【感想・ネタバレ】漢帝国―400年の興亡のレビュー

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Posted by ブクログ 2020年01月18日

三国志は好きなので後漢末期の知識は多少あるが、それ以前の知識は余り無く興味を惹かれたので購入。
漠然と疑問に思っていた法家的な秦から儒教国家である漢への繋がる謎が丁寧に説かれていて常に感心しながら読み進められた。
やはりドラスティックに変わった訳では無く、前後400年の中で思考錯誤や政治的思惑が混ざ...続きを読むり合い儒教自体が形を変えて国家体制と呼応していく様は面白い。簒奪者王莽が意外にも後漢の基礎づけに資していたことも驚き。
これまで意識していなかった四書五経や正史の歴史的位置づけもとっかかりが出来、今後中国の古典を学ぶ際にも役立ちそうで読んで正解でした。

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Posted by ブクログ 2021年10月03日

約400年にわたる漢についての通史で,全体として「儒教国家」であることを重視。また著者の問題意識は三国志を中心としており,諸葛亮による蜀「漢」への流れとして結びつけている。

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Posted by ブクログ 2020年09月06日

「漢字」「漢民族」という言葉に表れるように、漢帝国は後世の中国にとっていわば「古典中国」として原点とされ続けた「儒教国家」である。
いかにして「古典中国」が築かれていったかを概観する一冊。
そのため、通史に沿って最低限の政治史・外交史は触れられるものの、どちらかと言えば思想や文化史の側面が強い。
...続きを読む教という一本の筋を通して漢の歴史を読んだのは初めてであり、大変勉強になった。

(以下は備忘録)
前漢成立初期(文帝の頃)までは、秦の法家思想や中央集権を引継ぎながらも、その峻厳すぎた反省を生かして、国政としては郡国制を採り、思想的には無為自然に代表される黄老思想が重要視され、皇帝の柔軟な政策判断を積み上げていった時期であった(後に漢の故事として先例となる)。
ついで、景帝・武帝期は、呉楚七国の乱を契機として、再び中央集権化が進み、「漢帝国」としてのアイデンティティ・求心性が確立した時期である。武帝による積極的な政策運用に伴い、黄老思想は後退し、この時期に儒家が台頭してくる。春秋の解釈を現実に当てはめ政策を支持あるいは批判する根拠とすることで、儒家は政権に食い込んでいく(董仲舒が有名だが、実は五経博士が置かれたのは武帝期ではないそうだ)。
その後、儒教に傾倒した元帝(前49年即位)から、儒教を革命の根拠に利用した王莽による新建国までの期間に、儒教の影響力はいよいよ高まり、政策や政権を儒教を根拠に正当化する「儒教国家」としての内実が確定していった。
後漢期は、漢を正当化するに都合の良い経書・緯書を正統として宣言し、更に郷挙里選の仕組みによって全国の豪族にも儒教教育が普及していった時期である。
そして第3代の章帝が主催した「白虎観会議」にてついには国教と化したと著者は論ずる。
しかし外戚・宦官の専横により、後漢・儒教国家は黄巾、次いで曹操による挑戦を受け倒れた。しかし、同時代に漢を理想とした劉備・諸葛亮らがいたように、後漢・儒教国家は「古典中国」として西晋以降にも模範として継承されていくほどに根付いていた。

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Posted by ブクログ 2020年06月02日

思想史を軸に楚漢戦争から三国志の時代までが扱われている。儒教が国教として受け入れられていく過程を通して、後世の範となる古典中国がいかに形成されたかが書かれていて、これまで持ってなかった視点が勉強になった。

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Posted by ブクログ 2020年06月15日

ものすごい密度で、風呂読書で2ヶ月以上かかってやっと読みおわった。項羽vs劉邦はともかく、他は知らんことばっかり。三国志とかの前史としても勉強になった。『蒼天航路』とか勉強して書いてるのねえ。近代に至るまで中国に封建諸侯はいなかった、みたいな話にはっとなる。

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Posted by ブクログ 2022年03月15日

漢の詳細がわかる新書。
董仲舒が司馬遷の師匠だったり、法家、黄老思想が時代をリードしていて、儒教は後漢になるまでメインではなかったり、王莽は国の簒奪を正当化するため必死だったりとと面白いエピソードが沢山あった。

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Posted by ブクログ 2020年08月16日

 中国「漢」王朝の通史。後世の中国において規範となる「古典中国」の形成・完成という視点から、儒教と国家の関係の変容を軸に叙述している。社会が思想を規定するというより、思想による体制への規制力を重んじているように読める(体制はいかに恣意的な政治行為であっても儒教による正当化理論を要し、なおかつそれに拘...続きを読む束される)。儒教国教化の時期を通説より遅い後漢章帝期まで下ろしているのは(個人的には20年以上前に新進若手だった頃の著者の講義で直接教え込まれていたので既知だったが)、教科書でしか中国史を学んでいない人には新鮮であろう。儒教の規制力を重視するからこそ、脱「儒教国家」を図った曹操の革新性と「儒教国家」の枠内に留まった諸葛亮の保守性という評価に至る。「三国志」の前提としても勉強になろう。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2019年08月04日

始皇帝に続く渡邉義浩氏の中国史本。劉邦による秦を倒し漢が成った頃の話はなんとなく知っていたが、新や後漢成立のあたりは知識が欠落していたので興味深く読めました。良くも悪くも儒教国教化とともに制度が安定化し、儒教により活かされた外戚と宦官により屋台骨が揺らぎ、乱世の奸雄曹操に倒される。中国史において始皇...続きを読む帝と曹操が傑出した存在であったことが背景を知ることによってよく分かる。あとは隋を起こした楊堅あたりの話を知りたいと思いました。

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Posted by ブクログ 2019年06月16日

始皇帝が中華の統一を成し遂げた後、再び混乱期を迎えたが、劉邦がその戦乱を勝ち抜いて漢帝国を創設した。漢帝国は王莽が簒奪した時期を挟み、前漢と後漢に分かれる。この時期を通じて儒教が政権の中に深く浸透してい行く過程が詳しく描かれ、持ちつ持たれつの関係が明らかとなる。(権力者の後継選びにおいて、古典書の解...続きを読む釈が恣意的に、如何様にでも解釈される、など)
始皇帝が先鞭をつけ、漢帝国がほぼ確立した中央集権体制が、その後の中国の支配体制に連綿と継承された(されている)という著者の主題は、十分理解できる。
著者の前書『三国志』や『始皇帝』に比して、本書はかなり専門的で、やや難解と言える。

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