灰谷健次郎のレビュー一覧
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【いまも戦争はおわっていない。】
神戸にある沖縄料理屋『てだのふあ・おきなわ亭』に集う人たちの人生を小学生のふうちゃんの純粋な心を介して紐解いていく物語。沖縄とそれ以外の日本との間にある構造的な差別や不平等が登場人物の生と一緒にあぶりだされています。
てだのふあ・おきなわ亭の人たちと触れ合うことで自分自身の生をみつめたキヨシ少年が言っています。「日本は沖縄の心にふれて、だんだんまともになっていくのとちがうやろか。そやなかったら日本は死ぬだけや。」
太陽のような明るい未来への象徴ともいえる、こどもの生に、戦争という暗闇で散っていった命。沖縄戦や原爆で深い苦痛、悲しみを負った人たちの生を対比させて -
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我利馬は25年前の私だった。
自分が嫌いで、生まれ変わりたい私にそっくりだった。
だから、この本の内容に凄く共感した。
我利馬は、生まれ変わるために、ヨットで航海に出かけ、
私は、生まれ変わるために、アメリカへと渡った。
我利馬は、自分の居場所を見つけた。
50歳の私も、結婚して居場所を見つけたような気がしている。
居場所を見つけるまでの、時間と空間の旅、
苦しみと悲しみを乗り越える旅、
嵐の中、彷徨い、何度、雨の中立ち尽くしたのか?
自分を受け入れてくれる人と場所、
自分が苦しみと共に成長することで勝ち取った
現在。
でも、今でも、25年前と少しも変わってないな、と自分に対して感じることがあ -
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ネタバレ「どうしてですか。説明してください」
キヨコがたずねた。
「はいはい」
とダックス先生は言った。
「ろうかはいつも右側をしずかに歩く、というのはこまるのです。火事が起こったら焼け死んでしまいますからねぇ」
「まじめにしゃべってください」
「はいはい。
あなたひとりとか、二、三人で歩いているときは、ろうかの右側を歩こうが左側を歩こうが、そんなことはどっちでもいいのです。たくさんの人間が歩くときは右側通行をまもったほうがいい。つまり、ろうか一つ歩くにしても、そのときそのようすを判断して歩くのが人間なのです。もし、まだほかのクラスが勉強中なら、今は静かに歩かないとひとのめいわくになる、そう考えて静か -
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表題作『海になみだはいらない』のほか、『君はダックス先生がきらいか』『三ちゃんかえしてんか』の3作品が収められている。さらに最後の『三ちゃんかえしてんか』は5つの独立した短編から構成されている。
どの作品も、灰谷さんの物語だと言われずしてわかる灰谷さんらしい温かさと人間愛にあふれている。
多くのレビューにあるように『君はダックス先生がきらいか』はやはり珠玉である。
『海になみだはいらない』ももちろん素晴らしい作品だが、物語の展開的に短編にするには少し惜しい気もする。まだまだ広がっていきそうな濃密さなので、長編としても成立したのではないかと思う。
『三ちゃんかえしてんか』の導入として書かれている -
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4作品が収録された短編集で、どれも素晴らしい作品ですが、私的にはとくに「水の話」と「声」が良かったです。
相変わらず灰谷さんの優しい眼差しが溢れていて、そこに描かれるのは、障害を持った子供であったり、在日朝鮮人であったり、貧しい家庭の子供であったりと、社会的に弱い立場にある人にフォーカスが当てられているので、やはり哀しい。哀しいのですが、それを描いている灰谷さんの眼差しが温かいゆえに、どこか希望や光が見えるし、そうした人達に対する筆者の深い理解と愛情がまぎれもなくあるからこそ、決して上辺だけの感動話に終わっていないし、短編ながらも浅い切り取り方ではなく幸せも不幸せもないまぜになった深みがある。 -
購入済み
何回読んだだろう
引っ越しの時失くしてしまった。灰谷健次郎の文庫本はほとんど残っているのに
「兎の目」が無くなっていた。
しっかり覚えているが、やはり感動を新たにした。自分自身、教職歴34年。管理職を目指すことなく、子供と多く接した。同感する事が、多々ある。