あらすじ
海芝浦に向かう「私」を待ち受けるのは浦島太郎、レプリカント、マグロの目玉…。たどり着いた先はオキナワか? 時間と空間はとめどなく歪み崩れていく。言葉が言葉を生み、現実と妄想が交錯する。哄笑とイメージの氾濫の中に、現代の、そして「私」の実相が浮び上がる。話題騒然の第111回芥川賞受賞作の他、二篇を収録。
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Posted by ブクログ
冒頭のインパクトがすごすぎるし、テーマも話もすごい。ことばの使い方や比喩が特殊でちょっと読むのに時間がかかったけども。
もう、夢と現実の境界がわからなくなるとかそんなレベルの話じゃない。そういう二者を分ける概念はもはや無いような感じ。
あとがきの対談で、そういう世界「もう一つの世界」を掘り起こすために「私」を使うんやっていよった。作者自身っぽい「私」を使うのは(私小説とはまた違う)何かしらの目的があってするテクニックやと思っとったけど、そういうのん言ってくれるのもめずらしくて、対談も興味深く読んだ。
「シビレル夢ノ水」が猫小説かと思わせといて蚤でしたー三つの中ではいちばん好きやった。まじで蚤に取って代わられるかと思った。
Posted by ブクログ
これはなかなかの傑作。
ポストモダン文学ってほとんどツボにはまらないことが多かったんだけど、流れるような文体と幻想的でエキセントリックな描写はクセになる。
収録短編『シビレル夢ノ水』はなかなかメンタルがやられる一編。
第111回芥川賞受賞作。
Posted by ブクログ
夢の中でマグロとの恋愛に凝っている「私」は、ホームの片側が東芝、片側が海という「海芝浦駅」を探しに出かける。
非現実的なようで、的外れでもない。
夢の中の声が出ない感じとか、テンポとか、見たことないはずの景色が現実の記憶と少しずつ重なっていく感じとか、よくそのまま文章にできるものだなあ、と、ちょっと感動する。第111回芥川賞受賞。
Posted by ブクログ
自由自在に飛び回る思考、巧みな仕掛け、それでいて美しい文体に圧倒されてしまう。夢とも現実とも似つかない世界でぷかぷかと浮遊する思考。突飛もないところへ時空移動する意識。止むことを知らぬ妄想。マグロ、海芝浦、富士、日本…オキナワ変換…まるで自分の頭ん中をごろんとそのまま文字に起こしたような、見知らぬ奴に思考をぐちゃぐちゃにされているみたいでなぜこの作家は私の頭ん中を語ろうとしているのだ、と疑ってかかりたくなる。東京からJR鶴見線で40分、出られない駅。それが海芝浦だ。東芝の敷地内にあり、東芝関係者以外は駅から出ることができない。この海芝浦、ホームのすぐ横が海だということもあり、駅のホームから釣りのできる駅としても有名らしい。