伊丹敬之のレビュー一覧
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コロナショックは、発展へのチャンス。世界的危機が日本企業に与える影響を、マイナスではなくプラスの面から解説。危機をバネに、日本企業が発展するためのモノの見方を示す書籍。
戦後の日本を襲った経済危機は4つある。大きさの順に並べると、
①バブル崩壊
②コロナショック(原因はシンプルだが対策が難しい)
③オイルショック(原因がシンプルであり対策もシンプル)
④リーマンショック(世界的な金融システムの機能不全故に、対策は各国による金融市システムの再構築と経済刺激策)
となる。国内外で人の流れが滞るコロナショックは対処が難しく、バブル崩壊に次ぐ深刻な危機。
コロナショックは、世界経済に大きな変化をもたらす。特に日本企業に大きなインパクトを与えるのは、次の3点。
①経済的被害が国ごとに違うため、各国の勢力分布が変わる。
②人々の動きが止まったことで、グローバリゼーションの動きにブレーキがかかる。
③人々の直接の接触を避けるため、デジタル化が加速する。
コロナショックに伴い、始まったテレワーク。それは、日本の組織マネジメントに対する、次のような気づきをもたらした。
①きちんとした管理職を育ててこなかったことへの反省。
②社員を過剰に拘束するような非合理な雇用慣行への反省。
③人が集まることの意義を認識することによる、これまでのマネジメントのあり方の「よさ」の再確認。
コロナショックは、日本の産業に3つのプラス効果をもたらす。
①熱湯効果:業績の大きな落ち込みが圧力となり、事業ポートフォリオの転換、ビジネスモデルの転換など、経済合理性を高めるための事業構造の転換が促される。
②ポテンシャル開花効果:環境変化によって、需要の新しい芽が生まれたり、既存の需要が変容したりする。
③地殻変動効果:経済停滞への危機感から、合併による大規模な企業の誕生など、日本全体の産業の再編成が起きる。 -
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新型コロナウイルス感染症の先行きが見えず、不確実性が増す中、企業はいかに“決断”すべきか。危機への対応策を決断する際にも有用な「思考の筋道の基本」を説いた書籍。
すべての決断は、「発想し、論理的に検証し、最後に跳躍をする」という3ステップで構成される。この決断に至る3つのステップでは「直感、論理、哲学」という3つの思考法が、それぞれ重要になる。
「いい発想」の条件は、次の3つ。
①発想の大きさ:広い範囲で有効である可能性が高い。
②発想の奥行き:さらなる発想の展開可能性が大きい。
③発想の意外さ:類似の発想や常識からの距離が長い。
いくら論理的に考えても、不確実なことは残る。その迷う部分に見切りをつけ、不確実な未来に向かって「跳躍」しないと、実行は始まらない。跳躍するための哲学は、次の2つ。
①不可逆なジャンプに「踏み切る」ための哲学
②踏み切り後、「走り続ける」ための哲学
跳躍する前は、将来にとるべき行動は具体的には見えない。しかし、哲学をもっていれば、不確実な未来の中でも、自分の行動に対して市場などが反応し、その事態に合わせて行動できると信じられる。哲学は将来構想の拡がりの可能性「奥行き感」をもたらし、これが心の安定を生む。
データは、論理的検証のプロセスでは意義をもつが、跳躍にはあまり役立たない。その理由は、次の2つ。
①過去のデータは、跳躍を迫られているような状況では、エビデンスとしての意味が小さい。
②人間はデータには共感せず、魅力的な考え方に共感する。 -
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伊丹先生の本は今まで読んだことがなかったのですが、
期待に反してとても面白かったです。
大学の先生の書く本って何だかつまらないイメージがあって、
さらにこの人、結構なおじいちゃんなので、なおさらつまらなさそう…という偏見を持っていたのですが、
完全なる偏見でした。。すみません、伊丹先生。。
むしろ、おじいちゃんの割に表現がオシャレ。
哲学で「跳躍」って…。跳躍ってどういうことや??と思いながら、読んでいましたが、
読みながら納得。自分なら味気なく「実行」とかにしそうなところ、
「跳躍」ってオシャレ過ぎます。
本の内容に全然言及していませんでしたが、
人が「決断」するときのプロセスについて、論じた本です。
ちょうど「決断」系のよいコンテンツを探していて、手に取りました。
著者はこの決断のプロセスを過去の決断の事例から帰納的に分析しています。
