伊丹敬之のレビュー一覧
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1.90年バブル崩壊までの日本は「不動産資本主義経済」=金融依存→現代は「株主資本主義」=Equityに変わりつつある
CEOへの配当増・自社株買いによる株価引上げ圧力
特に外国人株主比率の上昇・・・現代の帝国主義
2.経営者の変化
「リスク管理」を得意とする官僚型経営者ばかり
利益重視→経費抑制・・・人件費・投資・研究開発
内部留保を増やし、借入金圧縮
「将来ビジョンはない」→余剰金でM&A、株主還元
財務が得意で事業は不得手
3.ROE経営は悪魔のサイクル
「将来ビジョン」なく、財務改善
株主優先で搾り取られるだけ 現代版植民地政策
4.教育の重視・再興を
結局は人材育成=投資が人を育 -
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日本企業に対する著者伊丹氏の「正義感」が溢れる内容で、非常に良いなと思った。しかし、これはある意味での警鐘でもあり、このままだと危ういという危機感でもあるのだろう。大企業と中小企業を分けてその利益処分を分解しての推移をデータで示しながら考察を述べる。非常に説得力のある良書。だが、説得力がある分だけ、恐怖感は増す。
あまり書き過ぎると本書の面白さが半減するので触りだけ乱暴に書くと、「大企業の配当が増えてきているよね。これって企業の長期的成長と相反する短期的思考だけど、大丈夫?」という内容だ。利益処分と書いたが、一般的にはこれが<株主への還元、従業員への待遇、設備などの成長投資、内部留保>に分解 -
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ネタバレ第5章 検証のベースは、論理
p.132 直感をベースに発想した仮説を論理で検証する、といっても、その検証は一回で終わり、というふうにただ一直線につながっているものではない。直感的と論理的検証は、発想と検証という2つの間で行ったりきたりがあるのが、普通である。一つの仮説を直感的に思いつき、その適切さを論理的に検証しようとすると、新たな仮説あるいは発想の新たな仮説あるいは発想のバリエーションを思いつき、その思いつきを加えて新しくなった仮説の論理的検証が再び行われる。
第6章 仮説を育て、論理の肝を押さえる
p.177 過去への拘泥と目眩しは、ともに人間の弱点を生み出す「ついつい」の間違いである -
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経営学の大家である伊丹氏が経済の捉え方をわかりやすく解説している。
経営も経済も、主体となるのは「人」であり、人の心を理解することが大切だ、という氏のメッセージは心に迫るものがある。
経済を読み解く貴重な視点をこれでもかと提供してくれているが、個人的にもっとも心に残ったのは日本と米国の企業利益率の違い(米国:高/日本:低)を日本の協調型競争環境から説明している部分。氏は日本の競争環境を「相互作用型競争」と呼び、それがグローバル環境のルールと異なる(それゆえ日本企業は相対的にグローバルに競争力がないことがある)点を鮮やかに浮き彫りにしている。
経営に携わるにせよ、個人的に投資活動に勤しむにせ -
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ネタバレ伊丹氏の書籍を網羅的に読んでいく中でたまたま出会ったのですが、本書の主張である「中二階」の重要性は痛感しており、まさに我が意を得たりという気持ちです。
私の場合は歴史ある企業におけるIPO支援、子会社の買収後のPMIなどを通じ、この中二階の重要性を痛感していました。IPOでは資本主義のルール、PMIでは買収企業のルールが二階に相当するわけですが、歴史ある企業では既にその企業の中の風土が二階のルールとぶつかり、それをただ押し付けても全くうまくいかないわけです。こういった中二階的発想がなく、ただ二階だけを押し付けることが日本においてはうまくいかないことは、今後日本における経営者にとっては重要な視点 -
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経営の意思決定について書いた一冊。
納得感がとても高かった。
直感的に良いアイデアを発想し、
それを論理的に正しいか検証し判断し、
最後の最後、論理で判断しきれない部分は跳躍して決断する
直感はそれまでのストックしていたもの(基盤)があることと、それをうまく直感につなげる(使い方)ことを磨くことによる。
何よりも大事なのは論理的に繋げること。
現実を直視することが大事、なぜなら現実は論理の積み重ねだから。
ここを突き詰めるから次の跳躍ができるし、論理的なストックをためておくと発想にもつながる。
最後の最後は跳躍。
出来得る限りで突き詰めた論理。その先で判断できなかった部分は哲学に基づい -
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ネタバレイノベーションとは、「技術革新の結果として新しい製品やサービスを作り出すことによって人間の社会生活を大きく改変すること」
イノベーションの三段階のプロセス
Ⅰ、筋のいい技術を育てる
筋の良さとは
1),科学の原理に照らして、原理的深さをもつ
▶①そのテーマの実現可能性を高めてくれてる。
②深い原理につながる技術ならば、さらなる展開のポテンシャルが大きい。その原理の横展開でそのさきの発展性がある。
2),社会のニーズの流れに照らして、人間の本質的ニーズに迫っている
▶人間の本質的な欲求にきちんと応えるようなニーズ
3)、自分たちの得意技に照らして、つかず離れずの距離にある
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そもそも経営戦略とは何かという基礎から始まり、顧客適合/競争適合/資源適合/技術適合/心理適合について、それぞれ述べられています。かなり古い本ですが第4版が去年の10月なので、現在の企業にもすぐに適用できることが多く、また事例も端的でわかりやすいです。
特に印象に残った、戦略の技術適合より
・コア技術をなんと思い定めるか
・コア技術のずらしと再定義
・コア技術のずらしを行ってある部分を生かそうとする日本企業と、コア技術からジャンプしようとするアメリカ企業
・肯定技術(自社の既存技術の延長線上)と否定技術(既存技術の代替や存在価値を0にしてしまう)の共存
・共存の難しさは3つ。
1.セルフカニ -
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【自力で地力を】バブル崩壊やリーマンショック、さらには東日本大震災など、様々な困難に直面した日本の経済。特に企業活動と経営に焦点を当てながら、約30年の動向をつぶさに記録した作品です。著者は、『人本主義企業』などの作品で知られる伊丹敬之。
少し教科書的と言えなくもありませんが、豊富なデータを基として語られる平成の日本企業の在り方に、多くの意外な側面を見る気がしました。経営面から見た平成史という側面からも、そして日本の経営に関する通年史という側面からもオススメできる一冊です。
〜多様なパターン、多様な資本主義や市場経済のかたちがある方が、世界全体の多様性と長期的維持可能性のためには貢献するだ