石川宗生のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
正直ですね~
そう、今の世界一周は、『深夜特急』時代とは違う。どこでもATMから現地通貨をカード一枚で引き出せるし、Google翻訳使えるし、Googleマップあるから知らない町でもわざわざインフォメーションセンター探す必要もない。ホテルは行き当たりばったりでなくてオンラインで日本からでも飛行機の中からでも予約できる。だから、ちょっと仕事辞めて世界一周っていうのが結構居はる。
本書の狙いは、と著者が書く。少し生意気をいうと、旅の仕方やバックパッカーの生態を克明に描き、旅にまつわる神話や幻想を木っ端みじんにしたいとひねくれたもの…だそうだ。
長期旅行の経験者として、2、3週間海外をバックパッカー -
Posted by ブクログ
ホテル・アルカディア支配人の娘、プルデンシアが突然コテージに引きこもってしまった。ホテルに逗留していた7人の芸術家たちは好奇心を惹かれ、扉の向こうに閉じこもるプルデンシアに向かって創作した物語を読み聞かせる。古今東西の文学にオマージュを捧げた連作短篇集。
多国籍な登場人物と翻訳風の文体をあやつり、新旧あらゆる作品のオマージュがぎゅうぎゅうに詰め込まれている。それぞれの短篇にはっきりとした繋がりはないので、だんだん文体演習を読んでいるような気分にもなってくる。
行間から衒いのない「こういうのが好き!」という気持ちがとめどなく溢れだしていて、世界のアトラスというより著者の読書遍歴を辿る旅のよう -
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Posted by ブクログ
改変歴史SFに特化した短編集。テーマが一貫しているので、SFアンソロジーの中でも読みやすい部類かと思います。
中でも印象的なのは、伴名練さんの「20001周目のジャンヌ」。様々な思惑のもとジャンヌダルクの火炙りをシュミレート上で繰り返すという酷い話なのですが、結果としてシュミレーション上の歴史改変に止まらず、実際の歴史にも影響を及ぼすという流れがとても興味深かったです。ラストの展開も綺麗で、印象的な作品でした。
異常論文に掲載された「解説──最後のレナディアン語通訳」もそうでしたが、こういった作風も描けるところが伴名練さんの大きな魅力ですね。他作品も素晴らしかったですが、この作品を読めただ -
Posted by ブクログ
中国からシルクロードを辿るようにコーカサスへ。バックパッカーおよび単独旅行者にまつわる幻想をふりほどく、教訓のない旅の記録。
最初に宣言している通り、ガイドブックやネットで拾える情報はわざわざ書かないしタメになるいい話も書かないよ、というスタンス。だから自然と語りの中心になるのは旅する土地ではなく出会ったバックパッカー仲間のことで、それも日本人が多い。そんな感じで色恋への期待が膨らむような書き方をされると、途端に懐かしの『あいのり』っぽくなるのが笑ってしまう。イマジナリー・フレンドのブコウスキーが暴れる章は澁澤の「金色堂異聞」みたいだった。もっと早くこの妄想爆発ノリがでてきたらもっと面白か