マイクル・コナリーのレビュー一覧
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マイクル・コナリー『汚名(下)』講談社文庫。
現代最高峰のハードボイルド警察小説、ハリー・ボッシュ・シリーズの第20作。
65歳を超えてもなお、根っからの警察官であり続けるハリー・ボッシュ。騙す者と騙される者、金に支配される者と支配する者。悪と善の構図は大昔から変わらない。
ボッシュの警察人生の最大の危険を救うのはリンカーン弁護士ことミッキー・ハラー。終盤の緊迫した法廷劇だけでも読み応えがある。
そして、ラストには次作へのプロローグが。
ボッシュが担当した30年前のロス市警での殺人事件捜査の証拠が捏造され、ボッシュの捜査に嫌疑が掛かり、警察人生に最大の危機が訪れる。また、サンフェルナンド市警の管轄で、薬局を経営する父親と息子が薬局内で銃殺されるという事件が発生し、ボッシュは命の危険を省みずに不正薬物売買組織に潜入捜査を試みる。
本体価格880円
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マイクル・コナリー『汚名(上)』講談社文庫。
現代最高峰のハードボイルド警察小説、ハリー・ボッシュ・シリーズの第20作。扶桑社ミステリーの『ナイトホークス』を読んで以来、マイクル・コナリーの作品を読み続けて28年になる。毎回、巧みなプロットと類い稀なるリーダビリティには脱帽する。
原題が『TWO KINDS OF TRUTH』というからにはボッシュの過去と現在の2つの事件で何らかの真実が明らかになるのだろう。
サンフェルナンド市警の予備刑事として自発的に未解決事件の捜査を行うハリー・ボッシュに突然訪れた警察人生最大の危機。ボッシュが担当した30年前のロス市警での殺人事件捜査の瑕疵を巡り、ロス市警の元相棒のソトらがボッシュの元を訪ねる。
一方、サンフェルナンド市警の管轄で、薬局を経営する父親と息子が薬局内で銃殺されるという事件が発生し、ボッシュが捜査に狩りだされる。
リンカーン弁護士ミッキー・ハラーも登場する。
本体価格880円
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当代最高のハードボイルド作品と言われる、ハリー・ボッシュ・シリーズの邦訳最新刊! ボッシュ刑事物の最新作は、前作『訣別』同様、ボッシュに関わるふたつの事件を平行して描く。ボッシュが陥る二種類の危機(潜入捜査における現実的な死の危険と、捜査官としての名誉が汚される危機)を迫力たっぷりに描きだし、またしても抜群のページターナーに仕上がっている。特に前者の潜入捜査では、何度も死の危険に襲われ、シリーズ中”ボッシュ最大の危機”を描いたと言っても過言ではない。
原著題名のTwo Kinds of Truth(二種類の真実)とは、かつての同僚たちからも証拠捏造を疑われた際のボッシュの心情に関するくだり(「ボッシュは、この世には二種類の真実があると知っていた。ひとつは、ひとりの人間の人生と使命に関して、けっして変わらぬ原則である真実。もうひとつは、政治家やペテン師や、悪徳弁護士とその顧客たちの、目的に適うように折り曲げ、加工できる柔軟な真実」)に出てくるもの。
同情は行動の代わりにはならない。これが、ボッシュ刑事の行動原理なのか。次回作も楽しみ。 -
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シリーズ第20作。
SFPD(サンフェルナンド市警)の予備刑事(reserve officer)として、自発的に未解決事件捜査にあたっているハリー・ボッシュのもとを、昔のパートナーだったロス市警本部強盗殺人課未解決事件班刑事のルシア・ソトが現在パートナーを組んでいるボブ・タプスコットとロス検事局のアレックス・ケネディ検事補とともに訪れ、ボッシュが三十年ほど前に逮捕し、現在も死刑囚として服役中の連続殺人犯プレストン・ボーダーズに関して、あらたな証拠が出たとして、再審がひらかれる見込みだと聞かされる。残された証拠を調べ直したところ、すでに死亡している別の死刑囚ルーカス・ジョン・オルマー(連続婦女暴行殺人犯)のDNAが被害者の着衣に精液の形で付着していたことが科学的に立証されたという。事件発生当時、DNAは、犯罪捜査の証拠として認められていなかった。証拠保管庫に収められた被害者の着衣の入っている当該事件の証拠保管箱をソトとタプスコットが開封する様子は、ビデオに録画されており、そこに問題はまるで無いように思えた。
