【感想・ネタバレ】特捜部Q―吊された少女―のレビュー

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Posted by ブクログ

 デンマークのミステリシリーズ第6弾。
 常に同じ品質ではなく、時とともに変わりゆく関係性が、なんとも切ない。
 相変わらず読ませる。

 この物語には、一人の魅力的な男性が登場する。
 彼について、他者からどれだけ彼が魅力的か、は語られるのだけれども、ついぞ彼が本当に何を考えていたのかは示されない。いや、示されているともいえるんだけど、主人公らが彼と語り合う機会は与えられない。
 そのことにより、物語を読み進めながら「この人はどんな人なんだろう」とずーっと考えさせられてしまい、その結果、彼がとてつもなく魅力的に見えるという不思議なことになった。
 語らず想像させるってすごい。

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2016年10月12日

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嫉妬、嫉妬、嫉妬の本作。
今回は新興宗教も絡んで、今までとはまた違った雰囲気でした。
特捜部Qができてもう7年になるらしい。
その割にチームのアサドの秘密、ローサの秘密はほとんど明かされず。でもそれでいいのかも。
早く新しい作品が読みたい。
ミステリとしても面白いけど、背景や人間関係が描き込まれていて、良いです。

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2016年02月28日

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ネタバレ

いつの間にかQが創設されてから、7年も経っていることに驚き。モーナとも別れてるし。自分が置いてけぼりをくらった気分。
細い細い糸を手繰り寄せて、結末まで持っていくのがすごい。
ピルヨのパートは、まるで自分がピルヨになったかのように、ハラハラドキドキで、先が気になって、半分から一気読み。
こんな救いのない終わり方って…Qのメンバーみんなが満身創痍で、どうなっていくのか。早く次回作が読みたい!

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2015年12月26日

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ネタバレ

 本『特捜部Q』シリーズを読むたびに思うのだけれど、この作家は冒険小説の書き手としての色合いが強いのではないだろうか。物語の各所に個性的な人間たちを配することにより生まれる劇的効果を狙うのがとても巧い作家ではないのだろうか。だからこそ、警察という組織の人間を主人公にしていながら、およそ警察機構とは相容れないような主人子と、これまた同様の部下二人、そして何よりも事件の中核となる副主人公を物語ごとに造形し特捜部Qと対峙させ、交錯させ、緊張で蓄えた力を大団円で一気に爆発させてゆく手法が活きているように思える。まさに血沸き肉躍る冒険小説みたいに。

 それを強く感じさせてくれたのが本書である。交通事故に遭って木の上に飛ばされ、吊るされたままきみょうな死体となって発見された少女の話を、今回の特捜部Qは発掘する。その事件を取り憑かれたように調査していた老人が公衆の面前で拳銃自殺したのだ。衝撃的なスタートと言える。

 一方で現在より数年前から、奇妙な教団に生きるある人物の描写が始まる。女性、悪の化身、そして殺人鬼である。教祖との距離がなぜか不明だ。教祖の正体もわかりにくい。しかしそれなりの力を持ったカルトであり、その女は教団の実務を握る立場の人物であると同時に、頭の切れる悪魔である。彼女の手によって誰にも知られず教団から消えてゆく女たちのことがこうして語られる。

 カルト教団はこのような物語シリーズの中ではなかなか避けて通れない犯罪の火床のような題材であろう。教団そのものが健全であれ、そこに悪意のある人間、仮の姿を宿して金や力を行使できる人間の存在が、閉ざされた集団の中に特異に構築されたヒエラルキーに忍び込みやすい。そんな、古今東西を問わぬ宗教的悪の中で蠢く個の悪の姿が教団にも外界にも力を振るうことで、破滅を呼び込むという物語は宗教にも政治にも国家にもあり得ることであり、だからこそ冒険小説の骨格と似た造りになってきているのが、本シリーズなのではないかと思う。

 本書では主人公たちも命が安泰ではなく、火の中に飛び込まざるを得ない存在として描かれる。第三者的ではなく、まさに冒険を余儀なくされ、体験を己の物語に変えられる人々としての捜査官なのである。

 ちなみに本シリーズで冒頭から抱え込んでいる未解決事件=連続釘打ち機事件に、本書で大きな進展が見られる。カールたちを襲撃した銃が発見されたのだ。今後のシリーズ作品を通して、こちらの捜査も少しずつだろうが、露になるだろう。そしてあの事件で体の自由を奪われたハーディの人生も、自分の物語として冒険小説の道を伸ばし続けることだろう。今後も眼を離せない、注目のシリーズである。

