【感想・ネタバレ】笙野頼子三冠小説集のレビュー

あらすじ

野間文芸新人賞受賞作「なにもしてない」、三島賞受賞作「二百回忌」、芥川賞受賞作「タイムスリップ・コンビナート」を収録。未だ破られざるその「記録」を超え、限りなく変容する作家の「栄光」の軌跡。

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Posted by ブクログ

こういう作品の纏め方って、あざといとも思う反面、潔いですね。いわゆる私小説になるんだろうけど、収められた三篇がそれぞれに違う雰囲気を醸してて、でも笙野頼子印がしっかり押されていて、読んでて気持ちよかったです。”二百回忌”に至っては、もはや完全にファンタジーだし、他の二編についても、電車移動とか皮膚科診察とかを軸にしながらもあちこちに妄想飛びまくりで、混沌世界観が満載。ただ単に意味が分からんだけと思えないのも、構成や文章の妙があってこそと理解。さすがの力作三部でした。

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2018年02月16日

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これ1冊で3作ってお得!と思い購入しました、というのも笙野作品は全体的に在庫がないのです(探す私の努力不足かもしれないけど)。
単行本の方より読みやすい感じ。「恋愛用マグロ」の描写が妙にリアルで若干のグロテスクさを感じさせる辺りが素敵。
一番のお薦めは『二百回忌』です。

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2009年10月04日

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笙野頼子は今生きている作家の中で一番面白いのではないでしょうか。ハードボイルドでオカルティック。我が憧れの作家。

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2009年10月04日

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受賞順に読んだ。全部同じじゃないかというところはあるけど、毎回面白いから全然問題ない。とにかく笙野頼子がめちゃくちゃ面白いことを知れてよかった。なんで売れないのかなあ?このあとの作品読んでない身で言ってもしかたがないが、この三つを読んで思ったのはどっか変なところに旅行にでも連れて行きたいよな。あと、町田康ってほとんど読んだことないけど、一番最初に思い浮かんだのは町蔵だった。似てないかなあ。2007.1.11

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2009年10月04日

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カニデシ、カニデシタ、カニデナイ、カニカモネ‥
「二百回忌」が良かった。
可愛いな、面白いな。
大学時代を思い出した。
こんな風に純文学を楽しめる時間が、涼やかだった。

「タイムスリップ・コンビナート」がどうしても読めなくて、しばらく遠ざかっていたけれど、今回は「二百回忌」が良かったな。

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2020年01月19日

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これは面白いと言っていいのか、どこがどう面白いと感じたのか、何とも感想が難しいのだけど、特異な作品であることは間違いない。最も強く感じたのは、この著者は外部に対するより自分への興味がとても強い方なのだなぁということ。その程度の感想しか持てなかったというのはとても情けないのだけれど。

文中に描かれる視点移動が、知覚を呼び起こすのではなく分析的評価に直接結びつく様が、とても興味深かった。外からの刺激を受け入れるのに、都度評価を伴うのは大変だろうなぁ。自意識の壁がとても厚いのだろうなぁ。こういう人は生きるのがしんどそうだ。本作に登場する人物に悉く共通するそのような個性に同情する。でもこういう人って実際居るよね。

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2014年06月02日

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笙野頼子作品を人からすすめられたので、読んでみようと購入しました。三作品収められていて、どれも良かったのですが、「なにもしてない」が出色でした。皮膚科に行くのを日々先延ばしにするところが秀逸で、病院の診療時間を調べて保険証を準備して…その日はそれで終わりというあたり、「そうそう!」とうなずきながら読みました。母親の支配から逃れたいのに、母親が心配で実家に帰ってしまう、その葛藤もじれったいほどよく描かれています。
ほかに収められているのは「二百回忌」と「タイムスリップ・コンビナート」。前者は普段と逆の行動をとることが奨励される<イベント>を描き、女性が男性を投げ飛ばしてもOK、むしろよくやったと賞賛される…その意味ではファンタジーと言えるかもしれません。後者は夢と現実が交錯するような不思議な作品で、ある種けだるさのようなものも感じられました。