ボーダーズの弁護士ランス・クローニンの主張は、被害者の着衣に別人のDNAが付着している以上、ボーダーズ逮捕の決定的な物証(ボーダーズの住居で見つかった被害者のペンダント)は、事件担当の捜査官(ボッシュと彼のパートナー)が仕込んだものだ、というものだった。ロス市警と喧嘩別れしたいきさつから、ロス市警と検事局のボッシュに対する心証はことのほか悪く、証拠を捏造した悪徳警官としてボッシュに責任をかぶせようという気が満々だった。おのれの信用が地に落とされる危機に際し、リンカーン弁護士ミッキー・ハラーにボッシュは相談し、ミッキーの導師であるリーガル・シーゲルの智慧を借りることになる。
一方、サンフェルナンド市警の管轄で、薬局を経営する父親と息子が薬局内で銃殺されるという事件が発生し、小規模共同体の警察としては、手が足りず、ボッシュも捜査に狩りだされる。捜査を進めるなかで、この事件が、薬局を舞台にしたオキシコドン(半合成麻薬)不正請求にまつわるものであることが判明する。すなわち、身内に引き込んだ医師に鎮痛剤でもあるオキシコドンの処方箋を書かせ、患者を装った出し子たちに薬局で大量に入手させ(料金は医療保険Medicareでカバーされる)、それを売りさばいて大金をせしめている犯罪者集団がいた。薬局の父親は、永年その片棒を担がされていたのだが、息子がその不正に気づき、手を引こうとして、犯罪者集団に処刑されたのだった。犯罪者集団のアジトを突き止め、親玉を逮捕する証拠を手に入れるため、ボッシュは、潜入捜査に赴く。
内容紹介のコピーだが、これを読めば、ほぼ上巻は読まずに済んでしまう丁寧さ。
一粒で二度以上の美味しさを堪能しつつ、下巻へ。 -
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楽しみにしていたコナリーのニュー・ヒロイン、レネイ・バラード初登場作品。コナリーのメイン・シリーズを背負う我らがヒーロー、ハリー・ボッシュがかつて在籍したハリウッド署、しかもそのナイトシフトの刑事たち(タイトルの通りレイトショーと呼ばれている)を舞台に展開する独特の警察小説ワールド。
コナリー作品の特色を余さず継続している。バラードの勤務先として描かれる警察署内の凌ぎ合い・暗闘・友情など従来のコナリーの描写にプラスして女性ヒロインならではのセクハラという材料などもじっくりと取り入れている。
さらにヒロインであるバラードを、彼女自身につかず離れずの視点で密着して描いている。新刑事ヒロインの公私の生活。人となり。これまでの人生。関わる人々の個性。素晴らしく濃密に描かれている。
ハワイはマウイ島出身。父をサーフィンの事故で失い、母とは幼児の頃から音信不通。西海岸の祖母に引き取られ、彷徨の末に新聞社に入社。様々な事件に魅せられ、ついに警察官となる。そんな生い立ちのバラード・シリーズに初物ならではの興味を否応なく引き立てられる。そしてコナリー・ブランドならではの素晴らしい。
レイトショー勤務では、殺人事件のみならず、様々な犯罪に立ち会わねばならない。一晩に起こるいくつもの難事件。朝が来るとそれを日勤の担当刑事たちに引き渡さねばならない。夜勤刑事はハリウッド署では二人。交代勤務ではなく、ずっと。
ボッシュ・シリーズ以上に事件の種類が増えるため複数事件が同時多発的に勃発する。それらのすべての事件や謎に決着をつけねばらないので、読者もけっこう忙しい。モジュラー型ミステリーと言ってもよいかもしれない。
しかも事件は昼間の捜査課に持っていかれる。でもバラードは捜査を続けたい、事件を自分のものとして追い続ける。当然ながら警察内での軋轢。疎外。夜勤の相棒は家庭内事情にてあまりやる気はなし。ゆえにソロでの捜査が続く。
