笙野頼子のレビュー一覧
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ブスブスブス
私はこんなに素晴しい女性なの!
お料理だって、お掃除だって、家事はもちろんお手の物。
それに言葉遣いだって美しいし、自分を常に高めようと努力しているの。
美しいし、心根だって優れているし、あとは素晴しい殿方だけ。
ね、なんで結婚できないのだと思う?
それはね、あなたみたいなブスが、殿方を手練手管でたぶらかしているからよ、ね、いいこと、カニバット様のおっしゃる通りにしていたのよ、だから私は、
哀れというのでもなく、可笑しいというのでもなく、ただただ呆然とする。
ブスブスブスと連呼しながら頭に渦巻く疑問。
それを結婚という幻想に覆い隠しながら、連呼する。
そうでなければ自らの思いを -
Posted by ブクログ
笙野頼子氏の作品を読むのは三作目。短編が5本。最後の、柘榴の底、以外は、著者の私小説(というよりエッセイ)かと思われるが、途中でエッセイとは違うというようなことが書いてある。ノンフィクションに近いフィクションなのかもしれない。ほかの作品と同様、観念と現実が入り交じっていて、難解。正直、途中三作はよくわからなかったなぁ。
●増殖商店街
表題作。夢と現実を、お金という媒体を挟んで行き来している。増殖していく商店街は、欲望の増殖ではなく、「私」の不安の増幅の現れか。
●こんな仕事はこれで終わりにする
猫の話。中身だけ見ると、なぜ私が最初の猫に異常といえるほどの愛情を感じていたのかちょっとわからな -
Posted by ブクログ
わかったかわからないかと聞かれると正直わかってはいない気がするけど、嫌いではない。
変な電話で連れ出されて海芝浦へ行くまでの、車窓から見える京浜工業地帯を夢現でスケッチしているような「タイムスリップ・コンビナート」がいちばん好きです。いきなりマグロ(のような何か)と夢のなかで恋愛している、という冒頭の期待を裏切らないヘンテコな小説でした。
ホームの片側が海に面していて、改札口は東芝の工場の門に繋がっているから社員以外は出られないという「海芝浦」はいかにも架空の駅っぽいのに実在していたりとか、あくまで現実のこの日常の話なのに、「沖縄会館」を「沖縄海岸」と聞き間違えていきなり海へ連れて行か -
Posted by ブクログ
つかみにくい話。
ありえない話なんだけど、よくある話でもある。
たとえばブス描写。ひとつひとつの描写がぜんぜんおかしくない。普通にみかけるコンプレックスや弱点や、そんな程度のものなんだけど、全部集まると大層な、でも異形じゃないただの外れ値になる。
無知を恥じもせず人を責めるだけの妄言を吐きまくる説教師も、それを信じる美女たちもそう。
こんな風にケッコンケッコン恋愛彼氏清く正しく美しく女らしく男オトコ!と思い込まされて、思い込まなければ生きていけないような人ってのはよく居る。
「!?」「~しているっ」「でもでも」などの小技が利いた文体が絶妙にイラッっとくる。
最初は笑いながら読んだ。風刺を他 -
Posted by ブクログ
「タイムスリップ・コンビナート」「二百回忌」「なにもしてない」の3つが詰められた短編集。作風としてはパラレルワールドの私小説といった感じ。特に「タイムスリップ~」は日常の生活でフッと頭に湧いた妄想をあちこちにちりばめつつ小説調にまとめられている。「二百回忌」は実際にありそうでなさそうな土地で行われる法事のイリュージョンだし、「なにもしてない」は妄想世界の私小説。そしてこの小説は、読む人をかなり選ぶと思う。文章はなかなかウィットが効いていて読みやすく、ユーモアタッチだけれど、その内容がもうぶっ飛び過ぎてついていけなくなる。3作の中だと「タイムスリップ~」は電話を通じた会話の中で思考があちこちに