違和感が全くない訳ではないですが、そこそこの納得感もあります。
ちょっと気になったのは、
・事例が古すぎる(小倉昌男とか本田宗一郎とか安藤百福とか西山弥太郎とか)。
・古すぎるが故に、今も当てはまるのか不明瞭。特に変化の激しい現代において、
昔の人のように2年も考え続けていたら、外部環境が変わってしまう。
・データの裏にあるロジックが大事という意見もその通りだが、
ロジックが不明瞭でも相関や因果が見えるビッグ・データの価値はますます上がっていくのではないか。
あたりです。
頭の良いおじいちゃんの考察なのですが、
現代でも果たして通用するのか(もちろん基本的なところは通用すると思いますが)、
それはそのうち歴史が教えてくれるのかもしれません。
面白かったので、他の書籍も読んでみたくなりました。 -
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平成の経営を振り返り、企業経営がどう変わったのかを明らかにする。
平成の30年間における日本経済と日本企業の動きを、10年ごとに分けて概観すると、次の通り。
・1989-1998年:
大蔵省と日銀による金融引き締めと不動産融資規制をきっかけに、バブルが弾け、金融崩壊に至る。
・1999-2008年:
2003年から輸出が伸び、企業の業績は好転するが、08年のリーマンショックで再びどん底に陥る。
・2009-2018年:
12年以降の円安進行、アベノミクス、原油価格の下落などにより、輸出を中心に経済は回復する。
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平成の時代は、冷戦構造の終結、中国の開放政策、新興国の成長の加速など、国際秩序に大きな変化があった。これらの動きが、企業活動のグローバリゼーションの時代を導いた。
近年、日本企業の世界的プレゼンスは低下している。
最大の原因は、中国の経済成長と日本経済の低成長だが、為替変動も要因の1つ。
平成の30 年間で160~75円と激しく揺れ動いたことが、海外生産の投資決定を難しくしたと思われる。
1980年代、日本企業の海外活動は40%以上をアメリカに依存していた。
しかし90年代半ばから、急成長する中国へ比重を移し、2009年には米中の現地法人の売上が同額になった。
平成の時代、ITとインターネット技術が進化したが、その競争に日本は敗れた。敗因は、ソフト人材供給量の少なさ。
例えば、2015年のIT分野の学士・修士卒業生の数を日米で比較すると、学士で6倍、修士で10倍ほどアメリカの方が多い。
金融崩壊後の日本企業は、リスクに対して慎重になった。銀行が当てにならないことが分かったため、いざという時に備え自己資本比率を高めると同時に、設備投資を増やさず、リスクを取らないようにしている。 -
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経営の専門家による経済の話。マクロ経済について簡単に説明しており、理解しやすく、よくまとまっていると思う。学術的な難しい理論の説明はなく、その点がやや物足りない。日本の経済構造や、高齢化の話など参考になる点があった。
「日本語の壁という国際展開可能性の障害は、モノを売る産業にはあまり存在しない(サービス業では大きい)」p51
「ケチ精神が強いのは、家計と企業、つまり民間であろう。消費や投資という形でカネを使おうとしない。逆に、経済規律が最も低いのは政府で、負債が積み上がっている」p92
「日本の不平等拡大の主要要因は人口高齢化であり、同一年齢世帯内の所得格差はほとんど拡大していない。所得の多い高齢世帯の比重が大きくなっているとともに、もともと高齢世帯の所得格差は若年世帯の格差よりも大きいため、国全体では、不平等度は拡大しているという計算になる」p170
「(日本のサービス産業発展の道)道は大別して2つあると思われる。1つは、苦手の生産性の向上を、おもてなしを維持しつつ実現する道。その際には、ITの活用が大きな鍵になるだろう。2つ目は、サービス産業の国際展開を図ること」p264
「おもてなしの国日本は、その生産性の低さをなげくのではなく、おもてなしをますます磨き、かつ、おもてなしをモノとの協働で生かしていく。それが、国内外でサービス産業が発展する基本の道のようである」p267
「シニア需要の特徴は「多品種、少量、便利、割高」」p277 -
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【目的】
技術が経営のカギを握る企業で、組織としてどのように技術革新と向き合う必要があるか、自分なりの考察を得たい。