女性独自の危険が描かれる。女性ならではの私生活も。パドルボードの趣味。海辺でのテント生活。そこそこの愛人。そして何よりも事件の中でこだわる人間と人間の問題。基本的にはボッシュと同じ世界でありながら、あまりの変数の多さに驚かされるまずまずのシリーズスタート。
コナリーの小説世界には、やはり外れはない。優れた完成度の高さにレネイ・バラードという女刑事のシリーズスタートと、この魅力的なヒロイン像を創り出してくれた大好きなこの作家に改めて喝采を送りたい。 -
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楽しみにしていたコナリーのニュー・ヒロイン、レネイ・バラード初登場作品。コナリーのメイン・シリーズを背負う我らがヒーロー、ハリー・ボッシュがかつて在籍したハリウッド署、しかもそのナイトシフトの刑事たち(タイトルの通りレイトショーと呼ばれている)を舞台に展開する独特の警察小説ワールド。
コナリー作品の特色を余さず継続している。バラードの勤務先として描かれる警察署内の凌ぎ合い・暗闘・友情など従来のコナリーの描写にプラスして女性ヒロインならではのセクハラという材料などもじっくりと取り入れている。
さらにヒロインであるバラードを、彼女自身につかず離れずの視点で密着して描いている。新刑事ヒロインの公私の生活。人となり。これまでの人生。関わる人々の個性。素晴らしく濃密に描かれている。
ハワイはマウイ島出身。父をサーフィンの事故で失い、母とは幼児の頃から音信不通。西海岸の祖母に引き取られ、彷徨の末に新聞社に入社。様々な事件に魅せられ、ついに警察官となる。そんな生い立ちのバラード・シリーズに初物ならではの興味を否応なく引き立てられる。そしてコナリー・ブランドならではの素晴らしい。
レイトショー勤務では、殺人事件のみならず、様々な犯罪に立ち会わねばならない。一晩に起こるいくつもの難事件。朝が来るとそれを日勤の担当刑事たちに引き渡さねばならない。夜勤刑事はハリウッド署では二人。交代勤務ではなく、ずっと。
ボッシュ・シリーズ以上に事件の種類が増えるため複数事件が同時多発的に勃発する。それらのすべての事件や謎に決着をつけねばらないので、読者もけっこう忙しい。モジュラー型ミステリーと言ってもよいかもしれない。
しかも事件は昼間の捜査課に持っていかれる。でもバラードは捜査を続けたい、事件を自分のものとして追い続ける。当然ながら警察内での軋轢。疎外。夜勤の相棒は家庭内事情にてあまりやる気はなし。ゆえにソロでの捜査が続く。
女性独自の危険が描かれる。女性ならではの私生活も。パドルボードの趣味。海辺でのテント生活。そこそこの愛人。そして何よりも事件の中でこだわる人間と人間の問題。基本的にはボッシュと同じ世界でありながら、あまりの変数の多さに驚かされるまずまずのシリーズスタート。
コナリーの小説世界には、やはり外れはない。優れた完成度の高さにレネイ・バラードという女刑事のシリーズスタートと、この魅力的なヒロイン像を創り出してくれた大好きなこの作家に改めて喝采を送りたい。 -
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マイクル・コナリー『レイトショー(下)』講談社文庫。
何ともクールなヒロインが誕生したものだ。ハリー・ボッシュやミッキー・ハラーのように人間味がある熱血漢。なかなか良いじゃないか。
『レイトショー』はマイクル・コナリーの30作目とのこと。コナリーの邦訳作品は『ナイトホークス』以来、刊行順に全て読んでいるが、いつもながら完成度の高さには驚かされる。この先の邦訳予定を見ると、何とバラードとボッシュの共演作品も控えているらしい。
ナイトクラブの銃撃大量殺人事件の後、かつてバラードを裏切った相棒の刑事が殺害される。幾つかの事件を掛け持ちし、精力的に捜査を進めるバラードだったが、トランスジェンダーへの暴行事件の犯人に囚われてしまう……
本体価格880円
