渡邉義浩のレビュー一覧
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孔子の言行を記録したとされる『論語』というテクストが、どのような経過をたどって成立し、こんにちにまで伝えられてきたのかということを解説している本です。
「はじめに」には、「本書は、新型コロナウイルス感染症が拡大するなか、早稲田大学のオンライン授業のために用意した原稿をまとめたものである」と書かれており、孔子の生涯や弟子たちについての入門的な解説も含まれています。また、定州『論語』や『斉論』の発見によって、『論語』のテクストの形成過程が明るみに出されてきたことなど、近年の研究についても触れられています。
さらに、鄭玄の『論語注』、何晏の『論語集解』、皇侃の『論語義疏』や邢昺の『論語注疏』など -
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中国「漢」王朝の通史。後世の中国において規範となる「古典中国」の形成・完成という視点から、儒教と国家の関係の変容を軸に叙述している。社会が思想を規定するというより、思想による体制への規制力を重んじているように読める(体制はいかに恣意的な政治行為であっても儒教による正当化理論を要し、なおかつそれに拘束される)。儒教国教化の時期を通説より遅い後漢章帝期まで下ろしているのは(個人的には20年以上前に新進若手だった頃の著者の講義で直接教え込まれていたので既知だったが)、教科書でしか中国史を学んでいない人には新鮮であろう。儒教の規制力を重視するからこそ、脱「儒教国家」を図った曹操の革新性と「儒教国家」
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キングダム で解くという題名にはなっているが、本書のメインは秦統一以降の話なのでキングダム はあまり関係なく宣伝に使われてるだけだなとおもった。
中国はなぜ巨大な人口を統一できているのか?他の国々を見ると中国大陸ほどの大きさではいくつもの国が乱立してるのが普通である。それは秦の始皇帝から始まった、法家の思想を取り入れて氏族制を廃止し、次の漢の時代で古典中国ともいわれる国のモデルができあがったからである。古典中国モデルは何かというと、大一統、華夷秩序、天子という3つの特徴である。簡単に言うと儒教に取り込まれた法家の考えが中国人に根付いているので、中国人はあんなに自信満々なのだ。今、習近平時代でも -
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春秋戦国時代以前の殷周時代から秦による中華統一までの、現代に繋がる中華思想の根底を分析した新書。『キングダム』はやや後付けの宣伝口実感があるが、事前に本書を読むと『キングダム』の時代背景や文化背景が理解できてさらに楽しめるのは間違いない。
秦の嬴政が唱えた「法の下の中華統一」が商鞅の法家を軸にした大改革であり、それまでの儒教のマトリョーシカ型ピラミッド構造つまり氏族社会に対する挑戦状でありイノベーションであったとする見解が面白い。これを読むと秦の中華統一思想や『キングダム』の6カ国合従の背景など、歴史の深みを一層味わえる。
漫画内のキャラクターは化け物級の登場人物だらけだが、史実を基にした -
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始皇帝が中華の統一を成し遂げた後、再び混乱期を迎えたが、劉邦がその戦乱を勝ち抜いて漢帝国を創設した。漢帝国は王莽が簒奪した時期を挟み、前漢と後漢に分かれる。この時期を通じて儒教が政権の中に深く浸透してい行く過程が詳しく描かれ、持ちつ持たれつの関係が明らかとなる。(権力者の後継選びにおいて、古典書の解釈が恣意的に、如何様にでも解釈される、など)
始皇帝が先鞭をつけ、漢帝国がほぼ確立した中央集権体制が、その後の中国の支配体制に連綿と継承された(されている)という著者の主題は、十分理解できる。
著者の前書『三国志』や『始皇帝』に比して、本書はかなり専門的で、やや難解と言える。 -
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漫画『キングダム』と映画化により、中国の春秋戦国時代に興味がわき、偶然見つけた一冊です。
当日の歴史を振り返りつつ、なぜ秦が中華統一できたのか、そしてその後の歴史の中で何度も統一国家が生まれた遠因に、秦のモデルを参考にしていた、という内容です。
漫画だけではつかみにくい歴史の流れを分かりやすく解説しつつ、時折漫画の実際のストーリーを参考にしているので、非常に分かりやすい構成になっています。今後も漫画も含めて楽しみたいと思っています。
▼人類史上、中国ほど何度も統一された国はほかに存在しない
→その淵源は、初の統一帝国・秦にある
→秦の後に興った漢の時代に、「古典中国」ともいうべき国のモデル