ケン・フォレットのレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
波乱の物語も終盤。
フィレンツェはペストで滅びたようになり、マーティンは帰国する。
ところがやがてイギリスもペストが流行り始め、キングズブリッジを猛威が襲う。
マーティンもペストにはかかったが回復した経験を生かして治療に協力する。
ゴドウィン修道院長は修道士達を率いて街から逃げ出し、程度が知れ渡る。
神に見捨てられたような気分になった人々は放埒となる。
街にとどまって治療に奮戦するカリスは信頼を集め、余所の人間から聖女とも言われる存在に。
混乱する状態で、マーティンとも半ば同棲しているような生活になるが、事態が落ち着くと女子修道院長としてはそれが出来なくなる皮肉。
伯爵と跡取りが同時に亡くなり、未亡人のフィリッパは忌み嫌うラルフと結婚させられる羽目に。
跡継ぎがないまま亡くなった伯爵の未亡人は、王命で次の伯爵と結婚することになるのが習いだったのだ。
美しいフィリッパをラルフのほうは以前から好もしく思っていたのだが‥
グウェンダは息子の裁判で、息子の命を助けるために実はラルフの子だということをラルフに明かす。
ラルフは柄にもなく愛情を覚えるが‥?
危機はめいっぱいだけど~かなり勧善懲悪的というか~治まる所に治まる結末なので、読後感はすっきり! -
Posted by ブクログ
どちらへ向かうかわからない、はらはらの中巻。
大聖堂を中心に発展してきたキングズブリッジの街。
土地と持たない貧民の娘グウェンダは、恋したウルフリックに捨て身で尽くす。
橋の再建を巡って、修道院とギルドは対立。
建築職人のマーティンらは、ロンドンに半年以上滞在して、民事裁判の結果を待つ。
橋がなければ人が集まらなくなって大きな市は寂れ、国王へ払う税金も少なくなると訴える羊毛商人のエドマンド。
エドマンドの娘カリスは、父の片腕となっていた。
1年遅れて橋の建設はやっと始まるが、修道院長のゴドウィンは執念深い性格で、何かと対立する面々を陥れようとする。
カリスは命の危機に。
魔女裁判にかけられ、魔女でない証明は難しいため、修道女になるしか生きる道が無くなってしまう。
失意のマーティンはフィレンツェへ向かうことに。
建築の仕事は順調に得るのだが‥
カリスは女子修道院で働き、有能さを生かすようになる。
女子修道院の財産をごまかしたゴドウィンを伯爵と王に訴えるために、戦場へまで出て行く冒険行。
マーティンの弟ラルフは粗暴で、騎士として領主に任ぜられるが、自業自得で裁判で有罪になりかけるが‥
人を殺しても動じないサイテーの人格が戦場では役に立つという‥?!
悪役はかなり悪役で徹底しているが、それなりに生きていく運命が何とも。 -
Posted by ブクログ
「大聖堂」の続編。
200年後、既に大聖堂が建っている街キングズブリッジ。
騎士のサー・ジェラルドの長男でのちに建築職人になるマーティンと、その弟で大柄で強いが粗暴なラルフ。
裕福な羊毛商人エドマンドの娘で利発な美少女カリス。
土地を持たない貧民の娘グウェンダ。
この子供らが森で偶然に、騎士が襲われて相手を殺す事件を目撃する所から始まります。
そのときの騎士トマスは修道院へ。
修道院長を目指す修道士ゴドウィンは、カリスの伯母の息子。穏当にふるまっていますが、実は野心家。
修道院の内部抗争も描かれます。
女子修道院の存在が大きくなっているのも、時代の流れというか、前作とは違う興味をそそります。
グウェンダが恋するハンサムな農夫のウルフリックには婚約者がいました。
望みのない恋に思えたが、思いがけなくウルフリックの親が亡くなって、その土地所有を巡って危機に陥る。
当時は、当然のように息子が継げるというものでもなかったという意外な盲点が。
薄幸のグウェンダが一途でけなげ。
人が集まっている日に橋が落ちるという大惨事が起き、街は大混乱に。
マーティンは親には期待されない息子でしたが、橋の欠陥を見抜き、才能を発揮していきます。
カリスと想い合いますが、親方の娘に言い寄られて妊娠させたという騒ぎになり、それは濡れ衣だったのですが、ギルドに入れなくなり‥?!