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マイクル・コナリー『レイトショー(上)』講談社文庫。
レイトショーと呼ばれる夜勤の初動捜査を専門に行うハワイ出身のロス市警女性熱血刑事のレネイ・バラードを主人公にした警察小説。
マイクル・コナリーが描く新しいヒロインということだが、ハリー・ボッシュ・シリーズと変わらぬ闇夜の匂いがする。なかなか良いじゃないか。バラードの趣味がサーフィンというのも面白い。
とある夜、トランスジェンダーへの悲惨極まりない暴行事件とナイトクラブでの銃撃大量殺人事件とが立て続けに事件が起こる。バラードは相棒のジョン・ジェンキンスと共に現場に駆け付け、仲間内の妨害を省みずに地道な捜査を続ける……
本体価格880円
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ネタバレ(上下巻)
無実の依頼人には妥協するな、ひとつの評決あるのみ。スコアボードにNGをつけねばならない。無罪 ノットギルティ以外の評決はない。
リンカーン弁護士 上下
リンカーン・コンチネンタルの後部座席を事務所にして仕事をする、弁護士のマイクル(ミッキー)・ハラー。
儲からない貧乏仕事ばかりで、別れた妻の元にいる子どもへの養育費も含めて経費の支払いに汲々としている。計算高いが、人間味もある、勝つためには裏技も使う、知的戦力に優れ、法廷の弁論合戦も計算された演技力を駆使する。
面白く読み応えがあった。
いくつかの小さな担当事件が挿入されているが、これがメインの事件につながるところもあり、こういったわずかな報酬の仕事で作り上げた人脈が、後に幸いするのも、人柄だろう。
売春婦の殴打暴行事件の犯人ルイス・ルーレイは、犯行直後に、隣人二人に捕まえられた。拘留中のルイスから弁護を依頼されたマイクには、この富豪の息子の弁護は、やっと運が向いてきた萌しだと思えた。彼はルーレイを一目見て、内向的で無垢な笑顔に、冤罪を感じた。
だが、状況は全てに不利だった。直感に従えば、無罪の犯人を弁護する難しさを実感する。
(父は)弁護士が担当する依頼人のなかでもっともまれなのは、無実の依頼人である。と語っていた。もし弁護士がへまをして、無実の依頼人が刑務所にいくようなことがあればそのことが生涯、弁護士を悩ませるだろうと。
「親父さんは文字通りそんなことを言っているのか?」
「そういう趣旨の発言をしている無実の依頼人には(略)妥協するな、ひとつの評決あるのみ。スコアボードにNGをつけねばならない。無罪ノットギルティ以外の評決はない」
一方、使っている調査員ラウルの報告は次第に、ルーレイの素顔に迫っていく。
事件の真相は、警察の捜査が進むにつれて、ミッキー・ハラーの中でも被告人の罪状に対する印象が二転三転し、そのたびに無邪気に見えたルーレイの顔つきも変化していく。
頼りにし親しくしていた、捜査員のラウル・レヴンが殺された。使われた銃は、ハラーが父から遺贈されたものだった。しまいこんでいたクローゼットの箱の中身が消えていた。ラウルは手がかりをつかんだと最後の電話で伝えてきていた。
ハラーは犯人の弁護と、身の潔白を明かさなければならないという羽目になる。
ラウルのつかんだ証拠が犯人に不利になるのを知っていた、だれが銃を持ち出したかもほぼ見当がついた。
ラウルの最後の言葉は不明ながら、真実に近いものだと分かっていた、しかし彼は弁護を続ける。
検察に追い詰められれば証拠について反証されることも承知の上だ。
が、彼は次第に犯人の意図が見えてくる。無罪を勝ち取るためにジレンマを抑え弁護を展開する。
ルーレイは仮釈放から追尾アンクレットをつけていた、彼の動きはパソコンに記録され、大きなアリバイになっていた。
また、ハラーの持つ数々の証拠から、検察側の証拠を粉砕する論拠は確実になった、相手の新人検察官は追い詰められ、ついに有利な答弁取引を提案した。しかし、これを聞き入れれば、ルーレイの罪を認め、彼は短いながらも拘留され、犯罪歴が残る。実績を残すには、彼は無罪でなくてはならない。
ハラーは監察官の取引をはねつける、そのとき自分の勝ちを実感した。
だが。