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2014年04月21日

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読んでいるうちに景色が回りだし、しまいには眩暈がしてくる。そういう類の小説。
これと似た印象の小説を思い出そうとしてみたが、草間弥生の『クリストファー男娼窟』あたりだろうか。

だが、あちらよりはだいぶ、感覚的じゃない。
いや、感覚は独特だが、笙野の場合そうした感覚はすべていったん反省の元に置かれ、感じている私というものを上から見た状態で、改めてそこに感情移入するというような、回りに回った経路を辿るようになっている。
読者としてそれに付き合って出口に出たと思ったら、入口からは想像もできない場所に出た、ということがままある。

だが、不思議と疲れるとか、面倒な印象はなく、むしろ軽妙でさえある。
今度はどこへ連れていかれるのだろう、というわくわくした気持ちさえ湧いてくる。
単純に、文章がうまい、というか、言葉の選び方がうまいのだろう。

このためか、「私」という一人称の語りで進む割に、女の情念のようなどろどろとしたものに絡め捕られて行くという気はせず、むしろそういう情念についてつい考えてしまうもう一段階進んだ状態で積極的に語るので、つねにどこからしら、諦めや冷静さがつきまとう。
確かに悲しんだり怒ったりしているのだが、それをどこかで見ている私、というものが常にいる。

笙野作品はこれが初読だが、これだけ読む限りでは、肉体では怒り狂いながら実はそれを面白がって観察しているような、どこか黒子のような作者というものがちらちら見えた。

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2012年07月27日

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好きだ。たぶん「何これ、わけわからん」と言う人が多いのだとは思うけれど私はけっこう好き。しっくり来た。

最初はこの著者の壮大な独り言のように連綿と続いていく文章に戸惑いを覚えるが、次第にそれがくせになってくる。単なる独語に留まらず広い世界の地面すれすれをかっさらって通ってゆくような気持ちよさ、自分がすくい上げたくて叶わなかった感情の群れを体現してもらったような爽快感を感じる。特に「なにもしてない」「二百回忌」が好き。
音読したくなる文章だ。ある種の詩などは音読している内に狂気へ昇華してしまう怖さがあるが、これは詩的な文章なのかと思いきやそうとも言い切れず、地べた付近でばたばたしている葛藤が生々しくて、そこがまた良い。
自らの言葉で語っていることがこんなにひしひしと感じられるとは、そしてそれがこんなにも心地よいとは。

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2012年05月19日

Posted by ブクログ

「二百回忌」が面白かった。生きている者と死者の曖昧さ、時空の歪み、赤い喪服、確かにドキドキする。「なにもしていない」ナニモシテイナイワタシ。被害妄想が膨らんで動けなくなる。あとがきが笑えた。

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2012年03月24日

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実は二度目の挑戦。
読み返して良かった。二百回忌となにもしてないが、やたらおもしろかった。ただ、タイムスリップコンビナートが…あと二回くらい読んだら少したのしめるかな?(笑)

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2011年09月04日

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うまいなぁ、この人。
人の神経を逆なでする人物を、必ず一人は登場させるし。
なんだか、純文学を久しぶりに読んだ気がする。

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2009年10月07日

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笙野頼子三冠小説集、というタイトルもすごいが、本当にこの人の文章は重い。いや、軽いように見えて、重い。
そして賞を穫った小説3本をすべて相当に書き直している。その分さらに重くなっているようだ。
自己分析するように文章を書き、さらにそれを書き直した結果がこの文庫だ。文庫相手にも完璧を目指すこの人の姿勢はすごい。
そして自らあとがきに書いているが、天皇という存在、日本における信仰というもの、という点にきちんと焦点を合わせているというのもなかなかできることではないと思う。重い。本当に重い。

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2009年10月04日

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これはまただいぶ近寄りがたい作風,日常感覚と土着信仰などを曖昧に結びつけるところに特徴がある。すれ違いコントみたいな会話も多く,それ自体におかしみを感じられるか否か。

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2024年05月26日

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キンドルで読む。
偶然ながら、今まで住んでいた土地(鶴見、そして三重県)に繋がることを読み始めてから気づく。

ちょっとこれは、私は余り揺さぶられる部分がないのだが...

