渡邉義浩のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
「漢字」「漢民族」という言葉に表れるように、漢帝国は後世の中国にとっていわば「古典中国」として原点とされ続けた「儒教国家」である。
いかにして「古典中国」が築かれていったかを概観する一冊。
そのため、通史に沿って最低限の政治史・外交史は触れられるものの、どちらかと言えば思想や文化史の側面が強い。
儒教という一本の筋を通して漢の歴史を読んだのは初めてであり、大変勉強になった。
(以下は備忘録)
前漢成立初期(文帝の頃)までは、秦の法家思想や中央集権を引継ぎながらも、その峻厳すぎた反省を生かして、国政としては郡国制を採り、思想的には無為自然に代表される黄老思想が重要視され、皇帝の柔軟な政策判断を積み上げていった時期であった(後に漢の故事として先例となる)。
ついで、景帝・武帝期は、呉楚七国の乱を契機として、再び中央集権化が進み、「漢帝国」としてのアイデンティティ・求心性が確立した時期である。武帝による積極的な政策運用に伴い、黄老思想は後退し、この時期に儒家が台頭してくる。春秋の解釈を現実に当てはめ政策を支持あるいは批判する根拠とすることで、儒家は政権に食い込んでいく(董仲舒が有名だが、実は五経博士が置かれたのは武帝期ではないそうだ)。
その後、儒教に傾倒した元帝(前49年即位)から、儒教を革命の根拠に利用した王莽による新建国までの期間に、儒教の影響力はいよいよ高まり、政策や政権を儒教を根拠に正当化する「儒教国家」としての内実が確定していった。
後漢期は、漢を正当化するに都合の良い経書・緯書を正統として宣言し、更に郷挙里選の仕組みによって全国の豪族にも儒教教育が普及していった時期である。
そして第3代の章帝が主催した「白虎観会議」にてついには国教と化したと著者は論ずる。
しかし外戚・宦官の専横により、後漢・儒教国家は黄巾、次いで曹操による挑戦を受け倒れた。しかし、同時代に漢を理想とした劉備・諸葛亮らがいたように、後漢・儒教国家は「古典中国」として西晋以降にも模範として継承されていくほどに根付いていた。 -
Posted by ブクログ
渡邊義浩 「 三国志 」三国志演義 と 正史の違いから政治的意図を紐解いた本
三国志 正史とは 「正しい歴史」という意味でなく、国の「正統な歴史」という意味。事実か否かでなく→漢の正統を引き継ぐ国はどこか→その国の歴史が正史 という論理。歴史は勝者の記録である ことを再認識
諸葛亮と劉備の活躍は 正史でも演義でも吉川三国志でも見れるが、曹操の功績は正史でしか見れない。とても面白かった。関羽が義の極みとして神格化していることを初めて知った。
三国志の正史と演義の違い
*正史の正統=曹魏=曹操
*演義の正統=蜀漢=諸葛亮
*曹操を正史は悪者としないが、演義は悪者とする
*関羽を 演義は義の極みとして 神格化
*演義において 諸葛亮は 正統の劉備を助け、漢を復興する人として描かれる
*演義は滅びの美学を描いた文学〜漢の正統をひく劉備が建国し、神となった関羽、知識人が忠義を仰ぐ諸葛亮が支えた蜀漢の敗北を描く
中国を理解する上でとても役に立つ
*仁と愛の違い(仁は内であって外でない。義は外であって内でない)
*儒教の人間観に含まれた差別(性三品説、華夷思想)
仁と義の違い
*仁は愛〜全ての者を等しく愛するのでなく、強さが異なる
*義は 他者との関係を中心とする。誰かが生き延びて 家を守る〜関羽は 敵である曹操であっても 信義で結ばれているかぎり 命をかけて守る
儒教の人間観に含まれる差別
*性三品説(人は善だけの上品、悪だけの下品、善悪両方を持つ中品に区別される)
*華夷思想(中華と異民族は人間として異なり、中華が夷狄の君主となるべき)
曹操の功績
*青州という軍事的基盤、屯田制という経済的基盤、献帝という政治的正統性を持つ
*儒教国家の復興は目指さなかった
*唯才主義〜賄賂を受け取るような人間だとしても才能が高ければ登用
*漢と結びついた儒教の価値を相対化するため、文学という新しい文化的価値をつくった -
Posted by ブクログ
曹操は、『三国志』に登場する中で最も興味深い人物である。日本では諸葛亮が好まれるようであるが、実に先見性を持って時代を動かしたのは曹操なのである。その人物に特化してその事績を追ったのが本書である、と思って手に取って読み進めた。途中で、ふと題名を見ると、「はじめての三国志」となっているではないか。えー!初級者用の本?と驚き、あとがきを見ると「本書は、「三国志」に興味を持った中学生・高校生のために書きました」と書かれているではないか。さらに本書を読み進めたが、どうして、どうして、この本の内容は、初心者向けでも、中高生向けでも無く、かなり高度なものを含んでいる。評者は著者の講義を何度か聴いているが、それでようやく理解できる程度と言える。一般の人達の読書に十分耐えるものであろう。この本により、中高生が興味を持って、更に三国志にハマってくれれば、なおのこと悦ばしいことだ。
-
Posted by ブクログ
「三国志」と「三国志演義」から“戦い”を選びCG化して解説。
・5分で総覧!三国時代
第一章 漢末の動乱-黄巾の乱から官渡の戦いまで
・三国時代の戦い方(基本篇)三国時代の武器・防具・戦術を知る!
第二章 三国の成立-赤壁の戦いから夷陵の戦いまで
第三章 三国時代の終焉-街亭の戦いから晋の統一まで
・三国時代の戦い方(応用篇)三国時代の実戦を極める!
各章に関連年表有り。参考文献有り。CG画像、地図等あり。
三国時代の戦乱はどのようなものであったのか?
「三国志」と「三国志演義」にある“戦い”をCGで再現してます。
双方に、或いは片方に(主に演義)ある戦いで、その違いも記述。
各戦いには出典も提示されています。
地図や布陣、人間関係有り、CGでは地形や城塞、攻城の様子が
描かれ、これを参考に「三国志」や「三国志演義」を読むのも
楽しいと思います。ただ、箇所によっては人馬の区別が
わかりにくいのが、ちと残念。
東京国立博物館「三国志」展で見た大量の矢の攻撃、
かくも凄まじいものかと、赤壁の戦いの項で再確認しました。 -
Posted by ブクログ
キングダムファンにはたまらない一冊。
秦がなぜ中国統一できたのか、その素地となる部分の法家思想などなるほどと納得。
そして秦をはじめとして、基本的には常に中央集権体制をとってきた中国という特異性、そして最後のほうにあった現代のデジタル社会についての記述など、非常に興味深かった。信賞必罰の思想が根深く分化として刻まれているからこそ、スコアリング社会が成立しているという指摘は面白い。もちろん中国の現在のデジタル化、データドリブンな社会はそれだけで成り立ったものではないと思うが、秦からはじまる歴史的背景も確かに一要因にあったと思うと、歴史を振り返ることの意義や楽しさを感じられた。