宮澤伊織のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
今年は、割とオーソドックスな話が多かった気がする。酉島伝法以外。酉島作品はほとんど理解できなかった。うどんを食べながら読んでしまったのも悪かった。
ベストを挙げるとすれば、オキシタケヒコの「イージーエスケープ」。好きな人にはたまらんタイプの雰囲気。「カウボーイビバップ」の絵でどうぞ。
草上仁「スピアボーイ」も面白かった。90年代にはほとんど読んでないけど。ただこのストールターンを利用して云々、ってネタは森博嗣「スカイ・クロラ」シリーズで見た気がする。どうでも良いこと。
そういえば、円城塔「Φ」。「ねえ、笑って」が可笑しかった。この手の小説でのこういうお茶目さが、円城塔の良さ。
しかし初出が同人誌という作品が多いのがちょっと気になる。需要者と供給者が一致してしまうのは、ジャンルの衰退じゃないだろうか。客が入れ替わりステージに立つジャズ喫茶みたいな。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ種々雑多な武器、異業種混合チャンバラ、そして「人外のもの」を描写するハードなフィクション、それを全部坩堝に放り込んで一気に陽性の物語に仕立てた、そんなシリーズ。そしてそのどれでもない、明るいからっとした読後感がある。
「魔剣」という人外の存在である武器に出会い、それを自分のかけがえのない存在として認識した(してしまった)「魔剣遣い」たちの戦闘。魔剣は意志と知性を持ち、自らをシンボライズした幻影を表出し、人間と対話さえする。しかし決して人ではない。
この魔剣という存在のリアリティが、この物語の硬質の骨格になっている。
魔剣は、擬人化された剣ではない。人間とは違う本能を持ち、違う基準で動き、違う感覚でものを把握する。主人公リクが、物語のヒロインである魔剣〈夜来たる〉と「視覚」を同調させる場面での「魔剣の感覚」の描写はまさに秀逸の一言だが、それだけでなく、リクと〈夜来たる〉が勘違いとすれ違いのとんちんかんな会話と言動を繰り広げる日常もまた、魔剣と魔剣遣いが離別不可なほどに結びついていながら、決して相互理解に至ることがない限界を描いている。
「人間ではない知的存在」という観念の追求なり、魔剣の「人権闘争」なり、そういった方向への展開はいくらでもできたと思われるが、「魔剣」シリーズはそういう方向性に色目を使うことなく、ドライにストイックに「魔剣」という存在を描写する。
〈夜来たる〉は、美しい少女という姿で表出し、悪態をつき、喜び、悲しみ、嫉妬し、キスをし、愛情さえ見せるが、しかし「人間」になることはない。決して。
それは、主人公リクと彼に関わる魔剣遣いたちが、時に戦闘に麻薬のように耽溺し、人間として大切なものを失い、次第に人外に近づいていくにも関わらず、最後まで「人間」であり続けていくのと、対照をなす。
物語のラストの一文は、この二者が、結局のところ人間同士(あるいは魔剣同士)のように理解しあうような未来は永遠に来ないということを暗示するようにも見える。
だがこの物語が面白いのは、その事実を、ドラマティックな悲劇や哀切として扱わないところである。
魔剣と魔剣遣いは、自分たちの関係の限界を嘆いたり、変えようとしたり、その限界を越えようとあがいたりはしない。そのままの関係を実に自然に受け入れている。そのカラリとした受容が、実にリアルで、またある意味では幸福に満ちているようにも感じられる。
これを見てしまうと、「人間と、人間ではない存在」の関係性の究極を、「人間同士のような愛」という形に求めていく物語群が、非常にウェットで、ある種の傲慢のようにさえ、見えてきてしまうのだ。
そして最後に、この物語の一番の肝は、そういうややこしいことを考えずに、「わーい日本刀からセスタスから鈍器まで古今東西武器の玉手箱やー!」なノリでチャンチャンバラバラきったはったする、その様を追いかけているだけでも十分楽しいということである。 -
Posted by ブクログ
とても面白かった。
タイトルからして、ああ例のSFのパロディかと思いそのつもりで読み始めたのだが、内容は完全に想定外だった。この作家は最近興味を持って手に取ることが多いのだが、この作品もやっぱり若い女性(高校生)が主人公で、軽快なテンポで、くだけた口語・俗語を連発しながら話が進む。嫌になるほどお約束どおりのアニメ展開というか、登場人物の作りは「構えたミットに剛速球」である。極めてありがちと言えばありがちだし、一歩間違えがそういうのが好きな人だけに迎合している、あるいは作者が個人的なノリで飛び回っているということになりそうなのだが、実はものすごく楽しくて読んでいるだけで嬉しくなる。ダーティー・ペアが思い切り現代風になった感じで、なんとも気持ちがよいのである。
中身はびっくりするほど骨太のスペースオペラである。平行世界やタイムトラベルや、その他数え切れないほどのSF的ギミックがちりばめられていて、しかも振り切れた発想がそこここにみえて面白かった。特に多元世界と時間の捉え方は、真面目に遊んでいる感じが気持ちよく、大笑いをしながら密かに感心していた。読んでいる時は面白くてどんどん読み進められるのだが、後から思い返すとずいぶんすごい話で、作者はきっとSFが大好きで仕方がないのだと思うし、その大好きがこっちにも感染してくるようでとても嬉しかった。
後書きで作者自身も書いていたが、ぜひぜひ続編希望である。ただ、これの続編がどんなものになるか見当もつかず。だからこそ熱烈に続編希望である。