クラウス・シュワブのレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
パンデミックが始まった当初はかなりパニック気味だったのだなと、本書を読んで改めて感じた。
落ち着いてきた今読んでみると、「世の中が不可逆的に大きく変容し、戻らないだろう」という主張が多いことに驚く。
よほど悲観的に受け止めてしまっていたのだろう。
本書を読んだ目的は、「シュワブ氏の提唱する"グレート・リセット"の具体的な方向性と詳細を知る」ことだった。
自分の読む前の認識では、立ち行かなくなった社会の諸課題に対して、世界の頭脳の中枢が、なんらかの明快な解決方法や方針を示しているのだと思っていたが、やはり実際はそこまで甘くなかった。
本書はあくまで2020年10月(頃 )時点における現状の列挙と、それぞれの課題に対してパンデミックがどのように影響を与えうるかというシナリオを提示したに過ぎない。
それを過小評価はしない。これだけ文化やイデオロギーや環境などの背景が異なる地域・国々、人々の階層を押しなべて俯瞰して同じ土俵に上げるのはかなり無理があり、骨の折れる作業だったはずだ。
パンデミックによる影響を受ける、という共通項で方向性をかろうじて示せたのだと思う。
これは凄い。
多くの課題が、資本主義の歪みから来ていることは明白だ。
2023年現時点においても、パンデミックによる影響で自然環境、労働環境、所得向上、国際情勢の改善などが解決したかといえば、全然解決していない。
テレワークは解除され、生産性向上のために再び出社が強制されつつある。
グレタ氏の抗議デモからMeToo運動、ジョージフロイド抗議運動、イエロージャケット運動など様々な運動が各地で起きている。
中国やロシアやイランですらデモが起きるくらいだから相当である。
この動きに対して、じゃあ社会に変容は起きているのか。
草の根の意識は高まっているが、いまだに改革は起きていない。
格差が開きすぎてしまった現代、既存のシステムという壁はあまりにも高すぎる。
シュワブ氏はステークホルダー資本主義という形で軟着陸する形を模索しているようだ。
ステークホルダー資本主義に関してはその定義程度しか把握しておらず、氏の他の著作はまだ読めていない。
なので判断しにくいのだが、資本主義が行き詰まり、民主主義が機能不全に陥っている現状で、ステークホルダー資本主義には今更感が強く、とうていリセットに役立つとは思えない。
新型コロナウイルス感染症のパンデミックがひとつのガス抜きで終わってしまったことを考えると、
リセットの起爆剤となり得るのは、もはや未曽有の大恐慌だとか、エボラ出血熱の大流行だとか、核戦争レベルの悲劇になってしまいかねない。
氏が本書で主張する通り、リスクは密接に絡み合い、一つの火種が急速に拡大し他の問題に派生するという動きは的を得ている。
なので、なんらかの今回のパンデミック以上の大災害が起きれば、大きな潮流となるだろう。
資本主義というシステムの原動力が欲望である以上、
世界中の人の欲望を皆が自身で抑えつけるか、
または世界中の人々の欲望を叶えるようなきっかけが必要なように感じる。
前者は多分不可能。皆が揃って生きるか死ぬかに迫られないと到底そうはなるまい。
では後者か。
欲望を実現化する上で想像しうるのは以下のような、非常に難易度の高い課題の解決だろう。
フリーエネルギークラスの無尽蔵のエネルギー源の発見、
地球以外の居心地の良いフロンティアの発見・移住・活用の実現化、
VRとメタバースの発展と普及による、国家体制に影響を与えない欲望の発散口、
癌や糖尿病や心血管疾患や悪性ウイルスの克服。
AIの発達によって、これらの難問は遠からず解決してしまうかもしれない。
そのことに反対する既得権益者。
または保守主義な人々がAIの発達それ自体や、AIの活用や、生まれたソリューションの活用に反対することが予想される。
さらには倫理的、宗教的、政治的などの理由でその活用に及び腰になる可能性もある。