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2015年12月21日

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ネタバレ

時系列にない物語がそれぞれに進行してやがて接点を持ち一緒になり、驚きの
展開をみせる!これまでにもあった構成だけどストーリーの着地点が予測不可能なのは相変わらず唸ってしまう。
カルト教団にも触れ、教義やら信仰やらザワザワと恐ろしい雰囲気が最初から漂っていたが、それ以上に恐ろしい真実が種明かしされる頃には、読者はストーリーに絡め取られてしまっている。
アサドの前歴、ローセの謎などまだまだ目が離せない。

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2015年11月12日

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ひっくり返してきたな〜
尾美としのりじゃなかったお見事

ただちょっとだるかったかな〜
長いんだもん

新興宗教みたいなんがストーリーの中心にあって、たまたま個人的に二作連続で宗教がらみの物語になっちゃったのでダルく感じたんだと思います
もったいないことした

それにしても特捜部Qの3人、いや今回ゴードンも頑張ったので4人にしてあげるか、が仲良しすぎる
こんな仲良かったっけ?
もうほんと今回は仲良しアピール回です
特にカールとアサドの信頼関係がもう揺るぎないのよね
なんか次回そのあたりが鍵になりそうな気がするな〜

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2023年09月04日

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最新作アサドの祈りを読む前にシリーズの最初から読み返しているところ、ようやく6まで到達、ここまでは3回読んだことになるのだが、細かいところは忘れているので多数ひかれた伏線を確認するためにはやはり必要なことだろう。

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2021年04月23日

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デンマーク・コペンハーゲン警察内にある、未解決事件を扱う〈特捜部Q〉のメンバーの活躍を描くシリーズ第六作。

今回捜査するのは17年前に起きた、少女が車に撥ね飛ばされ木に逆さ吊りになったまま絶命した凄惨な事件。
この事件を生涯をかけて個人的に捜査していた警察官ハーバーザートが、自らの退官式で拳銃自殺したことをきっかけに〈特捜部Q〉が後を引き継ぐことになる。

このシリーズの魅力の一つは〈特捜部Q〉のメンバーたちのキャラクター。
リーダーのカールは基本的に面倒を嫌う質だが、なんだかんだで引き摺られていく。
アサドはその名前通りイスラム圏の人間らしく、デンマークの慣習や社会からすると浮世離れ的な言動が目立つ。
一番エキセントリックなのがローセで、カールやアサドの尻を叩いて自らも猛烈に仕事に取り組む一方で、ロマンスにも猛烈。
さらにゴードンという新たなメンバーも加わるが、彼は一番常識的、だがこのメンバーの中では一番軟弱だ。
カール、アサド、ローセ共に秘密を抱えていて、それが明かされそうで明かされない。

本編の構成は過去の事件の話と現在の捜査状況とが交互に描かれる中で、過去の事件パートは徐々に時間が進み、やがて現在と交差する。この交差がどのような重要場面となるのか、交差後にどうやって〈特捜部Q〉と対決するのか、お楽しみだ。

シリーズとしては、カールが〈特捜部Q〉に配属されるきっかけとなった、『釘打ち事件』の真実が気になる。『釘打ち事件』後にカールはトラウマにより記憶が曖昧になっているので、一体カールは何を記憶の底に閉じ込め、何が明らかになるのか、それが暗いものでないことを祈るばかりだ。
さらに前作あたりから従兄弟からカールが伯父殺しに加担したという爆弾発言まで飛び出し、それが今作では親戚中に暴露されている。カール自身は全く身に覚えがないようだが、カールの記憶力の曖昧さが読者を不安にもさせる。
こちらの結末も気になるところだ。

肝心の本編の事件だが、何とも虚しくなるような話だった。こういう、無意識に周囲を惑わし傷付け、それでいてそのことに当人はまるで無関心で自分が一番純粋なままという人間が一番始末が悪い。周囲を振り回すだけ振り回しておいて、自分が一番の被害者だと本気で思っている。
ハーバーザートが何故家庭を壊してまで、最終的には自殺してまで少女の事件に拘ったのか、それが分かっても逆に虚しさしかなかった。
事件の関係者たち、ハーバーザートを含め、ここまでやったのに結局彼らは何を得て何を守ったのか。
こういう虚無感を徹底的に突き付けるのは北欧ミステリーの特徴だろうか。


