど、印象に残る短編ばかりだ。上手く生きられなかった学生時代や若かりし頃を思い返し、失敗を面白おかしく語っている燃え殻さん。当の本人は自分のことをつまらない人間だと思っていそうだが、彼の出会ってきたひと、経験はカラフルで眩しい。妹のパンツで学校へ行き、パンツ一丁で先生にビンタされる「ピンクパンティー事件」バレンタインチョコが飛び交うカオスながらもなんだかピンク色で幸せな教室「自意識感知レーダー」初ラブホでやらかしてしま
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寝る暇もなく働かされ、将来に不安を抱くボクを唯一受け入れてくれたかおり。彼女とは雑誌のつぶやきで出会い、顔も体型もいまいちだけれど、彼女の明るさと天真爛漫さに救われ、どんなに忙しくても生きるのが辛くても、彼女といると忘れられた。しかし、ボクの仕事が軌道に乗り始めるとスーや会社のパーティーなど、彼女の価値観と次第にズレが生じていく。「今度」を残したまま彼女とは終わりを迎えるが、「大丈夫だよ、君は面白いもん」という言葉がいつでもボクの背中を押してくれる。名前も偽っていた彼女。本当のことを隠したままの方が上手くいくのかもしれない。ボクの懐に出たり入ったりする人物が好き。同期の関口やエクレア工場の七瀬
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数年ぶりの再読。初めて読んだのは20代前半だった。
読み返したくなったのは、10年近く住んだ東京を離れることになったのがきっかけ。
本作の主人公・”ボク”はテレビ業界の美術スタッフで、自分も職種は異なるが同じ業界にいた経験がある。いま思い返しても心臓が痛くなるような経験をたくさんしたし、間違いなく社会の底辺、というか外側にいた。窓も何もない編集所の部屋で、何にもならないような夜を何度も過ごした。本作で描かれた数々のシーンに何度もトラウマが呼び起こされたし、とにかく、本作は僕にとっての「東京の暮らし」と重なる部分が多い。この街で、忘れられないくらい好きになった人ができたことも含めて。
物語を通 -
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あまり深く考えずに軽い気持ちで読める。笑いあり、燃え殻さんの表現にハッとし、そして心に砂のようなもので残っていく。三年半付き合った彼女との別れ「解放してあげるよ」の桜が見えるカフェでの会話。お互いが好きなはずなのに泣いて別れる経験、一度はしてみたいかも。ハッピーエンドではないからこそ、記憶に残る人っているんだろうな。日々の中に調度良い具合で存在する「まーまー」なもの。気取ってなく、かといって乱雑でもなく。その「調度良い」ものはあるようであまりないことに気づく。気軽に返信できるが、居なくなると寂しい人。「まーまー」な関係の人がいるだけで、日常は少し楽しくなる。「お前、覚えてろよ」は、言葉を投げつ
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燃え殻さんが出逢った人がクセが強くて個性的な人が多い。口数少ない祖父との最後の会話を描いた「おい、まだ帰らないのか?」小学生の時の魔法の合言葉「ねー、もう寝た?」いじめで死にたくなった日の母のリアクション「人って、なんのために生きているんすか?」が好き。『この味もいつか恋しくなる』よりインパクトはないものの、この本の方が燃え殻さんの人生観がより、現れている気がした。いじめを受けた過去がありながらも、人を嫌いにならず、むしろ、良い人と出逢えていると、人と関わることを大切にしていることが伝わってくる。何とか人と出逢って生きているという必死さと、少し手抜きで、まぁ、色んなことあるよね、という風に達観
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燃え殻さんの思い出の食べ物と共に思い出される人との記憶。それは、バーだったり、キャバクラだったり、ラーメン屋だったり。食べ物と人の記憶が結びつくところが素敵。私だったら、この食べ物の時はこの人との記憶とすぐに出てくるだろうか。母との思い出を描いた「母の涙 ミートソースパスタ」は泣ける。悲しさや寂しさを表現し、受け止めてくれる人、感情を共有できる人がいるだけで少し生きやすくなること、そして何より燃え殻さんが人との出逢いを大切にし、人をよく観察していることが伝わってきた。妻との思い出を格好つけて語るマスターの話「読まれたい日記 浅煎りコーヒー」父の下手くそなチャーハン「どうだ?うまいだろう」死にた
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燃え殻さんのエッセイには同世代の空気感を感じる描写が多い。青春時代を送った90年代や昭和の子どもの頃の話しは懐かしい、もう戻らない日々への若干の哀しみが思い起されてノスタルジックな気持ちになる。
情報過多の毎日で少しでも他人より優れた何かを持っていないと社会から落ちこぼれたり、取り残されたような気になる今の世の中。
間違えている方に進んでいるのは、分かっているが進まざるを得ない。そんな時に燃え殻さんの書く文章を読むと、そうじゃないだろと諭されている気になる。
今作は、食べ物にまつわるエッセイをまとめた本だが、どれもやっぱり少し物哀しかったり、ユーモアにも少し陰があったり、表面上では分 -
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ネタバレ夏。その響きはただの季節のようにも感じるし、青春の大切なひとときを感じさせるもののようにも思う。この作品は、そんな忘れられない、しかし年が経つとおのずと忘れてしまうような、忘れたくないひとときを描いた作品だと感じた。儚い。余韻が残る作品だった。もう遅いなと思うことは案外まだ間に合うぞ、といったメッセージもあるのだろうが、僕は、青春のひと時を感じるということに感想の全てを持って行かれた。青春の甘酸っぱい記憶や忘れられない記憶、何気ない景色を見た時にふと思い出す記憶、そういったものを作り出すのに年齢は関係ないのだなと感じた。結局は自分がどう考えて、どう行動するか。そしてその瞬間をどう感じ、どう意味