既に盤石な、欲望を原動力にして暴力の代わりにお金を用いた弱肉強食の社会である資本主義体制のその先に行くためは、
いずれにしても人々の欲望や、恐怖心や、現状維持の気持ちといった内面と向き合い、それを超克することは避けられなさそうだ。 -
Posted by ブクログ
コロナ禍をテーマにした、識者たちの短いインタビュー記事が集められたものだが、人間の生死について、人間どうしの関係性について、また経済について(これに関しては私自身の基礎知識がなく、よくわからなかったが…)など、コロナ禍に限らず、人間社会が抱える普遍的で本質的な事柄が多岐にわたって言及されていた。
色々なるほどと思う言葉に出会ったが、特に、世界的な傾向にある「分断」が抱える問題について、アメリカ人経済学者の言葉が腑に落ちた。彼は、それは誰か一人の責任ではなく「差異を超えて互いに話し合うことを妨げている深い分断そのもの」が問題であると語った。特定の人物に責任を転嫁させるような報道に違和感があったが、話し合い、過ちを認め合うことが「分断」から「結束」への橋渡しになると思った。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ本の前半は、ステークホルダー資本主義が求められる背景についての説明となっており、GDPという指標の欠陥/人類が及ぼす環境負荷/グローバル化に伴う富の偏在などが説明されているものの、やや総花的で、どこかで聞いたことのある話が多かった。
後半のステークホルダー資本主義の解説では、世界経済フォーラム発案の「ステークホルダー資本主義メトリックス」やニュージーランドのGDPに依らない政策決定などが紹介されているものの、やや表面的で踏み込んだ説明がなかったのが残念だった。
ステークホルダー資本主義ではどのように社会が変わるのか、もっと具体的に知りたかったが、サステナビリティの観点で企業が評価されるという今の大きな潮流の先に、ステークホルダー資本主義があるというだけなのかもしれない。 -
Posted by ブクログ
ネタバレノルウェーは、自営業者の平均収入の80%を支給、デンマークは75%。市場の論理が強い国は、対応できなかった。アメリカでは、病気休暇の制度がない会社が多く、休むと馘になる可能性があるため、感染が広がった。
グローバリゼーションのトリレンマ=経済のグローバリゼーション、政治的民主主義、国家主義の3つは相容れない。
グローバルガバナンスとは、グローバルな問題に国を超えて協力すること。
コロナは、小さな国々の成功と超大国の失敗を暴いた。
コロナで海外からの送金が途絶え、外貨獲得手段がなくなった=エジプト、インド、パキスタン、ナイジェリア、フィリピンなど。
大気汚染が、がん、心疾患、呼吸器障害など健康被害を引き起こす。
「希望のない恐怖はないし、恐怖のない希望もない」スピノザ
イギリスでは、ロックダウン期間でビデオ診療がほぼ100%になった。
on-line小売業界の陰で、繁華街やショッピングモールが落ち込む。
パンデミック後は、ESG投資がさらにまい進する。気候変動、ESGに配慮しなければ取り残される。従業員を大切にしないと取り残される。
ハーツはロックダウン中に破産申請。
行動の変化は元に戻らない。オンラインサービスは加速。グリーンモビリティは増える。自己消費、DIY、on-line学習はどうなるか。
年の基本的な魅力は失われない、という意見と、環境にいい郊外に引っ越す、という意見に分かれる。
不動産には逆風。商業用不動産は供給過剰気味。
ツイッター社は恒久的にリモートワークができるようにした。
大学はハイブリッドモデルに移行。
ビッグテック、健康、ウェルネスの産業が繁栄する。
ハリケーンや地震などの自然災害は人を団結させる。
パンデミックは、じわじわと長期間続くため、疑心暗鬼になりやすい。
緊急事態での価格上昇は、公平性に欠けるため社会的には不適切。