最近、名古屋では百回忌をするという話を伺って、本当にそんなに遡って法事をすることがあるのを知った。
真っ赤な着物、というのは実は私自身の夢に時々出てくるモチーフ。

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2019年10月15日

Posted by ブクログ

ネタバレ

野間文藝新人賞受賞作「なにもしてない」、三島由紀夫賞受賞作「二百回忌」、芥川賞受賞作「タイムスリップ・コンビナート」のどれもが私小説として超一級品だ。夢と現実が絶妙に絡み合っている世界観と諧謔が読んでいて気分がいい。特に、「タイムスリップ・コンビナート」は面白かった。マグロについて作者は後書きで「近代が覆い隠してしまった宗教的感情のひとつのあらわれ」と述べている。「自らの感情を対象化し、神をつくりだす」物語だったらしい。
再評価されるべき作家だと思うのだが……

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2019年08月16日

Posted by ブクログ

芥川賞、三島賞、野間文芸新人賞、三冠を一冊で読める、たしかにお得な本だった。本人の解説付きなのも良い。

「タイムスリップコンビナート」
意識の流れで書かれた、現実の中に時折混じる変なもの。マグロへの恋、謎の電話、大量に現れたおっさん、片面が海の駅。初めて笙野頼子を読むものだから、ただただ変な話だなーゼンエイテキなゲイジュツだなーと思いながら読んでいた。解説で若干腑に落ちた。

「二百回忌」一番面白かった話。トンチンカンな話で200年に一度の奇祭、時空が歪み蘇った者も一族が一堂に会し、でも会話をするでも親交を深めるでもなく、でも一族であることが分かる、その騒々しさと乱雑さといい加減さ。

「なにもしていない」
これは、誇張はあるものの、私小説だろうと思う。長くて、卑下卑屈となにくそ魂と自己肯定感が波のようにうねり、世の中や周りや自分自身の心境の描写が客観的でズバズバ的確(でも結局引きこもってなにもしていない)なものだから、読んでて少し辛くなってくる。
ちょこちょこ母親との不仲の話(頼っているくせに強がり、自意識過剰自分しか見えず自分の主観で家族を動かそうとする)が出てきて、架空の毒親、心がズキズキした。
p165「バカナコトヲイウナ。綱わたりの最中、ああおちたらこわいなーここは百メートルあるよー、などと本当の事を叫びながら渡れとでも言うのか…」

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2019年01月20日

Posted by ブクログ

この人の作品は…なんというか、自己主張が強くて読んでいて疲れますねぇ…まあ、何かしら目の張るところがあるので読み続けているわけですが。

ヽ(・ω・)/ズコー

特に「何もしてない」なんて自身の病気の症状を延々と語り出すものだから、何か闘病ブログでも読んでいるんじゃないかと錯覚してしまいました…。

ヽ(・ω・)/ズコー

好きなのは他の二編ですねぇ、タイムスリップコンビナート? もマグロとの恋愛に疲れて……みたいな書き出しが面白いと思いましたし、二百回忌は変なことが延々と起きているのに主人公はどこか飄々と、と言いますか、淡々と、と言いますかあまり動じていない風なのが面白いと思いました。

ヽ(・ω・)/ズコー

あとがきもまた独特でして…とにかく不遇な時代が長く続いたという著者。それが「三冠」も達成して、いやはや、作家として順調じゃないですか! おめでとうございます!

