あらすじ
国を追われ、故郷を奪われ、来歴を消され、名前を奪われ、真実を消されて千五百年。じわじわと囲まれていないことにされた海洋華厳王国の逞しき精霊。白髪の作家が千葉の建売で見た…真夏のミル・プラトー千五百年史。
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Posted by ブクログ
とんでもねえなこれは。筒井御大以来の衝撃。甚だ乏しく偏った読書体験しか持たないわたくしではあるが、こういう作家は迷わず天才認定することにしている。何かしらどんよりとウーハーな通奏低音が響く中、金比羅として覚醒した私と天孫によってその座を収奪された宇佐八幡の王・亜知海(あちめ)の対話によってこの国の歴史を貫く権力と徴税の仕組みが暴き立てられる。死期の近い愛猫の看護、母の葬式、締め切りに追われる執筆、気の進まぬ講演といった日常に、絶えず現れて理不尽な干渉を繰り返すのは、亜知海に言わせりゃ天孫による徴税に他ならない。物わかりのいい諦めは相手の思う壺、と海の底から警鐘を鳴らす。権力による徴兵の手を逃れてリゾームを跋扈する現代のノマドに託宣はあるのか──と意味不明に滑りながらスペクタクルに捏造したくなるほど、神がかりのエクリチュール。初期作品から全部読んでみようか。