笙野頼子のレビュー一覧

  • だいにっほん、ろりりべしんでけ録

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    三部作の完結編。

    こんな風に終わるのか!
    突然出てくるナノレンジャーにびっくりしたり。
    フォイエルバッハについての話が結構長かったり。
    (興味は湧いた)
    当時作者が論争中だったからか、結構唐突な感じのおまけやあとがき(長い)。

    とにかく読み終えることができて良かった。
    前の2作が絶望的な終わり方をしていたので、とりあえず多少良い方向の終わり方で安心した。

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    2015年11月24日
  • ドン・キホーテの「論争」

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    純文学をよく知らない癖に馬鹿にし、否定する者たちに闘いを挑んだ記録。
    今でも純文学というジャンルが残っているのは、著者のおかげかも、と思う。

    闘った相手について、
    「例えば彼らに特徴的なのは知識の欠落したままする実体のない一般論、そして自分に都合のいい自作の用語定義とそれを使ってする少数者攻撃です。その時に表すファシスト丸出しの異様な被害者意識や、安手の過激フレーズを考えなしに使いたがる心の弱さ」
    と書いていて、現在もそういう人物はいるな、と思った。

    他にエッセイや書評もあって、時代を感じて面白い。
    「ストーキング」という言葉は当時出てきたばかりだったんだな、と思った。

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    2015年07月24日
  • 未闘病記――膠原病、「混合性結合組織病」の

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    自由自在な文に翻弄されながら、引き込まれる。闘病記というより、頭の中の取り留めも無いものを徒然に…という感じで、生身の感情とか、病と幸福感とか、後書きなどでもまた、人類の普遍的なものに通じるような。
    病が日常になると、欲が出ることは、我が身を持って、頷く。

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    2015年03月02日
  • 笙野頼子三冠小説集

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    これは面白いと言っていいのか、どこがどう面白いと感じたのか、何とも感想が難しいのだけど、特異な作品であることは間違いない。最も強く感じたのは、この著者は外部に対するより自分への興味がとても強い方なのだなぁということ。その程度の感想しか持てなかったというのはとても情けないのだけれど。

    文中に描かれる視点移動が、知覚を呼び起こすのではなく分析的評価に直接結びつく様が、とても興味深かった。外からの刺激を受け入れるのに、都度評価を伴うのは大変だろうなぁ。自意識の壁がとても厚いのだろうなぁ。こういう人は生きるのがしんどそうだ。本作に登場する人物に悉く共通するそのような個性に同情する。でもこういう人って

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    2014年06月02日
  • 笙野頼子三冠小説集

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    笙野頼子作品を人からすすめられたので、読んでみようと購入しました。三作品収められていて、どれも良かったのですが、「なにもしてない」が出色でした。皮膚科に行くのを日々先延ばしにするところが秀逸で、病院の診療時間を調べて保険証を準備して…その日はそれで終わりというあたり、「そうそう!」とうなずきながら読みました。母親の支配から逃れたいのに、母親が心配で実家に帰ってしまう、その葛藤もじれったいほどよく描かれています。
    ほかに収められているのは「二百回忌」と「タイムスリップ・コンビナート」。前者は普段と逆の行動をとることが奨励される<イベント>を描き、女性が男性を投げ飛ばしてもOK、むしろよくやったと

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    2014年04月21日
  • タイムスリップ・コンビナート

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    これはなかなかの傑作。
    ポストモダン文学ってほとんどツボにはまらないことが多かったんだけど、流れるような文体と幻想的でエキセントリックな描写はクセになる。
    収録短編『シビレル夢ノ水』はなかなかメンタルがやられる一編。
    第111回芥川賞受賞作。

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    2013年08月21日
  • 絶叫師タコグルメと百人の「普通」の男

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    痛快の一言。
    「太陽の巫女」「金毘羅」もいいけど、こういうのも好き。

    ブスの描写でかなり笑いました。
    カニバットのほうも読もう。

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    2013年04月19日
  • 笙野頼子三冠小説集

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    読んでいるうちに景色が回りだし、しまいには眩暈がしてくる。そういう類の小説。
    これと似た印象の小説を思い出そうとしてみたが、草間弥生の『クリストファー男娼窟』あたりだろうか。

    だが、あちらよりはだいぶ、感覚的じゃない。
    いや、感覚は独特だが、笙野の場合そうした感覚はすべていったん反省の元に置かれ、感じている私というものを上から見た状態で、改めてそこに感情移入するというような、回りに回った経路を辿るようになっている。
    読者としてそれに付き合って出口に出たと思ったら、入口からは想像もできない場所に出た、ということがままある。

    だが、不思議と疲れるとか、面倒な印象はなく、むしろ軽妙でさえある。

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    2012年07月27日
  • 笙野頼子三冠小説集

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    好きだ。たぶん「何これ、わけわからん」と言う人が多いのだとは思うけれど私はけっこう好き。しっくり来た。

    最初はこの著者の壮大な独り言のように連綿と続いていく文章に戸惑いを覚えるが、次第にそれがくせになってくる。単なる独語に留まらず広い世界の地面すれすれをかっさらって通ってゆくような気持ちよさ、自分がすくい上げたくて叶わなかった感情の群れを体現してもらったような爽快感を感じる。特に「なにもしてない」「二百回忌」が好き。
    音読したくなる文章だ。ある種の詩などは音読している内に狂気へ昇華してしまう怖さがあるが、これは詩的な文章なのかと思いきやそうとも言い切れず、地べた付近でばたばたしている葛藤が生