臨場感があり、ドラマチックです。 -
Posted by ブクログ
『火の柱』は上、中、下巻通して、イングランド架空の町キングズブリッジを主な舞台に、62年間のネッドとマージュリー二人の波乱の人生を見事に描き切った物語である。下巻はその内、1566年~1606年の40年間の出来事を史実を背景にして語る。訳者あとがきによると、これまでのケン・フォレット作品の最高傑作と激賞している。
どうしても本書と比べてしまうのが、パールバック著の『大地』である。主人公、王龍が死を迎えるまでのおよそ40〜50年間(父子三代の変遷)を描いている。一方、こちらはカトリックとプロテスタントによる宗教戦争の激動のヨーロッパを生き抜いた主人公、ネッドが80歳を迎えるまでの物語となる。読みどころは...敵対する宗派に分かれていていても、ネッドとマージュリー二人の運命の糸は切れることはない、孫が清教徒として新大陸へ移住する決心をし、一族の物語の幕は閉じる。歴史大河小説である。 -
Posted by ブクログ
山下達郎の楽曲「メリー・ゴー・ラウンド」をyoutubeで聞いていて、この曲は今読んでいる『火の柱』中巻の雰囲気にピッタリだと...主人公イングランドのネッド、その兄バーニーの波乱の人生と二人の恋愛模様がステキ過ぎる。抗えない現実を乗り越えて強く生き抜く女性像は男性からすると、理想の母親のイメージと重なるのかもしれない。中巻で主人公ネッドは運命の人シルヴィーをみつけ、兄バーニーは8年越しにベラの元へ、迎えに来ると信じて待っていた彼女だったが...そこにはなんとバーニーの息子が。
単純に国を二分するカトリックとプロテスタントの争いだけを描くのではなく、当時の残酷な歴史を背景にして、若い二人の恋愛模様をハラハラしながら読ませてくれる。過去一面白い海外小説である。下巻につづく。 -
Posted by ブクログ
大聖堂シリーズ、ここに完結! と表紙にあり、キングズブリッジシリーズの最新作である。このシリーズは最初の作品でゴシック様式で建造が始まったキングズブリッジの大聖堂あたりを舞台とするシリーズであり、続きものではない。『大聖堂、夜と朝と』だけは一作目の前夜譚のようだが、他は作を重ねるごとに時代が新しくなり、この作品でワーテルローの戦いが終わったあたり、つまり近代までたどりつく。
18世紀末のキングズブリッジでも紡績紡織の機械化が始まり、産業革命の荒波が押し寄せてくる。その状況での群像劇である。テキスタイル業界の話であるので、貧農の服装から裕福な御婦人のドレスまで描写が細かく、そのあたりも面白い。そして、虐げられる貧しい小作農の妻サルがたくましく重要な役回りを果たすところも、さすがこのシリーズだ。ページをめくる手がとまらないのも、さすがこのシリーズ。
一方、星四つにした理由も述べたい。
まず、性描写が多すぎ、退屈に感じた。「多すぎる」というより、退屈だから「多すぎる」と感じる。『針の眼』にあったような熱や官能はここにはない。また、昨今の多様性とかポリコレとかの流れなのか、無理やり入れたような同性愛カップルの存在が気になった。ことに女性同士のカップルのほうは、レズビアンである、以上の描写が希薄で、「いれるためにいれた」ようにしか思えない。男性同士のほうは年の差カップルなのだが、最初はかっこよかったのに結ばれたあたりからその魅力がだださがりしてしまうため、感情移入しにくい。もっといい男(女でもいいけど)にしろよ、と思ってしまう。
