笙野頼子のレビュー一覧

  • 母の発達

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    ネタバレ

    まるで宇宙そのものみたいだった……という意味のわからない感想が浮かんでくる。すごい作品を読んでしまった。
    「母の縮小」は内容が突飛でなかなかついていけなくて、「母の発達」の途中からめちゃくちゃ面白くなってきて、「母の大回転音頭」ではこんなものを書く作者がすごすぎると思った。どうやったらこんな話になるのだ、天才なのか。
    書いてあることの意味が全然分からないのになんだか理解できる気がしてくるのが不思議だった。母がいない人は支配しやすくて母親気取りの人物につけこまれるだとか、悪魔の母の中に愛や安心やありがとうが存在しているだとか、妙にハッとさせられる箇所がいくつかあるのだ。
    母と娘の関係の難しさ、お

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    2024年08月16日
  • 猫道 単身転々小説集

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    猫と出会う前と後の笙野頼子の人生の記録。
    あとがきとして初出した『モイラのこと』も良いし、キャトとの別れとドーラとの出会いを書いた『こんなことは〜』も良かった。『ででむし』の最後で頭のおかしい人に絡まれたけれども猫の魂を持ち帰るとマジレスして狂人に引かれるエピソードは何故か笑えてしまった。真摯な人間が1番強い。大好き。できれば後書きは稲葉真弓さんが生きていたら書いて欲しかったなぁ。

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    2024年07月06日
  • 愛別外猫雑記

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    90年代終わりの保護猫地域猫個人活動文学の最高峰でしょ、コレ。猫嫌いが猫によって変わっていく。悪意と善意と敵と味方と、作家として多忙な時期によくここまで猫にコミットできたなぁ、と作者の意思の強さとぶっ飛びに感服。マジですごい。もっと評価されても良い。人間の身勝手で嫌な部分もすごく細かく(ほぼ実話だし)描かれてる。綺麗事ではないがそれもリアリティがあってグイグイ引き込まれる保護猫版アウトレイジ! 善人もいるがほぼ全員悪人! 池脇千鶴とか主演で映画化されてもいいくらい。
    人間嫌いの猫好きは読むべき! 闘え!!!

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    2024年07月03日
  • 未闘病記 膠原病,「混合性結合組織病」の

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    笙野頼子さんの本はこれが初読み。なので、今まで読まずに持っていたイメージが全然違った。
    口語文で書かれているが、かなりぐだけた語りになっている。
    そしてとても痛かったり辛そうなのに、そんな自分の身体を『日常』として受けいてれいるのが凄いなと感じた。
    しかもそれを一人で暮らしているのに、そのことに対する不安が全く感じられなくて、一人暮らしに慣れているからと言っちゃえばそれまでなんだけど、一人の責任と強さも合わせて感じた一冊だった。

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    2024年03月25日
  • 海獣・呼ぶ植物・夢の死体  初期幻視小説集

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    メモ

    ・私小説とフィクションの接続
    ・苦しみ、衰弱、厭世的視線の解像度の高さ
    ・時間の流れで変遷していく苦しみに、少し救われる気がする

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    2023年11月01日
  • レストレス・ドリーム

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    もう、ほんと、すさまじい。はじめから終わりまで全力疾走。奇妙な夢の世界でゾンビ達と死闘する1人の女のお話、であると同時に、女として生まれた人間がこの社会で受ける様々な呪いや侮蔑に対し、言葉を武器にして、たった1人で、真正面から闘う「現実の女」のお話でもあった。

    負けたらゾンビになってしまうから、自分でいたければ戦い続けるしかない。まさにレストレス(休みなし)バトル。すごいとしか言いようがない。読みながら自分もバサバサ切り刻まれる心地がしたし、いい加減休ませてくれーと叫びたくもなったし、変幻自在の豊かなイメージにこめられた鋭いブラックユーモアに笑った。

    テレビゲームのような設定およびアクショ

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    2023年04月18日
  • なにもしてない

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    デビュー10年目、32年前の作品。これはこれで、もう、良すぎて目眩がしてくる良さだ。何でこの歳になるまで笙野頼子を知らなかったんだろうと、心底、不思議になるくらい共感大爆発の内容で、読みながらうなずきすぎて、心の首がもげそうになった。