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    2012年05月19日
  • 笙野頼子三冠小説集

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    「二百回忌」が面白かった。生きている者と死者の曖昧さ、時空の歪み、赤い喪服、確かにドキドキする。「なにもしていない」ナニモシテイナイワタシ。被害妄想が膨らんで動けなくなる。あとがきが笑えた。

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    2012年03月24日
  • 母の発達

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    想像してみてほしい。どんなに最愛の人、生涯の伴侶、来世も予約済み、であっても、ある日突然彼ないし彼女が小指の爪ほどの大きさになった挙句3万匹ほどに増殖したらどうだろうか。あるいは、一周約10メートルの顔面だけの存在となって、落語の小咄ばかりしゃべるようになったら。一瞬、かもしれないけれど、「きもちわるい」が過りはしなかっただろうか。
    きっと、どこからどこまでを自分が彼ないし彼女と見なしていたのかという枠が徐々に浮き彫りになり、すなわち崩壊して、目の前の「物体」が一人歩きをはじめ、まったく別の感情が産まれるに違いない。こよなく愛する人でそうなのだ。では憎くて仕方ない人だったらどうなるか。逆に愛や

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    2011年12月06日
  • 笙野頼子三冠小説集

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    実は二度目の挑戦。
    読み返して良かった。二百回忌となにもしてないが、やたらおもしろかった。ただ、タイムスリップコンビナートが…あと二回くらい読んだら少したのしめるかな?(笑)

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    2011年09月04日
  • 海底八幡宮

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    はじめての笙野頼子。

    難解だった。二百回忌あたりから入りなおしたい。

    キーワードに則ってすごく自意識のままに書いているという感じ。

    売れているんだろうか。(需要があるんだろうか)

    私はおもしろいと思うが。

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    2010年12月12日
  • 金毘羅

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    「オカルトを排除しつつ国家宗教をも否定しつつ、宗教の思想性も拒否し続け、それでも信仰を続けるなんて。」
    「インドの小国の王子ゴータマ・シッタルタが始めたこの宗教は、最初この古神道「

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    2010年09月22日
  • 金毘羅

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    壱で必死に追いすがって、弐で引き込まれて参で感動し、四で混乱させられました…。「自分の言葉で」書かれた私小説と言う感じ。もう一度読めば違う印象かも。
    「そもそも日本国民の殆どはロジックに載せてまともに日本語を使う能力などありません。矛盾した事をころころいいながら自分の感情だけ身振りだけを表現するのです。そして職場ならば力関係で物事が決まります。家庭ならば言葉はただ身振りと感情だけでやりとりされて、愛情や調和があれば、それでいいのです。」この一説にいたく感動した。洞察力が凄い。

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    2010年09月20日
  • 笙野頼子三冠小説集

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    うまいなぁ、この人。
    人の神経を逆なでする人物を、必ず一人は登場させるし。
    なんだか、純文学を久しぶりに読んだ気がする。

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    2009年10月07日
  • タイムスリップ・コンビナート

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    夢の中でマグロとの恋愛に凝っている「私」は、ホームの片側が東芝、片側が海という「海芝浦駅」を探しに出かける。
    非現実的なようで、的外れでもない。
    夢の中の声が出ない感じとか、テンポとか、見たことないはずの景色が現実の記憶と少しずつ重なっていく感じとか、よくそのまま文章にできるものだなあ、と、ちょっと感動する。第111回芥川賞受賞。

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    2009年10月04日
  • 母の発達

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    前評判と異なり、読んでいて爽快感はありませんでした。
    母との関係に特別思い煩うことが無いせいかもしれません。私が。
    言葉に表せない複雑な感情を母に抱いている「娘」であったら、どのような読後感であっただろう。

    私は終始半笑いで、狂気を鈍い冗談で薄めたようなこの物語を読んでいました。
    母性神話を解体する文学的実験、と言えば聞こえはいいけれども、個人的には実験的な面白さや未知なる表現に対する興奮は皆無で、むしろその実験を試みる著者の「必死さ」に不気味さを感じ、それでいてなぜか心惹かれました。
    飄々としていてシュールな語り口の下に、「母の存在」なるものを(それは個人的な母にとどまらず)を何としてでも

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    2009年10月04日
  • ドン・キホーテの「論争」

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    マスコミVS「純文学」。最前衛の文学的レジスタンス、それは極私的言語の戦闘的保持。戦闘的「純文学」エッセイ。

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    2009年10月07日
  • 笙野頼子三冠小説集

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    笙野頼子三冠小説集、というタイトルもすごいが、本当にこの人の文章は重い。いや、軽いように見えて、重い。
    そして賞を穫った小説3本をすべて相当に書き直している。その分さらに重くなっているようだ。
    自己分析するように文章を書き、さらにそれを書き直した結果がこの文庫だ。文庫相手にも完璧を目指すこの人の姿勢はすごい。
    そして自らあとがきに書いているが、天皇という存在、日本における信仰というもの、という点にきちんと焦点を合わせているというのもなかなかできることではないと思う。重い。本当に重い。

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    2009年10月04日