ユッシ・エーズラ・オールスンのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
デンマーク・スプロー島
1923年から1961年までこの島には女子収容所が実在しました。
収容所には法を犯した者を始め、当時の倫理観にそぐわない者や軽度知的障害者とされた女性が収容され、彼女たちが収容所から出ようとすれば、不妊手術を受け入れなければいけませんでした。
特捜部Qシリーズ第4弾の本書はこの収容所と現在の移民排斥運動を背景に、優生学思想に染まった者たちと彼らの被害者の個人史を描いたものとなっています。
他のシリーズ既刊が凄惨なストーリーの中にも希望やユーモラスも感じる事が出来る中、本書は全面グレイに覆われており、自身の少年時代にも人道主義の名のもとにこの収容所が実在していたと言う事実から受けた著者の衝撃の程がうかがい知れます。
【あらすじ】
人口500万人のデンマーク。
同国において20数年前、失踪事件が不自然な頻度で起きていた事に気付いた特捜部Qはこの連続失踪の影に何らかの犯罪が存在しないかと疑い、捜査を開始する。
失踪者たちの共通点を探る彼らはやがて元収容者の女性にたどり着く。
しかし、同時にその優生学思想を強く批判されている政治団体「明確なる一線」を刺激し・・・
偏見に基づき他者を不妊化する。
日本におけるハンセン病療養所を連想させるストーリーです。
北欧系のミステリーはこれまで何冊か読んできましたが、読んだ全てが何らかの社会問題がテーマに含まれており、ただの「ミステリーの為のミステリー」にはなっていません。
「ミステリーの為のミステリー」も勿論良いのですが、本書の様なミステリーを読むと果たしてそれだけで良いのか?と。
私がその存在を知らないだけかもしれませんが、日本人作家による社会問題を深くえぐるミステリーを読んでみたいです。 -
Posted by ブクログ
ワシントン・ポーシリーズの翻訳版新作が出るまで、刑事もののミステリを読みたいなと思って手をつけたけどこれは大正解。読み始めは重たく感じたものの、世界観に入り込めてしまえばそこからはもうサクッと読める。ただ、とにかく続きが気になる!というよりは落ち着いて読み進められるタイプではある。伏線の張り方とその回収がスマートで良い。
特捜部Qの初仕事になることと、世界観や登場人物のお披露目もあることから大枠は非常にシンプルなんだけど、各章の展開の仕方や徐々に繋がりが見えてくる演出、主役であるカールと周囲を固めるキャラクターたちとの絡みはしっかりと濃く描かれていて面白かった。刑事/バディものでは醍醐味の一つであるアクションもしっかりある。
事件の内容は想像を絶する凄惨さで、頭の中でイメージこそするもののどうしてもマイルドになっていた気がする。現実には当然起きえないことなんだろうけど、妙にリアルでゾッとする。想定していた結末よりも斜め上の着地だったので、スッキリとはしないけれど、ああよかったと思える。
アサドの謎は最後まで謎のままだったけれど、カールにとって間違いなく最高のバディだしここから先の物語も楽しみだ。 -
Posted by ブクログ
デンマーク発の警察小説シリーズ。
M・W・クレイヴンのワシントン・ポーシリーズを一気読みし、ポーロスに陥っていたところ、こちらの小説に出会いました。
捜査への情熱を失っていた刑事マークと、シリア系の変人アサドが、未解決事件の再調査を行うというストーリー。事件の内容はなかなか重たい内容でしたが、被害に遭ったミレーデと、捜査をするカール視点で描かれており、徐々に二つの視点が重なっていく過程が面白かったです。
今回の事件で、被害者が助かることがその後の被害者にとって本当に良いことなのか、問われる内容となっていましたが、カール自身が抱えていたその悩みに対する一つの答えが提示されており、最後は感動的でした。こちらの作品も少しずつ追っていきたいと思います。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ【2025年101冊目】
事件に巻き込まれ、怪我を負った警察官のマークが復帰後に配属されたのは「特捜部Q」と呼ばれる未解決事件を専門に扱う新部署だった。明らかに予算獲得のためだけに設置されたお飾り部署に配属されたのはカールの他にはアサドという中東人のみ。二人は自殺したと思われる女性議員の事件に取り組み始めるが——特捜部Qシリーズ第一弾!
