あらすじ
殺しても母は死ななかった。「あ」のお母さんから「ん」のお母さんまで、分裂しながら増殖した-空前絶後の言語的実験を駆使して母性の呪縛を、世界を解体する史上無敵の爆笑おかあさんホラー。純文学に未踏の領野を拓いた傑作。
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Posted by ブクログ
まるで宇宙そのものみたいだった……という意味のわからない感想が浮かんでくる。すごい作品を読んでしまった。
「母の縮小」は内容が突飛でなかなかついていけなくて、「母の発達」の途中からめちゃくちゃ面白くなってきて、「母の大回転音頭」ではこんなものを書く作者がすごすぎると思った。どうやったらこんな話になるのだ、天才なのか。
書いてあることの意味が全然分からないのになんだか理解できる気がしてくるのが不思議だった。母がいない人は支配しやすくて母親気取りの人物につけこまれるだとか、悪魔の母の中に愛や安心やありがとうが存在しているだとか、妙にハッとさせられる箇所がいくつかあるのだ。
母と娘の関係の難しさ、お母さんという存在が世間からどう扱われてどう生きているか、皮肉が効いている。こんなものは一旦ぶち壊さないとそこから抜け出せない。再構築する上で娘にも大きな変化があるのが面白かった。拘束を解かれた二人が苦しみながら自由に生まれなおすことの爽快さがそこにあった。
それと単純に言葉の面白さや語呂の良さで繰り返し目で追いたくなる文章でもあった。
世界をこねくり回したような作品だったのに、読後はすっきりした満足感に包まれている。
Posted by ブクログ
こんなにメチャクチャで最高な本はひさしぶりに読んだ。小説というのは元来ことばが物語を生むもので、書かれたことがそのまま虚構内の現実になるような、そういうものだけれども、それをあえてメタ的に示したようでとにかくたのしかった。
Posted by ブクログ
笙野頼子さんの作品て、読むのにいつも変な体力使うし気合い入れて読んでぐったり疲れる感じになるんですが、これも、変な体力使ったし気合い入れて読んだのに、ぐったり疲れるとゆーことはなかったです。すっきりした読後でした。でもやっぱり毎回圧倒されます。おかーさん再構築。
しかしあの五十音順の母は、ヤツノの理想というか、望むものなんやろうか。あれすらも母の命令で行われとる感じやったけど、そっちはいいのか。うむむ。
でも、母を生むむすめって、つまり母子関係ってそういうことやよね。
Posted by ブクログ
笙野頼子の存在を知ったのは佐藤亜紀のHPからでした。
その直後に本屋で見かけた『金毘羅』>『水晶内制度』>『絶叫師タコグルメと百人の「普通」の男』と読み進めて、その流れで『説教師カニバットと百人の危ない美女』と『だいにっほん、おんたこめいわく史』を読むつもりだったんだけど、ついつい、ふらりと手に取ってしまったこの本。
「文庫で薄く」て「読み始めたらすいすい」読めてしまったからなんだけど、いやーまー…やっぱりすごいっ!笙野頼子!!文章は「すいすい」だけど書いてる内容はすさまじく深いっ!!なのに、この枚数で治まるなんてっ!ぎゃーはっはっはっはっ。
感想はもちろん◎!花丸つけちゃうぞ。
いやはや、笙野頼子の作品を読んでてつくづく思うのは、「大学のゼミでだったら、どう読んだだろう??」って事。なんでゼミで誰も取り上げなかったんだろ!?と思いつつ笙野頼子の経歴を見たら…ああああ、自分が学生の頃ってまだ笙野頼子はデビューはしていたけど、知られてはいなかったのね…。
特にこの『母の発達』は、ものすごくエキサイティングに読めちゃうような気がするなぁ。
おおいなる呪縛と化していた「母」を「縮小」し、解体再構成することによって「発達」させ「大回転音頭」する事で昇華してしまう…。
うー鮮やかだっ!
Posted by ブクログ
━━おかあさーん。
━━へっへーい。
━━おかあさーん。
━━ぶりぶりぶり。
この母娘のやり取り壊れてます。これだけ壊せば前が見える?あきらめがつく??
もうカオス、カオス。
Posted by ブクログ
母という存在の抑圧から逃れるため、妄想において母を解体する話。デタラメな妄想録のようでありがながら、実はギリシア神話の母の解体にもつながる奥深さ。「なんじゃこりゃー」と思いながら読み進めていくうちに、いつの間にかこの作家の妄想世界に迷い込んでいきます。
Posted by ブクログ
想像してみてほしい。どんなに最愛の人、生涯の伴侶、来世も予約済み、であっても、ある日突然彼ないし彼女が小指の爪ほどの大きさになった挙句3万匹ほどに増殖したらどうだろうか。あるいは、一周約10メートルの顔面だけの存在となって、落語の小咄ばかりしゃべるようになったら。一瞬、かもしれないけれど、「きもちわるい」が過りはしなかっただろうか。
きっと、どこからどこまでを自分が彼ないし彼女と見なしていたのかという枠が徐々に浮き彫りになり、すなわち崩壊して、目の前の「物体」が一人歩きをはじめ、まったく別の感情が産まれるに違いない。こよなく愛する人でそうなのだ。では憎くて仕方ない人だったらどうなるか。逆に愛や法悦を感じるようになるのだろうか。
これはだいたいそんな小説だ。おそらく十年に一度の…というか十年に一度くらいしか出てほしくない。すさまじいスピードで繰り出される、マシンガン妄想。幻覚の64連射。そして、ジャンルはたぶんギャグだ。
Posted by ブクログ
前評判と異なり、読んでいて爽快感はありませんでした。
母との関係に特別思い煩うことが無いせいかもしれません。私が。
言葉に表せない複雑な感情を母に抱いている「娘」であったら、どのような読後感であっただろう。
私は終始半笑いで、狂気を鈍い冗談で薄めたようなこの物語を読んでいました。
母性神話を解体する文学的実験、と言えば聞こえはいいけれども、個人的には実験的な面白さや未知なる表現に対する興奮は皆無で、むしろその実験を試みる著者の「必死さ」に不気味さを感じ、それでいてなぜか心惹かれました。
飄々としていてシュールな語り口の下に、「母の存在」なるものを(それは個人的な母にとどまらず)を何としてでも引き剥がしてやりたい、という著者のがむしゃらな気迫、あるいは情念が潜んでいる気がしてなりません。
下卑た好奇心かもしれませんが、この作品を読んで著者の表現の源泉に何があるのか興味が湧きました。
他作品も読んでみようと思います。
Posted by ブクログ
連載途中のなにかを数度読んだ以来の笙野頼子、
世界観がくっきりで、
多少その世界に中って気持ち悪くなりながらも読みきりました。
愛憎を笑えるようになろう。
Posted by ブクログ
これ、凄いです。なんか祝詞かなんか読んでる感じになってくるリズム感。シュールで濃い。
娘の母親離れっていうのは確かに滑稽且つグロテスクだと思うんだけど、こんな風に腹蔵なく書いてしまうのも、凄い。