というわけで、さようなら…。

ヽ(・ω・)/ズコー

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2018年11月03日

Posted by ブクログ

野間文芸新人賞受賞作「なにもしてない」、三島由紀夫賞受賞作「二百回忌」、芥川賞受賞作「タイムスリップ・コンビナート」の三編が収録。

現実がベースにあるのに突如ありえない非日常が織り交ざり、終始不思議な感覚。空想的な表現というか、場面が頭で描きにくいせいかもしれない。
掴みどころはないんだけど”しこり”を残していくような。初見では難しかったけど、また挑戦してみたい。

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2013年09月05日

Posted by ブクログ

 わかったかわからないかと聞かれると正直わかってはいない気がするけど、嫌いではない。

 変な電話で連れ出されて海芝浦へ行くまでの、車窓から見える京浜工業地帯を夢現でスケッチしているような「タイムスリップ・コンビナート」がいちばん好きです。いきなりマグロ(のような何か)と夢のなかで恋愛している、という冒頭の期待を裏切らないヘンテコな小説でした。
 ホームの片側が海に面していて、改札口は東芝の工場の門に繋がっているから社員以外は出られないという「海芝浦」はいかにも架空の駅っぽいのに実在していたりとか、あくまで現実のこの日常の話なのに、「沖縄会館」を「沖縄海岸」と聞き間違えていきなり海へ連れて行かれてしまうような、不安な時空間。

 祖先が蘇ってきて、生者死者入り乱れて奇想天外な法事をする「二百回忌」はすごい迫力だった。よくこれだけ滅茶苦茶なイメージを幻視して文章化するなあと思います。「真っ赤なタカノツメを木綿糸に通してネックレスを作り、大鍋に沸騰させた湯の中へただ放り込んだだけの」トンガラシ汁とか、家がタコみたいな形で蒲鉾で出来ているとか。
 地面から生えてきた「凄まじい程の美少年」が、「千年にひとりの珍しい男フェミニスト」と喝采されるところが妙に苦い。

「なにもしてない」はつらい。超つらい。作家志望者は読んだら鬱必至。三十を過ぎて親から仕送りを受け、働かずに引きこもって売れない小説を書き続けるなんて苦行すぎる……「なにもしてない」で、「なにもしてない」という自意識に苦しみながrひたすら書いているからこそすごい幻視ができて、表現を研ぎ澄ませられるのかも知れませんが……。働くほうが圧倒的に楽ですよ……
 あとアトピーの描写がリアルかつ詳細すぎて軽くスプラッタの域。

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2010年10月24日

Posted by ブクログ

 「タイムスリップ・コンビナート」「二百回忌」「なにもしてない」の3つが詰められた短編集。作風としてはパラレルワールドの私小説といった感じ。特に「タイムスリップ~」は日常の生活でフッと頭に湧いた妄想をあちこちにちりばめつつ小説調にまとめられている。「二百回忌」は実際にありそうでなさそうな土地で行われる法事のイリュージョンだし、「なにもしてない」は妄想世界の私小説。そしてこの小説は、読む人をかなり選ぶと思う。文章はなかなかウィットが効いていて読みやすく、ユーモアタッチだけれど、その内容がもうぶっ飛び過ぎてついていけなくなる。3作の中だと「タイムスリップ~」は電話を通じた会話の中で思考があちこちに飛ぶ、という展開なので読みやすいけれど、「二百回忌」と「なにもしてない」には困った。架空の土地の郷土史が永遠と続いているような感じで、そんなタイプが好きな人にはかなりはまるのかと思うけど、私にはイマイチな作品でした。でも「タイムスリップ~」の文章は割と幻覚的で良かったです。あー。ジャンルは幻覚小説かな、これは。

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2010年05月14日

Posted by ブクログ

むちゃくちゃーなはなし。
だけど心惹かれる気もする。
ほかのも読んでみる。
二百回忌がいいかなあ。

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2009年10月04日

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