本筋とは外れるが、デンマークでは本名すら明らかではない人物を警察で雇えるのか、離婚しても契約で元妻や義母や義理な息子にまで縛られるのかとか、日本では考えられないようなことが分かって興味深い。またLGBTに最も理解のありそうな国だが、身内のこととなると話は別というのも興味深い。

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2020年09月17日

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特捜部Qシリーズ第六作。きっかけはボーンホルム島に勤務する警官からカールにかかってきた一本の電話だった。退職を前に心残りの事件の再捜査を依頼するものだったが、相変わらずやる気のないカールはすげなくあしらう。翌日、定年退職を祝うパーティーの席上で、電話の相手ハーバーザートが拳銃自殺してしまう。むげに拒否したことが引鉄を引かせたのだろうか。カールは重い腰を上げるしかなかった。

事件は十七年前に自動車事故として処理されていた。ハーバーザートは、そのために家族を失ってまでも、なぜかその事件について長年独自の捜査を続けてきた。主を失った家には捜査資料が山のように残されていた。ローセはそれを署に持ち帰り、捜査を開始。前作から殺人課の課長になったビャアンの肝いりで、ゴードンという新人が仲間に加わる。即戦力とはいえないものの要員だけは着実に増えている。

アルバーテという少女は、男の子の間で人気者だったが、早朝自転車で走っているところを轢き逃げされ、木に逆さ吊りになって発見された。車体の屋根に曲線の一部が見えるワーゲンのバスの写真が残され、その傍に男の姿が写っている。どうやらハーバーザートは、この男が犯人だと考えていたらしく、捜査はその線でなされたようだが、懸命な捜査にも関わらず車も男も見つからなかった。

今回の主題は、スピリチュアルやヒーリングといったもので、この作家には珍しく太陽信仰と世界各地の宗教との関係に関する詳しい解説が開陳され、ぺダンティックな要素が盛り込まれている。いつもながら何か新味を持ち込むことで、マンネリ化を避ける工夫がなされている。複数視点で描かれるのはいつも通りだが、殺人の実行犯とカールたちの捜査との間に置かれた時間差は前作『知りすぎたマルコ』に続いて、ほとんどない。

きっかけは十七年前に轢き逃げ事件にあるのだが、殺人は現実に今起きているのだ。<人と自然の超越的統合センター>の導師アトゥは、近づく人を魅了するカリスマ的な力を持っていた。その右腕であるピルヨは、アトゥを愛していたが、アトゥは彼女以外の女性と次々関係を持っていた。嫉妬の鬼と化したピルヨはアトゥに近づいた女を次々と消していく。果たして、アルバーテもまたピルヨの手にかけられたのだろうか。

いつものことながら、事件解決の手がかりを見つけてくるのは、ローセたちチームのメンバーで、今回はなんと車椅子に乗れるようにまで回復したハーディが、すごい手助けをしてくれる。もっとも、カールやハーディを襲った例の事件についても、ハーディは記憶に残る手がかりをもとに事件の捜査をするように迫るが、カールは煮え切らない。カールにとってこれが最重要な事件だというのに、何がカールに一歩踏み出すことを躊躇させているのか、興味は募るばかりだ。

今一つ、伯父殺しの共犯だと言いふらしていたロニーが死に、葬儀の席で遺言が披露される。それには、あらためて伯父殺しを自白し、カールがその間よそ見をしていてくれたことに感謝し、遺産を半分遺すと記されていた。死者の口から出た言葉は重く、カールは身に覚えのない罪を背負わされたことに驚く。ロニーの狙いは何だったのか。相変わらず、始終パニック発作に襲われ、離婚の条件だった義母への面会を前妻に請求され、カールは多事多難。

頭よりは足を使うタイプのカールとアサドは、次々と関係者を訪ねては質問をし、相手の反応を見ていく。アサドによる強引な質問による揺さぶりや、厳しくねめつけるような凝視は、相手の告白を引き出す絶好の手段。このコンビの息がぴったり合ってきたことをうかがわせる。カールが自分の葬式で悲しむ人物としてアサドを一番に挙げるほどに。今回も相手にこっぴどくやっつけられ、太陽光発電によって感電死させられそうになる二人だが、絶体絶命の時、互いに相手を思いやるところがぐっとくる。