    ただ、この作風だからこそポップにならず、たとえば自分のような、文芸誌一度も読んだことのないような人間に届かなかったのも、なんとなく分かる。みんなが読んでる村上春樹の真逆という感じがする。

    ともかく、描写が緻密で、情報量も多くて、豊かな世界だった。どうしてそんなピタリと書いてくれるんだと何度も思った。母と娘の関係など鋭い心理描写が多かった。

    ナニモシテナイと

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    2023年03月29日
  • 小説神変理層夢経 猫未来託宣本 猫ダンジョン荒神

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    老猫ドーラの介護と親の死後手続き、作家業の暮らしの中に、垣間見え、たまにはページを乗っ取っていく何人もの神様たち。

    自身(と猫家族)の人生を生きていくにあたって対峙しないといけないものと戦うべく武器を得て、活路を切り開いていっている感じがしてすごく好き。
    生きるために荒神様を見つけてきたんだな、研究してるんだろうなと、すごいよなと思う。

    偶然『琵琶法師』を読んだところだったので、語りの主体が移り変わるという琵琶法師的語りが昇華されて小説になっているのかもしれない…とボーナス的感動もあった。

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    2022年09月23日
  • 人の道御三神といろはにブロガーズ

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    笙野頼子の内面の自由を守るための言葉たちがとても好きだ。あまりに自由に跳ね回るフレーズのパレードも。

    今作はあおり、かづき、ばらきの御三姉妹神の来歴と巡行を描くことで、彼らの生き様を妨げ続ける国家や国の神という大きなものたちの空っぽさを描いているような気がする。

    めちゃくちゃ好きなのだけれど、ちゃんと読めるほど勉強できていない自覚はあって。感想を書く資格などないかもしれない。それでも『人の道御三神といろはにブロガーズ』、やっぱりおもしろかったのだ。

    大きなものは敵に見えるけれど、秦氏単独で見ると調子良く寄ってきたりまた喧嘩したりするみたいに、いや評論家の人みたいに作中で病んでるようにしか

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    2022年05月05日
  • 会いに行って 静流藤娘紀行

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    藤枝静男は私も高校生のときに殆ど読んでる。むしろ笙野を二百回忌まで知らなかった。二人の小説を読み返したくなった。

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    2020年07月07日
  • 母の発達

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    こんなにメチャクチャで最高な本はひさしぶりに読んだ。小説というのは元来ことばが物語を生むもので、書かれたことがそのまま虚構内の現実になるような、そういうものだけれども、それをあえてメタ的に示したようでとにかくたのしかった。

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    2018年04月11日
  • 笙野頼子三冠小説集

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    こういう作品の纏め方って、あざといとも思う反面、潔いですね。いわゆる私小説になるんだろうけど、収められた三篇がそれぞれに違う雰囲気を醸してて、でも笙野頼子印がしっかり押されていて、読んでて気持ちよかったです。”二百回忌”に至っては、もはや完全にファンタジーだし、他の二編についても、電車移動とか皮膚科診察とかを軸にしながらもあちこちに妄想飛びまくりで、混沌世界観が満載。ただ単に意味が分からんだけと思えないのも、構成や文章の妙があってこそと理解。さすがの力作三部でした。

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    2018年02月16日
  • さあ、文学で戦争を止めよう 猫キッチン荒神

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     中野重治は、?外論の中で次のように書いていた。「?外にはぬくい心が書けている。けだものが二ひきくっついて温め合うような心が欠けている」「彼は指一本ひとに指させなかった。しかし一般に作家は、人に百本も指をささせるところから出発した。人に百本も指ささせること、これが?外にはできなかった」(「俗見の通用」)。まさに猫と人とが「くっついて温め合うよう」に生きる作者のありようは、?外的な「諦念」や「余裕」からあたう限り遠い。そういえば、中野は書いていた。?外には「人に百本も指をささせる」ような「勇気」がなかったのだ、と。その意味で本書は、「勇気」に貫かれた一冊でもある。
     互いに重い病を抱えた猫と人と

