笙野頼子のレビュー一覧
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ネタバレまるで宇宙そのものみたいだった……という意味のわからない感想が浮かんでくる。すごい作品を読んでしまった。
「母の縮小」は内容が突飛でなかなかついていけなくて、「母の発達」の途中からめちゃくちゃ面白くなってきて、「母の大回転音頭」ではこんなものを書く作者がすごすぎると思った。どうやったらこんな話になるのだ、天才なのか。
書いてあることの意味が全然分からないのになんだか理解できる気がしてくるのが不思議だった。母がいない人は支配しやすくて母親気取りの人物につけこまれるだとか、悪魔の母の中に愛や安心やありがとうが存在しているだとか、妙にハッとさせられる箇所がいくつかあるのだ。
母と娘の関係の難しさ、お -
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もう、ほんと、すさまじい。はじめから終わりまで全力疾走。奇妙な夢の世界でゾンビ達と死闘する1人の女のお話、であると同時に、女として生まれた人間がこの社会で受ける様々な呪いや侮蔑に対し、言葉を武器にして、たった1人で、真正面から闘う「現実の女」のお話でもあった。
負けたらゾンビになってしまうから、自分でいたければ戦い続けるしかない。まさにレストレス(休みなし)バトル。すごいとしか言いようがない。読みながら自分もバサバサ切り刻まれる心地がしたし、いい加減休ませてくれーと叫びたくもなったし、変幻自在の豊かなイメージにこめられた鋭いブラックユーモアに笑った。
テレビゲームのような設定およびアクショ -
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デビュー10年目、32年前の作品。これはこれで、もう、良すぎて目眩がしてくる良さだ。何でこの歳になるまで笙野頼子を知らなかったんだろうと、心底、不思議になるくらい共感大爆発の内容で、読みながらうなずきすぎて、心の首がもげそうになった。
ただ、この作風だからこそポップにならず、たとえば自分のような、文芸誌一度も読んだことのないような人間に届かなかったのも、なんとなく分かる。みんなが読んでる村上春樹の真逆という感じがする。
ともかく、描写が緻密で、情報量も多くて、豊かな世界だった。どうしてそんなピタリと書いてくれるんだと何度も思った。母と娘の関係など鋭い心理描写が多かった。
ナニモシテナイと -
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笙野頼子の内面の自由を守るための言葉たちがとても好きだ。あまりに自由に跳ね回るフレーズのパレードも。
今作はあおり、かづき、ばらきの御三姉妹神の来歴と巡行を描くことで、彼らの生き様を妨げ続ける国家や国の神という大きなものたちの空っぽさを描いているような気がする。
めちゃくちゃ好きなのだけれど、ちゃんと読めるほど勉強できていない自覚はあって。感想を書く資格などないかもしれない。それでも『人の道御三神といろはにブロガーズ』、やっぱりおもしろかったのだ。
大きなものは敵に見えるけれど、秦氏単独で見ると調子良く寄ってきたりまた喧嘩したりするみたいに、いや評論家の人みたいに作中で病んでるようにしか -
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中野重治は、?外論の中で次のように書いていた。「?外にはぬくい心が書けている。けだものが二ひきくっついて温め合うような心が欠けている」「彼は指一本ひとに指させなかった。しかし一般に作家は、人に百本も指をささせるところから出発した。人に百本も指ささせること、これが?外にはできなかった」(「俗見の通用」)。まさに猫と人とが「くっついて温め合うよう」に生きる作者のありようは、?外的な「諦念」や「余裕」からあたう限り遠い。そういえば、中野は書いていた。?外には「人に百本も指をささせる」ような「勇気」がなかったのだ、と。その意味で本書は、「勇気」に貫かれた一冊でもある。
互いに重い病を抱えた猫と人と -
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硝子生命論に引き続き、二冊目の笙野女史であったが、どちらも毛色が違いながら主題は同じ作品であると思えた。
ただ、こちらの方が面白かったかな。克明に描かれた悪夢の物語である。
この作品を、というか二作ともなのだけど、何にしろこれらをフェミニズム的な視点から受け取ることにいささかためらいを覚える。
もちろんそうした概念を用いた作品ではあるが、もっと根源的に自己を描くにあたって、その自己の一側面としてフェミニズム的側面が存在し、その面が強いという印象を受ける。
醜悪に描かれる男性像は、同時に女性像をも鏡写しに醜悪なものとしている。つまりは、より根源的に人を描いていて、その突端がフェミニズ -
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機会があって、読ませていただいた本である。なかなか興味深い読書体験だった。終盤の論理的な狂気描写にはさすがに気疲れしてしまったけれど。
ここで描かれるものは私には「意思を持つ他者への嫌悪と恐怖」と感じられるのだけど、少なからず共感するところもあって、なかなか興味深い読書体験であった。
本質的には某巨大掲示板で女性への嫌悪を撒き散らす向きと変わらない。傷つけられることへの過大な恐怖は、結局のところ自己へのコンプレックスの裏返しだ。
特に異性(男性)への攻撃的な描写には社会的にパートナーとなるべき存在への抑圧的な感情が見られ、自分を傷つける意思を廃した人形を代替として扱う屈折は、現代のオ