【感想】
イノベーションを興すための基本プロセスを整理し、企業としてどのように関わる必要があるかを示した本。
【気づいた点】
知識・技術は「組織は蓄積し、市場は利用する」とあり、自社が蓄積したものを市場(他社)が利用するということがよく起こるとある。
自社で技術を蓄積することはもちろん、他社が展開した製品や技術の市場での反応を見極め、自社に取り組むことが求められている。そのような幾つかの役割を組織やチームとして、対応していく必要があると感じた。
ただ、上記内容を踏まえ、本書に書かれているプロセスを、組織としてマネジメントしていくだけで、イノベーションを興せるかというと、そう簡単なことではないと思う。 -
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紀元前6~5世紀の中国で書かれた兵書とされる「孫子」の言葉を、経営の観点から読み解き、現代のビジネス事例にも当てはめながら、今日の経営者が学ぶべきポイントを簡潔にまとめた、"ありそうでなかった"一冊。
軍事と経営には、戦略を策定・実行することで勝利を目指す点においては共通項が多いが、春秋時代に書かれた書物に、現代の経営にも活かせる示唆が溢れていることに驚きを禁じ得ない。個々の事例が示す教訓はもちろん、戦において、時に「戦わない」ことも含め、"何を考えるべきか"をとことん突き詰めた理論の「幅と深さ」が、「考える」という基本姿勢のあるべき姿を示しているようにも感じる。
もちろん本書が経営学者の視点からみた「一つの解釈」だという点は、著者自ら認めているところであり、また経営学的な学びということであれば、他の数多あるビジネス書を紐解けば済む話でもあるが、「孫子って最近よく聞くけど、何がすごいのだろう」という(自分のような不勉強者の)素朴な問いに対する回答として、或いは原典にあたる前の入門書として、一読の価値があるのではないかと思う。 -
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ネタバレ従来のポーターに代表される、静的な経済学的分析に基づく「カネ」の論理を中心とした戦略論と対照的に本書ではよりダイナミックなアプローチかつ「情報」「ヒト」の論理に重きをおいた戦略論である。わかりやすさからしたらポーターはピカイチといえるが、奥深さ(当然わかりずらさもある)からすると本書はよく書けている。
本書では成功する戦略の共通パターンが、戦略の各要因がまわりの環境といかに「適合」すべきかという視点で記述されている。それらの要因は外部要因(顧客、競争)と内部要因(資源、技術、心理)に分けられる。適合のパターンも「能動的適合」と「テコ的適合(いってみれば逆張りのように普通と反対のことをすることによって力を働かせるようなもの)」このように非常に抽象的なコンセプトが並ぶのでわかりづらい点は否めない。
従来の戦略論やマーケティングなどでは製品、顧客、競争といったポジショニングばかりが論じられるのに対し、ここではむしろ企業内部のビジネスシステム(ポーターでもバリューチェインとして論じられるが)と「見えざる資産」(ノウハウのような情報)をそこでいかに蓄積すべきか、働く人間の心理をいかに動かすかということが論じられている点がユニークで面白い。また適合において、あえて不均衡を作りこむことでストレッチ・レバレッジをかけ緊張や力を与えることにより戦略を効果的に機能させるという考え方も非常に共感を覚える。 -
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「第4章育ち方」が一番印象に残ったかな。会社にとって、優秀な経営者を輩出するのはとても大切なこと。そのためには優秀な層を予め絞った上で徹底的に鍛えていくあるいは早期に昇進させていく必要がある。でも均質性や平等性を志向する日本の組織では、その予め「絞る」と言う行為が極めて難しい。選ばれなかった人のモチベーション低下にもつながりかねないし、そういう人達に対して周りがついていかない恐れもある。
著者はそうした構図を民主主義社会そのものに対しても敷衍している。「悪平等的民主主義の社会では、リーダーは育ちにくい」(P196)のはその通りだろう。しかしそれでも良き方向へ導くリーダーは排出していかなければならない。著者も言うように、周りもある程度納得のできるという前提で、どのように優秀層を選抜していくのか、これからの日本の、特に大企業にとっては一つの大きな課題であると思う(中小企業は、平等とか言っていられないし、大企業よりは実力に応じた体制になっているのではないか?)。