日常のハラーは、抜け目のないところが小粒な収入であっても彼の仕事を続かせている。
街の薬物中毒者は、麻薬密売の現行犯からハマーの弁護で厚生施設送りに減刑されてもまた罪をくりかえす、いいお客さん(リピート客)だが、そのつどハラーは全力で弁護してきた。
カード詐欺、売春、麻薬取引、下町の犯罪を弁護する話は、読んで楽しく興味深い。
第一部の「刑事調停」はハラーの家族や彼の世界と、法律のあり方や犯人との絡みが面白く、
第二部の「真実のない世界」というのは、その後のハラーの生き方のさまざまな象徴とも言える。 -
Posted by ブクログ
『ナイトホークス』で始まったハリー・ボッシュ・シリーズも、主人公が60代後半に差し掛かった今、終盤を迎えつつある感がある。LA警察を退職し、サンフェルナンド市警の非常勤職員として細々と警官業を続ける一方、私立探偵の免許を再取得し、警察の事件と探偵の事件の二つを抱え込む。警察の事件は連続レイプ事件、探偵の事件は遺産相続のための古い血縁者の捜査依頼。
探偵の一件では、長らく追想されることのなかったヴェトナムでのトンネルネズミ時代が、事件とのかかわりによってボッシュの心に帰ってくる。ヴェトナムで心身共に傷を負ったボッシュは、初期作品では戦場の暗い影をひきずった刑事でもあった。そのことが書かれなくなって久しいにも関わらず、まさにシリーズ終盤を思わせる今になって、老齢に達したボッシュの前にヴェトナム時代が蘇る。
今になってボッシュという人間像の一部を象ることになったヴェトナムを、改めて当人に振り返させることになるこの事件。主人公とそのシリーズをより深部まで理解させるために重要なポイントとなり得る一冊。蘇るヘンドリックス、クリーム、ストーンズ、ムーディ・ブルース。『青春の光と影』。まさにぼく自身も、日々ギターと長髪とベルボトムで送って過ごした1970年の日々。
さらに、病院船にヘリで慰問に訪れたボブ・ホープとコニー・スティーヴンスの挿話。強風で一旦は着艦を諦めながらも、引き返して強引に船に着け、五か月前に月面を歩いたアームストロングとともに彼らが降り立った昔日のエピソード。その後、コニーとLAのシアターで再会した時の追想を共有する一瞬。心にずんと来る情感に満ちたこれらのシーンは、本書における追憶の名シーンである。
以上のことだけでも本書はシリーズにとってとても重要な意味を成すことのように思う。ましてや大学に通う娘マディとの時間の中ですら、ヴェトナムの時間が登場するようになるのである。そしてリンカーン弁護士ミッキー・ハラーとの重要な共同作業に取り組んでゆく点も含め、最新のオールスターキャストで臨む本書で、ボッシュは非常に困難な二つの事件に取り組んでゆく。
さて本作は、タイトルも重要だ。チャンドリアンである作者は、この作品に『ロング・グッドバイ』へのオマージュとも取れる名をつけた。"Tre Wrong Side of Goodbye"。矢作俊彦の二村刑事シリーズ『ロング・グッドバイ Wrong Goodbye』を想起する人もハードボイルド・ファンであれば、少なくないに違いない。
LA市警を追われたからのボッシュの今後が気になる。一作毎に急変を遂げつつ、それらのバリエーションのなかで、一歩も譲ることなくハイレベルのストーリーを編み続けるコナリーの手腕に市警の仲間たちとともに、高らかなスタンディング・オベーションを送りたい。 -
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『ナイトホークス』で始まったハリー・ボッシュ・シリーズも、主人公が60代後半に差し掛かった今、終盤を迎えつつある感がある。LA警察を退職し、サンフェルナンド市警の非常勤職員として細々と警官業を続ける一方、私立探偵の免許を再取得し、警察の事件と探偵の事件の二つを抱え込む。警察の事件は連続レイプ事件、探偵の事件は遺産相続のための古い血縁者の捜査依頼。
探偵の一件では、長らく追想されることのなかったヴェトナムでのトンネルネズミ時代が、事件とのかかわりによってボッシュの心に帰ってくる。ヴェトナムで心身共に傷を負ったボッシュは、初期作品では戦場の暗い影をひきずった刑事でもあった。そのことが書かれなくなって久しいにも関わらず、まさにシリーズ終盤を思わせる今になって、老齢に達したボッシュの前にヴェトナム時代が蘇る。