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    2019年02月17日
  • だいにっほん、ろんちくおげれつ記

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    「だいにっほん、おんたこめいわく史」に続く、三部作の第二作目。
    理解できているか、と聞かれたら自信がないのだけど、読んでいて元気が出てくる。

    おんたこの支配する(とはっきり言えないけれども、実質支配しているのと同じ)世は恐ろしい。
    いまの世の中に通じる怖さ。

    大事なことは「俺」を忘れないでいること。
    「俺」が「俺」であることを自覚しておくこと。

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    2015年08月26日
  • だいにっほん、おんたこめいわく史

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    おんたこが支配している日本の近未来の話。
    かなりぶっ飛んでいる。
    しかし、全く荒唐無稽の話にも思えず、逆に今の日本に似ているかも…と恐ろしく思うことも何度も。
    作者のユーモアが救いの文章。

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    2015年07月27日
  • 片付けない作家と西の天狗

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    1996年~2004年に書かれた短編、中編小説と、書き下ろしの表題作で構成されている。
    私小説に幻想が融合していて、作者の発想力と筆力の確かさを感じる。

    さらに、後書きが壮絶。
    文章は冷静なのに、嵐のような感情が私の中にも入り込んでくる。
    凍りつきそうな気持ちになりながら読み終えた

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    2015年07月24日
  • 未闘病記――膠原病、「混合性結合組織病」の

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    「混合性結合組織病」と診断された作者の記録。
    記録は詳細で、専門用語を使った説明もあって、ちゃんと「闘病記」として成り立っている。
    でも、笙野頼子らしさは全開。
    当たり前だけど、ある病気と診断されたからといって人は急に変わるわけではないし、逆に人が全く病気に影響されずに生きるというのも無理な話、と気づかされた。
    病気の症状もその人らしさに影響するんだな、と思った。
    あと「あとがき」がものすごく良い。

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    2015年07月24日
  • レストレス・ドリーム

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     硝子生命論に引き続き、二冊目の笙野女史であったが、どちらも毛色が違いながら主題は同じ作品であると思えた。
     ただ、こちらの方が面白かったかな。克明に描かれた悪夢の物語である。

     この作品を、というか二作ともなのだけど、何にしろこれらをフェミニズム的な視点から受け取ることにいささかためらいを覚える。
     もちろんそうした概念を用いた作品ではあるが、もっと根源的に自己を描くにあたって、その自己の一側面としてフェミニズム的側面が存在し、その面が強いという印象を受ける。
     醜悪に描かれる男性像は、同時に女性像をも鏡写しに醜悪なものとしている。つまりは、より根源的に人を描いていて、その突端がフェミニズ

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    2013年09月26日
  • 硝子生命論

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     機会があって、読ませていただいた本である。なかなか興味深い読書体験だった。終盤の論理的な狂気描写にはさすがに気疲れしてしまったけれど。

     ここで描かれるものは私には「意思を持つ他者への嫌悪と恐怖」と感じられるのだけど、少なからず共感するところもあって、なかなか興味深い読書体験であった。
     本質的には某巨大掲示板で女性への嫌悪を撒き散らす向きと変わらない。傷つけられることへの過大な恐怖は、結局のところ自己へのコンプレックスの裏返しだ。
     特に異性(男性)への攻撃的な描写には社会的にパートナーとなるべき存在への抑圧的な感情が見られ、自分を傷つける意思を廃した人形を代替として扱う屈折は、現代のオ

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    2013年09月22日
  • レストレス・ドリーム

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    ネタバレ

    やっと読み終わった…。ラストのスピード感は半端無かった。
    笙野頼子はフェミニズム的な論じ方をされるけど、それは単なる材料にすぎなくて、ことばそのものが対象であるというのに納得。

    結局、現実の跳蛇は、とか、現実では、とか言ってたけどその現実っていったいなんだったの。どこにあるの。
    (今今、どこにもないところに、あるのだろうか。)

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    2012年11月05日