あらすじ
殺しても母は死ななかった。「あ」のお母さんから「ん」のお母さんまで、分裂しながら増殖した-空前絶後の言語的実験を駆使して母性の呪縛を、世界を解体する史上無敵の爆笑おかあさんホラー。純文学に未踏の領野を拓いた傑作。
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Posted by ブクログ
まるで宇宙そのものみたいだった……という意味のわからない感想が浮かんでくる。すごい作品を読んでしまった。
「母の縮小」は内容が突飛でなかなかついていけなくて、「母の発達」の途中からめちゃくちゃ面白くなってきて、「母の大回転音頭」ではこんなものを書く作者がすごすぎると思った。どうやったらこんな話になるのだ、天才なのか。
書いてあることの意味が全然分からないのになんだか理解できる気がしてくるのが不思議だった。母がいない人は支配しやすくて母親気取りの人物につけこまれるだとか、悪魔の母の中に愛や安心やありがとうが存在しているだとか、妙にハッとさせられる箇所がいくつかあるのだ。
母と娘の関係の難しさ、お母さんという存在が世間からどう扱われてどう生きているか、皮肉が効いている。こんなものは一旦ぶち壊さないとそこから抜け出せない。再構築する上で娘にも大きな変化があるのが面白かった。拘束を解かれた二人が苦しみながら自由に生まれなおすことの爽快さがそこにあった。
それと単純に言葉の面白さや語呂の良さで繰り返し目で追いたくなる文章でもあった。
世界をこねくり回したような作品だったのに、読後はすっきりした満足感に包まれている。