それにしても、最後は二人揃って痛い目に遭わされるのがこのシリーズのお約束であることは重々承知だが、妊婦が屈強な刑事二人相手に争って、最後はロープで縛りあげるというのはいくらなんでも無理があるのではないだろうか。細かなことを言い出すときりがないが、これまで何度も難敵を相手にしてきたアサドにしてはちょっと無様すぎる。自分の親指をアース代わりに使うことで、カールを助けようとするアサドの犠牲的精神を描くために、この窮地が必須だったことは分かるとしても、だ。

十七年前の事件の真犯人は誰か、というのが最後まで残された謎。犯人として考えられた人物が、二転三転した後で、やはり今回もどんでん返しに遭う。最近、エンディングに凝るようになってきたことは読者としてはうれしいのだが、正直なところ、愛する男のために次々と殺人を犯してゆく女の姿を、ハラハラドキドキして追ってきた読者にしてみれば、これが真相だったのか、という解決は、すとんと腑に落ちる展開とは言えない。一人の少女の存在が多くの人の死を招くことになった。そのアイロニカルな結末に苦い味が残る。

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2017年04月02日

Posted by ブクログ

特捜部Qのこのシリーズは、第6作を迎える。
不思議なことに、回を重ねるごとに読後の余韻が深くなる。中毒症状かもしれない・・・。
犯罪者は捕まるまで同様の犯罪を繰り返すという作者のメッセージで成り立つ特捜部Qが扱う事件の内容も面白いが、助手アサドの来歴がどう明かされていくのかが楽しみで仕方がない。過去に拘束・拷問を受けたことがあることを匂わせるような語り、ローセの心の闇を蒸し返すような多重人格の登場に、次回作が待ち遠しくて仕方がない。

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2017年03月05日

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デンマークの人気ミステリ、特捜部Qのシリーズも6作目。
個性的な特捜部の面々は、またしても思わぬ成り行きに巻き込まれる。

17年前の事件をとりつかれたように捜査していた刑事が、退官式で自殺してしまう。
ボーンホルム島で、少女がひき逃げされた事件だった。
後を託されたと張り切る助手のローサらに、しぶしぶ重い腰を上げるカール・マーク警部補。

一方、あるスピリチュアル系の団体があり、指導者アトゥは神々しいような長身の美形で、人を惹きつけるカリスマ性があった。
その片腕の女性ピルヨは、実務面を受け持ち信頼も厚いが、アトゥに近づきすぎる女性はひそかに遠ざけてきた。
ピルヨの視点での重いストーリーが交互に語られ、いつもと一味違う雰囲気に。
はらはらと事件解決を願う半面、いずれは追い詰められていくだろうピルヨが何だか気の毒なような。

誤解や偶然の重なり合う意外な展開で、読ませます。
愚かさと哀しさと。
謎の過去を持つカールの部下アサドは、危機に際して、何ともたくましい。移民で、警察官ですらないただの助手なんだけど、教養もある人物。
警部補のカールは刑事としては有能だが、世渡り下手で組織でははみ出す傾向があるタイプ。
特捜部に飛ばされ、周りに振り回されているのをいつも面白おかしく描かれていますが、実は寛容なところもある?
孤独がちなカールが感じるアサドとの友情が一抹の救いで、胸打たれます。

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2017年01月20日

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カールとアサドとローセ、特捜部Qの個性的で有能な仲間。17年前の少女轢き逃げ事件を捜査していく。今回は特にカールとアサドの友情が胸熱である。

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2016年11月02日

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このシリーズの難は、キャラがたちすぎてる事やと思う。だいぶこなれてきたし面白いんは間違いないんやけど。

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2016年09月29日

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続巻が楽しみなシリーズ。個性豊かな登場人物の秘密もまだまだのこったまま。カールとアサドの関係にグッとくる。本筋の捜査のほうも小刻みな場面切り替えで飽きさせない。

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2016年02月14日

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ネタバレ

大好きなシリーズの6作目。新しい人も加わり、常連の人たちは相変わらず個性的で楽しい。
内容は、深い。毎回のこととはいえ一筋縄では行かないというか、後半かなり二転三転して急展開だった。みんな最後の方で色々あって心配!!
最初の作品の事件もまだ展開中なのに、よく覚えていないのでまた1作目から読んだ方がいいのかも。

