椎名優のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ロンドンの寄宿学校に特別寄宿生としてやってきた富豪のクルー大尉の一人娘、セーラ・クルー。誰に対しても優しく、素敵な物語を作るのが得意な彼女は、まるでお姫様の様に贅沢に過ごしながらも決して高飛車になることなく、たちまち皆の人気者に。同級生のアーメンガルドに小さなロッティ、召使いのベッキーと仲良くなる彼女に、しかし悲劇は唐突に訪れる。クルー大尉が亡くなり、無一文で身寄りのない孤児となってしまった!? まさに天から地へ落ちるが如く一変し、まるで奴隷のような生活を強いられてしまうセーラ。しかし持ち前の想像力でどんな苦境も乗り越えていく彼女に、ある日信じられない奇跡が起こり――
世界的に名作なバーネットの一編がついにつばさ文庫に登場。以前は「秘密の花園」を読みましたが、「秘密の花園」以上にこの「小公女」は私の姉が大好きな作品で、前からちゃんと読みたいなと思っていました。姉と話がしたかったので。ダイジェスト版で何となくストーリーは知っていたり、あと09年に放送された志田未来ちゃん主演のドラマを見ていたりしたのですが、ちゃんとしたのを読んだのは初めてです。普通のつばさ文庫よりも文字がびっしりでひょっとすると完訳に近いかも?
最初はセーラが完璧超人過ぎて、読んでいるうちに自分が好きなのは、と言うよりもむしろ興味があって自分が描いてみたい、内面を掘り下げてみたいと言う人物は、ラヴィニアとかミンチンなど意地悪な方なんだなあ、と感じたり。セーラをついつい妬ましく思ってしまう、そういうのってすごく人間臭い、自然な心の動きですよね。だから自分は「人間臭い」キャラクターが好きなんだなって。セーラが(まるで八犬伝の八犬士が「仁義八行の化け物」と呼ばれたようにではないけど)まるで人間離れしてるとかそういうことを言っているのではなくて、他で言うと落語とか、自分の好きな文芸や芸能では私達に近い人物(卑小な人物)が主人公となっているから、そう言う小さい人物にある物語ってのを自分はより好むんだろうなと思いました。そちらの方がより説得力があると言いますか。
思わず落語が出たけど、セーラが自分の語る物語に自分でも熱中してしまうところはまるで噺家のようだ(笑)と思ったりw ああそう、さっきの文脈で言うとセーラよりも「秘密の花園」のメアリの方がどっちかと言うと好きです。でもセーラも好き。だけどセーラだってメアリみたくなる可能性はあったわけで、そうならなかったのはクルー大尉の育て方が良かったのか、それともセーラ自身持って生まれたもので何か違っていたのか、という。でもセーラだって全部素晴らしく出来た完璧超人と言うわけでなくて、ちゃんと怒ったり、ミンチン先生を嫌いだと思ったり、もう駄目だと思ったり、エミリーに当たったり、そういう負の面も書かれてて(当たり前なのかもしれないけど)よかったです。「プリンセスのように」とよく書かれるけど、それは人として誇り高くあれ、どんな過酷な状況においても希望を捨てるな、諦めるな、夢を見続けろ、そういうことなのだろうなと思いました。特に好きなのはアンにパンをあげるところ。じわっときました。あとドナルドからの6ペンスを貰ってしまうところとか。自分もこうだったのだ、とあさましく思うところ。セーラ以外ではアメリア先生がミンチン先生に最後ぶちぎれるところとかすごく好きです。それとラストシーンのパン屋でのアンとセーラもすごく。
「小公子」もその典型だけどこの「小公女」も一種の貴種流離譚で、でも最後には(勧善懲悪と言うわけじゃないけど)スカッと胸がすくわれる、報われる話なのできっと日本人ウケがいいんじゃないでしょうかこの話。私もセーラのようにどんな苦境においても相手を想える想像力や誇りや夢、希望を失わず生きていきたいな。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ果てしなく綺麗な、少年と少女の「祈り」の物語でした。
早く続きが読みたいけれど、読み終わりたくない。
そんな矛盾した気持ちを抱きながら、読み進めていました。
最終巻は一番分厚いですが、一番早く読み終わってしまったように思います。
咲良田の能力についての問題の結論と、ケイと春埼と相麻の関係への終止符がいかに打たれるかが気になって仕方がありませんでした。
ケイと浦地。二人は似ているけれど相容れない。
二人の思いの果てにあるのは常に優しさで、どちらが正しいとは決められない。そんな平行線からどう脱出するのか。
二人の心理戦にはページをめくる手が止まりませんでした。
そして、ついにケイと春埼と相麻の関係に終止符が打たれます。
どう足掻いてもケイの一番は春埼であるという事実は揺らがない。
それでも彼のために自らを傷つけてきた相麻菫の行く先は、幸せとは言いがたいけれど、きっと明るい未来があると祈っています。
長々としてしまいましたが、結論としては、この作品、作者に出会えて良かったという事です。
次回作も期待してます。 -
Posted by ブクログ
激動の巻でした。
序盤は、温かで幸せな日常風景。そこから段々と、咲良田全体を巻き込んだ問題が発生していき、いよいよクライマックス。
最終巻一歩手前なだけあって、ケイも春埼も1巻から随分と変わりましたね。
二人の関係の変化は、見守ってきた側からすれば嬉しいし微笑ましい。
でも、菫ちゃんの事を考えると、本当に切ない。終盤の、彼女が胸の内を晒すシーンでは、ケイでなくても胸が痛くなりました。
一方で、能力はあった方がいいのか、無い方がいいのかという問題にも直面します。
二人の思惑の果てには一体何が待っているのか。
多くの人が笑えるようなハッピーエンドを願うばかりです。