アマプラで映画をながら見して面白かったので、キャストが変わる前までシリーズを全部みてからの原作でした。おかげでマークもアサドもイメージの中でしっかり動いてくれて楽しく読めました。映画の話を先にすると、しっかり原作を大事にして作ったんだなということがわかりました。映画を見たのは数ヶ月前でしたが、「そうだったそうだった」と思い出しながら読みました。
本シリーズは事件そのものも面白いのですが、やっぱり主役二人の人間臭さが魅力的だったりします。特にシリーズ一作目の今作は相棒のアサドのことは全て明かされないので謎めいた男としての今後の活躍にも期待できてしまいます。
現在と過去が交互くらいに語られ、果たして交わることがあるのか、と初見だったら思うような被害者にとってかなりシビアな事件なわけですが、ラストがとっても良かった。あと、生きる力が強すぎる、人間ってすごい。
外国小説ならではの独特のテンポがありますが、それもひっくるめて楽しむのがいいんじゃないかなと思います。次作以降も時間をおいてじっくり楽しんでいきたいところです。 -
Posted by ブクログ
▼特捜部Qのシリーズ第2弾。デンマークの警察小説。第1作はオモシロかった。何といっても、これはバディものなんです。
〇デンマーク警察の腕利き現場たたき上げ中年刑事・カールさん
(妻に逃げられ仕事中毒、腕っぷしが強く昔気質、、、という昔ながらの男っぽい刑事)
〇デンマーク警察に雇われている、助手(雑用係)の、アサドさん。
(アラビア系の人。デンマーク語はしゃべれるけれど、不法移民なんじゃないかという疑惑。ところどこに能力が高いが、いろいろが不明)
という奇妙な男ふたり(刑事と、助手)のバディもの、というのがいちばんの魅力です。
▼ということはこのバディがオモシロければ、ひとつひとつの事件はそれほどでもなくても愉しめてしまうわけですが、今回は個別事件としては、「変態エリートたちの長年の殺人趣味を暴く」ということになります。そして、きらり輝くのが、キミーという名の、40台?くらいかの女性です。
<悪者たち(男性たち)の昔からの被害者でもあり>
<同時に共犯者として加害も繰り返してきた>
という存在で、キミーは変態エリートたちがまぎれもなく殺人に何件も加担してきたということを証明できる動かぬ証拠を握っている。そして、とある理由から、変態エリートたちを皆殺しにしようとしている。
▼よくある手法ですが、
A 主人公たちの動き
B 悪者たちの動き
C キミーの動き
この三つが交錯して語られながら、「過去になにがあって、この人たちはこーなってるんだろうか」ということが読者に暴かれて行きます。
▼落ちのありかたは、それほど斬新でも衝撃でもなかったんですが、結局はするすると読めてしまったのでそこはありがたく満足。
あと、物語内で変態殺人嗜好エリートたちが、映画「時計仕掛けのオレンジ」に多大な影響を受ける、ということが描かれるんですが、やっぱりあの映画はすごいインパクトがあるよなあ、とあらためて。さすがキューブリック。そして、「時計仕掛けのオレンジ」と「if…もしも」の2本でしか見たこと無いんですが、その2本で強烈な存在感を放ったマルコム・マクダウェルさんってすごかったなあ、と久々に思い出しました。 -
Posted by ブクログ
新たに手を出したシリーズもの。
こちらはデンマーク産。
自らのチームが事件の最中銃撃を受け、
1人が死亡、もう1人は一命は取り留めたものの
体が麻痺状態に。
トラウマから立ち直れない主人公は
通常業務から外され、特捜部Qと言う部署へ移動。
窓際族のような状態に。
特捜部唯一のメンバーは謎のアラブ人、アサド。
この人がすごく良い!
癒し系?すっとぼけ系?いや、実は切れ者?
この方がいれる甘ーいお茶、飲んでみたい。
まだまだ謎だらけなので、この先明かされる真実に期待。
事件の方はかなり狂気に満ち溢れてる。
「檻」に閉じ込められた女性の章と
カールとアサドが地道に捜査をする章が交互に綴られ
徐々に真相に近づいていく。
エピソード多めで、名前も含め、わかりづらい部分も多く、繋がるかと思ってたところが、あ、そこは関係ないんかーい、だったりしたものの、
全体的には楽しめ、満足。
ラストシーンに涙。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ2002年と2007年と場面が変わるうち、これはきっと現在進行形の事件に違いないと戦慄させられ、祈るような気持ちで読み進めていった。事件がこんなふうに繋がるなんて想像もできなくてスリリングな体験ができた。
ミレーデの監禁シーンはこちらまで苦しくなってくる。終盤はハラハラさせられて胸が痛いくらいだった。
優秀だが怠惰なところのあるカールと、優秀だが変わり者のアサド。コンビの相性が良いのか悪いのかよくわからず、面白かった。アサドはあくまでもアシスタントであって警察官ではないというところがポイントで、結果的に型破りな捜査になるのが予想を上回っていてよかった。意外と屈強なところも頼もしい。
このコンビが熟練になったらどうなるのか、シリーズを追ってみたい。