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2016年01月17日

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ネタバレ

すっかりおなじみの特捜部のメンバー、特にアサドが気になる。意外な犯人・・・はミステリの王道だが、犯罪者には生きて罪を償うべき義務がある。生の方が死よりも困難だとしても。
それにしてもなぜ北欧の人名は覚えられないのか。男か女かもよくわからない。

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2015年12月15日

Posted by ブクログ

シリーズ6作目。主人公たちの関係性や、会話それ自体が面白く魅力になるのは、シリーズものの醍醐味だと思う。今作も、過去の事件とある時点でリンクするんだけども、ハラハラ、ドキドキする物語のスピード感はなかった。
***
とにかくやりきれない結末。本当に人を信頼するとは、そして大切なひとを守るとはどういうことなんだろうとぼんやり考えたけれど、もちろんすぐに答えは出ない。こんな極端な事件にはならなくても、ほんの少しのボタンの掛け違えで取り返しのつかないことが起こってしまうのだ、ということを思い出した。

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2015年12月08日

Posted by ブクログ

【カール 最大の危機迫る!?】

北欧ミステリーの人気シリーズ【特捜部Q】第6弾。

引退間際の警官からかかってきた一本の電話は、カールたちQのメンバーを十数年前に起きた異常な交通事故の捜査へと導いていく……

前作の【知りすぎたマルコ】と違い、こんがらがった複雑な糸をひとつひとつ解いていくようなストーリーだった。
展開もゆっくりめで、途中読みにくいエピソードもあったが、ラストの畳み掛けとどんでん返しはさすがである。

轢き逃げ犯は全く想像していなかった人物だったので、散りばめられた伏線を探す為にも再読しようと思う。

今作は新興宗教が事件に絡んでおり、ひとりの導師がキーマンとなっている。
とくに導師の心情がまったく描かれていないのがこの作品の面白い所だ。
読者は導師の心情や人物像を想像しながら読んでみると更に面白いのではないだろうか。

最初のシリーズから登場する“釘打事件”やアサドの秘密も出てくるのだが謎が深まるばかりだ。
どうオチをつけるのか最後まで見届けたいと思う。

純粋な気持ちが引き起こした悲劇が描かれた1冊だ。


こんな人におすすめ .ᐟ.ᐟ
・北欧ミステリーが好きな人
・どんでん返しが好きな人
・宗教がテーマのミステリーが好きな人
・倒叙ミステリーが好きな人

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2023年02月07日

Posted by ブクログ

 愉快な3人の未解決事件担当刑事が繰り広げるデンマークの警察小説第6段です。

 前作のマルコ事件から3年が経った。今回は、デンマークの東、バルト海にあるボーンホルム島の警察官が自分の退官パーティで拳銃自殺した。カール、アサド、ローセのお笑いトリオならぬ刑事達は、現地に向かい自殺した警官ハーバーザートの息子に会いに行くと息子も自宅で手首を切って死んでいた。

 生前ハーバーザートは、17年前に自らが発見した少女が亡くなった未解決の交通事故に執着していた。

 カール御一行は、管轄外の島での捜査には訳がある。自殺した警官クレスチャン・ハーバーザートは命を絶つ前日に面識の無いカールに電話をし捜査協力を仰いでいたからだ。自殺する事でカールが動き出すと読んでの行動だった。自らを究極の犠牲にしてまで解決を望むこの少女の事故の背景は何なのか非常に興味が湧いてくる。

 ストーリーは、後半まで膠着状態ではっきりしない。焦ったくなってくるが真犯人と思しき人物があっさり死に、次なる容疑者も死に、えっ、、なかなかにどんでん返し犯人探しがとても面白い。今作は、カールとアサドの絆の深さや自殺した警官家族の苦悩、新興宗教教祖の奔放な生き方。人間の感情が露わになった事件だった。

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2022年03月08日

Posted by ブクログ

コペンハーゲン警察が舞台のミステリー6作目。十数年前の少女の事故死の再調査を頼まれた特捜部Q。丁寧な捜査で、じわりじわりと犯人に近づく様に引き込まれ、長編ではあるが一気に読みたくなる。グロテスクな殺人シーンもあるが、カールとアサドの友情にホッとさせられる。