今になってボッシュという人間像の一部を象ることになったヴェトナムを、改めて当人に振り返させることになるこの事件。主人公とそのシリーズをより深部まで理解させるために重要なポイントとなり得る一冊。蘇るヘンドリックス、クリーム、ストーンズ、ムーディ・ブルース。『青春の光と影』。まさにぼく自身も、日々ギターと長髪とベルボトムで送って過ごした1970年の日々。
さらに、病院船にヘリで慰問に訪れたボブ・ホープとコニー・スティーヴンスの挿話。強風で一旦は着艦を諦めながらも、引き返して強引に船に着け、五か月前に月面を歩いたアームストロングとともに彼らが降り立った昔日のエピソード。その後、コニーとLAのシアターで再会した時の追想を共有する一瞬。心にずんと来る情感に満ちたこれらのシーンは、本書における追憶の名シーンである。
以上のことだけでも本書はシリーズにとってとても重要な意味を成すことのように思う。ましてや大学に通う娘マディとの時間の中ですら、ヴェトナムの時間が登場するようになるのである。そしてリンカーン弁護士ミッキー・ハラーとの重要な共同作業に取り組んでゆく点も含め、最新のオールスターキャストで臨む本書で、ボッシュは非常に困難な二つの事件に取り組んでゆく。
さて本作は、タイトルも重要だ。チャンドリアンである作者は、この作品に『ロング・グッドバイ』へのオマージュとも取れる名をつけた。"Tre Wrong Side of Goodbye"。矢作俊彦の二村刑事シリーズ『ロング・グッドバイ Wrong Goodbye』を想起する人もハードボイルド・ファンであれば、少なくないに違いない。
LA市警を追われたからのボッシュの今後が気になる。一作毎に急変を遂げつつ、それらのバリエーションのなかで、一歩も譲ることなくハイレベルのストーリーを編み続けるコナリーの手腕に市警の仲間たちとともに、高らかなスタンディング・オベーションを送りたい。 -
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マイクル・コナリー『訣別(下)』講談社文庫。
シリーズ第19作。上巻に書き忘れたのだが、本作にはボッシュの異母弟、リンカーン弁護士ことミッキー・ハラーも登場する。
まさに現代最高峰のハードボイルド警察小説。27年間、衰えを知らないマイクル・コナリーの筆が冴える。シリーズでは久し振りに手放しに面白いと言える作品だった。
85歳の富豪、ホイットニー・ヴァンスから依頼された人探しは一筋縄ではいかず、まさかの展開が……一方の『網戸切り』と呼ばれる連続レイプ犯の正体は……
納得のゆく感動の結末。
シリーズはまだ続くようだ。
本体価格900円
★★★★★ -
Posted by ブクログ
マイクル・コナリー『訣別(上)』講談社文庫。
シリーズ第19作。扶桑社ミステリーの『ナイトホークス』を読んで以来、マイクル・コナリーの作品を読み続けて27年になる。作品によっては多少の出来・不出来はあるものの、常に一定水準の作品を描き続けて来たマイクル・コナリーには敬意を表する。
さすがは現代最高峰のハードボイルド警察小説と評されるだけのことはあり、非常に面白い。巧みなプロットと類い稀なるリーダビリティ、どれを取っても全く非の打ち所が無い。
サンフェルナンド市警の嘱託刑事と私立探偵を務めるハリー・ボッシュに85歳の富豪、ホイットニー・ヴァンスから名指しで人探しの依頼が舞い込む……破格の報酬の割りには単純と思われた依頼は困難を極める。一方、刑事としてボッシュは『網戸切り』と呼ばれる連続レイプ犯を追い掛けるのだが……
タイトルの『訣別』の意味はそういうことだったか。いや、まだ何かあるやも知れない。波乱の予感。
ボッシュが新鋭ジャズ・トランペッター、クリスチャン・スコットのアルバムを聴いている!(^_^)
本体価格880円
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