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漢字、漢民族という表現が示すように、漢は中国を象徴する「古典」である。秦を滅亡させ、項羽を破った劉邦が紀元前202年に中国を統一(前漢)。武帝の時代に最盛期を迎える。王莽による簒奪を経て、紀元後25年に光武帝が再統一(後漢)。220年に魏に滅ぼされるまで計400年余り続いた。中国史上最長の統一帝国にして、中国を規定し続けた「儒教国家」はいかに形成されたのか。その興亡の歴史をたどる。
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Posted by ブクログ
三国志は好きなので後漢末期の知識は多少あるが、それ以前の知識は余り無く興味を惹かれたので購入。 漠然と疑問に思っていた法家的な秦から儒教国家である漢への繋がる謎が丁寧に説かれていて常に感心しながら読み進められた。 やはりドラスティックに変わった訳では無く、前後400年の中で思考錯誤や政治的思惑が混ざ...続きを読むり合い儒教自体が形を変えて国家体制と呼応していく様は面白い。簒奪者王莽が意外にも後漢の基礎づけに資していたことも驚き。 これまで意識していなかった四書五経や正史の歴史的位置づけもとっかかりが出来、今後中国の古典を学ぶ際にも役立ちそうで読んで正解でした。
楚漢戦争から漢の建国・呂雉の専横、王莽の王朝簒奪と劉秀(光武帝)の漢復興、後漢末期から三国時代といった断片的にしか知らない漢帝国について、成立から滅亡まで通史的に読みたく購入。漢の儒教導入とそれに伴う王莽の践祚、後漢による儒教推進など儒教国家成立や外戚専横の理由などについても非常に面白く読めた。
劉家のものに過ぎなかった漢が、「漢字」「漢民族」という形で後世に影響を与える「古典中国」の代表となった理由を詳細に解説している。 内容はやや難しいものの、前漢・後漢の概要を把握したい方にもおすすめ 補足として、渡邉義浩先生の他の著作との関係は以下の通り ・『春秋戦国(洋泉社)』 ▶本書の前編...続きを読むに当たる本 ・『王莽―改革者の孤独(大修館書店)』 ▶本書の第5章の詳細版 ・『三国志:演義から正史、そして史実へ(中公新書)』 ▶本書の後編に当たる本
約400年にわたる漢についての通史で,全体として「儒教国家」であることを重視。また著者の問題意識は三国志を中心としており,諸葛亮による蜀「漢」への流れとして結びつけている。
「漢字」「漢民族」という言葉に表れるように、漢帝国は後世の中国にとっていわば「古典中国」として原点とされ続けた「儒教国家」である。 いかにして「古典中国」が築かれていったかを概観する一冊。 そのため、通史に沿って最低限の政治史・外交史は触れられるものの、どちらかと言えば思想や文化史の側面が強い。 儒...続きを読む教という一本の筋を通して漢の歴史を読んだのは初めてであり、大変勉強になった。 (以下は備忘録) 前漢成立初期(文帝の頃)までは、秦の法家思想や中央集権を引継ぎながらも、その峻厳すぎた反省を生かして、国政としては郡国制を採り、思想的には無為自然に代表される黄老思想が重要視され、皇帝の柔軟な政策判断を積み上げていった時期であった(後に漢の故事として先例となる)。 ついで、景帝・武帝期は、呉楚七国の乱を契機として、再び中央集権化が進み、「漢帝国」としてのアイデンティティ・求心性が確立した時期である。武帝による積極的な政策運用に伴い、黄老思想は後退し、この時期に儒家が台頭してくる。春秋の解釈を現実に当てはめ政策を支持あるいは批判する根拠とすることで、儒家は政権に食い込んでいく(董仲舒が有名だが、実は五経博士が置かれたのは武帝期ではないそうだ)。 その後、儒教に傾倒した元帝(前49年即位)から、儒教を革命の根拠に利用した王莽による新建国までの期間に、儒教の影響力はいよいよ高まり、政策や政権を儒教を根拠に正当化する「儒教国家」としての内実が確定していった。 後漢期は、漢を正当化するに都合の良い経書・緯書を正統として宣言し、更に郷挙里選の仕組みによって全国の豪族にも儒教教育が普及していった時期である。 そして第3代の章帝が主催した「白虎観会議」にてついには国教と化したと著者は論ずる。 しかし外戚・宦官の専横により、後漢・儒教国家は黄巾、次いで曹操による挑戦を受け倒れた。しかし、同時代に漢を理想とした劉備・諸葛亮らがいたように、後漢・儒教国家は「古典中国」として西晋以降にも模範として継承されていくほどに根付いていた。
思想史を軸に楚漢戦争から三国志の時代までが扱われている。儒教が国教として受け入れられていく過程を通して、後世の範となる古典中国がいかに形成されたかが書かれていて、これまで持ってなかった視点が勉強になった。
ものすごい密度で、風呂読書で2ヶ月以上かかってやっと読みおわった。項羽vs劉邦はともかく、他は知らんことばっかり。三国志とかの前史としても勉強になった。『蒼天航路』とか勉強して書いてるのねえ。近代に至るまで中国に封建諸侯はいなかった、みたいな話にはっとなる。
漢の詳細がわかる新書。 董仲舒が司馬遷の師匠だったり、法家、黄老思想が時代をリードしていて、儒教は後漢になるまでメインではなかったり、王莽は国の簒奪を正当化するため必死だったりとと面白いエピソードが沢山あった。
中国「漢」王朝の通史。後世の中国において規範となる「古典中国」の形成・完成という視点から、儒教と国家の関係の変容を軸に叙述している。社会が思想を規定するというより、思想による体制への規制力を重んじているように読める(体制はいかに恣意的な政治行為であっても儒教による正当化理論を要し、なおかつそれに拘...続きを読む束される)。儒教国教化の時期を通説より遅い後漢章帝期まで下ろしているのは(個人的には20年以上前に新進若手だった頃の著者の講義で直接教え込まれていたので既知だったが)、教科書でしか中国史を学んでいない人には新鮮であろう。儒教の規制力を重視するからこそ、脱「儒教国家」を図った曹操の革新性と「儒教国家」の枠内に留まった諸葛亮の保守性という評価に至る。「三国志」の前提としても勉強になろう。
始皇帝が中華の統一を成し遂げた後、再び混乱期を迎えたが、劉邦がその戦乱を勝ち抜いて漢帝国を創設した。漢帝国は王莽が簒奪した時期を挟み、前漢と後漢に分かれる。この時期を通じて儒教が政権の中に深く浸透してい行く過程が詳しく描かれ、持ちつ持たれつの関係が明らかとなる。(権力者の後継選びにおいて、古典書の解...続きを読む釈が恣意的に、如何様にでも解釈される、など) 始皇帝が先鞭をつけ、漢帝国がほぼ確立した中央集権体制が、その後の中国の支配体制に連綿と継承された(されている)という著者の主題は、十分理解できる。 著者の前書『三国志』や『始皇帝』に比して、本書はかなり専門的で、やや難解と言える。
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漢帝国―400年の興亡
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渡邉義浩
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