それでも、終盤のワーテルローの戦いが圧巻だ。自らの意思で参戦している兵がほとんどのナポレオン軍に対峙させられている、無理やり徴兵された兵がほとんどのイギリス連合軍。勝ち目はなさそうでも、戦意なんか全然なくても、参戦している以上負ければ死だ。フランスになったっていいじゃない、なんて言っている場合ではない。このあたりは興奮する。そして、戦場についてきたサルのここでの行動もまた、さすがである。戦闘に参加はしないが、手ぶらでは帰らない。
結局、期待度が高すぎたので四つ星、という感じなのかもしれない。ただ、校正はきちんとして欲しい。気になるところがかなりあった。 -
Posted by ブクログ
キングズブリッジシリーズの完結にふさわしい、大団円という感じでしょうか。登場人物たちがそれぞれ、幸せそうで何よりです。戦争も終わり、労働者と資本家との争いもその妥協点が見えてきて、明るい未来が待っていそうな予感です。
とはいえ、実際の歴史では、これからもっと恐ろしい戦争が待っていますし、現在においても労働者と資本家の対立が解決したとは言えません。そう考えると、いったんのハッピーエンドですが、これで何もかもが解決したとはいえない、そういう余韻もありました。
今作「光の鎧」は、これまでのキングズブリッジシリーズとは違い、勧善懲悪というわけではないのも興味深いです。むしろ善人チームとされる人たちが、不倫的な行動をしていたり、逆に悪者チーム代表でもあるホームビームが、哀しい過去があったり、こころが揺れ動いたりしていました。
最後のワーテルローの戦いは、圧巻ですね。映画を見ているようでした。なんかうまいことまとめようとしている感が、すこし見え隠れしているように気がしましたが、キングズブリッジシリーズの最後としては、十分満足な締めだったかと思います。 -
Posted by ブクログ
スペイン無敵艦隊との対決は、かなりハラハラさせられました。各陣営視点の描写あり、それがくるくると入れ替わりますので、その度にどちらが優勢なのかわからなくなります。
カトリックとプロテスタントとの対決が決着しましたが、果たしてこれがネッドの目指していたことだったのか、という心からスカッとできない感じが何とも言えません。
全ての決着がついて、一応はめでたしめでたしという感じです。しかしこれまでのキングズブリッジシリーズのような、勧善懲悪という感じはなく、なんというか全体的に、人間の愚かさとかそういうものが流れている感じがしました。
結局現在の世の中でも、この時代に問題となっている点は解決しきれていないわけです。ネッドやマージェリーが望んでいた世界には、結局ならなかったという意味では、ハッピーエンドとは言えないんですよね。 -
Posted by ブクログ
上中下各巻が600 ページの大作ですが、物語の展開に引き込まれ、その分量を感じさせないところが本当に凄いです。
イギリスの中世を舞台に王と教会の対立、貴族や修道士も暴力が蔓る世界で自分の権勢を高めようと暗躍する中、大聖堂を築きたいともがく、石工のトムとその家族、さらに伯領を治めていた伯爵の娘アリエナ、絞首刑にされた吟遊詩人の妻エリンの家族、自分の教区を豊かにすべく奮闘するフィリップ司祭。
大聖堂建築の専門用語が溢れる文章は殆ど理解できませんでしたが、息を付かせない展開とその筋書きには本当に堪能しました。
社会の力の源泉が軍事力という暴力に支えられている王政と神の救いを信じる民衆の宗教心に支えられている教会が支配するヨーロッパ中世の歴史的世界が目の前に存在する様でした。
少し過剰?な愛欲の表現や暴力表現はどうかとも思いましたが、主人公達の生身の人間を描くうえでは不可欠かも知れないと思います。
二転三転を何回も繰り返すストーリーに脱帽です。