三川みりのレビュー一覧
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胸が熱くなる。期待に違わぬおもしろさでした。
降りかかる困難を前に、どう立ち向かっていくか。
時には謀りごとも必要であろうに、目的のために手段を選ばないことが本当によいことなのか迷い悩む。
前例のないことに挑むとき、
誰かを信じるとき、絶対という確証がない中で選択するそれは震える程怖いし、ましてその選択に命が係っているならなおのこと。
それでも大切にしたいもの、譲れないものを真正面から見つめて進んでいくその強さと潔さに心底惚れ込んでしまいました。
目に見えない「信頼」という、揺るぎないようでいて朧げなものをどこまで信じ切れるか、というのは、ひとえに相手の人となりによるものだけでなく、自分の -
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神の眷属、龍が住まう龍ノ原。
そこで皇族の女性は生まれながらに龍の声を聴く。
その能力を持たぬものは異端とされ、排除される。
その運命に抗う者の、命を賭した物語。
ものすごくおもしろくて、一気に読んでしまいました。
中華風な、古来日本風な、それでいて幻想的な世界観も素敵だし、登場人物の見た目も、人柄も最高にいい。
皇位を狙う中で出されたお題、想定外の出来事に翻弄されつつ、根底にあるマイノリティに対する差別の是非を問う眼差しにはっとさせられたのです。
生まれながらに多数派でない者は、差別され、区別されても仕方がないのか。蹂躙され、排除されても、構わないのか。
そんなはず、ない。けれど、これは -
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表紙の美女は……
人は皆、見たいものを見、信じたいものを信じる。
そんな言葉が読後に浮かびました。
目の前にある事実すら、己の信じているものと乖離していれば信じることは難しい。
力技でなく信頼をもって龍と縁を結び、名実ともに皇尊となり令を廃した日織。大願成就である。
悠花の問題はまだ解決していないものの、悠花自身が未来の話として、日織に策を授ける。
明るい未来を予感させて、この物語はひとまずの大団円。
終わり方としては、すごくいい。
反面、わたしたちはここで日織や悠花とお別れなのか、と切なくもあり。
周辺国とのあれやこれやといった、続きがあるのかしら。
いや、でもそうするとまた日織が痛い目 -
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龍の棲まう地、龍ノ原。
そこに住む人々のうち、皇の一族に連なる女性は龍の声を聞くことができる特性を持つ。
声を聞くことができない女性は遊子(ゆうし)と呼ばれる。翻って男性で声を聞く者は禍皇子(まがつみこ)として、いずれも闇に葬られる定め。
生まれ持った特性で命を決められることの理不尽を打ち砕くため、
日織皇子は重大な秘密を抱えて、皇位を目指す。
遊子や禍皇子は現代の差別の比喩だと強く感じる。
遊子への不津王の態度や考え方と同じような人は、悲しいかな現代日本に少なからず存在するであろうことは想像に易くて。
なにが寛容な態度だ。傲慢以外の何物でもないじゃないか。
不津王に対して、ふんぬ〜!と鼻息 -
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海に囲まれた央大地は、一原八州からなり、その中心の龍が住む一原の龍の原の物語。皇尊が亡くなり、次の座を狙う日織には秘密があった。皇族の女子は龍の声を聞くことができ、聞けない女子は遊子と呼ばれ忌む存在であり、隔離され適齢になれば他国に嫁に出される。が、その実は殺されるのであった。日織の姉も遊子として殺された。日織も遊子であったが、男として偽り皇子となったのだ。逆に、男で龍の声を聞けるものは、禍皇子として忌む存在でもある。
遊子を家に隠しているのを見つけ出して脅迫し、関係を迫る卑怯な者も出てくる。この物語は、人間の勝手な決めつけで差別される者たちを描く優れた物語なのだ。現実の差別の比喩としての遊子 -
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ネタバレ無事皇尊の位に日織が着いたはいいけど、そこからまた遊子の法を排するための道がとにかく前途多難すぎる…
これ大丈夫?
そうそうに失脚してしまうのでは…
と言う焦りに加えてまさかの龍を呼ぶ儀式の失敗に他の国が無茶難題を押し付けてきたり悠花が龍に攫われたりと…色々大変な事態に陥るけど、最後がとても綺麗に全ての事態がうまく治まって終わった。
終わったけど、これってもう終わりなのかな!?
もっと読んでいたいし、いいキャラも出てきたのにこれで終わりなんてなんだか勿体ない気もする…
けど、綺麗に事が治まって終わったからこれはこれでいいのかな…完結とは何も書いてなかったから続編が出るならそれを期待はしたい。 -
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試し読み
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購入済み
愛しいキャラクターたち
砂糖菓子という、いかにも少女趣味なモチーフがこっ恥ずかしいおとぎ話でしたが(笑)、人間と妖精の種族を超えた愛や信頼、自分の仕事や生き方への誇りなど、読み応えのあるモノがぎっしり詰め込まれていて良かったです!
キャラクターが、一人一人とても魅力的!
主人公のアンやシャルも勿論良いけど、個人的にやたら好きなのがミスリル・リッド・ポッドとキースかな。
自らを妖精王と勘違いしたミスリルが、「国民のために働くぞ!」と生き生き手伝いをするのを見たアンが「ミスリル・リッド・ポッドみたいな妖精王で、いいじゃない」と思うモノローグ(?)に、激しく同意。
また、キースはどこまでも本当に真摯。アンがシャルを選んだ -
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ネタバレ転生ものにはつきものの前世の縁を何処まで引きずるか問題。
特に今回は主人公側はしっかり覚えているけれど、相手は一切覚えていないというパターン。
しかも、相手は地位こそ同じ立場にいながら性格も政治に対するスタンスも正反対と言っていいほどの別人。
それでもあなたは、愛した人の転生した相手だからと同じように命を賭けて守れますかと。
この点の折り合いをつけるだけでも骨が折れそうなのに、皇帝の周りは「死」の気配が色濃く漂っている。
実際犠牲者は出るし、彼を襲う者は生者ばかりとは限らない。
それなのに、彼の周りはびっくりするほど信頼できる人がいない。
読んでいるこちらも、中盤までは誰が味方で誰が敵か分か