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2021年09月05日

Posted by ブクログ

シリーズ6作目。反目し合うこともありつつ基本的には良識のある上司だったヤコプスンから退職することを告げられただけでなく、後任がカールの天敵のようなビャアンで、前作でミイラと一緒に数日間監禁されるという猛烈な目に遭い、モーナとも別れ弱り目に祟り目のカール。10作で完結予定のシリーズ起承転結の転から結にかかる一作にあたるせいか、表題の事件だけでなく、シリーズを通して影を落としている2つの案件(カール自身が当事者として関わった釘打ち機の殺人と、おじの水死事故)もじわじわ展開しています。アサドの過去についての謎、ローセの心の傷、カール自身がPTSDを受けることになりいまだ正面から向き合う事も出来ないつらい体験とその背景が、3人で表題の事件を捜査している過程で情報提供してもらう流れで受けた催眠療法によって揺さぶられ、かろうじて保っていた平衡感覚が失われてしまったみたいで、みんな大変そうでした。カールとアサドはまたも瀕死の状態に陥り、後半からはほとんど電話越しだったり別の部屋からの登場しかなかったローセがしばらくQから離れるようなことが終盤に示唆されたり。いったいどうなってしまうのか、心が落ち着かない感じです。表題の事件そのものも、マインドコントロールや新興宗教、大人による少年少女の搾取、などが絡んでいて、かなりザワザワする作品でした。夢中で読みましたが、読後感はぐったり。

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2021年03月15日

Posted by ブクログ

ネタバレ

特捜部の面々の掛け合いは相変わらず楽しく。
だけど、今回それほど悲惨な描写がなかったので物語に沈んでしまったような気も。いや、変に浮き上がらずそれはそれでよかったんだけど。
今回は人を愛した故の悲劇。容疑者をひたすら庇う取巻きの狂気が痛い。
シリーズ全体の謎も少し前進。

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2016年04月23日

Posted by ブクログ

テンポがいつもよりゆるくて、どっと疲れた。前作ではマルコという魅力的なキャラが物語を引っ張ったが、本作はそういう面はなし。カールの内面のツッコミがだんだん激しくなるな。報われない愛が起こした悲劇だった。

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2016年02月13日

Posted by ブクログ

シリーズ6作目。まずは開始から7年が経過している設定にびっくり。話は面白かったけれど、時々出てくるステープル事件、小出し過ぎて思い出すのに苦労する。真相はいつ?自作に期待。

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2016年01月12日

Posted by ブクログ

魅了する少女アルバーテ
太陽のカリスマ、アドゥことフランク

釘打ち事件は進展する
ハーディは少し回復し車いすで飛び出すくらいに。

カール、アサド、ローセ。
セラピストの催眠術カウンセリングでそれぞれの心に秘めていた傷が揺り起こされる。
カールは飛行機、アサドはサイードという名前で活動していたときのこと、ローセは父親と家族のこと。

事件そのもののラストがすっきりしない。これは解決したのか? 始めから誘導されているようでその誘導も間違っている。
アサドは大けがしているし、ローセは自傷してしまうし、カールはいとこから恐喝されていて上司のラース・ビャアンからも睨まれてしまうし。

それにしても、核心にせまり重要人物、今回はピルヨだが、と対決するときに必ずアクションの大立ち回りがある。それってどうにかならないか。もう少し注意深くいけないのだろうか。

今回カールは、アサドやローセ、ゴードンなどのチームへの想いが芽生えたシーンが多く見られた。ほだされたカールがかわいらしい。

それにしても名前になじみがないせいか、とにかく人名、地名が頭に入ってこない。「これ、誰だっけ?」「うん? この地理関係はどうなっているんだったか?」

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2018年10月15日

Posted by ブクログ

第六弾。評価はやや甘め。

特捜部Qに調査を断られた警官が退官式で自殺するという衝撃の幕開けは良かったが、全体的に長すぎ。新興宗教の導師を守ろうとする女性の異常な行動と視点は入れ替わりながら展開するが、退屈な中盤はそこそこ忍耐を強いられた。

終盤の意外性でちょっと持ち直したけど、冗長な印象は拭えない。シリーズの中でも出来が悪い方なのでは? ストーリーがイマイチなのでキャラの魅力で読むしかない。前作が良すぎただけにホント残念。

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2015年11月21日

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